実は気づいてなかったけど、転生先がキングダムだった話、する? 作:匈奴人
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こちらのスレが非常に面白いです。
本作が好きな方は是非読んで頂きたいです。
内容としては、アレキサンダー大王やチンギス・ハンなど、歴史上最強の将軍達を、とんでもなく詳しいスレ主が解説したり、他の人のツッコミに豊富な知識で答える内容です。
普通に「そんな凄い将軍達がおるんか!」
となったので皆さんも是非どうぞ。
《燕北部山岳部 燕国大将軍 オルド》
匈奴が作った大草騎国とやらとの複数回での書簡のやり取りを経て、匈奴による国家大草騎国と燕国は、ついに始めての非公式な会談に臨もうとしていた。
なお他国にバレては困るので、実施されるのは燕国北部の山岳地の中でもかなり東に寄った地域となっている。
その地域に、オルドが率いてきた燕国の兵士が一万と山の民五千、大草騎国の軍勢一万が山の中に広く展開することになる。
互いに会談はのんだものの、どちらも攻撃される懸念を消しきれず敵を威圧させるために軍を揃えた結果、軽く合戦が出来そうなほどに兵がこの山間の地に揃ってしまったのだ。
はっきり言って狭い。
山間なせいで一箇所に兵が集まることが出来ないために、軍が山中に散って展開するような状態になってしまうのだ。
そんな山間の地域の中で、一際高い山の頂上にオルドは会談のための天幕を張っていた。
どちらの軍も余計なことが出来ないように、と山間の低い位置に天幕を張るのは避けたのだ。
ついでに山の民を擁するオルドの配下ならば、急峻な山頂にでも速やかに部隊を派遣できる、というのもある。
むしろ山頂が狭く、互いに護衛部隊すら展開することが出来ないという意味では、ともに互いを信頼しているようにも見えるが、もちろんそんなことはない。
互いの駆け引き、どちらが有利な地形を会談場所にするか、どの程度譲歩するか、泰然とした様子を見せるか、度胸を見せるか、といった書簡を通したやり合いの結果、この場所で会談をすることになったのだ。
その天幕に、オルドは約束の刻限よりも先に入っていた。
天幕自体もオルドが提供したものであり、これについては、より山岳地での活動に長けたオルドの軍が会場の設置を担ったためだ。
加えるならば、この山岳は一応オルドの縄張りでもある。
その天幕の外に出たオルドが見下ろしていると、やがて彼方からその全てが騎馬の大草騎国の軍勢がやってくる。
馬の入りづらい山間の地でありながら、一切詰まることのないその行軍はいっそ見事と言っても良い。
その軍勢がオルド軍の数十歩手前で足を止めると、そこから一騎の騎馬が旗を掲げてオルド軍の方へとやってくる。
それに対して、オルド軍からも一騎の山の民の騎馬が飛び出して言葉を交わす。
その後大草騎国側の騎馬がその旗を軍勢に向けて振って初めて、会談に臨む者たちとその護衛の一団が、大草騎国の軍勢から分離して、オルドがいる山の麓までやってきた。
大軍同士、そして会談に臨むものが何かしらの地位にあるものとなると、この程度の慎重さが必要となるのだ。
オルドが上から見下ろしていると、その大草騎国の兵士の一団の先頭に立っていた、あのモクゼンと名乗った将軍が、視線を感じたのかオルドの方を見上げる。
オルドが手招きをしてやると、モクゼンは視線を戻して馬を降り、先頭に立って山を登り始めた。
慌てて案内の兵士が追いかけているのが見える。
ここに至っては、オルドも大人しく天幕の中に入って待つことにする。
待つ側にも、天幕の外で首を長くして待つのではなく、天幕の中でどっしりと構えるような重みが必要なのだ。
「大草騎国外交団の方々がお付きになりました!」
やがてしばらくして、天幕の外に控えている兵士が声をかけてくる。
オルドが返事をすると、天幕の入り口が開けられて、数名の男達が入ってきた。
なお護衛の兵士は流石に燕国の兵士である。
山の民だと普通に喧嘩を売りそうな危うさがあったので、流石にオルドもそこは気にしたのだ。
「お初に……というわけではなさそうだ。改めてお目にかかる、燕国大将軍オルド殿。大草騎国将軍モクゼンだ。よろしく頼む」
