実は気づいてなかったけど、転生先がキングダムだった話、する?   作:匈奴人

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第17話  御前会議

「単于様、モクゼン様より、『燕からの返事が来た』と報告がありました」

「へえ、思ってたより大分早かったな」

 

 玉座の間にて、配下の文官達と議論をしていた俺のもとに、一時離席していたランシがその情報を運んできた。

 基本的にここで行われる議論は、国内の土地開拓であったり城や設備の建設であったり、あるいは攻め寄せる異民族に対する対策を練ったりするための場となっている。

 

 そこにランシが持ってきた情報によって、俺は一度議論を中断することを宣言して、モクゼンから届いた書簡に目を通す。

 

 なおこの書簡だが、中華では木簡を使うのが主となっているが、匈奴では俺の知恵と研究者達に資金を投げたこともあって普通に紙の書簡が用いられている。

 羊皮紙ではなく本物の紙だ。

 それも結構質が良く書き心地もしっかりしているものだ。

 加えてこの時代の筆記具は現代のような鉛筆やボールペンのように先端がしっかりとした固形ではなく、墨と筆であり書く部分が柔らかいので、多少ぼこぼこのこの時代の紙でも十分に使える、というのが大きい。

 

 しかもこの中華北方からモンゴルにかけての地域は麻、現代で言う所の多分ヘンプに近いやつがびっくりするぐらい育つ、というか土地にあっているようで、あまり木が無いので難しいかと考えていた紙の原料も十分に確保できる。

 更にこいつを出発点にして草原だらけの大地に局地的に植物が良く生える地域を作り、食用の穀物なんかの栽培だったり植林による森林部の拡大なんかも成功しつつあるのだから、かなりのお役立ち植物だ。

 

 一方でこいつには懸念点もあって、一つが元が麻、つまり大麻に近いので、羊とか牛とかに飼料として与えると、動物の体調に影響を及ぼしたり、更にそれが動物の乳や肉を食う俺たち匈奴の人間にどんな悪影響を及ぼすかわからない、という点だ。

 やっぱり生物濃縮みたいなことが起こるのは考えられるので、今はこれをそのまま動物に与えるのではなく、あちこちで育てまくってその後元気になった土壌から生えた草を家畜には食わせるように指示して、麻の飼料化については研究をちょこちょこ進めて貰っている。

 流石にそこまで詳しくないが、確か現代でもそんな研究がまさに現在進行系で行われていたような気がする。

 なので人間家畜問わず食用への利用は、油を絞った後の種ガラをちょこっと使っているだけだ。

 

 そしてもう一つの懸念は、これ正直に言えば考えても仕方ないのかもしれないが、俺たちが頑張りすぎて中華北方とかモンゴル、場合によってはゴビ砂漠とかそのあたりを緑地化したり森林化したりしたときに、その後の地球環境にどういう影響を及ぼすかがわからない、ということである。

 砂漠とか荒れ地に住んでる人間からすれば砂漠が緑地化するのはありがたいのだが、一方で砂漠は凄まじく日光の熱を吸うことで周囲に熱風をお届けし、周囲の気温をあげてくれたりもする。

 その御蔭で気温があがり、農作物がよく育つ、なんて場所もあるほどだ。

 

 そしてこの古代から近代までにおいては、文明の興隆は農耕の成否が大きく関わる。

 少なくともハーバーボッシュ法が仕事し始めるまでは。

 つまり匈奴によって中華北方の地が大きく変化しすぎると、それがめぐり巡ってとんでもない変化を未来にもたらす可能性もある、ということだ。

 それが史実とは異なる人数分布、文明の出現あたりでおさまっていればいいが、最悪事故った場合は将来的に人類種の衰退とかいう大事故にも繋がりかねない。

 更になんかが変わったせいで、機械化に関する技術の進歩が遅れたりする可能性もある。

 人類の現代での繁栄は、その誕生が奇跡だっただけでなく現代の状態に至っているのもまた奇跡の産物なのだ。

 

