実は気づいてなかったけど、転生先がキングダムだった話、する?   作:匈奴人

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ここからしばらく主人公周りと東胡との戦となります。

本作の趙・匈奴の戦いを見てもらえばわかりますが、長くなると思います。


第21話 委任

 中華で、秦が山陽への侵攻の軍を集めている。

 その報が俺に届いたのは、秦の軍が咸陽から放たれる数日前のことであった。

 

 それほどまでに、俺と、大草騎国が誇る軍略研究所は山陽という土地を秦が取ることの重要性を理解していた。

 その土地を取ることで、短期的に見れば、秦はそこを拠点としてさらなる他国への侵攻を可能とする、程度の要地。

 だが中華の各国の力関係も含めてより長期的に見れば、一度山陽を支配して拠点化し、そこから侵攻を行っていくと、やがて秦の侵攻は中華のどの国も抗えないほどのものになっていく。

 

 そういうとくに中華に大きな動きを生む、という意味での要地として、俺達は山陽に注目していたため、今回の軍が放たれる以前の報告となったわけである。

 

 といっても、別に秦と山陽だけに注目していたわけではない。

 

 中華の各国が、中華の統一、ないしは少なくとも国を一つか二つ攻め滅ぼすほどの動きを見せた時、他の国々がどう動くか、あるいは、その過程で重要と成る要地はどこなのか、といった研究をずっと続けていたのだ。

 あらゆる前提条件、可能性を考えては模擬実験、思考実験を行って、それを記録、分析し、次の模擬実験や研究へと繋げていたのである。

 

 そして今回はその中でも、秦が動いた。

 山陽という中華の要地。

 ここを秦が取ることで、将来的に秦が中華の統一に大きく近づく。

 山陽とはそういう土地なのだ。

 

 そしてその総大将となったのが、秦の大将軍である蒙驁将軍。

 その副将に桓騎将軍と王翦将軍という二大隠れた名将が付いている。

 蒙驁という凡庸な大将軍の影に隠れてはいるものの、二人とも相当な力を持った将軍であるというのは、事前の諜報活動と、以前の韓侵攻の際の手際でわかっている。

 故にその能力を、俺は高く評価していた。

 

 この時点で、俺は八割ほどは秦が山陽を取るであろうという認識をしている。

 鍛えられた大軍に名将蒙驁と二人の天才が副将につく。

 何より、魏にこれに抗うことの出来る将軍がいないのだ。

 

 こと大軍同士の戦いにおいて、それを指揮する将軍の差というのは非常に大きい。

 これは軍が大規模になればなるほど、その差がより大きな結果の差を生むからだ。

 

 一人と一人の戦いならば、ただの殴り合い、個人の力だ。

 十人と十人になると、力の集中と人数の分け方などで、人の使い方の妙が出てくる。

 百人と百人ともなれば、戦術的な効果を持つ策を使うことが出来るようになってくる。

 

 それが十万人と十万人ともなれば。

 将の能力によって生み出される策の差というのは、戦の勝敗に非常に大きな影響をもたらす。 

 

 十万規模の今回の秦の侵攻軍に対しては、魏将は相当に能力のある将でも無ければ、勝利することは非常に難しいだろう。

 そして数年前に魏火龍最後の一人である呉慶が討ち取られてしまったために、今現在、魏に十万規模の大軍を率いることが出来る将軍は存在しない。

 

 故に将の差によって秦が山陽を取る。

 そして山陽を拠点として秦が、他国への侵攻を活発化させることで、必ず大きな嵐が中華を襲う。

 それが秦によって国が滅ぼされることか、あるいは他国が同盟を組んで秦に対抗することかは開いてみなければわからないが。

 

 その激動の時こそが、中華の土地支配を目論む我ら匈奴、我が国大草騎国にとって狙いどきである。

 趙の、中華の目が、秦や他の国にそれている間に攻め込むことで、大きな抵抗を受けないままに、中華の土地を支配することが出来る。

 俺も、そして俺の部下たちも、ずっと以前からそう認識していた。

 

 それに、仮に秦が今回の侵攻に失敗したとしても、それはそれで問題はない。

 

 秦と趙が同盟を結び、そこで出来た余裕を利用した秦が即座に山陽を狙った、という事実が重要だ。

 これはすなわち、秦がただなんとなく他国を攻めているのではなく、明確に中華を統一するつもりで戦争を行っている、ということを示しているのである。

 