まず始めに、拱手とともに中華の言葉で挨拶を向けてきたのは、先日も見た匈奴の将軍だという男、モクゼンだ。
匈奴のくせに、その中華の言葉は随分様になっている。
そして先日は山の民に近い格好をしていたにも関わらず、燕軍の鎧を着たオルドを正確に見抜いてみせた。
「今度の外交団の大使を努めます、マンビョンと申します。以後お見知り置きを。隣の男が副大使のジンガ、その隣が書記官を努めますミシュと申します」
続いて文官らしき男が挨拶をする。
事前に会談に臨むメンバーについては、大草騎国の方から申し入れがあり、将軍であるモクゼンとは別に、外交団が数名派遣されることはオルドも知っていた。
どうもそれが今の匈奴の国家、大草騎国では標準的な集団らしい。
それに、いざ重要な話になったとき、オルドの意向でモクゼンと大使以外は退席させても構わないという話になっているので、オルドも受け入れたのだ。
「うむ、俺が燕国の大将軍オルドだ。こちらはそちらとは違って大王ではなく俺の意志で会談に望んでいる故、そちらのように文官は連れてきておらん」
互いに名乗りを終えて、オルドが椅子を進め、対面の四人がその席につく。
「にしても、見事に中華の言語を使うな。俺はてっきり、そちらの言葉に合わせばならぬと思っていたぞ」
「オルド殿こそ、見事に我らの、山の民の言語を使う。あのときは本当に山の民の親玉が現れたかと思ってしまった」
「実際そうなのだから、お前の推測は何も間違っておらんわ」
モクゼンの言葉に、オルドは笑みを浮かべる。
会談出だしの会話は、オルドと軍に身を置くという点で共通点を持つモクゼンとの会話で始まった。
副大使や書記官は緊張した顔でそれを見ているが、大使であるマンビョンなどはほけほけとした笑顔で眺めている。
「燕国大将軍にして山の王。それがこのオルドだ」
「なるほど。我らはなかなかに大きな御仁に声をかけたということか。この度は、会談の申し出を受けていただき感謝する」
「流石にあそこまで匂わせられた上で蹴っては、俺でも大王からの叱責は免れんからな」
こんなオルドでも、大王や国への忠誠はちゃんとあるのだ。
戦国故により評価してもらえる他国で身を立てる、という者も多くいるが、そう言った者たちとて、いざ身を立てると決めた国、あるいは主には忠誠を尽くす。
この時代の忠誠とはそういうものなのだ。
「それで、用件とは一体何だ? 俺を呼び出したのだ。退屈な話だったら許さんぞ」
大将軍としての凄みを存分に発揮するオルドに、モクゼンは全く気圧されることなく外交団長である大使のマンビョンに視線を向ける。
将軍であるモクゼンだけでなく、外交団の面々、特に若い副大使や書記官までオルドの威圧に耐えている様子に、オルドは面白いとばかりに口角をあげた。
だがやはり一番面白そうなのは、この淡白な表情を見せる匈奴の将軍だ。
大将軍に至るまでに、オルドも幾度も戦を経験してきた。
そしてそれ故に、敵の強さが、どの程度やれるかがなんとなくだがわかる。
この眼の前の将軍は、かなりやれる部類の男だ。
それこそ匈奴の将軍などにしておくのは惜しい、もし可能ならばオルドが山の民に対するこだわりを曲げてでも配下に加えるか、燕国に引き入れておきたいほどには。
オルドがモクゼンにそんな考えを抱く中、マンビョンが口を開く。
「端的に言うならば、我らの願いは燕国と大草騎国の間に同盟を結ぶことです」
「……ほう」
その言葉に、オルドが答えるのに数瞬間があいた。
想定しなかったと言えば嘘になる。
が同時に、騎馬民族と中華の関係を考えれば、想定できるもののありえない内容だとも思った。
まだ国交、交易の締結の方がオルドからしてみればありえた。
だが確かに、あのオルドあての書簡の中で、匈奴は趙への侵略を匂わせるような文言をいくつか散りばめてはいた。
故に、趙という国家を相手取っての同盟、というのならば理解出来る。
元々今の中華における同盟というのは二種類ある。
一つは、複数の国が手を組み同じ国を攻める同盟。
これは、強力な国に対抗するためであったり、どこか一国を共に叩くために結ばれるものだ。
