ちょっと!!勉強の邪魔しないでよ!!   作:狂骨

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夏のショッピングモール

 

「え?編入の話?」

 

体育祭の休み明け初っ端の授業開始前。心操の言葉に拳太郎が首を傾げると彼は答えた。

 

「そうだよ。来たんだろ?」

 

「あ〜」

 

拳太郎は数日前の校長室での呼び出しを思い出すと首を横に振る。

 

「確かに来たけど、僕は編入しないよ。だって正義感なんて持ち合わせてないし」

 

「はぁ…お前ほんとブレねぇよなぁ。別にんな心意気なんざお前なんてなくても染みてんだろ?」

 

「そう?でもそう言う心くんこそいいの?結構、観客席の人達の間で話題になってたじゃん」

 

そう言い拳太郎が心操へと尋ねると心操は軽く返す。

 

「だからとっくに申請したよ。しばらくは様子見だってな」

 

「おぉ!」

 

その返事を耳にした拳太郎は笑みを浮かべると心操の両肩を叩く。

 

「やったじゃん!!!」

 

バシッバシッ

 

「やめろぉ!!陥没すんだろぉ!!!」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

それからしばらくして。日にちが何度も何度も過ぎていきヒーロー科やサポート科が職場体験などを終えていき、そして期末試験も終わった直後の休日。

 

「さてと…着いた着いた」

 

拳太郎は両親から頼まれたオツカイのために木椰区のショッピングモールを訪れていた。時期が時期なためか、周囲には家族連れやカップルで溢れかえっており人混みができていた。

 

「う〜ん。どの店にするか」

 

その中で周囲を見渡しながら拳太郎は店を探していた。

 

すると

 

「ん?」

 

中心にある休憩スペースらしきベンチに2人の男性が座っていた。その内の1人は学生服であり、なおかつ見覚えもある人物であった。

 

その人物を見つけた拳太郎は大きく手を振りながら歩いていく。

 

「お〜い!緑谷く〜ん!」

 

向かう先にはフードを被った男と共にベンチに座る緑谷の姿があった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

それと同時刻。A組の皆(数名を除いた)でショッピングへと訪れていた緑谷は最悪の窮地にいた。

 

「見てみろ…どいつもこいつも…いつ個性を使われてもおかしくねぇのに群れてやがる…保須での能無もヒーロー殺しに食われた…なぜだ?なぜ誰も俺を見ない…?ヒーロー殺しも俺と同じだろ?何が違うと思う?緑谷…」

 

ベンチに座るのは緑谷…そして、まるで最後の一本を当てようか当てないか楽しんでいるかの様に4本の指で彼の首を掴んでいるフードの男の姿があった。

 

不気味な雰囲気を漂わせるその男の問い掛けに緑谷は答える。

 

「…僕もヒーロー殺しも…初めはオールマイトだったからだ…。僕はあの時助けられた…だから少なくともアイツは…壊したくて壊してたんじゃない…徒に投げ出したりもしなかった…やり方は間違ってたけど…理想に生きようとしていた……と思う」

 

自らが今まで見てきた景色を交えながら己の心情を正直に言葉にし答えた。

 

 

 

 

 

その瞬間

 

「そっかぁ〜なぁんかスッキリしたぁ…何でヒーローがムカつくのか…なんでお前が鬱陶しいのかようやくわかったよ〜…」

 

「…!!!」

 

死柄木からとてつもない程の殺気が放たれた。嫌悪感を露わにしてしまう程のその殺気を放つ死朽木へと緑谷が向けるとそこには

 

「そっかぁ…全部そうだ…全部オールマイトだぁ…!!」

 

 

_____不気味な程までの満面な笑みを浮かべる死柄木の顔があった。その悍ましい殺気と共に放たれた笑みは見るだけで更に恐怖心を掻き立てていく。

 

「そうだ…そうだよなぁ…!何を悶々としてたんだ俺はぁ…!!周りの奴らがヘラヘラ笑ってるのもオールマイトがヘラヘラ笑ってるからだよなぁ!!!話せてよかったよ緑谷ぁ…!!俺は何も曲げることはねぇんだぁ…!!」

 

次々と吐き出されていくその狂気と言葉に緑谷は限界に達したのか離れようともがき始める。だが、それを男は止めた。

 

「おおっと動くな?死にてぇのか?ここでお前が死ねば周りの人間も死ぬぜ…?」

 

「く…!!」

 

 

その時であった。

 

 

 

「お〜い!緑谷くん!」

 

 

「!?」

 

聞き慣れた明るい声が聞こえ、見るとそこには手を振りながら歩いてくる拳太郎の姿があった。

 

「偶然ですね。友達と一緒でしたか?」

 

そう言い拳太郎は死柄木を警戒することなく此方へと向かってくる。

 

「〜!!!」

 