 もともと山陽という要地は、秦、魏、だけでなく趙が関わる位置にあることで秦が獲得することが困難であった。

 それを秦趙同盟という札を切ってまで獲得に動いている。

 報告では、趙で宰相の任についたあの李牧を咸陽に呼び寄せてまで同盟を結ばせたというではないか。

 

 秦は、それほどまでに真剣に山陽を狙っている。

 ただの一つの要地としてではなく、今後全ての布石として。

 山陽を抑えるというのはそういうことなのだ。

 故に、今回の山陽侵攻の成否に関わらず、今後数年以内に大きな動きが起こるのは間違いない。

 

 

「ナンミル」

 

 玉座の間にて会議中にその報を受け取った俺は、その場で、俺に付いて単于としての役割を学んでいたナンミルを呼ぶ。

 俺の一段下から会議を見ていたナンミルが立ちあがり、俺の方を振り返って臣下の礼を取る。

 

「はい、単于様」

「秦が山陽の獲得に動いた。これより俺は中華侵略の任に専念する故、単于の役割は貴様に任す」

「御意。単于様の思し召しのとおりに」

「頼んだぞ」

 

 俺の言葉に驚く事なくナンミルが拝手をして俺の言葉を受諾する。

 これによって、単于という地位は俺のままだが、その政務の一切、そして権限の多くを我が息子ナンミルが引き継ぐことになった。

 

 この流れは、事前にナンミルにも、そして多くの部下や地方の将軍等にも説明していることであった。

 機が来れば、俺は単于の役目を降りて中華の侵攻の総大将となる、と。

 そしてその機とは、中華のいずれかの国が大きく動くことによって中華に訪れることになる騒乱のことである、とも。

 

 実際は、俺の名前が偉大すぎたために地位としての単于を降りることは許されず、このようにナンミルに役割のみを任せるような形になってしまったが。

 

 ナンミルに役割の委任を告げた後は、会議でこの場にいる文官達にも同様に勅命を下す。

 

「皆も、俺に従う者以外は、ナンミルを支えてやってくれ。皆がいてこその俺であった。そして、皆がいてこその単于だ。皆のこれまでの献身、このアイショウ、何よりも頼もしく思ったぞ」

「「「「「ははっ!!!」」」」」

 

 この指示をする事自体は事前から知らせてはいたが、後半の彼らへの感謝の言葉は完全に俺のアドリブである。 

 そのためか、それを聞いたほとんどの文官達が泣いてしまって、少々続きの話がしづらくなってしまった。

 

「泣くな泣くなお前ら」

 

 そう言って止めようとするものの、「うう、単于様ぁ……」とか言って泣いていて話を聞いてくれない。

 軍事長官のアシビなどは、「うおおおおお!! 単于様ああああ!!」などと大声をあげて泣いている。

 いやお前は後継に役目を譲って俺の中華侵略の手伝いをするから、これからも基本的に一緒に仕事をするだろう? 

 何をそんなに泣いているのだ。

 

 頼みの綱のヒィアンとナンミルはニコニコとした顔で俺の方を見ているので、どうも頼れそうにない。

 それでも、藁にも縋る気持ちで声をかけてみる。

 

「ヒィアン」

「ほっほ、単于様は、誠に愛されておりますなあ」

「ナンミル」

「私も父上のように、皆に愛される単于を目指す所存です」

 

 そういうことが言いたいのでなかったが、二人とも俺が困っているのをあえてわかっていてやっているようだったので、二人を頼りにするのはやはり無理らしい。

 結局その後は、文官達が泣き止むまで数刻の間、俺は送られてきた中華に関する資料を読みながら待つしかなかった。

 

 それにしても、改めて思ったが。

 

 俺って本当に、多くの者達から愛されているんだな。

 

 

 

******

 

 

 

 

 数刻して、ようやく全員が泣き止んでから再び俺は口を開く。

 

「これより第七から第十までの近衛兵団は近衛兵団の役割から外し、俺の直下軍とする。ナンミル。お前は早急に次の近衛兵団を選出せよ」

「はっ」

 

 以前も説明した通り、近衛兵団は第一から第十まで存在するうち、第七から第十までの四兵団が、有事の際に単于の直接の指揮下に入るように編成されている兵団である。

 今回俺は、この四兵団を俺の軍として引き抜かせて貰うことにした。

 