わかりやすいところで言えば、燕の楽毅が斉に対して行った合従軍などがまさにこれである。
そしてもう一つが、一時的に停戦するための同盟。
こちらは何かに向けて協力するというよりは、同盟期間中は互いに戦争を行わず、他の国との戦いに注力するために結ばれるものだ。
最近の中華だと、まさについ先日趙と秦の間でこの同盟が結ばれている。
ちなみにオルドは山に張りっぱなしなのでまだこれについては知らない。
このうちどちらを、匈奴は燕に求めてくるのか。
「何をやるつもりだ?」
「当然、中華への進出を」
「それを俺が黙って見ているとでも?」
「故に、互いに利のある話をしようというわけです」
オルドとマンビョンの間で激しいやり取りが行われる。
オルドが視線をモクゼンにやれば、全くの無関心でも驚くでもなく、理解の色を示しつつ大した反応をしていないように見える。
つまり、こいつもまた知っているということだ。
「モクゼン」
「何か?」
「お前たちは、中華に侵攻して勝つ自信があると、そういうことか?」
「無論。侵攻するのだからそのつもりだ」
モクゼンは特に萎縮するでもあるいは虚勢を張るでもなく、淡々と事実を語るように言う。
それがオルドには気に食わない。
「あまり中華を舐めるでないぞ。お前たちが侵略する余地などあるはずが無かろう」
「さてな。だが、我が国の本営が調査を行い計画を立てている。ならばやれるか、何かやれるための策があるのだろう。あるいはオルド殿、ひいては燕に声をかけたのも、その一環かも知れんな」
それに、とモクゼンもまた、オルドに向けて圧力を放ち始める。
その表情は先程までと変わらないのに、オルドはまさに今合戦の火蓋が斬られようとしている錯覚に陥る。
これは、なかなかに楽しいぞ、と自然と頬が上がる。
「オルド殿こそ、我らを舐めておられるのではないか? 我らもまた、北の大地の戦の中に広大な領土を保っているのだ。生半可なものだと思われては困る」
しばし、二人の将軍がにらみ合う。
そして、先に笑い出したのはオルドの方だった。
「わっはっは、すまんモクゼン殿、許せ。どの程度のものかと試した」
「私は良いが、文官の方々には少々荷が重かっただろうな。だが、オルド殿の思い、確かに感じさせてもらった」
「こちらもよ。俺はお前さんたちを気に入ったぞ。文官の割に、俺たちの威にあてられてピンピンしているそいつらもな」
そいつら、と示されたのは、相変わらずほけほけと微笑んでいるマンビョンと、表情を強張らせながらも耐えた副大使と書記官の外交団達だ。
話が気に食わないふりをして試したオルドに、信じられない者を見るような表情は向けるが、けして怯えてはいない。
「では、詳しい話を聞かせてもらおうではないか」
「ほっほ、当然ながら、全ては話せぬことは理解していただけましょうな?」
「ふん、気に入らんが当然だろう。わざわざ目的を明確に示してやるお人好しに用はないわ」
マンビョンが断りを入れてから、燕との間で結びたいと考えている同盟について説明を始める。
「まず結びたいのは、相互不可侵です。我らが中華に土地を得たときに、燕が攻め込まぬという約束。そしてその逆もまた然り」
「それは出きん相談だろう。趙は俺たち燕にとっても仇敵だ。先日もでかい城を二つほど持っていかれたしな」
ここで趙の話が出てくる。
とどのつまりは、そういうことだ。
大草騎国が中華に進出するならば、その開始地点はまず間違いなく趙北部になる。
次点で燕北部と秦北部があるが、どちらも趙北部と比べてがっつり山脈に阻まれているために、大軍が通過するには地の利がない。
となれば当然、大草騎国としては趙北方の雁門から始めて、趙北部が一番手近な中華となるわけだ。
だがその土地は、趙と国境を接する燕にとってはずっと趙と奪い合ってきた土地でもある。
特に北東部などは、燕としては絶対に大草騎国に譲ることは出来ないだろう。
故に、大草騎国側はいざことを始める前に、燕との話をしにきたのである。
「ええ、もちろんそれはわかっております。そのために、の前にオルド様」
「なんだ?」
「この会談の場を私共は、オルド様を通して燕国本営、そして燕国国王陛下に同盟を持ちかけるための場、としております。故にこれから話すことは、オルド様との間ではなく、燕国政府との交渉で同盟を結ぶ際に決めるべきことも含まれます。そこはご了承ください」
