実は気づいてなかったけど、転生先がキングダムだった話、する?   作:匈奴人

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遊牧民族の戦ですが、略奪などではなく正面からの戦の場合、匈奴が使い始めた歩兵が強いのがわかったので、他の遊牧民族も歩兵をある程度使うという設定になっています。

中華の戦より少しばかり馬が多い、程度になると思います。

なお馬は現地まで乗っていきはするので、戦の間は後方で専門の部隊が世話をしています。


第23話 敵将

 宴の数日後。

 

 俺の率いる軍十万とザイニイ将軍が率いる軍十万は、ついに北東胡との領土の境界線を超えた。

 といっても俺達は互いに遊牧民族、まあ俺達は元であるが、領土の境目が明確になっているわけではない。

 

 ただ、途中で幾度か奴らの民が、遊牧民のテントであるゲルを畳んであわてて逃げていくのを目撃している。

 ということは、奴らの領域に踏み込んだということだ。

 

「では、単于様」

「うむ。ザイニイ、武運を祈る」

「はっ、単于様もご武運を」

 

 酒を呑んでいるときの顔とはまた違う、引き締まった顔をするザイニイと互いに拱手を向け合って分かれる。

 ここから俺の軍とザイニイの軍は別ルートで進軍し、最終的に北東胡の根拠地と言える地域を南北から挟み込む形で粉砕するのだ。

 

 そのために今回は、俺とザイニイという二人の大将を据えた二軍での同時侵攻を計画したのである。

 これによって、北東胡をどこかの方角へ押し出すのではなく、今回の戦で完全に粉砕し、併合するという覚悟を北東胡の連中にも見せつけてやるのだ。

 

 その大軍を見せつけているおかげが、時折千や一万程度の敵軍は斥候が発見してくるものの、こちらへ攻撃してくる様子はなく、皆決まって同じ方向へ、つまり俺達が侵攻しようとしている北東胡の根拠地へと向かっている。

 

 しばらく軍を進めていると、やがて、幾人も走らせていた斥候の一人が戻ってくる。

 

「ほ、報告!」

「どうした」

「侵攻方向にて敵の大軍が陣を敷いて待ち構えています。その数十万近くはいるかと!」

「あいわかった。伝令の役目ご苦労」

 

 どうやら俺達の方が当たりを引いたらしい。

 これでザイニイのほうに対処に行かれて、俺の前には非戦闘民だけが残ったりしていると不完全燃焼で終わってしまうところだった。

 

「全軍にいつでも陣をしけるように通達しておけ」

「「「ははっ」」」

 

 相手が待ち構えているとなると、こちらは敵に陣を敷く隙を晒すことになる。

 もちろんそんな間抜けなことはなかなかないので、特に陣を敷くのに時間がかかる大軍の場合は、かなり離れた位置で陣を敷いてから合戦の距離へと移動していくことが多い。

 

 そのまましばらく前進していると、前方に敵の陣地が見える場所までやってきた。

 

「全軍停止。陣を敷け」

「「「はっ」」」

 

 敵が突撃を敢行してきても対処することが出来る距離。

 その距離を保ったまま、部下に指示を出して続々と到着してくる全軍に陣形を敷かせていく。

 十万の大軍ともなると、そんな単純な作業でも数刻は余裕でかかるというのだから、人数の多さというのは本当に脅威だと思う。

 

 その間、敵の動きはない。

 てっきりどこかで威力偵察の一つや二つ来るかと増強された俺の本軍を待機させていたのだが、どうも敵にはそのつもりはないらしい。

 最初から戦うつもりだから余計な情報は必要ないのか、それともすでに集め終わったのか。

 

 その答えは、こちらの軍の布陣が終わったときに判明した。

 

「報告! 前方より白旗を掲げた騎馬が一騎、走ってきます!」

「なにぃ!」

「どういうことだ!」

「敵は降伏でもするつもりか!?」

 

 ざわつく親衛隊の兵士たちを、手を掲げることで黙らせる。

 こういうときかつて俺に付き従っていた副官等や親衛隊の連中ならば、俺が反応するまでは黙っていてくれたのだが。

 今のやつらは良くも悪くもちゃんと育っているようで、自分たちで判断して反応をしてしまうのである。

 今のうちでは使う者と使われる者を別々に育てるような教育はしていないのだ。

 

「その騎馬はなにか言っているか」

「た、大将に伝えたきことがある、と」

 

 その言葉に再び本陣が騒がしくなるが、俺はここで状況を考えた。

 まず、これが嘘である場合。

 

