実は気づいてなかったけど、転生先がキングダムだった話、する?   作:匈奴人

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第20話までは書いちゃってるのでそのまま投稿します。
20話以降、何かしら匈奴メインで中華に関わらない内容をいくらか書きます


第16話 中華に新しい風が吹く

 六大将軍王騎の死。 

 それは中華に大きな風を吹き込んだ。

 

 特に中華の西の端に存在する秦と、それに接する国々にとっては、この一年は戦争が活発化した忙しい年であっただろう。

 秦という獲物から利益を得ようとする他国と、それを防がんとする秦。

 

 中華の西では、激しい争奪戦が起こっていた。

 

 一方その風の恩恵を対して受けることが出来なかったのが、中華の東に位置する二つの国。 

 燕と斉である。

 

 これら二つの国は、秦との間に他の国が挟まっており、秦という獲物に手を付けることが出来なかった。

 

 更に加えて、この二国に西側で接する国は、あの李牧がいる趙である。

 魏、韓といった国々が秦を狙う中で、王騎を討ち果たしたことで秦に対する興味を一時失った趙は、長年の仇敵である燕を李牧自ら軍を率いて攻め、二つの大きな都市を奪う戦果をあげている。

 趙の守りは固く、二国とも趙を満足に侵すことは敵わなかった。

 

 乱世に湧く中華の中で、二国だけ美味しい目を見損ねたのである。

 

 元々趙とぶつかり、更に燕、斉同士が接する国境は地形の特性上国境線が短く、その分侵攻も難しい。

 故にこれら二つの国は、中華の他の国々が戦国に熱を上げる中で、これまで通りのちまちまとした土地の奪い合いを繰り返すしか無かったのだ。

 

 故に自然と、中華全体の注目は李牧を擁する趙と、戦争が活発化している秦という中華の中央から西側へと向いていた。

 

 しかしこの年。

 他の六国が全く知らない間に、燕国は一つ、大きな転換点を迎えていたのである。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

《燕国 北方山岳地帯》

 

 それは、燕の大将軍の一人、“山の王”オルドが、いつものごとく燕北方の山岳地で、山の民との戦いに明け暮れていたときのことである。

 特に山での戦いを得意とし、山民族を好ましく思うオルドは、こうして山民族を燕北方の山岳地で吸収しては燕に連れて帰り、自分の軍の主力として使っている。

 

 今回も山を楽しみつつ、山民族を吸収していたオルドは、傘下に入れた山民族から気になる報告を受けた。

 

「騎馬民族の大軍が山にぃ? 何故奴らがわざわざ山に侵攻する」

「わからん。けど大軍。一万はいる」

 

 オルドの傘下に入れた山の民とて戦士だけで数万はいるが、しかしぶつかれば只では済まない数の相手でも在る。

 

「そいつらは何だ、攻撃をしてきたのか?」

「攻撃シない。旗掲げてる。中華の文字」

「中華の文字? それはどんな字だ。……いや、いい自分で見に行く」

 

 騎馬民族が中華の文字を掲げている。

 山民族のその言葉に、オルドはその文字を書くように言おうとして、やめた。

 こういうよくわからないときは、下手に配下に任せるよりも自分の目で見たほうが確かだ。

 オルドはそれを知っている。

 

「ユキイ、ついてこい。それとオメラ族を連れて行くぞ」

「オルド様自分で見に行くの? 大丈夫?」

「山で俺が捕まるわけが無いわ」

 

 数万の敵に対して少数での接触は危険ではあるが、オルドは山の民以上に山読みに優れ山に生きる男である。

 平らな草原を走る騎馬民族なぞに、山で捕まるはずもないという自負がある。

 

 故にオルドは、側近のユキイと、ちょうどよく引き連れていた、急峻な山岳地での活動を得意とするオメラ族を連れて自ら偵察に向かった。

 

 

 

 

 

 

 偵察に向かったオルドの目に、その騎馬民族の軍勢の姿はすぐに飛び込んできた。

 というより、騎馬民族が自ら太鼓をかき鳴らして、居場所を主張していたのである。

 故にオルドは、山を読んで軍勢を探す必要もなく、その軍勢が集結した近場の高台の上に陣取ることが出来た。

 

 そして高台から騎馬民族を見下ろしたオルドは、その軍団の特徴を観察する。

 