「それぐらいわかっておるわ。俺がなんでも自由にやれるわけではないからな。特にこれほど重要な話となれば尚更だ」
ほっほ、とオルドの言葉にマンビョンは笑みをこぼす。
かなり粗野に見えるがこの男も大将軍。
しかもかなり国家規模の状況まで見えている類の男だ。
あるいは山の民をまとめるという経験が、それを支えているのかもしれない。
「それは失礼をしました。ではまず、燕との同盟を結ぶにあたり、どこまでを双方の取り分とするかを話し合わせていただきたい。これをもって、相互不可侵を侵さぬように予め決めるわけです」
「趙を燕と匈奴で分け合う、と?」
「大草騎国、ですよ。しかしその問いには否、と答えておきましょう」
マンビョンの言葉に、オルドは怪訝な表情をする。
これは燕と匈奴で趙を攻め滅ぼすための話し合いだと思っていたからだ。
「どういうことだ?」
「私どもの目的は、大草騎国を中華の八国目といたすこと。下手に趙に滅ばれて、まだ元気な魏や楚と接するつもりは無い、ということです」
「あー、つまり、なんだ? 中華を全部侵略してやろうというわけではないのか?」
オルドが一番警戒していたのがまさにそれであり、中華の外の夷狄と接するときに最も気にしなければならないのがそれだ。
それはあるいは、中華の中の国が中華の統一を目指すよりもたちが悪い。
中華の外から来るということはつまり、戦力に終わりが見えないからだ。
中華の国同士でのやり合いでは基本的に、全ての国が一定の範囲に収まっているので、ある程度互いのことを知った上で土地の奪い合いをする。
これは一見無法に見えるが、少なくとも同じ中華という範囲に住む者同士の、最低限の暗黙の了解があり、理解できる相手との戦いだ。
だが夷狄の、中華の外から来る敵の場合は別だ。
それが何なのか、どれほど強大なのかすら中華は知らない。
そしてその無知故に、夷狄との争いは正しく獣の生存競争と化す。
そこに道理は存在しない。
故にそれが恐怖と忌避感を生むのである。
「少なくとも、私どもの代ではそのつもりはない、とだけ言っておきましょう。状況がどう転ぶかも、私どもの子らが何を思うかも私どもにもわかりませんからな」
「うはは、それぐらいの方が信用出来るわ。将来など誰にもわからんのだ」
が、取り敢えずオルドは、この大草騎国を名乗る匈奴の連中は話ぐらいは出来る相手だと判断した。
この相手にはそれぐらいの理性と、明確に警戒すべき知略がある。
「ならば、趙を滅ぼさない程度に燕と大草騎国とやらで攻め取るわけか」
「趙の北部が取れれはひとまずは、我らの目的の一助となりましょう」
それ以上に求めるものもまた大草騎国にはあるが、それを全て明らかにしてやる必要もない。
故に、取り敢えずは趙攻めの札だけを見せた。
「で? それだけでは無いのだろう?」
が、そこはオルド。
まだ秘したものがあるだろうとマンビョンから順に、外交団に視線を向ける。
マンビョンとモクゼンは表情を変えずとも、他の二人は別だ。
「無論、それだけではありません。が、これは今言っても詮無きこと。とはいえ同盟を申し入れる相手です。少しばかりならば明かすことも出来ますが……」
「もったいぶるなよ。俺はそう気が長くないぞ」
「ほほっ、これを失礼を。されば、私どもは中華の均衡を目論んでおります」
「中華の均衡ぅ? それは、つまりこのまま七国が、お前たち含めれば八国が、適度に奪い合い攻撃し合いながら、どこかが大きく広がることも消えることもなく続けと。そういうことか?」
ここで愚鈍な者ならば、中華の均衡と聞いて、七国間の均衡によって戦争が無い状態を作りたいのかと、そんな夢を言うかもしれない。
だが大草騎国が狙っているのはそれではない。
力の均衡。
国境線での戦争や、攻め込んで城の一つ二つ奪うことはあれど、それ以上を狙えば今度は他国から狙われる、絶妙な力関係。
それによって中華の統一や大国の出現を防ぎ、中華に大草騎国の拠点を恒久的に維持することが目的なのだ。