緑谷は咄嗟に離れる様に叫ぼうとするが、今叫んでしまえば死柄木が自身を殺害し、更にその一部始終を見ていた拳太郎をも殺してしまうだろう。それに加えて彼の首を掴む力が更に強まり声さえも出す事が出来なかった。

 

その一方で拳太郎は全く警戒していない。それどころか死柄木を自身の友人と認識していたのか更に此方へと歩いてきた。

 

 

 

すると

 

「おっと悪い悪い!連れが待ってたのか〜!」

 

突然と男は手を離し、先ほどとは異なる少年のような無邪気な笑みを浮かべると立ち上がった。

 

「じゃあ帰るわ。追ってきたら…分かるだろうな…?」

 

「ま…待て!!!【死柄木】!!!」

 

立ち去る寸前、緑谷はその男【死柄木 弔】を呼び止め、オールマイトから聞いたある事を尋ねる。

 

「オールフォーワンは…何が目的なんだ…!?」

 

「…知らねぇよ」

 

その質問に答える事なく死柄木はそのまま人混みへと消えていったのであった。

 

 

 

すると

 

「あ、これってあの人の忘れ物じゃないですか」

 

「え…?」

 

拳太郎が地面に落ちていたものを拾い上げる。見ればそれは死柄木の被っていた不気味なマスクであった。

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

 

___信念も理想も最初からあったよヒーロー殺し…!!

 

_____何も変わらない…だがこれからの行動は全部そこへ繋がる…!!

 

背後から聞こえてくる騒ぎに耳を傾けながら、ショッピングモールを出た死柄木はようやく見つけた自身の答えを頭の中で咀嚼するかのように繰り返していた。

 

___オールマイトのいない世界を創り正義とやらがどれだけ脆弱か暴いてやろう…!!!今日からそれを信念と呼ぼう!!

 

何度も何度も。それこそ自身の目的である事を示すかの様に。

 

「…あ?」

 

そんな中、ポケットを漁っていると、持ち合わせていたマスクが見つからなかった。

 

「(マスクがねぇ…落としたか…?)」

 

すると

 

「あのすいません。落とし物ですよ」

 

「あ?」

 

突如として背後から声が聞こえ、振り返るとそこには先程、緑谷の隣に立っていた少年「拳太郎」が立っていた。

 

「え…?(な…なんだコイツは…?気配も何も感じなかったぞ…?)」

 

気配もない殺気もない。ただ普通に現れた拳太郎に死柄木は不気味な感情を抱く。その一方で、

 

「はいこれ」

拳太郎は手に持っていた死柄木の手形のマスクを渡してきた。

 

「…」

差し出されたマスクを受け取った死柄木はマスクをパーカーのポケットへと入れると手を差し出した。

 

「あ〜ありがとなマスク拾ってくれて…」

 

「いえいえ!こちらこそ!」

 

それに対して拳太郎は笑みを浮かべると同じく腕を差し出した。

 

その行動に死柄木は笑みを浮かべる。

 

「(あ〜あ。可哀想に♪)」

 

死朽木の個性。それは【崩壊】

 

彼の左右どちらかの腕の指5本が触れる事で、有機物、無機物とわず、文字通り全て崩壊させてしまう恐ろしい個性である。その威力は強力であり、たとえ巨大な体躯を持つ相手であろうと、触れれば1分、小さな子供であれば数秒で灰にしてしまうのだ。

拳太郎の体格は小柄なために触れられれば1分足らずで灰になるだろう。

 

握手…それは互いに指と指どころか手そのものを重ね合わせる行為。それを誘っていると言うことは即ち、死柄木は拳太郎を殺す事に決めたのだ。

 

迷いなどない。自身が嫌悪するヒーローの様な正義感のあるその行動と忠告を無視したので殺しても問題などない。

 

「(せめて苦しまずに殺してやるよ)」

 

そして、死柄木はゆっくりと拳太郎の手を握り締めたのであった。

 

「(死ね…!!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あれ?」

 

死柄木は目の前の状況をもう一度見る。

 

「え?…え?え?」

何度も何度も力を入れて握り締めていく。だが、何度見ても目の前に映っているのは朽ちる事も崩壊する事もないピチピチなままの拳太郎の姿であった。

 

「(どう言う事だ!?個性が効かない!?イレイザーヘッドが近くにいんのか…!?)」

 

その様子に死柄木は周囲を見渡すも、周囲からの視線はなかった。即ち、ただ単純に拳太郎に個性が効かないのだ。

 

「ま…待てよおい…おかしすぎんだろ…?」

 

死柄木がボソボソと呟く中、死柄木の手を握りしめていた拳太郎は満面の笑みを浮かべながら答えた。

 

「神堂 拳太郎です!どうぞよろしく!!」

 

 

 

その瞬間

 

 

グキィィィンッ!!!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

骨が砕け散る音と共にその場に死柄木の巨大な叫びが響いたのであった。

 

 

 

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