それは何年も前____彼女が中学3年生の頃にまで遡る。
その天真爛漫かつ好奇心旺盛な性格は幼い頃から健在であり、興味をもった持った分野を見つけては自分が満足するまで追求していく程であった。
それは知識だけではない。自身の個性もだ。幼い頃に発芽した個性『波動』最初は手が輝くだけで何も起こらなかったが、それを見た事で彼女の好奇心が芽生えた。
____この個性、どうなってるんだろう?
その日から彼女は調べ尽くした。筋トレをしている拳太郎の横で何度も何度も実験を繰り返し、自身の個性が一体何なのか?どこまで出来るのか?
「ねぇねぇ知ってる!?私の個性ってビーム出るんだって!」
「え?そうなんですか?」
そして時が経つにつれて彼女は自身の個性の正体を見つけていった。『波動』は自身のエネルギーや気分に比例して威力の高い波動を放つ超特殊な個性であったのだと。
「ねぇねぇ知ってる!?私の気分によって威力が変わるんだって!」
「そんなに威力があるなら、ロケットみたいに飛べそうですね」
「はっ!」
拳太郎の言葉を耳にした彼女は更に個性を応用し強化させていく。
そして、たどり着いた境地が、威力の高い光線のみならず飛行をも可能とさせる個性であった。
彼女の培ってきた努力の賜物であり、その能力を得た彼女は地域において次第に頭角を表す様になり、中学3年生へと上がる頃には学力も備わり『神童』とまで言われる様になった。
それと共に彼女自身も『ヒーロー』へと憧れを抱き、雄英を目指し始める様になったのだ。
だが、
精神年齢が発達するとともにヒーローを目指す者達が集う環境下の中で、彼女の抜きん出た個性は同級生達の嫉妬を招いた。
「ねぇアンタ、良い個性持ってるからってウチらのこと見下してんでしょ?」
「…え?」
中学3年生が始まって間も無く。教室へと入ってきた途端に降りかかって来た言葉にねじれは動きを止める。
「別に見下してなんかないよ?個性だって最初は上手く使えなかったからたくさん練習し_____」
「はぁ?何それ?個性を伸ばせば誰でも私みたいになれる〜とでも言いたい訳?」
「違う違う!私は_____」
「ハッ!マジむかつくし。なんなの?良い個性持ってるだけでチヤホヤされやがってさ!いいよねぇ〜大吉引いた奴は行きたいトコ行けて〜」
「……」
反論すればするほど、クラス中から上がってくる嫉妬の言葉が増えていき、仲が良かった友達も離れていった。
「…」
彼女はただ個性を使っていただけで何の罪もない。ただ鍛えすぎたためにそのパフォーマンスを見た他者が勝手に嫉妬しただけである。
だが、精神年齢が年相応なために彼女は自信を喪失するとともに己を責めた。
___そうだ…こんな私が…いけないんだ…
◇◇◇◇◇◇◇
それから彼女は変わってしまった。誰にでも明るく振る舞っていた彼女はその顔からは笑顔が消え失せ、教室に入っても誰1人と喋る事なく毎日、窓の外を見上げるだけとなってしまった。
「…」
窓から見えるのはただ風に揺れる木のみ。だが、それを見つめる事だけが心の支えであった。
すると
「ねじれさん。忘れ物ですよ」
教室の扉が開かれると、袋を持った拳太郎が現れた。
「はい、参考書」
教室へと入ってきた拳太郎はねじれへと近づくと彼女が使っている参考書を袋から取り出し机の上に置く。それは雄英高校の過去問であった。
すると
「はっ!雄英だなんてアタシらには一生縁がないわね〜!さすが選ばれた人だわ〜」
最初にねじれに嫉妬の言葉を浴びせた女子生徒が机に座りながら声を上げる。それによって、周囲の生徒達も拳太郎達へと目を向けた。
「ていうか、そのチビなに?まさか男?いや〜雄英志望様は個性どころかリアルも充実してるなんて羨ましいね〜♪」
「…」
その目線は先程まで無表情であったねじれの表情が曇っていく。
そんな中であった。
「あの、ちょっと黙っててもらってもよろしいですか?」
拳太郎が声を上げた。それによって、先程の周囲から上がっていた声が止まる。
「は…はぁ?何言ってんのよ…?」
「いやだから黙っててほしいって言ってるんですよ。努力も何もしてない人は」
そして、拳太郎は前に立ちその女子生徒へと淡々と告げた。
「まずそもそも雄英を目指してすらない貴方達の言葉は正直、聞いてて腹が立ちますし、耳障りです。それと、ねじれさんの個性に酷く嫉妬してる様ですが、彼女が『努力』の末に見つけた使い方ですよ?なぜそこにいちいち文句つけるんですか?寧ろここまで鍛え上げてきたことを称賛すべきでしょう」
