実は気づいてなかったけど、転生先がキングダムだった話、する?   作:匈奴人

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挿絵の練習がしたかったので、最後に挿絵を挟んでます。
下手くそなのは許して。

マウスは無いしペンタブは難しいしで……


第20話で描写された主人公の戦

「単于様、けして陣から出られませぬように」

「わかっている。お前たちに任せる。頼んだぞ、ハイト」

「おう!」

 

 南東地域の前線の視察中。

 移動していた俺と護衛の第八近衛兵団は、敵軍からの挟撃を受けた。

 東に領土を持つ南東胡の軍勢だ。

 

 といっても俺を狙ってのものではなく、新たに大草騎国の領土に侵攻してきた敵軍と、逆に既に領土内に入り込んでいてそこから撤退してくる軍の、ちょうど間に踏み込んでしまったのだ。

 地形上大軍で逃れるのが難しい場所だったのもあって、結局軍を分けたり俺だけ先に退避するようなことはなく、第八近衛兵団一万に俺とその護衛隊である“単于の盾”五百で揃って敵と戦いつつ、狼煙や伝令で呼び寄せた応援の軍が駆けつけるまで時間を稼ぐことになったのだ。

 

「単于様、よろしいので?」

「俺は彼らに任せた。ならばやってもらわねば困る」

「……近衛兵団の方も大変ですな」

 

 バリュウらがいる指揮するための本陣とは別の、守られるための位置で待機している俺に話しかけてきたのは、俺を守るための部隊である“単于の盾”の指揮官、シュルメだ。

 俺が第八近衛兵団に喝を入れる意味もあって自分から指揮を取らないことを選択したと気づいたらしい。

 ついでに彼らは普段の鍛錬で俺にしごかれていたりするので、その苦労を思い出しているのだろう。

 

 ちなみに“単于の盾”というのは近衛兵団とはまた別で、完全に単于を守るためだけに存在している部隊だ。

 宮殿でも国でも首都でもなく単于という個人を守るのだ。

 故にその兵数は全部で一〇〇〇程度。

 兵力以外にもいくらか要員がいるのでもう少し多くなるが、おおよそその程度の小規模な組織である。

 その人数で、単于の護衛だけでなく単于の行き先の調査などを行う、ほぼ全員が文官相当の知能と単于を守るに足る武力を併せ持った優秀な部隊だ。

 

 そして確かにシュルメが単于の盾の指揮官をしているが、単于の盾の指揮権は単于にある。

 ここが近衛兵団とは違うところだ。

 

 近衛兵団は有事の際に俺の指揮下に入る場合もあるが、基本はそれぞれに将軍がいる。

 だが単于の盾は前提として俺の指揮下の部隊だ。

 部隊長が俺で副隊長がシュルメ、その下にいくらかの組織図は存在するが、それは組織として当然なものだ。

 

 今回の俺の視察では第八近衛兵団に俺の護衛という任を任せた形になるが、単于の盾は存在理由が単于の護衛であるのだ。

 

 故に彼らはこの戦闘に参加せず、本陣の隣で俺を守るように陣を敷いている。

 陣が崩壊したときに、最後まで俺を守り、逃がすために戦うのが彼らの役目である。

 

 そして戦いが始まった。

 

 俺たちが多少場所を移動して迎え撃ちやすい場所を選んだ結果、戦いは第八近衛兵団が正面に一万の敵新手を、左斜め方向にうちの領土から撤退してきた五千ほどの軍を迎え撃つ形となった。

 

 戦場は窪地。

 一万同士の軍が存分に陣を敷いての戦いをし存分に動ける広さはあるが、脱出するには細いルートを抜けるか急な斜面を登る必要があるため、安易な逃走は出来ない。

 それでも完全にこちらの軍が負けていよいよとなれば、俺は単于の盾とともにそこから逃げ出すことになるだろうが。

 

 下手に逃げて俺がいる、ということを教えてやるのもそれはそれで馬鹿らしいので、今は大人しく陣形後方で控えておくことにする。

 

 戦は兵力に勝る敵が多数の兵力でこちらの前線に接近。

 一方こちらは、全体的に受けに回りつつ、ハイトとその親衛隊他一〇〇〇が軍の側面から抜け出し、一万の方の敵集団の、敵先鋒が離れた後の陣地に正面から突撃を仕掛けた。

 

 狙うのは一点突破のようで、そのまま敵本陣を目掛けて突撃を仕掛けている。

 とはいえ一〇〇〇で完全に入り切るのが危険とわかっているようで、適度なところで進路を変更し、敵陣を切り裂くように突破しようとしている。

 

「あいつらしい」

「は……?」

「ハイトらしい戦い方だと思ってな」

 