 敵にとってもこちらにとっても大した意味がない。

 せいぜいが、こちらが伝者を受け入れて俺の元まで来た直後に軍を突撃させ、その混乱の最中に伝者に俺を狙わせる程度にしか出来ることがない。

 

 となると、これが本当の場合。

 つまり、伝者が俺に伝言がある場合。

 それがどんなものであるにしろ、聞いておいた方が良いだろう。

 例えこの後戦で討ち果たす相手になるにしろ。

 

「通せ」

「ぜ、単于様!」

「よい。敵が話があるというのだ、聞いてやろうではないか」

 

 そう言って親衛隊の兵士を黙らせていると、やがて一人の見栄えの良い装備をつけた若い兵士が複数名の兵士に囲まれてやってきた。

 伝令の兵士、という話だったが、俺にはとてもそうは見えない。

 刀傷が刻み込まれた見事な鎧と良い、力強く引き締まった表情といい。

 彼もまた、若年ながらも一角の武将であるように見受けられた。

 

「そなたが伝者殿か」

「いかにも。そちらは?」

 

 俺に対して不遜に返す敵の兵士の言葉に、周囲が色めき立つ。

 

「貴様、この方をどなただと思われる!」

「それが白旗で会談を申し込んできた者の態度か!」

「貴様の首ぐらいいつでも斬れるのだぞ!」

 

 等、物騒な発言が俺の親衛隊の兵士たちの口から飛び交う。

 こういう場面でこうやって兵士たちに好き勝手に発言させるのは、現代の理性ある軍では考えられないだろうが、この時代では相手を威圧して場面を有利に運ぶという意味合いもあって、俺も特にそこに関しては手を加えぬまま今に至っている。

 しかしその恫喝とも取れる威圧も、当の伝者本人に響いた様子はない。

 やはり相当に修羅場をくぐってきていると見受けられる。

 

 ならばこちらも答えてやらなければならないだろう。

 

「この軍の大将だ。それでは不満か」

 

 そう言った俺に対し、伝者は顔をしかめることで反応を見せた。

 

「不満だな。ザイニイやヌルテの顔は見たことがある。てっきりその二人が攻めてきたのかと思えば、片方の軍が違った。気になるのが当然だろう?」

「それは貴様が俺に話したいとやってきた内容に関係があるのか?」

 

 俺の問いに、我が意を得たりとばかりに伝者が首を縦にふる。

 

「大いにあるとも。ザイニイとヌルテならば信頼もできようが、いきなり現れた者に信用して話せようか」

 

 敵の将軍を信頼する、などと世迷い言にも聞こえそうなことを言いながらも、彼の目線は揺らがない。

 力強く、俺を貫かんばかりに見ている。

 

 いいぞ。

 俺はこういう有望な若者が大好きだ。 

 

「ほう。そこまで言うならば名乗ってやろう。俺は大草騎国が単于、アイショウというものだ」

 

 俺の言葉に、彼は一瞬虚を突かれたように黙り込む。

 そして次の瞬間、弾けるように笑い出した。

 

「はっはっはっはっは、なんと! なんとなんとこの北東胡終わりのときに、匈奴の単于を迎えることになろうとは! はっは、なんともおもしろきことよ!」

 

 ひとしきり笑い終わった男は、再び俺に顔を向けると、今度は真剣な表情になって話し始めた。

 

「では、北部の東胡をまとめるルフマ族の長として、今代の単于に頼みがある」

 

 長と。

 自ら名乗るその男に、今度はこちらの親衛隊を割り当てている者たちがざわつく。

 このあたり、胆力なり想像力なり、圧倒的に秀でたものを持ってないとこういう場面で相手に飲み込まれがちだ。

 

「静まらぬか」

 

 俺の少し強く張った一言に、一気にシンと場が静まり返る。

 親衛隊の中には、俺の圧に表情を強張らせている者もいる。

 

「これは長と長の話である。邪魔をするな」

 

 むしろ、今もなお好戦的な笑みで、ランランとした瞳で俺を睨みつけるこの男の方が、よほど胆力がある。

 

 いいな。

 本当に欲しい。

 かつて若き頃に、同じ部族や配下に入った部族の若者達を修羅場に引きずり回しては鍛え上げていたのを思い出す。

 

「言ってみよ」

「これより行われる戦の趨勢がどうなれども、我らを大草騎国に民として迎え入れてもらいたい」

 

 その言葉に先に反応したのは、やはり近くの兵士たちだった。

 

「貴様、一体どういうつもりだ!?」

「降るつもりならば始めから戦わなければ──」

「黙れと言った」

 