 中華を侵攻するにあたって、実は、というわけでもないが、俺には自分の率いる軍という意味での戦力が存在していない。

 単于としてシャピンに引きこもり政務をするに当たって、そうした軍は全て、かつての副官や第一将の軍に組み込まれたからだ。

 俺の麾下の将たちも、それぞれに独立したり他の将の下に入ったりと、俺の手元を完全に離れている。

 

 そのため、取り敢えず王が自由に動かせる近衛兵団を四つ、合計四万を俺の軍として組み込むことにしたのだ。

 もちろん後々増強するし、かつての配下達が戻ってきて入れ替わる可能性もある。

  

 加えて中華に侵攻するに当たっては俺を総大将として他の将軍の軍も配下に加えることとなるが、ひとまずの俺の本軍がこの四万というわけである。

 その四万が俺の意思に従って動き、これから俺の手で練兵して鍛え上げることが出来る軍となる。

 

「アシビ、ドルマ、カッザ」

「「「はっ」」」

 

 続いて、国政の要を担う三つの省の長を務める三人を呼ぶ。

 

 この三人は、現在はそれぞれ軍事長官、外交長官、内務長官を務める国政の要人だが、中華侵攻という一大イベントには彼らの力が必要なので、後継者に引き継ぎをさせてついてきてもらうことになっている。

 

 アシビには、侵攻する軍全体の統括を。

 ドルマには、侵攻した後の中華の各国との外交を。

 そしてカッザには、侵攻した後の土地の統治及び、支配した地域の大草騎国への吸収を。

 

 それぞれに、多数の文官を率いて侵攻軍に同行してもらい、働いてもらうことになる。

 中華侵攻軍、とはいうが、その実態はもう一つの大草騎国と言えるほどに様々な面で充実したものになる予定だ。

 その分大草騎国本国の方が多少手薄になってしまうが、そうならないために、中華への侵攻や国家の拡大を見越してこれまで人材の育成を全力で行ってきている。

 ちょっとやそっとどころではないことが起きても揺らがないのが、今の大草騎国なのである。

 

「事前からの取り決め通り、中華侵攻軍の編成及びその他侵略、及び支配のための作業に取り掛かってくれ」

「ははっ」

「承知しました」

「より中華の民に受けいられる統治体制となるよう、身命を賭して練らせていただきます」

「頼むぞ」

 

 一段落ついたところで、黙っていたヒィアンが口を開いた。

 

「単于様は、いかがなさるのですか?」

 

 唐突にも思える話の切り出し方。

 それは、ヒィアンにのみ相談していたことを俺が切り出しやすくするためのヒィアンの気遣いであった。

 

「俺は軍を率いて二月ほどサビ落としをしてくる」

 

 その言葉に、文官達に衝撃が走る──!

 かと思いきや、皆納得といった表情をしている。

 むしろ、そうでないのは有り得ない、と言わんばかりの反応だ。

 

 これにはむしろ俺の方が面食らってしまった。

 

「自分で言うのもなんだが、良いのか?」

 

 単于が前線に出る、という事態。

 キングダムで言うならば、秦王嬴政が自ら戦場で兵を率いて他国と戦うということだ。

 そんなことが、この時代の封建制度の中で起こるはずがない。

 

 にも関わらず、俺の配下たちはそれを咎めようとはしない。

  

 それを疑問に思った俺の言葉に、文官たちは顔を見合わせて破顔した。

 そしてアシビが文官を代表して口を開く。

 

「単于様、ここにいる者は皆、単于様の過去を知っておりまする。かつて軍の先頭を駆けた単于様が、中華への侵攻という大戦で本陣に座っていられると思うほど単于様のことを知らぬわけではありませぬぞ」

 

 なるほど。

 つまり、匈奴を統一するまでの俺の活動と、その後も定期的に演習をしたり前線の視察に行ったりするので普通に俺が戦大好き人間だというのが部下たちにもバレていた、と。

 

「で、あるか」

 

 そう言われると、自分の幼稚な部分が部下たちに見られたようで少し恥ずかしいが、部下によく理解されているのだと好意的に解釈しておくことにする。

 

「では、この会議場はこれよりナンミルの政府が使用することとする。中華侵攻に関わる者たちは、四季の間に移り、会議を始めよ」

「「「ははっ」」」

 

 俺が中華侵攻に関わる部下たちに号令をかけると、それに続いてナンミルも立ち上がり部下たちに号令をかける。

 