もちろんそれをオルドに語ることはないが、しかしその心理が分からなければ、例えやろうとしていることがわかっても明確な対策のしようもないだろう。
「そのためには少々、大きすぎる国や小さすぎる国がありますが、おおむねは。他の国々と違い、東に道が開ける燕国ならば利のある状況だろうというのが、私どもの考えです」
ふむぅ、とオルドは顎に手を当てて考え込む。
流石にこの規模の話となると、少しばかりオルドの想像の範囲を越えてくる。
オルドは大将軍だが、国全体の戦略を練る軍略家ではないのだ。
が取り敢えず、匈奴の国が中華に侵入したときに大きな風を起こしそうなことはわかった。
そして燕は、それにのるのか、あるいは他の中華の国とともに対抗するのかを迫られている、とも。
「あいわかった。この話、俺が大王に上奏しよう。流石に俺一人では理解も追いつかん」
「ありがたく」
「しかしな、匈奴の民よ」
ここでオルドは、あえて匈奴という侮蔑の混じった言葉を意識して使った。
「我らが大王も民も、俺と違って夷狄には慣れていない。望まぬ結果になっても恨んでくれるなよ」
「ほっほ、恨みはしませんとも。そのときは戦国の習わし通りに」
「戦をする。そうだ、それが戦国の習わしよ。だが、事前に話を通しておこうというお前らの燕に対する配慮は感謝する。趙北部が取られた後に持ちかけられるのとは雲泥の差だ」
「そう言っていただければ、私ども外交官も報われるというものです」
基本的にこの時代は取ったものがちで、他国への配慮なんてものはしない。
そんなことをしていては取るものも取れないということでもある。
だが大草騎国の大王アイショウは、そうではない時代を、歴史を知っている。
建前上の配慮、事前の宣言。
そういったことをやるだけで、他国との関係はガラッと変わるし、動きやすくなることも大いにある。
そういった部分的にでも、より進んだ思想哲学が持ち込まれ研究されているのが、大草騎国の強みだ。
そして故に、こういうことも考えつくし、普通に実行することが出来てしまう。
「ときにオルド様、二国の交渉に先駆けての話となるのですが」
「なんだ?」
「互いに交流のために使節団を送り合う、というのはどうでしょうか」
「互いに、というと、燕と草騎の間で、ということだな。使節団とは具体的になんだ?」
「つまり、お互いに互いの国を見るために人を送らないか、ということです。それこそ私どもの外交団五名は、数は少ないですがそういう役割を担うために形成された集団であります故。つけくわえるならば、外交に長けた者、軍事に長けた者、内政に長けた者、鍛冶建築に長けた者など、複数の分野の知識を持つ者を送れば、相手側のことを正確に測ることも出来ましょう」
マンビョンの提案にオルドは一部納得する。
確かにそういう人員を送り合うのが、互いの国について知るためには有用な手段だ。
だが、それは戦国に適した方法ではない。
「自国の力を他国の者に測らせるなど、お前らは正気か?」
「戦国の最中にある中華では無理でしょうな。ですが私どもと燕の間では、直接ことを構えることも出来ぬのです。であれば、多少互いのことを知ったところで困ることはありますまい。むしろ──」
「……趙を挟むことによってのみ、今の燕と草騎は関係を持つ。だから過度に恐れる必要はなく、趙を攻めるならばこれほど頼もしい味方はいない。そういうことか」
付け加えるなら、そうやって小規模な使節団から始まって色々と交流を進めて、無し崩しに燕との国交を一時の同盟から恒久的なものにしてしまいたい、という思いが大草騎国の側にはあるわけだが、そこまでは言わない。
それに流石にそこまで迂遠な策は、大草騎国からしても机上の空論でしかないため、明確にそれを目標にする、とも言い切れないのだ。
ただ、燕に大草騎国との同盟を利と見なさせるためには、そのためにまずは大草騎国を知ってもらう必要がある。
それは外交団にも外交省にも共通する見解だ。
その後もいくつかのことを話し、今回の会談は終わりを迎える。
途中オルドが副大使や書記官に絡んだり、モクゼンと戦の話をしたり。
比較的和やかな会談であった。
そしてその終わり際に、マンビョンは話を切り出す。
「オルド様、最後に私どもから贈り物がございます」