「東胡の奴らでは無いようだな……そしてあの、『対話を求む』の中華文字の旗。何者だ? 時々山を荒らしに来る匈奴とやらか? ユキイ、この辺りに詳しいやつはいるか?」

「バンハフ族の奴なら何人か来てるよ」

「おお、ならそいつらを呼ぶか」

 

 ちょうどよく、オルドが率いてきたオメラ族とは別に、この当たりを根城とするバンハフ族の者達が数名、侵攻してきた軍勢の偵察のために来ていたので、呼び出して話を聞く。

 

 オルドが山民族を平地に連れて行くとはいえそれは全員ではなく、山民族の中でも腕利きだったり戦でとくに働ける者たちを中心にしてのことだ。

 故にそれ以外にも、燕北方の山間に残って部族同士で争いをしたり、山岳地の外から攻め寄せる騎馬民族などの異民族と戦っている者たちも大勢いる。

 

 今回オルドが呼び出したバンハフ族は、そのうちの一人だったらしく、目の前の軍勢にも見覚えがあったらしい。

 

「あれは我らは『鋭き刃(バンシト)』と呼んでる奴らよ」

「バンシト? 強いのか?」

「強い。騎馬民族の癖に我らより山を自由に動く。すごく強い奴らよ。けど何故か略奪をしない。変な奴らよ」

「略奪をしない? 戦いはするのにか?」

「戦ったらすぐ帰るよ。時々怪我した我らを助けて治療することもある。おかしなやつらよ」

 

 いまいち、バンハフ族の男の言葉が要領を得ない。

 山間の戦いに慣れた騎馬民族、という程度の情報しか結局得ることが出来なかった。

 もっともそれも仕方ない話で、山民族は自ら山から出て平地に乗り込もうとはしない。

 故に、攻め込んできた敵からしか情報しか得られず、相手の国や部族について調べることがほとんど出来ないのだ。 

 

 結局オルドは、自ら声を張って、軍勢の者たちと対話をしてみることにした。

 

 高台の上によく見えるように姿を表すと同時に、山の民がオルドの元で使う、中華の文字の書かれていない独特な色合いの旗を突き立てる。

 

「お前らは何者だ!! ()()山の民に何の対話を求める!!」

 

 余計な駆け引きなどしない直球のオルドの問いかけ。

 ここで余計な問答などやる必要もなく、相手が対話を求めるというのならそれから聞いてしまえばいいというのがオルドの考えだ。

 

 オルドの大音声の声に、軍勢の中から一騎の騎馬が進み出た。

 身にまとう鎧が他とは違うことから、何らかの地位にあるものということが読み取れる。

 

「我らは大草騎国、中華の民が匈奴と呼ばう者である!! 山の民と交流を持つ、中華は燕国の将軍がいると聞いてやってきた!! その燕国の将軍に取次を頼みたい!!」

「ほお……?」

 

 男の返答をオルドは頭の中で思考する。

 

 山の民ではなく、そこと繋がる燕の将軍に用がある。

 つまりはオルドのことなわけだが、かの匈奴が一体何のようだと言うのか。

 

「中華の将軍が貴様らのような蛮族に取り合うと思うてか!!」

 

 故にその情報収集のために、オルドはあえて、匈奴を煽るような言葉を放つ。

 

「山の民を取り込むような将がいる国だ! 利があれば我らとも手を組むだろう!!」

「利と言ったか!! 匈奴が、我らの頭を飛び越えて中華に利をもたらすと? 信じられんな!!」

「貴殿ら山の民に信じてもらう必要はない!! 取り次ぐことが不可能であれば、我ら自ら燕に赴くまでの話だ!!」

「そいつは、少し困るな……」

 

 いくら山の王であるオルドとはいえ、その富は燕によって与えられるものでもある。

 ちょっと匈奴との戦に興味があるとは言え、積極的に敵対するというのは流石にやり過ぎであろう。

 特にそのまま匈奴と全面戦争にでもなってしまえば、燕や山の民もただでは済むまい。

 

 故に、オルドは妥協しておくことにした。

 

「ならば燕国の将軍に伝えるだけ伝えてやろうではないか!! 貴様らの用とやらを聞かせてみろ!!」

「ならば書簡を持参した故、これを燕の将軍に届けてもらいたい!!」

「ほう、書簡か!! 我らには知られたくないと見える!! だが良かろう!! それで、我ら山の民には何の利益がある!!」

 