 今ハイトが狙っているのは、いかに敵の将軍を討ち取るかという行動だ。

 突撃で陣を食い破りつつ、敵の揺らぎを探っている。

 そして崩せる場所が見つかれば、そこから敵陣を突破して大将首まで矛を届かせる。

 そういう戦い方だ。

 

 守るための戦いで敵将を狙って突撃を繰り返すなどどういうことかと思うかも知れないが、ハイトの動きはあれでいい。

 敵将の首を狙うのは別にどうでも良いが。

 それ自体はやるなら始めから下手に守ったりせずに全軍でやったほうがいい策ではある。

 

 しかし今大事なのは、突撃して突き抜け、再度突撃をするハイトの軍に敵本軍が釘付けになり、先鋒に後続をつなぐことが出来てないという点だ。

 その結果こちらの防御陣形は、八千対敵六千ほどと数の上では余裕をもって守ることが出来ている。

 もっともそれでもこちらにとっては相当な負担だが。

 敵の先鋒がそもそも少し多いのだ。

 敵の数がこちらを大きく上回るからと、先鋒を多くし一気呵成に攻めようという意図が見て取れる。

 

 だが結局のところ、この戦いは、如何に一〇〇〇〇対一五〇〇〇に持ち込ませないか、一方的に相手に攻め込まれて守るだけにならないか、という戦いだ。

 その点において、ハイトの行動は結果的にこちらの防衛を助けていた。

 

 もっとも俺ならもっとうまくやるだろう。

 今のハイトと同じ結果を引き出して時間を稼ぐなら、三〇〇の隊が二つ、それだけでいい。

 それで敵の隊をつついては離れ、また切り込んでは離れ。

 それを繰り返してやれば、敵はその遊撃隊への防御か対処にやっきになって、主力の攻勢が鈍る。

 

 もっとも、敵もいつまでもそのハイトの突撃に混乱させられているばかりではない。

 突撃してくるハイトの隊に同じく一〇〇〇ほどをぶつけるとともに、更に後続をこちらへ送り出してきた。

 

 特にハイトに荒らされている一万の軍ではなく、今のところ一切本陣を脅かされていない五千の軍の方は強気で本陣ごと攻め込んできた。

 本陣事というか、向こうの軍同士で連携をとって、一万の軍の下についた結果本陣ではなくあれそのものが片翼になったという感じだろうか。

 本陣吶喊ならば理解できなかったが、片翼として機能しようとしているなら理解出来る。 

 

 いやでも時々騎馬民族ってびっくりするぐらい考え無しというか好戦的だからな。

 普通に本陣ごと全軍で攻めた方が早いと思った可能性もある。

 

 さておき。

 

 その突撃によって、いよいようちの軍は窮地に陥った。

 

 こちらの陣でのぶつかり合いだけでも、こちらが九千に対して敵が一万。

 既に数の差が明確に出ている。

 

 更にこう言うのは侮辱と思われるかもしれないが、ハイトの第八近衛兵団は基本的に受け身の戦いや防衛の戦いに弱い。

 唯一まともに戦えているのは、ところどころに配置されたバリュウの部隊と、三千人将のレイキの部隊だけだ。

 それ以外のところはもう既に押し込まれてグダグダだ。

 耐えているのはところどころのバリュウ軍がいい仕事をしているのと、純粋に兵の能力が高いからである。

 

 もともと、ハイトの軍は、軍全体として今敵陣を荒らし敵将の首を狙っているハイトのような動きをする軍だ。

 故に腰を落ち着ける戦いは兵や指揮官レベルで得手ではなく、軍師のバリュウが的確に指示を出し続けてもそれを実行しきれていない。

 

「うまくないな」

「陛下?」

「レイキもバリュウも、ああもうまく耐えてしまえばジリ貧は免れんぞ」

 

 俺の言葉に、側に控えていたシュルメが戦場全体へと視線を向ける。

 

 今回の戦いでは、こちらの軍が始めから完全に受けに回ると決めてしまったために、突撃に向かったハイトの一〇〇〇を除いた残り九〇〇〇で一丸となって敵を受け止める形になってしまっている。

 更に普段の戦い方からか、全体の指揮をしているバリュウは的確に防陣を作るように軍全体を動かすことが出来ず、結果単純な数と数のぶつかり合いとなってしまっている。

 

 いや、もっと悪いか。

 ひとかたまりとなって攻撃を受け止めているこちらと違って後方の部隊が動く余地がある敵は、策を用いて的確にこちらの兵を削りに来ているようだ。

 横陣をしいているこちらに対して正面からぶつかるだけでなく、横陣の角から側面にかけても兵を動かして、横陣の端を包囲するような形で攻めてきている。

 

 横陣の一番弱い形に持ち込まれているのだ。

 本来横陣とほ敵と正面からぶつかり合うための形であって、側面や裏を突かれることにはとことん弱いのである。

 