 とはいえこれは考えても仕方ないことなので、もう考えないようにしている。

 一文明一民族のことを考えて発展を目指すのが今の俺のやることで、人類全体とか地球全体はぶっちゃけ知らん。

 スパコンとかあれば出来るかもしれんが、人力でその予測図を立てるのはノイマンでも連れてきてくれ。

 いやまあ未来のノイマンが匈奴にもいないかと結構教育と研究には、人手を大量に兵士と開拓に取られながらもちょっと無理してでも力入れてはいるんだけども。

 

 閑話休題。

 

 

 

 モクゼンから届いた書簡の内容は、山の民と交流のある燕の将軍から送った書簡の返事が届いた、という内容だった。

 ちなみにこちらの送った書簡は、「おたくの国とうちの国に、結構有益な話があるんだ。てかちょっとおとなりさんとか邪魔だよね……。でも手紙じゃそんな大事な話なんて出来ないし、ちょっと会って話さない?」という内容だ。

 もちろんとんでもなく意訳している。

 実際はもっとガチガチの文章を中華の言語で書いている。

 

 が、とにかくそういうわけで、その燕の将軍、俺の断片だらけの原作知識ではオルドだと思うのだが、この将軍へと山の民を介して接触したのだ。

 

 そしてそれに対する返事が、今回モクゼンが送ってきた内容である。

 なお現在第七近衛兵団を率いているモクゼンだが、こういう単于の意向で戦争以外で動くときこそ近衛兵団の役目、ということで、今は燕北方の山岳地帯近くの中継点に張っており、複数の部隊を山岳地に派遣して燕の将軍と連絡を取れるようにしている状態だ。

 この書簡自体は、早馬が運んできたものである。

 駅伝制は偉大だから、おそらく一日ぐらいで届いていると思われる。

 いちいち軍をシャピンまで戻すのとは雲泥の差だ。

 

 さて、その手紙の内容だが、期日を指定して会談を設ける故、来れるならばまた返事を来れ、という内容だった。

 

 その書簡を、会議を行っていた者の中でも上位職の者たちにも回して見せる。

 なおこの匈奴の国、「大草騎国」と名付けた我らの国は広大故、ここで議論されるのは特に重大な内容であったり大枠の方針のみで、実際にそれを運営するための会議は、この宮殿の別室で大勢の官吏で行われたり少数の部署で話し合われたり、あるいは地方の城に務める官吏が話し合って行ったりしている。

 このあたりは人口とか連絡手段とかで現代のものをそのまま参考にするのは不可能だったので、結構な時間をかけてやりやすい方法を模索したし、今も模索しているところだ。

 

「さて、どう見る?」

 

 俺の問いかけに、まずは軍事を司る文官の長、軍事長官であるアシビが答える。

 彼の役目は、キングダム原作で言えば秦の軍総司令官昌平君のようなものだ。

 

「会談自体が罠である可能性は低いかと。我らと敵対するならそもそも無視すればいい話です。わざわざ会談を罠にして、一集団の幹部を討ち取ったところで大きな価値が無い、ということは理解しているでしょう。あるならば脅し程度、一般兵を狙うことはあっても将軍や大使を狙うことはないかと」

「危害を加えられる可能性はある、と?」

「その可能性は高いでしょう。目的はこちらを害することではなく威圧することでしょうな。烏孫や月氏、東胡などの連中のせいで我ら騎馬民族は皆蛮族と中華には睨まれているようですから、余計なことをすれば只では済まさぬ、と脅しをかけてくる可能性は十分にあります。あるいは、会談に赴いたものを捕縛してこちらへの交渉材料にする可能性も」

「それは無いと考えまする」

 

 そしてその軍事長官と俺のやり取りの反対の声をあげるのは、主に外交関係、戦争中にも関わらずそれなりにやりとりのある烏孫や月氏に連中であったり、今であれば取り込もうかと画策している東胡のやり取りを担い、更に中華の外交関係の情報を元にそうした方面の研究も行っている外交長官のドルマだ。