 そんな彼らを、俺は一言で黙らせる。

 このあたりは現代の教育を受けた人間でも普通にやらかすだろうし、もう馬鹿は馬鹿というか、どうしてもそういう種類の人間というのはいるのだ。

 教育でどうにかなる問題ではない。

 

 それよりも今はこっちだ。

 

 下からこちらを見上げるルフマ族の長と名乗る若武者に顔を向ける。

 こちらを睨みつけるのではない、しかし力強く見つめる顔に、諦めや悲嘆にくれる色は一切ない。

 

 あるのはただ、明日に生きんとする力強き意思のみ。

 

「良かろう。この戦がどうなろうとも、北東胡は我らが大草騎国の一員として、民として迎え入れることをこの単于アイショウが誓おう。だが、戦の勝敗はどう決めるつもりだ?」

「俺の首が飛んだときか、俺が敗北を決断したときだ。そのときは全軍に、戦闘を停止するように命令している」

 

 やはり長としては自分の死を勘定に入れてきているか。

 俺としては惜しいが、長としての生き様を果さんというならば、それを止めるのは例え敵であっても野暮というものだ。

 それが、誇りと心に生きる古代の民というものである。

 

「貴様の死で暴走する者たちが出たときは構わず討ち取るぞ」

「それで構わない」

 

 しばしの睨み合い。

 どちらも先に視線をそらそうとせず、結局そのまま俺が口を開いた。

 

「その話、このアイショウが承った。ならば後は、全力で戦あるのみ。陣に戻って兵たちにそう伝えられよ」

 

 俺が了承した後、流石に僅かな間反応が遅れてから、彼は頭を下げる。

 

「っ、恩に着る」

「戦の開始は四刻後とする。良いな」

「おうとも」

「では、送ってやれ」

 

 俺がそう言うと、彼は再び複数の兵士に囲まれて陣の外へと連れ出されていこうとする。

 その直前で、俺はやはり彼を引き止めた。

 惜しい、と思う心に抗えなかったのだ。

 

「ルフマ族の長よ」

 

 俺の言葉に、伝者とそれを護送する兵士たちが止まり、俺を囲う円陣に開いた出口の当たりからこちらを振り返る。

 

「なんだ」

「俺は、確かに北東胡が欲しい。滅ぼすのではなく、我が国のこの身となって生きて欲しい」

「……ふっ。父が言っていた。今の単于が誕生してから、匈奴は変わったと。残虐さと獰猛さを失ったのに、更に強くなった、とな。今の言葉でそれが理解できた」

 

 ここから先を言葉を選ばなければならない。

 彼を傷つけず、しかし翻意させるために言葉を選ぶ。

 

「貴様もルフマ族の、北東胡の一人だ」

「……何が言いたい?」

「貴様あっての北東胡だと、俺は今日感じた。それだけの話だ」

 

 俺はどうしてくれ、とも、どうしろ、とも言わない。

 

「では行け」

 

 再び彼が兵に連れられて行く。

 思った感想は述べて残りは彼に任せた。

 そうするべきだ。

 長とは最終的にそうあるべきだ、状況に選ばされるのではなく自分で選ぶ人間であるべきだ。

 

 だから、討ち死にせんと彼が考えているならば、それもまた長としての一つの有り様だ。

 長とはただの指導者、リーダーではないのだ。

 

 だが。

 

「間違えてくれるなよ」

 

 ギリギリ聞こえるか聞こえないかの距離で、そう言ってしまう俺を許して欲しい。

 それほどまでに、若くとも立派な体躯と胆力を持つあの青年を、惜しく思った。

 

 結局そのまま、彼は振り返らずに兵たちに連れられて出ていった。

 

 それを見送った俺も指示を出す。

 

「全将校を急ぎ集めよ。千人将までだ」

「「は、ははっ」」

 

 慌てた伝令の兵士たちが陣から飛び出していく。

 

「単于様、よろしかったのですか?」

「戦って負けねば、納得出来ぬこともある。騎馬民族とは基本的にそういう者たちなのだ。お前たちも覚えがあるのではないか?」

 

 俺がそう問いかけると、周囲にわずかに気まずそうにする空気が広がった。

 当たり前の話だが、俺が匈奴を統一する際、始めから恭順を願った者などほとんど存在しない。

 俺と戦い敗れ、それから恭順を近い今はこうして従っている者たちがほとんどだ。

 匈奴を、騎馬民族を統一するというのはそういう大仕事だったわけである。

 

