ユグドラルにアリティアの元剣闘士をブチ込んだ話   作:塩焼きそば啜郎

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今回は地の文が多いです。


草原の決戦

ノディオン城から離れた俺は、先にハイライン城へと向かったシグルド達と合流した。小さな森の中から、敵の部隊を見ているらしい。

 

「シグルド公子!」

「サムソン。……あの布陣、どう突破するべきか」

 

俺は草原に展開された敵部隊を見た。中央にはジェネラルとプリーストが、そこから重騎士が広がってハイラインへの道を塞いでいる。おまけに奥にはシューター付きか。中々豪華なものだな。

 

「……重騎士は機動力に難がある。こちらも広がって突撃すると見せかけ、左右の重騎士が動いた所で中央の主力があのジェネラルへと突撃をかける。……どうだろうか」

「なる程……流石は元アリティア騎士団の勇者」

「よしてくれ。俺はただの傭兵だ」

 

ま、悪い気はしないけどね。にしても我ながら中々良い案だと思う。放射状に広がっているが、後続はいない。どうやらハイラインはアグストリアの中でも小国のようだ。だから野心的になってたのか。

 

「よし、ノイッシュ、アレク、左右の役は頼んだぞ」

「了解です」

「任せて下さい」

「中央には私とサムソンとレックス、援護としてミデェールもついてきてくれ」

 

シグルドがそれぞれ指示を出す。そして俺達は、勢い良く草原へと飛び出した。作戦通りに、横長く展開する。

 

「油断するなよ、相手はこちらよりも機動力が高い!自分の持ち場を死守するんだ!」

 

ジェネラルがそう叫び、相手も武器を構える。なる程、想定済みって訳か。

 

「シグルド公子、どうする?」

「あのジェネラルとは私が一騎討ちに持ち込む。レックスとサムソンとミデェールは左右の敵を囲み、部隊を分断させてくれ」

「あんまり無茶しないで下さいよ?」

「大丈夫さ。……全軍、突撃!」

 

その声を合図に、俺達は放射状のまま駆け出した。

 

「フン、こちらよりも少ない勢力で突撃してくるとは……返り討ちにしてやれ!!」

 

敵も左右の部隊を少しづつ前進させてくる。流石にジェネラルはあまり動かなかったが、それでも一定の距離を保っていた。どうやら相当の熟練者らしい。だがうちの大将は、中々無茶をする御仁だった。

なんと、アレクとノイッシュが戦闘を開始すると同時に、更に馬を加速させてジェネラルへ単騎突撃を仕掛けたのだ。俺達は慌ててジェネラルと部隊との間に入り込み、分断する。

 

「なっ、単騎突撃だと!?」

「早速無茶してんじゃねーか!」

「怖い物知らず過ぎる……」

 

飛んでくるロングアーチを避けながら、シグルドはジェネラルへと突撃していく。

 

「……若造が。少し驚いたが、この私に単騎で挑んでくるとはな!このフィリップ、貴様如きに負ける程落ちぶれてはいないわ!」

「なら、私はお前を倒し強くなってみせる!強くならねばならん!!」

 

シグルドが銀の剣をフィリップに振り下ろす。その一撃は、大盾によって阻まれた。すかさず銀の槍の反撃が繰り出されるが、シグルドは素早く後方に回避。そしてまた突撃を繰り返していった。

 

「ぬぅ……素早い奴め……」

 

フィリップはじっとシグルドを観察する。

 

「そこだ!!」

 

そして、次にシグルドが来るだろうと予測した場所へ、槍を突き出した。そしてそこには、速度を上げたシグルドがいる。

 

「なっ!」

「これで終わりよ!」

 

シグルドは咄嗟に剣を振る。金属音が響き、剣が槍を弾いた。

 

「……防がれたか」

「くっ、迂闊に近付けない……」

 

両者に膠着状態が訪れた。だがそれも、長くは続かない。分断した重騎士部隊を撃破した騎士達が、次々とシグルドの元に集結していった。

 

「まさか、全滅したとでも言うのか!?……くっ、こうなれば、一人でも多くあの世へと道連れにしてやるわ!」

 

フィリップは槍を構えてシグルド達に突撃していった。シグルドも剣を構え、突撃していく。互いに最高速度で、得物を突き出した。

 

「なっ……!?」

 

鈍い音を立て、フィリップの銀の槍が砕ける。そして続けざまに、銀の剣がフィリップの肩に叩き込まれた。その刃は分厚い鎧を砕き、致命傷を与える。

 

「ば、馬鹿な……」

 

その一言を最後に、フィリップは倒れた。肩で息をしているシグルドに、レックスが近付く。

 

「おい、早速無茶をしてくれたな。結構手こずってたが」

「この男、私とは年季が違った。……すまない、心配をかけた。これからは気をつけよう」

「頼むぜ。あんたはまだディアドラと夜中にキャッキャウフフしたばかりなんだろ?あんたが結構デカい声出してたんで聞こえてたが、そんな調子じゃ子供が可哀想だぜ」

 

ここまで登場しなかったが、俺達と共についてきていたディアドラの頬が赤くなった。

 

「……レックス、君とはまた話す必要がありそうだ」

「おー、怖い怖い」

「すみません、シグルド公子……僕の悪友が……」

 

シグルドが珍しく青筋を立てている。こりゃレックスは終わったな。南無三。俺達は一人残されたプリーストを置いて、ハイラインへと向かった。少し可哀想だが、死体は今は置いて行く。後で埋葬しよう。

 

 

シグルド達が出発した直後、フィリップの体を淡い光が包んだ。プリーストが、密かに杖で治療を施したのだ。だがそれでも回復には至らず、フィリップは荒い息をしながらシグルド達を見た。

 

「……地獄へとついて来てもらうぞ……!」

 

フィリップは持てる力を全て込め、刃が砕けた槍を投擲した。威力は下がるが、命中すれば充分人を殺められる物だった。

 

「……!」

「シグルド公子!?」

 

その槍がシグルドの背中を貫こうとした瞬間、槍に気付いたシグルドは体を横に反らした。だが避けれず、肩口が大きく抉り取られ、鮮血が噴き出した。

 

「ぐうぅ……っ」

「……申し訳ございません、ボルドー陛下……」

 

今度こそ、フィリップは完全に沈黙した。

 

「……なんて執念だ……」

 

シグルドは肩を押さえ、うずくまる。そこへ、気絶したエリオットを連れたキュアン達が合流してきた。

 

「シグルド、無事か!……エスリン、ライブを頼む」

「はい。兄上、大丈夫ですか?」

「あぁ。私とした事が、油断した。精進しなくてはな」

 

次第に、シグルドの傷口が塞がっていく。鎧は損傷したままだが、流れ出る血は完全に止まった。

 

「みんな、ハイライン城へと向かうぞ!」

 

広い草原を、騎士達が駆け抜けて行った。




フィリップ……ハイラインの将軍。個人的に好きなキャラの一人。

シグルド……激しくなる戦いの中で、徐々に焦りを覚え始める。

ディアドラ……シグルドとキャッキャウフフした人。可愛いね。

レックス……シグルドによる処刑が確定。口が達者過ぎる。
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