 大草騎国では中華のように細かく分離したり、あちこちから実力者が出るのではなく、全てが大草騎国のもとにまとまっているので、中華で言う所の遊説家のような連中は存在せず、外交もまたそれ専門の集団を作って行っている。

 

「燕は先日、隣接する趙に攻め込まれて二つの大きな城を奪われております。申し出を無視するならまだしも、ここで下手に我らを刺激して敵に回すようなことはしないでしょう」

「何も燕が我らを拒むとは言っておらん。だが中華の外を下に見る奴らならば、我らを脅して有利に運ぼうとする可能性も考えられるだろう」

「それで我らの心象を悪くする必要性が向こうには無いということです。はっきり行って愚策ですよ」

「必要性の問題ではなく中華の連中の気質の問題だ。それも軍人、将軍だ。手荒な真似も十分に考えられる」

「山の民と交流を持つような人物ですよ? 中華の外というだけで我らを下に見ることはないでしょう」

「では絶対に安全だと言えるのか? なんならお前が行くか?」

「私は構いませんとも。もとよりこの命、単于様に捧げておりますから」

 

 まあ、古代も現代も変わらず、大きな権力を持った組織の長同士は対立する傾向にある。

 別にこれは二人が人物的に仲が悪いといったわけではなく、それぞれに担う役目と、その役割や人生において培ってきた経験が違う以上、視点や思考、何かに対する哲学といった部分に大きな違いがあるが故の対立だ。

 

 軍事を司る軍事省の文官達とその長官であるアシビは、常に敵に害されうるか、どう害されるか、敵の戦力はどれぐらいか、攻撃性は、といったことを考えているし、外交を担っているドルマは、他国の情勢は、他国同士の環境は、我が国との立ち位置の違いは、そもそも自分たちを害する必要性は、といったことを考えている。

 

 そして二人の長が白熱していると、やがてそれはその下につく文官たちも参加した言い合いになっていく。

 ここで理性を感じるのは、その内容自体が、過去の多民族とのいざこざで生じた事件であったりと、完全に今回の話題とは無関係のところに吹っ飛んでいかないあたりだ。

 確かキングダムの原作だと嬴政の前で文官達が言い合いをしていたが、あれ普通に聞き取りづらいしあんま意味ない気がするが、この時代の人間を見るとまああんなものか、という感じがする。

 むしろ理性的かつ制度が文化の一部となっているような現代人と比べることが間違っているぐらいだ。

 

 そうやって議論が白熱したときに止めに入るのが、文官の長をしているヒィアンだ。

 

「ほっほ、皆様がた落ち着かれよ。話題がそれておりますぞ」

 

 拍手とともにそう告げるヒィアンに、流石に言い合いも沈静化する。

 これはヒィアンの役職もあるが、それ以上に普段からヒィアンがあちこちを気にかけ、公私ともにいい関係を文官達と築いているからでもある。

 俺も結構頑張っているつもりではあるが、これについてはもうヒィアンの凄さを実感するしかない。

 

「皆様の役職故、それぞれ懸念する点が違うことは理解しまする。故にそれぞれを進言した後は、単于様のご判断に任されるのがよろしいかと」

 

 そう言ってヒィアンは俺の方に視線を送ってくる。

 沈静化はさせたので後は任せる、ということだ。

 

「うむ。皆の考えはよくわかった。以前から言っているが、それぞれに担う役職が異なる以上、皆の意見が衝突するのは当然のことだ。むしろその様を頼もしく思う故、これからもその調子で頼む。が、議論の内容以外で対立するようなことが無いようにな」

 

 結構長年やって部族の長から集団の長、そして国の頂点になんてなってみたが、いつでもやっぱり人間関係は大事だ。

 前世は全部面倒くさくて放り捨ててたが、今世はそういうわけにもいかない。

 いかに素晴らしい技術とか法律とか以前に、集団を運営するのはコミュニケーションなのである。

 