 今俺の周りにいる者たちの中にも、そういう経験者は大勢いる、というわけだ。

 そりゃ自分たちはどうなのだと聞かれれば気まずくもなるだろう。

 とはいえ、俺は何も彼らの心に傷をつけたいわけではない。

 

「ならば、わかるはずだ。戦って破れねば納得出来ぬ。ただ従うことを心が許さぬということを、な」

「……はっ、確かに」

 

 やがて集まってきた将校達に、俺は先程の敵の言葉と、敵が停戦を申し出てきたときに速やかに応じるようにと伝えた。

 またその際、停戦を無視して暴れる敵がいれば討ち取って構わないとも。

 そしてこの命令は、指揮官級でとどめておき、現場の兵士たちにはいざ敵が停戦を申し出てきたときにのみ伝えるようにとも。

 

 指揮官クラスの者たちならば、そういった戦の形も理解できるだろうが、まだ若い兵たちの中には理解出来ない者も大勢いるだろう。

 実際今この場にいる指揮官の中でも、若い千人将などが首を傾げては隣にいる五千人将らに諭されている。

 おそらく俺が言ったのと同じことを言っているのだろう。

 

 戦って、破れなければ、例え従うとしても納得が出来ない。

 実は従う必要がないほどに俺は強いのではないか。 

 

 血の気が多い騎馬民族らしい考え方だが、この考え方のおかげでがっつり打ち破った後は抵抗することなく軍門に降ってくれる者たちがほとんどだ。

 

 一方これが中華の場合は、打ち破られ、攻め滅ぼされたとしても、如何にこの中から隙を見つけて復興するか、という考えをするようになる。

 これは王の血統を神聖視し、王朝を神聖なものだと捉える中華ならではのめんどくさい考え方だ。

 だからこそ史実でもいつまでも滅ぼしたり跳ね返したり滅ぼされたり跳ね返されたりをずっと繰り返しているのだ。

 面従腹背とでも言うのだろうか。

  

 あるいは王家王族関係なくとも、一度敗れ命だけはと許されたものがなぜか再び勢力を増して今度こそ天下を奪取せんとばかりに戦いを挑んでくるようなことも後々の時代には例がある。

 なんとも馬鹿げた話であると思うが、中華というのはそういう道理が通らぬ世界なのだ。

 

 向こうはこちらを野蛮人扱いしているが、申し訳ないがこちらから見ればあちらの方もなかなかに野蛮である。

 何より七百もあった国を七まで減らしたような奴らに野蛮だのなんだのと言われたくなはいものだ。

 

「とはいえ、皆、手加減をしてやろうなどと考えるな。それで死ぬのは諸君らであり、諸君の大切な部下たちだ。大いに敵を討ち、それをもって敵を心の底から我らに臣従させるのだ。良いな」

「「「「おお!」」」」

 

 さて、それでは全力の戦を始めようか。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 約束通りの四刻後、開戦の合図とするかのように、敵から角笛の音が上がる。

 こちらもそれに合わせて角笛を鳴らさせるとともに、俺は命令を下した。

 

「第一陣突撃だ。騎馬遊撃隊は動く用意をしておけ」

「ははっ」

 

 俺の指示によって、前方で全軍の前に立って旗を持っている兵に向けて、本陣から旗が掲げられる。

 それをみたその兵士が旗を掲げることで歩兵や騎馬にその指示が伝わり、第一陣が突撃を開始した。

 

 左翼、右翼両方ともに同じ様に動いてきたようで、敵味方ともに第一陣が飛び出していき、前方でぶつかり合いが始まっている。

 

「やはり戦は良いな。心が踊る」

「はっ、誠に」

 

 単于の盾から唯一引き抜いてきたシュルメが、俺の隣に馬を進めて言う。

 

「単于様もいきいきしているように見えまする」

「そうか?」

「はい」

 

 まあ確かに、久しぶりに本気の戦を自分で指示していて、少々高ぶっているところはあるだろう。

 

 加えて、敵の心根を知った以上は、この戦は消耗戦にはせずに早いうちに終わらせてやらねばならない。

 敵にそうそうに負けを悟らせるほどの形に持っていくか、あるいは彼の若人の首を飛ばすか。

 できることならば前者にしたいが、楽なのはおそらく後者だろう。

 なぜならあれは、必ず前に出てくる将だからだ。

 中華なら蒙武や麃公が近いかもしれない。

 

「遊撃騎馬隊を出せ。すり抜けて正面の敵の裏をうたせろ。敵の主力が出てくるようであれば反転させて左翼、右翼とも裏を討たせておけ」

「はっ」

 