「では我らは、我が父アイショウ単于からの委任を受け、これより新たに大草騎国委任政府を発足する。滞りなく国家の運営が行えるよう、皆の力を合わせて、一刻も早く父とその部下たちに追いつけるよう励むぞ」

「「「はっ!!」」」

 

 ナンミルの言葉には、俺の言葉に答えた年かさの文官達よりは幾分か若い、次代を担う者たちの声が答える。

  

 文官等全員がこちらに拝手をする中、互いに見つめ合った俺とナンミルもまた、静かに互いに拝手を向け合うのであった。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 それではいざサビ落としのために南北の東胡の征伐へ──

 

 と行きたいところだが、流石に即日で軍を発することが出来るわけではない。

 以前から第七から第十までの兵団の主だった者たちには、中華侵攻の際に俺の指揮下にいれると通達をし、ある程度の備えをしておくようには伝えていたものの、万の軍勢が動くためには最低でも数日の時間を必要とする。

 

 しかしその数日も無駄にすることは出来ないので、俺は四つの兵団に遠征の準備をするように指示を出しつつ、余裕を見て各兵団の将軍達にあらためて話をしておこうと彼らを招聘した。

  

「陛下、近衛兵団の将軍方がいらっしゃいました」

「入れよ」

 

 いつも使っている玉座の間はもうナンミルに譲ったので、俺は別殿の一回り小さな玉座の間にて将軍達を待っていた。

 文官等も基本的に忙しくしているので、側に控えているのは軍事に関わることになるアシビだけだ。

 なお彼は軍事長官という任から降り、今は中華侵攻軍総司令官という役職に就いている。

 

 入口の扉が開き、四人の将軍たちが入ってくる。

 俺の前まで歩いてくると、全員跪き名乗り始める。

 

「元第七近衛兵団、団長ハイト、参りました」

「元第八近衛兵団、団長シウイ、お呼びと聞き参上しました」

「元第九近衛兵団、団長ルルシウス、罷り越してございます」

「元第十近衛兵団、団長アイボ、来たぞ」

 

 たった四人。

 それぞれわずか二十文字程度の名乗りで、一気に場の空気が重くなる。

 これが、国家の中枢の防衛を担う近衛兵団の団長達の放つ圧だ。

 

 そしてこの場にいる俺のアシビも、そして今尚俺の側に仕えてくれているランシも、それに気圧されるような生半可な生は歩んではいない。

 

「よく来てくれた。顔をあげてくれ」

「「「「はっ」」」」

 

 俺の言葉に、将軍達が顔を上げる。

 うむ、皆いい顔をしている。

 これならば、何も心配はいらないだろう。

 

「取り敢えず、元近衛兵団というのは格好がつかぬ故、その方等の軍に新たなる役割と名を与える」

 

 俺の言葉に、しかし将軍たちが動じることもない。

 彼らもまた、多くの修羅場をくぐり抜けた並外れた度胸の持ち主達だ。

 

「アイショウ軍、第一軍軍長、ハイト」

「おう!」

「第二軍軍長、シウイ」

「ははっ」

「第三軍軍長、ルルシウス」

「はっ」

「第四軍軍長、アイボ」

「縺翫≧!」

「アイボ、こっちの言語で話してくれ」

「忘れてた。はい!」

 

 最後が若干締まらなかったが、これで元近衛兵団団長たちは、このアイショウの軍の軍長へと姿を変えた。

 

「これより、各将はこのアイショウの指揮下に入り、諸君の率いる軍は、大草騎国が単于アイショウの軍となる。皆、頼りにしているぞ」

「「「「ははっ」」」」

 

 ひとまずこれで任命式が終わった。

 そしてここからが本題となる。

 

「四人とも、これより先は同じ軍の将として対等な会話とする。アシビ」

「はっ、円卓の間を抑えておりまする」

 

 玉座の間ではどうしても、上から見下ろす俺と、見上げる部下たちという構図になってしまう。

 しかしそれではこれから軍としてやっていくには流石に良くないので、対等な立場で話し合う必要がある。

 

 そこで俺達は、円卓の間と呼ばれる、臨席者の間に差を生まないための一室に移動して、話し合いを続けることとした。

 

「さて、ここでは皆楽にしてくれて良い。俺もずっとあれでは肩が凝る。ようやく単于の政務から解放されたことだしな」

 

 俺が先に座ってそう告げると、将軍たちとアシビも各々に席につく。

 