「双方の考えはどちらももっともなことだ。確かに今の燕は趙と違って我らの被害を直接的には受けておらず、また趙との関係でこちらを攻撃するほどの余裕はない。が一方で、彼らが常に理性的であるわけでもなく、他の騎馬民族に対する印象だけで我らを多少脅しても構わぬ、と攻撃性が表に出るかもしれぬ。何より、我らは彼らが中華で行う外交の場とは異なる理で接触することになる。故に、中華で行われる信頼を大事にする外交とは異なる可能性は十分にある」 

 

 結局のところこればかりはやってみないとわからない。

 中華同士のやり取りであれば、例えば一方が裏切れば信頼を大きく失い、その後は同じ理で交流することが不可能な蛮族の集団と見なされ、排除されるような可能性もあるだろうが、しかし中華からすれば我らは夷狄である。 

 どのような扱いをしても、中華の他の国から非難されることはない。

 

 つまるところ、中華の常識ですら測れないのだ。

 

「大使は派遣する。加えてモクゼンの軍を動員して向こうに圧力をかけることとする。アシビ、ドルマ」

「は」「ははっ」

「急ぎでどうすれば燕の将軍に最も圧力となるか、策を練ってくれ。山界に兵を展開させるでも、大軍を一箇所にまとめるでも、あるいは燕に近づいてみせるでも良い。判断は任せる」

「承知」「承知しました」

「それと外交省には大使、及び少数の外交団の選出も頼む。外交団の人員にはそれなりに若く有能な者を複数含めるようにしてくれ。カッザも協力して、場合によっては内務畑から出しても構わない」

「は、しかし、若い者ですか」

 

 国内の統治や内政を一手に担う内務省の長、カッザがうなずきつつも疑問を返してくる。

 

「燕とは長い付き合いになろう。そのときに以前の大使が年で動けん、他に携わったものもいないでは困るからな。実際に表に立つのは格のある大使だ、その下の人員については問題ないだろう。育てたい者がいるならその者でも良い。ただし、やらかしそうなやつはやめてくれよ」

「ははっ、単于様のお考えこの胸にしかと刻みました。末永く、燕国との関係を築くに足る人材を選出いたしましょう」

「頼む」

 

 とはいえ今回の会談は燕の国王などではなく、将軍との内密の会談だ。

 あっても大使団は四人あるいは五人ぐらいだろうか。 

 大使本人に副大使、書記官、その他諸々をこなす一般団員。

 うん、最低限でもそのぐらいにはなるのか。

 

 一応それなりに現代チックな組織づくりを目指してはいるので、一人に頼り切りになるようなことは無いようにしようとは心がけている。

 例えばキングダムでは蔡沢のような、本人は凄まじいつながりを持つが死ねば失われる、というのは、確かに格好いいし役に立つのだろうが、組織としてみれば困りものだ。

 それだけ凄い人物に、更に代わりが控えている、ぐらいが一番望ましい。

 

 特に蔡沢がどこかの王と親しげに話しているのは思い出せるので、それほどの人物が複数育ってくれれば言うことはない。

 中華の遊説家というのはこのあたり強いんだよな。

 

「会談の内容については後ほど、改めてつめる。ドルマ」

「はっ、部署の対中華外交の者たちを集めます」

「頼む」

 

 取り敢えずこれで、燕の将軍との会談についての話は一段落だろうか。

 一応外交省の中に対燕、対中華外交のための部署は作ってもらっている。

 今回の会談の内容についても既にあらかた詰めてもらっているが、最後にもう一度俺も目を通しておきたい。

 それぐらいはしないと、国家として専制政治をやってる意味が薄いからな。

 

「さて、では元の議論を再開してもらいたい。書記官」

「中断する直前までは、ニルンメ中継点以西の土地活用方針の策定についての議論が行われておりました。外交省の方から──」

 