 かといって、防御陣形の展開が遅れたバリュウの指示は間に合わず、敵に側面を突かれないように部隊をより横に広く展開しようとする前に、敵の半包囲網が完成してしまった。

 

 と、そこでようやくバリュウが動いた。

 後方に残していた予備隊五〇〇を、こちらの横陣の左端に半包囲をかけている敵に対して更に側面に食らいつく形で突撃させたのである。

 俺を守らなければならない、と考えるあまり、敵の攻撃を防ぐということに集中してしまっていた思考が、ようやく解きほぐれて、攻撃で敵の隊を崩すことで結果的に防御に変えることを思いついたらしい。

  

 更に残り一つの予備隊も、反対側から、こちら側とがっぷり組み合っている敵の背を討とうと右から展開させようとするが──

 

「流石にそれは通らんだろ」

 

 左端とは違って横陣同士が正面から組み合っている右方は、こちらの騎馬五〇〇の攻撃が敵にとっては対した奇襲にならず、普通に受け止められてしまった。

 それでもとっさに防御態勢を敷いた敵の防御を食い破り、一時的に右方の防衛を楽にしたあたりは流石ハイトの率いる第八近衛兵団といったところか。

 主たるハイトが居なくともその破壊力は健在である。

 

 一方、一〇〇〇騎で突撃を繰り返していたハイトの部隊だが、敵との衝突もあってその数は七〇〇ほどにまで減らしてしまっている。

 だがその分、敵本陣を守っている四〇〇〇人の陣形はズタボロだ。

 よくもまあ一〇〇〇騎であそこまで破壊したものである。

 

 更に、本陣ごと前に出てきている左の五〇〇〇の敵とは違い、一万の敵は攻撃隊と本陣をわけてしまっているため、結局戦力の分散を引き起こしてしまっていた。

 誰もハイトを止めることが出来ないせいで、先に突撃した部隊と本陣の連携が一切取れていないのである。

 

 あちらはハイトが纏わりついているために指示を出せず、こちらはひとかたまりに集団を集めてしまっているので、今更防陣の形状を組み替えたりすることが出来ない。

 そうなればもう後は、完全に力と力のぶつかり合いである。

 左斜め前方から攻めてきている敵五千も、それ以上の策がないのか、あるいは策を弄する必要が無いと考えているのか、こちらの横陣の端を徹底的に破壊しながらも、それ以上に大きく隊を動かしている様子がない。

 

 側面にバリュウの放った予備隊が食らいついている、というのもあるだろう。

 その破壊力もまた素晴らしいもので、五〇〇にも関わらず一〇倍の五〇〇〇の敵を中程まで切り裂いている。

 

「シュルメ、伝令だ。バリュウに横陣の左端を完全に崩壊させて右に引かせろと伝えろ」

「はっ」

 

 いい加減見ていられなくなったので、俺も口を挟むことにする。

 このまま第八近衛兵団が勝ちそうならば良かったが、互いの主力が正面からの削り合いになってしまっているので、このままでは数の差で少々危うい。

 

 ならば、それをひっくり返してしまえば良い。

 

「出るぞ」

「“単于の盾”出るぞ」

「「「おおっ!!!」」」

 

 王の盾五〇〇騎を率いて、中央後方の守られていた位置から俺も出撃する。

 一旦味方の後方に出て、足を緩めつつ左側に横陣を回り込む。

 

「遅いですな」

「慣れん策を使えばそうもなる」

 

 しばしの停滞。

 その後に、俺の指示の通りに横陣の左端が完全に崩壊。

 丸ごと数十人分は右方向に陣形が崩れた。

 

「行くぞ」

「はっ。アイショウ様に続けえぇ!!」

「「「「おおおおおおおお!!!」」」」

 

 こちらの横陣が右側に向けて崩れたことで、それを左から押していた敵は、そのまま崩れたこちらの横陣に続いてなだれ込んだ。

 これにより、左斜め前方から攻めていた五〇〇〇の敵軍の隊形が長く伸びた。

 

 更に、再度の突撃をしかけていたこちらの予備隊を側面から刈り取るために、敵本陣を守る隊のうち、こちら側に近い位置に居た隊、敵本陣からすれば右翼が上がる。

 

 それによって、直後に予備隊の裏から飛び出すように突撃を仕掛けた俺の目の前には、柔らかい横腹をさらした敵本陣しか残っていなかった。

 

「右方、敵騎馬来ます!!」

「何ぃ!? 止めよ!! 突破させてはならん!!」

 

 流石に敵本陣を守る隊だ。

 反応から防御態勢までが早い。

 隊がこちらを向き、歩兵が盾を構えている。

 

