近々、主人公の挿絵も載せようかなと考えてます。
それから拳太郎はねじれと強制的に同居を始める事となった。双方の両親は2人の幼少期を知っているのか、良しとのことであった。軽すぎない?
「ねぇねぇ知ってる〜!?今年の合宿って敵襲撃に備えるために行き先は秘密らしいよ!」
「そうなんですか?」
ねじれとの同居が始まり、数日を経た日の朝であった。朝食をねじれと2人で食べていた拳太郎は、敵が暴れるのニュースを見ながら、ねじれのその知らせに首を傾げる。
合宿とはヒーロー科の名物であり、毎年ヒーロー科の1年生達はあらゆる場所で合宿し個性を鍛えるのだ。因みに休みに入って数日後のために、もうとっくに出発して2日目の個性訓練の真っ最中だろう。
「というか、合宿なんてあるんですね」
「うんうん。ヒーロー科はね、キャンプして個性を鍛えるんだよ。あの時は楽しかったな〜」
「いいですねキャンプ。僕も行きたいな〜」
バキン
食事を終えると、両手につけられた鉄枷と首輪を断ち切り拳太郎は荷物を纏めて立ち上がった。
「じゃあそろそろ行きますね」
「うん!ちゃんと帰ってきてね!でないと…」
「帰ってきますから!!」
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その後、拳太郎はその場から駆け出し、数分で神奈川県の神野区へと到着した。なぜ拳太郎がここへ来たのか?それは英語の資格試験だ。静岡県でも受ける事が出来るのだが、申し込むのが遅すぎた為に、会場が神奈川県になってしまったのだ。
「ホテルは…ここか」
拳太郎がたどり着いたのは会場に一番近いものの、やや治安が悪い場所だ。周囲には幾つもの無人ビルが立ち並んでおり、路地裏からは事件の香りが漂ってきていた。
「怖いけど…まぁしょうがない。取り敢えず明日に備えるか…」
それから拳太郎は机に向かった。今日のために演習はたっぷりしてきた為に、前日は単語の確認だ。
今まで解いてきた予想問題で訳せなかった単語に付箋を貼り付けた『単語ノート』を取り出し、次々とめくり頭の中へと染み込ませていく。
そして時間が経過し、時刻は20時を回り始めようとしていた。
「よし…取り敢えず確認おしまい…」
単語ノートを数周し終え、食事も済ませると拳太郎は背伸びをし、布団へと飛び込んだ。
「さぁて…寝るか…」
準備は万端。明日を待つのみであった。
因みに拳太郎はこの日まで緊張のあまり一睡も出来なかったらしい。
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____バン
___ガシャァァァン
_____ドシャァン
______ドガシャァァァァァンッ!!!!!!
「ぬん!!!」
真夜中。突如として鳴り響いてきた轟音に拳太郎は飛び起きた。
「もぅ何なのさっきから!?こっちは試験だったのにうるさくて眠れやしな______」
ドガシャァァァァァンッ!!!!
その瞬間 拳太郎のいた部屋の天井が崩れ落ち、瓦礫の雨が降り注いだのであった。
「…なに…ごと…?」
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拳太郎が宿泊していたホテルから数十メートル程度離れた場所。そこは既に更地と化しており、周囲には多くヒーロー達が倒れていた。
「ハァ…ハァ…ハァ…!!」
その更地と化していた場所の中心に立っているのは満身創痍となっているオールマイト。
だが、その姿からはいつもの雰囲気が感じられない。みればがっしりとしていた巨漢は平均身長並に縮んでおり、頬は痩せ、トレードマークたるV字に逆立つ前髪も前に倒れていたのだ。
それは即ち【活動限界】である。今まで3時間しか活動できなかったタイムリミットが今来たのだ。
さらに最悪な事に敵とヒーローの総力戦を世間に広めるべく、カメラを載せたヘリコプターも上空に飛んでおり、その姿が今、全国へと晒されていた。
そして、そんな彼の目の前では、対峙するかのように立つ不気味なマスクを装着した大男の姿があった。
その男の名は誰も知らない。だが、世間ではこう呼ばれていた。
『オールフォーワン』
彼の通称であり彼の個性である。その個性は恐ろしい事に相手の個性を根こそぎ奪い取る事ができるのだ。
オールマイトの全盛期、それどころか彼の師であり先代ワンフォーオール継承者『志村奈々』__否、初代ワンフォーオール保持者がいた時代から生きており、長きに渡る人生の中でその身に宿した個性は数知れず、それどころか吸収した個性を組み合わせて強力な技を編み出す事もできるのだ。
それによってオールフォーワンは、合宿の際に自身の“弟子”である死柄木達が拉致した爆豪を救出するべく現れた多数のトップヒーロー達を一掃し、オールマイトを防戦一方の状態へと追い詰めていたのだ。