 俺の指示を受けた兵士が馬を走らせて伝令を伝えに行く。

 原作のキングダムだとそのあたりうまく描写してタイムラグのようなものを見せたり見せなかったりしているが、基本的にこの時代の戦は何をするにしろ時間がかかる。

 指示の伝達だって、旗で伝わるような単純なものならばともかく、複雑なものを口頭で伝えるとなると、人が何百メートルも並んでいる中を走って伝えに行かなければならない。

 

 故に出した俺の指示が伝わるまでだけで数分の時間がかかり、そこからようやく隊が動く。

  

 俺が出した指示は、第一陣と第二陣の間に隠しておいた遊撃目的で動かす予定の足の早い騎馬隊を突撃させ、敵の正面からではなく側面と裏からちょっかいをかけさせることである。

 

 これが結構騎馬の足も相まって効果的で、正面の敵とがっぷり組み合って戦っているのに、後ろから敵に背を討たれることで正面に軍の力を集中することが出来ずに次第に前線が押されていくのである。

 

 もちろん一度やってしまえば敵も後ろに守りを置いて備えるのでそう何度も効く手ではない。

 ただ今回はその効果ではなく、敵にちょっかいをかけることが目的なので、一度ではなく繰り返し突撃を、効果がない場合は入りこまないで良いので敵が鬱陶しくなるぐらいまで繰り返せと伝えている。

 

 走っていった騎馬隊が、右と左の戦場の間をすり抜けて敵の裏に回った。

 するとしばらくしてこちらの勢いが増し、前線が押し上がっていくのが見て取れる。

 

「効果あり、ですな」

「初見はな。一発で敵戦線を崩壊させれるわけでもないし、対応もされる。まあ今回はその対応させるのが目的なんだが」

 

 その後再び前線が膠着状態になったところで、右翼ではそうそうに第二陣が突撃を開始した。

 

 なお今回の戦では、中央に俺の本軍四万を。

 右翼にハイトとルルシウスの計三万を。

 左翼にシウイとアイボの計三万を配置している。

 

 右翼の第二陣が出たのは、第一陣をルルシウスの強固なファランクス部隊が受け止め抑え込んだところを、ハイトの強力な騎馬突撃によって粉砕する心づもりなのだろう。

  

 敵もその様子に焦ったのか、こちらの右翼にわずかに遅れながらも増援の兵士を送った。

 

 一方こちらは縦に二軍を並べるのではなく広く横に並べていた左翼では、敵とぶつかっている第一陣を放った軍より更に外側の軍から数千の騎馬が放たれ、それが乱戦の会場をむしして敵の左翼本軍へと突撃していった。

 

 こちらもまた、俺の指示を遂行しようと動いてくれているのだろう。

 

「報告! 敵中央軍第二陣一万が前線へと向かっています」

「一万か……」

 

 報告から効く限りでは、敵の中央軍はこちらと同じ四万でそこに本陣が置かれている可能性が高い。

 第一陣で一万、第二陣で一万の計二万を使わせている状態だ。

 

 たいしてこちらの中央は初手で一万、そして騎馬隊二千をつかってはいるものの、それ以外には消費をしていない二万八千がいる。

 この二万八千の破壊力は温存したいが、かと言って一万対二万でぶつかり合うと少々こちらが不利になる。

 

 ただそこはうまく騎馬隊が動いてくれていて、敵の背を突きまくっていることで敵の前線が横に広がらないように抑え込まれている。

 

「一旦騎馬隊を敵右翼の背面に移しておけ。敵の第二陣がぶつかり次第もう一度突かせるぞ」

「はっ」

 

 とはいえ今度はその騎馬が、敵第一陣と第二陣に挟まれては意味がない。

 今までは出撃していなかった敵第二陣と第一陣の間の広い空間を使って移動を繰り返して攻撃していたので捕まっていなかったが、その空間が狭くなれば捕まってしまう。

 

 故に一度騎馬を別の場所へと移動させて、再び空間が出来たところに突撃させる。

 まあ今度は敵も防御してくるだろうが、それはそれで良いのだ。

 

 敵の中央軍を薄くし、なおかつ気をこちら以外に惹きつけておくことが、俺の狙う必殺の策にとっては重要なのだ。




若干人材オタクの気がある単于様。

これと次の後は結構離れるかもしれません。
ご了承ください。

最新話の後もう一戦南東胡とする戦の描写、欲しい?

  • 欲しい(趙・匈奴の戦いレベルでしっかり)
  • 欲しい(今回の戦ぐらい短めで)
  • それより早くあの将軍と会え
  • 合従軍まだ?
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