ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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一章終結です。


森を覆う闇魔法

聖霊の森を無事に抜けた俺達は、視界が開けている海岸沿いを歩いていた。遠くにはヴェルダン城が見える。

 

「……レックス、その斧はどこで手に入れた?」

「それが、さっき湖に鉄の斧を落としちまったんだけどよ、綺麗な女の人が出て来てこれをくれたんだ。勇者の斧って言う結構貴重な斧なんだぜ」

「…………?」

 

何言ってるんだこのバカオールバックは。気を取り直して、進軍を続ける。すると、前方からヴェルダン兵が出て来た。恐らくサンディマ指揮下の兵士だろう。

 

「なっ、ジャムカ王子!?」

「馬鹿な、ジャムカ王子が裏切ったのか!」

 

口々にそう叫ぶヴェルダン兵達。まぁ、無理は無いだろう。自分達の王子が敵に回っているのだから。ジャムカが前に出て叫ぶ。

 

「待ってくれ!俺はお前達と戦う気は無い。親父に会わせてくれ!」

「現在バトゥ王は病に侵されている。ジャムカ王子と言えども会わせる事は出来ない。ましてや敵についた者など……」

 

ヴェルダン兵は斧を構えた。どうやら、やるしか無いらしいな。シグルドも剣を構える。

 

「……すまない」

 

そう、ジャムカが小さく呟いたのが聞こえた。互いが駆け出し、剣と斧を激突させる。静寂に包まれた海岸は、一瞬にして戦場と化した。シグルドが斬り、キュアンが突き、ジャムカが撃ち抜く。いくら歴戦のヴェルダン兵と言えどもこの三人には敵う訳が無かった。弓兵達の援護も虚しく、次々と倒されていく戦士達。戦いは、呆気なく終わりを迎えた。兵士達の死体を、ジャムカがじっと見つめる。

 

「……俺は、俺は……何故、こんな事になってしまったんだ……」

「ジャムカ王子……」

 

一人呟くジャムカを、エーディンが慰める。シグルドが前に出て来て言った。

 

「……一刻も早く、ヴェルダン城を解放せねば……」

 

ジャムカも頷く。俺達は簡易的な埋葬を済ませた後、再び海岸沿いをヴェルダン城を目指して進んで行った。

 

「……ようやく全貌が見えて来たか」

 

なだらかな丘の上に、ヴェルダン城は建っていた。やはりヴェルダンの首都と言うだけあって、ジェノア城やマーファ城よりも大きくて立派だ。

 

「……」

「どうかしたか、シグルド公子」

「いや、今何か光ったような……」

 

俺はもう一度ヴェルダン城を見た。すると、確かに一瞬光が見えた。

 

「なっ!?」

 

次の瞬間、ヴェルダン城から無数の黒い光が飛翔してくる。その光はあっという間に俺達の寸前まで迫って来て、目の前に着弾。地面は黒く焼けただれた。

 

「みんな、森の中に逃げ込め!」

「おいおい、次から次になんだよ!?」

「アレク!とっとと避難するぞ!」

 

皆、慌てて森へ入る。するとピタッと砲撃は止んだ。

 

「あれは一体……?」

「恐らくサンディマの闇魔法だろう。奴め、厄介な物を……」

 

ジャムカが言う。闇魔法……アカネイアではドゥラームやマフーくらいしか見てなかったが、ユグドラルにはメティオタイプの闇魔法があるのか。

 

「この森を進めば奴には発見されない。森を抜けたら一気に攻撃を仕掛ける」

 

シグルドが宣言した所で、俺はまたもや人の気配を感じた。今回は後ろからだ。まさか……

 

「シ、シグルド様……」

「ディアドラさん!何故ここに!?」

「……あっ、君はマーファ城にいた……ノイッシュ、何故その人の名前を知っているんだ?」

「精霊の森を通る時に出会ったんです。シグルド様に会いたいと言われていたが、戦争の途中と言って帰らせました」

「ごめんなさい……。でも、あの城には行ってはいけません、殺されてしまいます」

「闇魔法か……だが、やるしか無いのだ」

「……なら、このサイレスの杖が使える筈です」

「サイレスの杖!?」

「サムソン、知っているのか?」

「アカネイアでは滅多に出回らない貴重な杖だ。久しく見たな……」

「これでサンディマの闇魔法を封じて見せます。だからシグルド様、どうか私を連れて行って……」

 

その時、レックスから肩を叩かれた。

 

(こんな所で告白たぁ、あのお嬢さんは随分肝が座ってるな。それほどシグルド公子に惚れたか?)