平和の象徴たる彼が敵のボスに追い詰められ、あろうことかその弱々しい本来の姿を見せた事で世間は不安の渦へと飲み込まれようとしていた。
だが、それでも世間は平和の象徴たる彼を信じて声を上げた。
____がんばれぇ!!!オールマイトぉおお!!!
__そうだぁ!!!負けるなぁぁぁ!!!
____オールマイトぉ!!!!!!
声は聞こえない。だが、その映像を見ていた世界中の人々は声を上げ声援を送ったのだ。
そして、その言葉が聞こえているのか、オールマイトはその身体でありながら右腕を握り締める。
「あぁそうさ…守るものが多いんだよオールフォーワン…だから負けないんだ…ッ!!!!」
その瞬間 萎んでいた彼の右腕が輝き出すとともに筋肉が発達し始める。オールフォーワンの攻撃を何度も防いできた為、本来ならば既に活動限界へと達しているその右腕は歪な形をしているが、それでもオールマイトは構えを解く事はなかった。
「ほぅ?それは『渾身』どうやら君の最後の一振りのようだね。全く手負いのヒーローは恐ろしい」
その様子を見ていたオールフォーワンは空中へと飛び上がる。
見ればオールマイトの周辺には次々とヒーローが現れ、彼が全力で拳を振れるようにするために周辺の被災者を救助していた。
オールマイトへと次々と送られる激励の言葉。それを耳にしたオールフォーワンは額に筋を浮かび上がらせる。
「煩わしい。精神の話はよして現実の話をしよう」
すると、オールフォーワンの右腕が歪み始めるとともに膨張し始めていった。
「『筋骨発条化』+『瞬発力×4』+『膂力増強×3』+『増殖』+『肥大化』+『鋲』+『エアウォーク』+『槍骨』今までのような衝撃波では体力を削るだけで現実性がない。確実に殺す為に__今僕の中にある最高の個性達で______
_______君を殴る」
その腕はもはやこの世のものではない。先程まで一般人よりもややたくましかったその右腕は、無数の手が重なり合いながら次々と筋肉が形成されていき、遂にはオールフォーワン自身に匹敵する程の超巨大な拳へと変形していたのだ。
「緑谷出久。譲渡先は彼だろう?資格もなしに来てしまって、制御しきれてないじゃないか。存分に悔いて死ぬといいよ…先生としても君の負けだ!!」
その異形な腕を生み出したオールフォーワンはオールマイト目掛けて飛び出しその拳を放った。
だが、オールマイトも屈しない。
最後の力を『ワンフォーオールの残火』をその手に強く握り締めた拳を放った。
「うぉおおおおお!!!!!!」
無数の個性とともに恨みの込められた拳と全てを賭けた一撃を放った拳。拮抗する互いの拳が空気を突き抜けながら向かってく。
そして_____
___________止まった。
「「え?」」
突如として受け止められた感触に2人はほぼ同時に腑抜けた声を漏らしながら互いを見つめ合う。見れば、自身らの拳が衝突する前に止まっていたのだ。
本当に止まったのか?_______
______否、何者かが2人の間に入り、両者の拳を掴む形で止めていたのだ。
オールマイトを確実に仕留める為に組み合わされた個性の一撃を見舞うオールフォーワンの拳と、全てを込めた一撃を放つオールマイトの拳を。
2人の全力を伴った一撃など、並の人間ならばその衝撃で消し炭となるだろう。たとえ頑丈な者でも直撃すれば命はない。ましてや、それが全力でぶつかる寸前に止めることなど不可能だ。そんな生物がいるというのか?いるわけがない。だが、現に2人の間に立つその黒い影は2人の拳を掴む形で衝突する寸前に止めていたのだ。
「ま…まさか…!」
その拳を握り締める握力にオールマイトは冷や汗を流しながらゆっくりと黒い影に目を向ける。
すると、月明かりに照らされてその姿は露わとなった。
「まさかとは思いますが…さっきの騒音はアンタらの所為ですか…?」
そこには目を真っ赤に染め上げる拳太郎の姿があった。
「し…しししし神堂少年んんんんんん!?」
「ねぇねぇ知ってますか…?寝るの邪魔されるのって…すっごく腹が立つんですよぉおお〜!し〜かも試験前ぇえええ!!!!!」