___!!!
その言葉にねじれは顔をあげ、拳太郎の背中を見つめた。
その一方で、女子生徒は顔を歪め、眉間に皺を寄せる。
「は…はぁ…?何よさっきから努力努力って!ただ個性使いまくってるだけでしょ!?そんなののどこが凄いんだよ!!」
「いや努力の意味、履き違えてませんか?ただやり込むだけなんて誰にでもできますけども人によっては非効率ですし、そんなもん努力でも何でもないです。自分にとって最も効率的な方法を見つけて行うトライアンドエラーの繰り返し。それが『努力』ですよ?まぁ理解できないでしょうが」
「は…?アンタもアタシら見下してんの…?」
「いや僕、貴方のこと知りませんし。見下す気もありませんし、むしろ見下すのに労力使うので寧ろ避けたいぐらいです。と言うか見下すよりも_____
_______“努力してる人の側にいたいです”。感化されて自分ももっと努力しようと思えるので。ねじれさんの熱心に取り組む姿、僕もいい薬になりましたし」
「拳ちゃん…」
その言葉はねじれの消え掛かっていた自信という灯を再び点火させていった。
「あと、さっきから聞いてれば皆さん結構、ねじれさんのこと馬鹿にしてますけど…最近、この人が元気がないのって_______
__________アンタらの所為ですか…?」
「「「「「…!!!」」」」」
その瞬間 周囲一帯に超高密度の殺気が溢れ出し、空気を震撼させた。その場に立っていた生徒全員は拳太郎から感じられる獣の如き鋭い眼光と声色、そして今にも襲い掛かってくる程の威圧感に声すら出せず、身体を震わせていった。
すると
〜♪
その空気を突き破るかの様に朝のチャイムが鳴り出した。それと同時に周囲を覆っていた殺気が一瞬で消え失せる。
「あ、もうこんな時間だ。じゃあ僕はこれで。あ、あと最後に言わせてもらいますけど、努力もしない人が一々そうやってネチネチ言うの…やめた方が良いですよ。惨めなので」
それだけ言い残すと拳太郎は教室から出ていったのであった。
「…」
彼女の頭の中には彼の言葉が今もなお残っており、思い出す度に今まで自身を縛り付けていた鎖が全てぶち壊され、それすらも自信に変わっていく様な気がした。
「拳ちゃん…」
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
その日からはねじれは彼をただの幼馴染ではなく、『自分を鼓舞し、自分を見てくれている親友』__否、いつしか親友ではなく想いを抱く様になってしまった。
彼の言葉を思い出すと不安も何もかも消え去り、何事にも全力で打ち込める様にもなっていった。
彼の言葉こそ自身の心の支え、そして頑張る糧になるのだ。
_____拳ちゃん!やったよ!A判定!!!
受験までの間、ねじれはクラスメイトの生徒達とはあまり話す事なく、拳太郎のみと会話していき、それを自身の糧にし精進していったのだ。
そして
「やったぁー!!!!受かったぁー!!!」
彼女は遂に高倍率の試験を乗り越えて、雄英高校のヒーロー科の合格を勝ち取ったのであった。
だが、彼女が得たのはそれだけではなかった。
「凄いよねじれさん!!おめでとう!!!」
合格を拍手しながら祝う拳太郎を見ていたねじれはその身体を抱きしめる。
「ありがとう!拳ちゃんのおかげだよ!」
「そんな…は…恥ずかしいですよ…」
頬を染めながら照れる彼の身体を抱きしめる中、ねじれは抱きしめたその腕にさらに力を込めていく。
_____あぁ…声だけじゃない…拳ちゃんの身体…匂い…全部が私を元気にしてくれる…
あの日からそうだ…もう拳ちゃんの存在こそ私の全てなんだ…拳ちゃんがあるから私があるんだ…うん。それしかない…拳ちゃんが……私の一部なんだ…
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
「ねぇ…拳ちゃん…」
「はい?なんで_____むぐぅ!?」
合格した日の夜。拳太郎の家でパーティを開き、互いの両親が酒を飲みながら談笑する中、拳太郎を呼び出したねじれは彼の唇へと自身の唇を押し付けた。
「ぷはぁ!何!?何なの!?」
「…ごめんね。私もう拳ちゃん無しじゃ生きていけなくなっちゃった…」
「ひぃ!?」
拳太郎が見上げた先には、此方に向けて満面の笑みを浮かべるねじれの顔があった。だが、その顔は可愛らしいというよりも、狂気を感じる笑みであり、抱き締める力も普段とは全く比較にならないほど強くなっていた。
そして
「むぎゅぅ〜!!!」
「ひやぁ!?」
その身体を更に強く抱きしめると、彼の身体中を触り始めた。
「はぁ…!はぁ…!拳ちゃん!拳ちゃんの感触!汗の匂い!仕草!もう無理…!!このまま一緒に下宿しようよ!そしたら毎日毎日お泊まり会できるよ〜!!」
「いやぁぁぁぁ!!!ちょっと怖い怖いよ!!」
「あれれ〜?照れちゃってるのかなぁ?可愛い…あぁ可愛いよ拳ちゃん…!!!」
「ぎやぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
その後、ねじれは満足するまで拳太郎を抱き締め、玩具の如く撫で回した。
その結果、彼女に玩具にされて遊び回されたその出来事は、まだ性的な欲求が芽生えていない拳太郎にとって最悪な思い出となり、彼女に対して苦手意識を持つ様になってしまった。