(だな。なんせ俺をシグルド公子と間違えなかった位だからな。相当惹かれてる)

「……レックス、サムソン、聞こえてるぞ。……ディアドラ、君は何かを恐れているみたいだ。それが何かは、私には分からない。だが私達の気持ちが同じなら恐れる物は無いはずだ。私は君を愛している……」

(言っちゃったぁーっ!シグルド公子、中々大胆な奴!)

(ううむ、俺には到底出来ん……)

「ふふふ……シグルド様、とても面白い部下をお持ちのようで……」

「レックス、サムソン、後でゆっくり話そう」

「チッ、ついて無いぜ」

 

場の雰囲気が少し和んだ(犠牲者二名)所で、ディアドラを加えた俺達は再び歩き出した。しばらく歩いたが、未だにあの闇魔法は来ない。

 

「ディアドラ、サイレスの杖を頼めるか」

「はい」

 

ディアドラが杖を握ると、杖の先端から出た光がヴェルダン城に向かって飛んで行った。そしてディアドラが言う。

 

「これで、サンディマの闇魔法は封じられた筈です」

「……よし、全員で突撃する!」

 

そこからは早かった。先の軍勢でヴェルダン城の戦力はほぼ尽きたらしく、残兵と共に魔法が使えなくて焦っているサンディマをたたっ斬るだけのお仕事だった。にしてもしっかり悪い顔してたな。地味に痩せこけてたし。俺達の前に倒れ伏すサンディマが呟く。

 

「ぐっ……ジャムカよ、貴様の親父は既に殺してやったぞ……」

「何!?」

「くくく……」

 

ジャムカが駆け出す。すると丁度、ガンドルフが目を覚ました。突然の出来事に困惑している様子だった。

 

「なっ、どういう事だこいつは……」

「ガンドルフの兄貴!」

「ジャムカ!どうなってんだ!?」

「それは後だ!親父がやばい!」

「何!?」

 

俺達はジャムカとガンドルフに着いていくようにして、王宮へと向かって行った。

 

 

 

王宮に着くと、そこには血まみれとなったバトゥ王が倒れ伏していた。ガンドルフとジャムカが駆け寄る。

 

「どういう事だ!てめぇらがやったのか!!」

 

ガンドルフが叫んだ。シグルドがそれに答えようとしたが、バトゥ王が先に口を開いた。

 

「待て、ガンドルフよ……ジャムカの言う通りじゃった、サンディマは儂を騙していたのじゃ……」

「親父……」

「そ、そこにいるのはシグルド殿か……すまなかった……」

「バトゥ王、無理をなされるとお体に触ります。もうお休み下さい」

「いや、儂はもう駄目だ……シグルド殿よ、この世界で起こっている邪悪な出来事の裏には、暗黒教団が潜んでいる。奴らは世界の理を壊し、暗黒神ロプトウスの復活を目論んでいるのだ……シグルド殿よ、惑わされてはならぬ。……ガンドルフ、ジャムカよ」

「……」

「どうか我が無念を晴らし、この国の人々を守ってくれ……頼んだぞ…………」

「お、親父!」

「バトゥ王……」

 

ガンドルフの手を掴んでいたバトゥ王の手が、力無く地面に落ちる。しばらくの静寂が場を包みこんだ。だがそれは、ガンドルフ自身によって破られる。

 

「シグルド……いや、シグルド公子。……頼む、どうか俺達をあんたの配下に加え入れてくれねぇか!先に攻撃を仕掛けた身でこんな事を頼める立場じゃないのは分かってる……だが頼む!この通りだ!」

「シグルド公子、俺からも頼みたい。どうか兄貴を許してやってくれないか」

「…………分かった。ガンドルフ王子、ジャムカ王子。君達を私の配下に加え入れよう。エーディン、大丈夫か?」

「はい。もうこの方は、私が恐れていたガンドルフ王子ではありませんわ」

 

 

 

その後、バトゥ王の葬儀を行った俺達は、王都バーハラの命令に従い、シグルドを城主として国境のエバンス城に留まる事になった。そしてなんと、シグルドはディアドラと結婚、妻に迎えた。光速もびっくりな超スピード結婚だ。その後丸一日シグルドから説教を喰らったのはまた別の話。

 

……ガンドルフを始めとするヴェルダン勢と共に公女奪還の戦いを終えた俺達。俺はバトゥ王が言い残した「暗黒教団」という言葉が引っかかっていた。そしてその不安は、より大きな物となって現実になる。




感想を……感想をくれ……(瀕死)
頑張って完結させるから……
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