 なおオルドは、自分が燕の将軍であるということはお首にも出さず、山の民のフリをして振る舞っている。

 フリをしているというか、北の山岳で活動しているオルドは燕の将軍であるときの鎧を装備していないので、そもそも山の民の方が近かったりする。

 

 ついでに自分たちの利益を持っていこうというのは、山の民の蛮族性というよりは、書簡を預かるならば何か対価があったほうが預ける側は安心感を得て、預かる側は責任を背負うからだ。

 中華のように明確に法と身分差の存在しない山の民や騎馬民族では、これが普通であり、それこそが信頼を担保する。

 対価を払わなければ約束を破られても仕方ないと見られ、対価を受け取りながら約束を果たさなければ以後なんの信頼も得られず集団から弾かれる。

 

「燕の将軍への贈り物とは別に、羊三十匹と羊の毛皮五十枚を贈る!! 受け取ってもらいたい!!」

「豪勢だのお……。あい分かった!! それほどまでに贈り物を貰っては、届けぬわけにはいかぬ!! これより下に降りる故、攻撃してくれるなよ!!」

「攻撃するつもりならば最初から攻め込んでいるとも!!」

「言うではないか!!」

 

 ひとまず、匈奴を名乗る軍勢が攻撃する意志がないということはわかった。

 そのままオルドは、オメラ族を率いて下に降りることにする。

 

「オルド様、攻撃されません?」

「せんだろうさ。あれほどの軍だ、攻撃するつもりならばもっと大きく動く」

「ふーん、ならいっか」

 

 ユキイはわずかに懸念したようだが、オルドが大丈夫だというと特に怖気づくこと無くオルドの後についてきた。

 

 そのままオルドとユキイ、オメラ族、バンハフ族が、陣を敷く軍勢の前へと降りていく。

 そのオルド達の前に、ちょうど軍勢の後方から、羊と、荷車に積まれた荷物が運ばれてきた。

 大きな布には包まれているが、これが毛皮であろう。

 

「オメラ族のオウルだ」

「大草騎国の将軍、モクゼンだ。呼びかけに答えていただき感謝する」

「あれほど騒がれれば我らの眠りの妨げにもなろう」

「申し訳ない。我ら騎馬民族から山の民に呼びかける方法が他に思いつかなかったのだ。この件については、下に任せるわけにもいかなかった」

「ふん、それで、書簡というのは?」

 

 オルドに言われて、モクゼンの後方の兵士が木箱を運んでくる。

 

「こちらが書簡だ。そしてこちらは貴殿らと交流があるという燕の将軍への贈り物だ。本来ならば羊や馬、牛を送ったほうが良いかとも考えたが、燕国の将軍が自国に持ち帰るのは手間だと思い、運びやすい贈り物とさせてもらった。しかりと届けてもらいたい」

「ほう、たしかに、我らが羊を受け取ったとしても、それを中華まで運ぶのは手間か」

「燕国の将軍には、我らとの会談を設けていただければ改めて贈り物をさせていただくとお伝えしてくれ」

「良かろう、それも伝えてやる」

 

 軍勢の将軍であるモクゼンとオルドが会話をしている間に、オメラ族が羊を受け取っていく。 

 数が多いのでそれなりに手間がかかりそうだが、綱で数匹ずつ繋がれているのでなんとか持ち帰ることが出来そうだった。

 

「では、我らはこれで失礼する。連絡のため定期的にこちらに少数の隊を派遣する故、攻撃しないように気をつけてほしい」

「ほう……まあ良かろう。あれほどの贈り物を貰っては、それ以上は求められんわ」

「感謝する。旗は、あちらの文字ではなく模様のある旗を掲げる。他の国には知られたくないのでな。貴殿らも、他の山の民や騎馬民族には秘して欲しい」

 

 そういうモクゼンの指す先には、中華の文字で『大草騎国』と書いた旗ではなく、羊のが描かれた派手な旗がある。

 漢字では余計な注目を集める可能性があると考えてのことだろう。

 

「ふん、それは状況によるわ。喉元に剣を突きつけられれば我らは口にするぞ。そこまでの義理はないからな」

「それで構わない」

 