 書記官が議論がどこまで進んでいたかを説明し、それを思い出して文官達がまた議論へと戻っていく。

 かなり組織化が進んだおかげか、俺が全てに口を挟むようなことはもうない。

 前提とする国家全体の方針を示したり、上がってきた計画書を読んで気になる部分だけ口を挟んだり、あるいは俺の要望を出したり。

 王がその程度の役割でいられるのも、長い時間かけて組織を作り上げてきたからだ。

 

 これに関しては、下手に諸侯制度などなく、俺の下に国家を一元化出来たことが非常に良かったと感じている。

  

 そうして今日もまた文官達の議論を見学し。

 といっても最後まで見ている暇も無いので、途中で退出して地方から提出された報告書を文官達がまとめてくれたものに目を通したり、武器を振るい体を動かして鍛錬を行ったり。

 

 俺の一日は、大体そんな感じで過ぎている。

 正直に言えば、結構精力的に働いていて休む暇はそれほどないが、俺にとってはこの単于の業務自体がやりたいことであり楽しみだったりする。

 この時代はサブカルチャーのような娯楽も少ないので、長い時間没頭するほどのものもまだ存在しないのだ。

 

 それでも小説や絵画などの文化を流行らせ、各地の都市兼城に図書館や美術館のようなものを建てたり、あるいは国の金で雇った音楽家で楽団を作り、各地で公演させたりなど、文化の促進を狙った活動はやっている。

 匈奴に伝わる神話をまとめたものも出来上がりつつあって、休憩するときにはそれらを読んだりもしている。

 

 とにかく、今の俺は、充実した毎日を過ごしているのだ。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 さて、中華の話といえばもう一つ。

 

 おそらくまたキングダムの原作の方でのストーリーが一段落したのだろう、ずらっと今現在の中華に関する一連の原作の内容を思い出した。

 といっても内容自体は昨年辺りからのことになるか。

 どうも作内の時系列をすぎればすぐに思い出すと言うより、一連の出来事が終わったらまとめて思い出す感じらしい。

 

 史実の方の記憶に関しては、このあたりは史記などに書かれているのだろうが、俺はそれを細かく読み込んだわけではないので、史実の方の知識はかなり少ない。

 どっちかというとローマとか中世ヨーロッパが好みだったのだ。

 加えてそもそもが情報の少ない時代で、キングダムの原作だって数行しかないものを漫画数冊に膨らませた、とか言われるぐらいだ。

 

 ゆえに、この時代に対する俺の知識の基本は、時代の流れなど広範な部分は史実で、どの戦でどこが勝ったかなど細かい部分はキングダム由来のものになる。

 

 さて、そんな俺の記憶に新しく復活したのは、王騎将軍が出陣した馬陽の戦いに関するストーリー。

 ドンピシャというか偶然というかなんというか、以前黒尾の一人に王騎将軍の部下がいる、なんて話をしていたときに、まさにちょうどその王騎将軍が馬陽での戦いに出陣していたらしい。

 一方その部下の方は、戦の直前に離れた地の黒尾の集会所を利用していたそうだ。

 どうも別で将軍になっていたために参戦しそこねたようだ。

 

 そんな王騎将軍が、戦死する。

 それも俺たちも因縁が少しある李牧の手によってというのだから、なかなかどうして世界も狭い。

 まああれは因縁というかワグダイの始末については感謝したいぐらいだが。

 

 さておき、秦の馬陽で行われた戦いの振り返りだ。

 もちろんここに王騎の部下のように、俺が存在することで生じた変化で新しい部下がいたりするのでそのまま原作の知識が参考になるわけではないが、わかる限り振り返っておくのが大事だ。

 

 まず馬陽の戦いは、趙が秦に侵攻して起こった。

 そして馬央という城を落とした後馬陽という城が頑張ってるところに、咸陽から王騎が総大将となる軍が派遣された、というわけだ。

 