そして、彼女が帰ってくる時は、いち早くその情報を仕入れると誰も知らない場所へと姿を隠す様になったのだ。
_______ねぇねぇ知ってる!?私、拳ちゃんに会いにくるために帰ってきたんだよ!?久しぶりにお泊まり会しようよ!
1年生最初の長期休暇。彼女が家を訪れても彼の姿はどこにもない。
_______ねぇねぇ知ってる?私、インターン始めたんだ!
インターンを始めた時期の長期休暇に帰還しても、彼の姿は見当たらなかった。
_______ねぇ拳ちゃん!ねぇってば!ねぇ!!!
その後も彼女は長期休暇の度に帰ってくるものの、拳太郎とは会う事はなかった。
「ねぇ…なんで…会ってくれないの…?寂しいよ拳ちゃん」
そして3年生となる直前の春休み。
「ねぇねぇ知ってる…?私…そんなに嫌われちゃうと_____
__________と〜っても悲しくなっちゃうんだよ?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「えへへへ…拳ちゃんのほっぺぷにぷに〜♪」
あれから部屋へと連れ込まれた拳太郎は布団の上で彼女に抱き締められ、頬を突かれたり頭を撫でられたりと彼女の玩具にされていた。
「こんなに筋肉あるのに私よりも小さ〜い♪」
そう言い彼女は布団の中で拳太郎の鍛え上げられた腕を触りながら頬を擦り寄せていく。
そんな中であった。
「ねぇ拳ちゃん…何で私が帰ってきた時はいなかったの?私と会うのがいやなの?」
「そ…それは…」
その質問に拳太郎は目を泳がせながらも答えた。
「ご…ごめんなさい…その時は外せない用事が…」
「へぇ〜そうなんだ〜♪」
拳太郎が答えるとねじれは頷きながら彼の頭を撫でると、懐から数枚の写真を取り出した。
「うんうん知ってるよ♪だってほら…」
そう言い彼女が見せてきた写真には______
_______彼女が帰ってきている時に、山の中に建てた秘密基地でくつろぐ自身の姿が写っていた。
「こ〜んなに気持ちよさそうに寝てるんだもん♪」
「そ…その写真は…」
拳太郎が写真を見て震える中、ねじれはその写真を手でなぞり始める。
「えへへ〜案外すんなり見つかっちゃったから思わず撮っちゃいました〜♪因みにこれが2日目…それでこれが私が2年生の時の夏休み…それでこれが」
次々と紹介されていく写真は全てが彼女が帰ってきている時の自分の姿であった。どこから撮っていたのか全く分からない。いや、位置的に森の中ではあるが自身が全く分からない場所から撮影していたのだ。
「ねぇねぇ、何で拳ちゃんは私を避けるの?ねぇなんで?なんでかな?正直に答えてよ〜」
「むぐぅ!?」
彼女は何度も尋ねながら自身の身体を拳太郎へと押し付けていく。彼女の女子の中では比較にならないほどの豊満な胸が形を変えながら拳太郎の顔へと押し付けられていくが、彼女の迫る気迫や声色、そして周囲に貼り付けられている自身の写真によって、性的興奮などは決して湧く事はなく、かわりに恐怖心が増していった。
「あ〜!もしかしてあの時、無理やりキスしたから?そうなんだぁ!それなら早く言ってよ〜照れ屋さんなんだから〜♪」
ガシッ
すると、ねじれの両手が拳太郎の両頬を挟み込んだ。そして彼女はゆっくりと顔を近づけていく。
「じゃあそうならないぐらいに…キスしちゃおっか♪ついでに“既成事実”も作っちゃおうね〜♪」
「ま…待って!!僕たちまだ高校生ですよ!?こんなの!!」
「あは♪関係ないよそんなの…___
________拳ちゃんは私のものなんだから…♡これからもこの先も…ず〜っと♪」