 ではな、と告げると、モクゼン手を高くあげて、それを二週ほど上で回す。

 それが撤退の合図だったのか、匈奴の軍勢は軍をまとめて速やかに撤退していった。

 

 後に残されたのは、それを見送ったオルド達だけである。

 

「バンハフ族の勇士よ」

「なんだ?」

 

 その去りゆく背中を見つつオルドは、近くにいたバンハフ族の男に言う。

 

「せっかくの贈り物だ。今宵は宴にするぞ」

「わかった」

 

 おそらくあの贈り物には、これまで戦をした相手に対する和解金という意味合いもあるのだろう。

 故にオルドは、貰った羊の一部をすぐに宴の食事にすることを決めた。

 オルドは今しがた会話した匈奴の将軍と名乗る男に、それほどの知性を感じたのだ。

 

「さて、その匈奴が俺に何の用であろうな」

 

 そして一方で、自分とユキイが受け取ったそれぞれ書簡と贈り物が収められているだろう木箱。

 箱自体は無骨なものだが、頑丈でかなり大きな作りをしている。

 

「オルド様、これ重いんですけど」

「中身が詰まっておるということだ。よし、帰るぞユキイ」

 

 配下達に贈り物の運搬は任せて、オルドはユキイとともに一足先に今夜泊まる予定のバンハフ族の住処まで帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 拠点に帰り着いたオルドは、自分のために用意されている屋敷に入る。

 流石に平地である中華ほど広い屋敷でもなく豪華な造りでもないが、それでも他の家と比べればそれなりに質の高い住居が、オルドのために山の民が用意した住まいだ。

 これはオルドが山の民に慕われている故に、山の民達が用意したものである。

 

 そこで一人になったオルドは、部屋に戻ると早速書簡を確認しようと箱を開けた。

 

「ほう……そう来るか」

 

 開けた質素な木の箱の内側には綿が敷かれ美しい絹で出来た布が張られており、その中央に、書簡が入っているであろう容器が置かれている。

 内側に収納されていた容器は、外の質素な木の造りとは違って、中華の名品を知るオルドから見ても美しい塗り物だ。

 

 外見が目立つことで山の民に奪われないようにするためか、あるいは外の箱と中の容器の格差で受け取ったこちら側に大きな衝撃を与えようというのか。

 しかも気安く山の民を名乗った自分たちに預けた以上は、おそらく失われても問題がない程度のものでしか無いのだろう。

 今回のものが届かなくても、また別の方法で届ければ良い。

 

 その程度には、匈奴には国力があるという誇示でもあるのかもしれない。

  

「ふん、で、書簡は……」

 

 書簡の入った容器を開けると、その中にもまた丁寧に布が張られており中央に書簡が収められる空間が設けられていた。

 そこから書簡を取り出し、オルドは匈奴からの要件に目を通す。

 

 内容としては、かなり遠回しに書かれているものの、オルドの読み解く限りではかなり尖った、というよりは思い切った内容が書かれていた。

 他で口にするのは少々はばかられる内容であり、更に他の者が目を通してもすぐには気づくことが出来ないように、非常に当たり障りの無い内容を書いているように見せかけている。

 

 が、その内容自体は燕にとっては非常に大きな内容を持つ内容だ。

 

「……ふん、一度会ってみるしかないか」

 

 その内容に、流石に無視することは出来ないだろうとオルドは判断する。

 それにこの内容は、オルドに連絡をしてきたものの、その実体はオルドではなく燕国の国王や上層部に向けた伝言だ。

 

 その内容を全を最初から書簡として山の民に預けることは出来ないので、山の民にオルドを呼び出してもらってオルドと会談を行い、そこで話した内容をオルドに持ち帰ってもらって国王に届けてほしい、というのが匈奴の意向だった。

 

 ならば最低限、その話だけでもオルドは聞いておく必要がある。

 

「ならば軍を用意せんとなあ」

 

 とはいえ、今回のように一方的に相手が訪問し、オルドが少数で出迎えるというのは、燕の大将軍としてもよろしくない。

 ならば今度は、こちらが歓迎してやらねばならぬと、オルドは笑みを浮かべた。

最新話の後もう一戦南東胡とする戦の描写、欲しい?

  • 欲しい(趙・匈奴の戦いレベルでしっかり)
  • 欲しい(今回の戦ぐらい短めで)
  • それより早くあの将軍と会え
  • 合従軍まだ?
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