 秦の軍勢は、ちょうど同時期に韓に大侵攻中で手薄だったこともあり寄せ集めが多数。

 これは白蹄からの報告とも合っている。

 

 一方趙は、練られた軍での侵攻な上に、李牧が北部から南下させた兵士が数万いる。

 ちなみにこれがワグダイと林莉の軍を叩いた軍勢の一部だったりするがさておき。

 

 戦力としては、兵士まで見れば趙の方が遥かに強かった。

 

 だがそれを、秦側の二人の将軍の実力でひっくり返したのが、馬陽の戦いの前半だ。

 自身が前線で相当に武勇を誇るくせに、後方からの戦場全体での策のぶつけ合いも相当強いのが王騎だ。

 一方蒙武は、一戦場におけるぶつかり合いが相当に強い、というのもわかった。

 

 蒙武の方は上将軍の下で突撃部隊とか主攻として使ったらすごく生きそうだし、王騎ならば大草騎国に来ても上将軍は間違いないだろう。

 漫画の記憶と調べた中華の歴史から推測するところが多いが、あれはそれほどの傑物である。

 ここまでの原作で出てきたキャラクターの中でも、二回りは他と違うレベルにある。

 

 正直漫画原作で強かったキャラクター、実際にいるなら集めたいな、と思う程度のミーハー精神はあったので、全員集めてみようかな、と思ったりはした。

 実際に来るとはとても思えんし、来たらそれはそれでこちらが強すぎてつまらんくなりそうだけども。

 まあ結局、調略や人材登用は原作に頼るのではなく、しっかり現実で調査をやって必要な人物がうちに来てくれそうな場合のみ声をかけていくのがいい、ということだ。

 多分原作に出ているであろうキャラの1人にも声をかけ続けていることだし。

 

 さておき、一方の趙の将軍の方はどうもそこまでだったように思う。

 いや、キングダムにおける中華の一般将軍は割とこんなもんだが、どうも匈奴のイメージで考えてしまったのだ。

 というのも、うちは国が広い上に敵が多いので前線が馬鹿広い。

 ついでに中華みたいに城で要点を抑えるだけでなく、とんでもなく広い領土の境界線を守らなければならない。

 結果戦いの規模も回数も中華より遥かに大きく、常に戦いが繰り広げられ軍も将も練り上げられているので、中華における下級、中級程度の将軍はいない。

 うちの将軍は、大体が上級相当になる者たちばかりだと思う。

 

 例えばモクゼンやハイトが、今回趙で出てきた趙荘、馮忌、公孫龍、李白、万極、渉孟と同数同士の軍で戦うことを考えた時、言ってはあれだが負ける想像が全くつかない。

 上将軍に昇格した林莉やその副官の岩郭ならなおのことだ。

 このあたりは、中華の将軍よりも我らの将軍の方が純粋に能力が高いということだろう。

 しかもその上、十万以上の大軍をまとめて動かす器量が誰にもない。

 

 そんな烏合の衆だったので、王騎と、どうも今後も原作キングダムで活躍しそうな蒙武にかなりやり込められたみたいだ。

 後は活躍も大して描かれてないが、王騎の部下の軍長達もそれなりにはやりそうなので、その実力は今後とも気になるところである。

 むしろ下手に描写されて底を晒した趙の将軍より、あんまり描写されてない軍長たちが本気でやったときの実力の方が気になるぐらいだ。

 流石に一軍長が今回出てきた趙の将軍より強いみたいなことは無いと思うけども。

 

 特に第一軍長とか実際の戦闘描写されとらんしな。

 ファルファルの次に強いなら結構期待できそうだ。

 

 そして野戦が行われた前半が終わって、戦場が山間に移った後半戦。

 

 取り敢えず龐煖は、相手するのめんどくさいな、という感じはする。

 シンプルに強いのもそうだが、あそこまで単独行動大好きマンだとやってることテロである。

 あれで都市とかに突っ込まれたら民間人の被害が半端ない。

 