「アイショウ様、ずっと前線に出たいって言ってたよな」

「元は軍を率いて戦ってた将だからな。国が出来た今でこそ単于をやっているが、本来の俺は武人だ」

「では、今度の戦はさぞかし胸が踊ることでしょうな」

「本当にな。ようやく、戦の場に戻れる。もう十年近くになるのか」

 

 ハイトとシウイの言葉に答える俺の声には、隠しきれない喜びが浮かんでいたことだろう。

 それほどまでに、嬉しいのだ。

 

 しかし、いつまでも喜んでばかりはいられない。

 

「さて、早速だが軍の編成の話がしたい」

「なるほど、確かにそれは必要ですな。誰がアイショウ様のお側につくかという話ですからな」

「単于様、守る」

「二人のその気持ちはありがたいが、少し形を変えるつもりでいる」

 

 ルルシウスとアイボの言葉に感謝しつつ、それを否定する。

 ちなみに名前でわかるかもしれないが、二人とも匈奴の外からやってきた人間だ。

 

 ルルシウスは以前ヨーロッパ方面に送り出した交易団について帰ってきた男であり、向こうで何らかの謀で軍を追われた男だ。

 出身は、この時代の言語なので正確にはわからなかったがおそらくはローマ。

 実際、彼の指揮する歩兵隊のファランクスは、この北の台地での戦でも大きな破壊力と防御力を有している。

 

 アイボは以前から言っていた、北東胡の更に北方に棲まう狩猟民族の出身だ。

 狩猟民族の外の世界に興味があって出てきたところをうちの軍に拾われ、そこから大きく昇進して今に至る。

 野生動物との狩りで培った本能型の才能は突出したものがあり、また個人の武力でもその類まれな身体能力からトップクラスのものがある。

 

「どういう形にするんだ?」

「ハイト将軍」

「構わない。この場は対等だと先に宣言したからな。それで、変える形だが、皆にはそれぞれの軍から二〇〇〇ずつ兵を出してもらいたい。それを合わせて八千、これを俺の本軍とする」

 

 これは以前から、四つの兵団を率いるとなったときのために考えていたことだ。

 一つ二つを率いるならばそのままでも良いのだが、四つ全ての兵団を率いるならば、俺につく本軍と一から四までの軍にわけた方が戦術的に柔軟性が増すと考えたのだ。

 

「なるほど、あの演習はそのためでしたか」

「そうだ。俺が四軍を率いるならば、それが最も戦術的に強い形だからな」

 

 以前の演習を思い出したシウイが言う。

 直近の何回かの演習では、中華への侵攻のために実際に指揮下に入れるために、合同演習などで二千ずつ俺の元で動かす演習などをしているのだ。

 

「では、我らの軍からも二〇〇〇、陛下にお預けしまする」

「俺も二千人、陛下に任せる」

「もちろん俺もだ。ちゃんと使ってくれよ」

「私も、以前演習で陛下に預けた者たちを出しましょう。それが一番連携が取れるでしょうから」

「恩に着る」

 

 自分の軍だというのに、躊躇いなく俺に預けてくれるという彼らに俺は頭を下げて感謝を示す。

 そこで、ずっと黙って話を聞いていたアシビが口を開いた。

 

「もともとこの国の軍の全ては陛下の軍でしょうに」

「だがそれを育て上げたのは、率いる各将だ。だろう? アシビ」

「まことに。そうおっしゃられる陛下だからこそ、彼らも安心して兵を預けられるのでしょうぞ」

 

 そう言ってアシビが示す先に目を向けると、将軍達がそれぞれに、笑顔で、あるいは不敵な表情で、はたまた真剣な顔で頷いているのが目に入る。

 

「……本当に、俺は良い部下達を持ったものだ」

 

 その姿を見て、そうしみじみと俺は呟くのだった。

 

 

 

 




モクゼンの軍は燕との国交で南方に張るために近衛兵団では無くなりました。
趙北部侵攻の際にはまた合流すると思います。



どうせなら思い切り盛って、ルルシウスの枠に現実のローマ軍人とか入れたかったんですが、スキピオとかハンニバルとかの有名どころと現役が若干ずれてました。

まあ取り敢えずルルシウスは古代ローマ軍人です、ということで。

最新話の後もう一戦南東胡とする戦の描写、欲しい?

  • 欲しい(趙・匈奴の戦いレベルでしっかり)
  • 欲しい(今回の戦ぐらい短めで)
  • それより早くあの将軍と会え
  • 合従軍まだ?
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