 だが、その程度でこのアイショウの突撃が止まると思って貰っては困る。

 立った十数人の一部族から匈奴を統一した王の矛ぞ。

 

 止めるなら後十倍は持って来い。

 

 ゾンッ゛

 

 矛の一撃で数人まとめて斬りとばす。

 首を飛ばされたものから胸、腹で飛ばされたものまで様々だ。

 更に俺に続くように、単于の盾各騎が敵兵を切り倒して、敵陣を切り裂く。

 

「つ、強い!!」

「止めろぉ!なんとしてモ゛ッ」

「敵騎馬止まりません!!」

 

 矛を振るうごとに、敵の隊列を数列ずつ吹き飛ばして突き進む。

 敵五〇〇〇の将は慎重だったのか、自分の防衛に側面に三十列も置いておいたようだが、俺からすれば紙くずだ。

 

 加えて。

 

 原作では、王騎が自ら先頭を行くとき、王騎軍は皆鬼人と化す、と書かれていた。

 

 同様に、俺が自ら先陣を行くとき、匈奴の民は、大草騎国の兵は皆命を捨てて鬼と化す。

 

 その突撃を不意打ちに近い形で受けて、止められる者が、たかが五千人を率いていようはずもない。

 

「お、のれえええ!!」

「その意気や良し」

 

 最後に、自ら立ち向かおうとしてきた敵将の首を一撃で刎ね飛ばした。

 

「ジュルキ様あぁぁ!!」

 

 敵兵の叫びが響く。

 しかしすぐに、俺に続いて突撃した単于の盾に蹂躙されて、将の戦死を嘆く兵は消えた。

 

「だが、その程度ではな。シュルメ」

「はっ!」

 

 俺が敵将の首を飛ばした直後に、俺を守るように展開した単于の盾達。

 その中からシュルメに声をかける。

 

「このまま敵軍の背中を突き抜けて敵の右方から出るぞ。敵将の首を掲げておけ」

「承知」

 

 俺が敵将を討ったことに気付いた敵兵たちがこっちに殺到しようとするが、その前にこちらから突撃し、敵をまとめて薙ぎ払って道をこじ開ける。

 その後方から、シュルメとは別の声の叫びが聞こえた。

 

「敵将、討ち取ったり!! 誰だか名前は知らんがな!!」

「……シュルメ」

「後で叱責しておきます」

 

 流石にその勝ち名乗りは敵に対して礼を失している。

 いやそう叫んだ男が嫌味で言っているのではなく純粋にポンコツなのは俺もシュルメも知っているが、とはいえである。

 

 俺とシュルメがそんな言葉を交わす後方で、敵将の首を矛の先に突き刺して掲げた単于の盾の一人が繰り返し声を張り上げていた。

 

「敵将、討ち取ったり!! 貴様らの将はもはや居ないぞ!!」

 

 その声とともに、俺達は俺達の本軍を攻めている敵を背中から突き、そのまま碌な反撃を受けないままに、最初に突撃した場所から弧を描くような形で貫いた。

 ここでそのまま自陣へと帰還するのが普通だろうが、わずかに欲が出る。

 

「陛下?」

 

 あらぬ方向を見つめる俺に、シュルメが声をかけてくる。

 

「シュルメ、あちらの敵将の首は──」

「なりませぬぞ」

 

 その俺の視線の先に、ハイトにずたずたにされつつも逆にハイトを討ち取ろうと奮闘している敵一万の軍勢の本陣があることに気づいたシュルメは、俺の言葉に食い気味に否定を返してきた。

 

「お立場を考えなされ」

「そうか……そうだな。では後方に戻る」

 

 シュルメに抑えられたので、仕方なく、そのまま自陣に帰還することにする。

 もっとも自陣に帰還しやすい方向に敵陣を貫いていたので、今からもう一つの敵将の首を狙うならば、再び五〇〇〇の方の敵軍を貫いてから、一万の方の敵本陣を攻めなければならなかっただろうが。

 

 この少し後に、結局割に合わないと見たのか敵が兵を退き、撤退していった。

 こちらも追撃する余力はほとんど残っておらず、精鋭たる近衛兵団が惨憺たる有り様だった。

 

 しかしそれでも、第八近衛兵団は俺を守り切るという役目をやりきったのである。

 

 これを機に今一度軍を見直した第八近衛兵団が、更なる進化を遂げることになるが、それはまた別の機会に語るとしよう。

 

 取り敢えず俺は、敵将の首は取れたもののとても満足とは言えない軽い首だったために、まだまだ不満足である、とだけ言っておこう。

 

最新話の後もう一戦南東胡とする戦の描写、欲しい?

  • 欲しい(趙・匈奴の戦いレベルでしっかり)
  • 欲しい(今回の戦ぐらい短めで)
  • それより早くあの将軍と会え
  • 合従軍まだ?
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