 とはいえ、この世界ファンタジーだな、と思う程度には、龐煖と近い類の連中を俺は知っている。

 例えば、俺たちの領土の北東の方角の山野に済む狩猟民族がいるのだが、奴らのうち特に優れた狩人たちは、(だいしぜん)と語らい、獣を狩る。

 数メートルある熊とか狼を素手や単独で仕留めたりするのがこいつらだ。

 

 そう考えると、龐煖も普通に軍で対処すれば怖くはないあたりちゃんと人間だが、これを李牧という将がうまく使い始めると途端にめんどくさい。

 単独で戦線を支えてしまえるわけだ。

 狭い通路にでも誘い込んでしまえば敵の流れをせき止められる。

 最高戦力のユニットを、軍を動かす労力なく適切な場所に投入できるとなると、一人だけやってるゲームが変わってくる。

 

 故に取り敢えず龐煖については、調査を続けることにした。

 願いが叶うならば、どうもボスキャラというか主人公の乗り越える障害くさいところがあったので、秦との戦争で死んでおいてほしい。

 

 そして最後の王騎の戦いと、李牧の援軍。

 王騎の戦いが凄かった、というのは言うまでもないが、残念なことにもう死んでしまった。

 しかしあれほど容易く大軍勢の士気を上げるような将軍が中華から一人退場する、というのは、中華の統一は目指さないとはいえ侵攻する予定の俺たちからすればありがたい。

 やはり優れた将軍というのはそれだけで脅威なのだ。

 

 そして情報封鎖から始まった李牧の策。

 これ思うのだが、なんというか、戦術的に凄いというよりは、もっと広い範囲で、戦略的な策が凄い、というタイプじゃないだろうか。

 これを原作だと李牧がとんでもない人物、化け物、王騎より凄い、みたいなことが書いてあったが、その評価はあんまり参考にならないと思う。

 少なくとも戦場で発揮される王騎の凄まじさとは全くの別物だ。

 

 サッカー選手がサッカーがうまいって話をしているのに、「でもあいつの方が足速いよ!!」みたいな。

 李牧の凄さは観点が将軍の強さのそれとは別なのだ。

 

 戦場に出ていた身でも思うが、戦場での化け物というならばそれはやはり、用兵術や武勇で戦場を動かし、兵の士気を高めて勝利を導く連中だ。

 もちろん、俺もその一人であるわけだが。

 

 李牧の凄さはそれとは全く別の方向にある。

 戦略的目標を定め、気づかれずに軍を用意して情報操作をする。

 そしてそれを実行するための組織。

 

 戦場で将軍やってるより、軍総司令官とかやってるほうが活躍しそうだ。

 軍略家、とでも言えば良いのだろうか。

 一合戦の戦術を描く参謀ではなく、他国との戦争全体の絵図面を描く総参謀のような感じが近いだろうか。

 ちなみに俺はこっちも出来る。

 

 そしてそんな李牧が、王騎を殺した。

 まあこれ自体は、王騎が死んだこと以外はどうでも良いのだ。

 王騎将軍割と好きなキャラだったので戦ってみたかったけど。

 

 それよりも、これによって中華、そして秦や趙に及ぼす影響の方が気になる。

 更に言うならば、李牧が趙の三大天とやらになって、雁門の指揮官ではなくなったことなんて、とても大きい。

 このまま嬴政が中華の統一を目指して趙にちょっかいをかけてくれれば、うちが非常に動きやすくなる。

 総力が南に向いて趙北部ががら空きのときなんて、まさに狙い時だろう。

 

 それ以外にも、王騎の死によって中華にいくらか風が吹く。

 そういった状況とは全く関係なく燕と接触したが、それはそれとして、中華から集まる情報は値千金だ。

 

 後はとくに気になる部分は無い、だろうか。

 