「ほう。以前も貰ったと思うが」
「オルド様に燕とのつなぎを行ってもらうのですから、礼はするのが私どもの流儀です」
「まあくれるものは貰っておこう」
「加えて、燕国王陛下への贈り物も用意しました故、是非お届けいただけるようお願い致します」
その言葉に、オルドは眉を上げる。
やはりこの匈奴の者達からは、山の民や騎馬民族にあるような野蛮性を感じない。
確かな文化が、礼儀とともに根付いているように感じられる。
贈り物など、たしかに山の民でも目上に贈ったり捧げたりはするが、彼らのそれは力関係によるものではなく、交流を持つ相手に対する配慮と気遣いだ。
故にオルドは、国王に端から拒絶せずに、真剣に検討するよう進言しようと決める。
そんなオルドに、マンビョンは釘を刺す。
「しかし、これはあくまで対等な立場である大草騎国が単于からの、燕国王陛下への贈り物でありますれば。けしてけして、他の者達のように従属したと扱われることが無きように」
「ふ、はは、確かにそう伝えよう。それにこちらばかり貰っては敵わん。次なにかあれば、盛大に歓待させてもらおう」
「感謝します、山の王よ」
それをオルドに向かって言える度胸に、オルドは笑い声を上げて礼を述べた。
いよいよ大草騎国の大使団が帰るにあたって、最後にオルドは、モクゼンに声をかけた。
「お前とも一戦交えてみたかったが、どうも今日の話を聞く限りでは無理そうだ。あれほどの利があれば、大王も認めるだろうからな」
「平野でならいくらでもお受けしよう。山でオルド殿とやり合うのは御免被るがな」
「うはは、それは当たり前だろう、ここは俺の縄張りだからな。ここでは誰にも負けんわ」
そう言って笑うオルドに、モクゼンは今日初めて、フッ、とほのかに笑いを浮かべた。
「しかし、同盟国ともなれば合同で軍事演習が出来るやもしれんな」
「ほう? 同盟がなってもそこまでのことがありうるか?」
「我らはそれだけ燕との関係を確かなものにしたいと考えている、ということだ。あるいは肩を並べて、他国に攻め込むこともあるかもしれんからな」
「……何ぃ?」
「では、またどこかで」
疑問の声をあげるオルドを置いて、片手をあげたモクゼンは山を下っていく。
後に残されたオルドは、大草騎国の軍勢が撤退していくのをずっと見つめながら、中華の未来に思いを馳せるのだった。
アンケート見ると過去話より現在の話とか東胡の併合辺りを書いてほしいという人が多いですね。
そして常々感想で聞いている、主人公の強さが見たい、という話も合わせて考えると。
今から速攻北東胡併合した後南東胡まで叩き潰して合従軍の後の侵攻に間に合わせる(なお期間は2年あるかないか)みたいな
頭の悪いスケジュールになるのですが……
やるしかねーかー。統治は優秀な子どもたちにまかせて東胡大統一戦からの合従軍に合わせて趙北部侵攻の転戦行きますかー。
「世界の軍事的天才を集めてみないか」
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/whis/1675849684?v=pc
こちらのスレが非常に面白いです。
本作が好きな方は是非読んで頂きたいです。
内容としては、アレキサンダー大王やチンギス・ハンなど、歴史上最強の将軍達を、とんでもなく詳しいスレ主が解説したり、他の人のツッコミに豊富な知識で答える内容です。
普通に「そんな凄い将軍達がおるんか!」
となったので皆さんも是非どうぞ。
最新話の後もう一戦南東胡とする戦の描写、欲しい?
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欲しい(趙・匈奴の戦いレベルでしっかり)
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欲しい(今回の戦ぐらい短めで)
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それより早くあの将軍と会え
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合従軍まだ?