 ああ、蚩尤である羌瘣とかもいたが、極まった特殊部隊のような連中や暗殺者ならこちらにもいる。

 神降ろしのような技術はないが、潜入対策や暗殺技術、戦闘技術も相当高い。

 しかも現代のように理性的に鍛えただけでなく、若干根性論であったり、人を死の淵に追い込んで能力を覚醒させるようなこともやっている。

 蚩尤や龐煖と正面からぶつかると流石に分が悪いだろうが、暗殺や護衛については十分に活躍してくれるはずだ。

 

 が、しかし蚩尤の技術というのは気になる。

 暗殺者の一族のようなものがあるならば探すように伝えておこう。

 指導者か書物、場合によっては教育を受けている育成中の蚩尤が確保できるならばばんばんざいだ。

 

 それにやはり、この史実ベースのキングダムの世界の、どこかファンタジー的な要素の部分も無視はしきれないように思う。

 武神然り蚩尤しかり北のモンスターなハンターみたいな狩猟民族然り。

 研究していれば何か新しい境地、技術にたどり着くかも知れない。

 

 ということでこれについては新しく研究する機関を立てたいと思う。

 実験台になる者たちは、なるべく無駄に死なせないようにするし待遇は良くするので問題は無し。

 あんまり現代基準で人権的なこと考えていると何もできなくなる。

 

 他には気になるものは特に思いつかない。

 この後秦は、王騎の跡を継いだ騰がどうするのか、活躍するのかもう出てこないのかはわからないが、強かったしそれなりに活躍はするのだろうと思う。

 主人公はまだまだのようなので、もうしばらく成長にはかかりそうだ。

 そしてそんなメンツが集まって、嬴政の元中華の統一を目指す。

 

 嬴政が中華の統一を目指すのって一体なんでなんだろうか。

 いつかぶつかる相手としては気になるものだ。

 アレクサンダー大王とかも大国作ってたし、そういう人物達の内心というのは結構気になる。

 一体この時代にどんな夢を描いているのか。

 現代ほどには研究と歴史の蓄積が進んでいないからこそ、その思いを知りたい。

 

 機会があればお忍びで嬴政とあってみたりしたくもあるが……まあ立場上流石に難しいだろうか。

 そろそろ息子に単于の役目を経験させ始めてはいるので、直に役割からは解放されると思うが。

 

 一方趙は、この前は燕を攻めたみたいだし、李牧がこれからも色々と頑張るのだろう。

 そうやって中華に風を吹き込んで、そちらに手をとられたままでいてほしい。

 趙が燕を削るほど、燕がこちらと手を組みやすくなるし、趙が強くなるほど他国に睨まれるようになる。

 

 特に李牧は、今回の王騎を狙った作戦もかなり好戦的というか積極的に他国の国力を削ることで自国を相対的に高く置く策を取るようだったので、一体どんな戦いをこれから繰り広げてくれるのか、楽しみだ。

 魏でも韓でも燕でも斉でも楚でも秦でもガンガンに戦争をしかけてほしい。

 よく考えると一番国境接してるの趙だな。

 

 できれば南の楚ともやり合って、あのずっとベールを被っている南の大国の実力も明らかにしてもらいたいものである。

 あそこは一番土地広いくせに開拓がしきれていないので、どうせならその土地を中華進出後におすそ分けしてもらおうと思っているので、重要な諜報対象なのだ。

 南の南越との戦いは観察させてもらってはいるが、距離が離れているのでそうそう簡単に見に行くわけにもいかないのだ。

 

 さてもおき、やはり戦国は面白い。

 この時代に、我ら匈奴の足跡をまた刻みつけてやらんと決意を新たにする次第である。




20話まではこんな感じであんまり繋がってない話が複数、って感じです。
21話からなんか考えます。

最新話の後もう一戦南東胡とする戦の描写、欲しい?

  • 欲しい(趙・匈奴の戦いレベルでしっかり)
  • 欲しい(今回の戦ぐらい短めで)
  • それより早くあの将軍と会え
  • 合従軍まだ?
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