「おいおい!?何が起こったんだ!?」
「何も見えねぇぞ!?」
全国放送されているその戦いの映像は、神野区の避難区域に集まっている多くの市民の目の前に設置された、超巨大モニターにも映されていた。
だが、オールマイトとオールフォーワンの拳がぶつかると同時に周囲には巨大な煙が巻き上がり、その景色を覆っていたのだ。
「おいおい…どうなったんだ!?」
「分からない…」
攫われた爆豪を独断で救出した緑谷、轟、八百万、飯田、切島の5枚のうち、その場でモニターを見ていた切島と飯田は周囲の大衆と同じく、その映像を驚きながら見つめていた。
そんな中、
「え…う…嘘……でしょ…?」
緑谷だけは数々の特訓の成果によって、動体視力が人並み以上に鍛え上げられてきていた為に、少しだけだが、見えていた。
_____拳太郎がオールマイトとオールフォーワンの間へと現れるその光景を。
◇◇◇◇◇◇◇
場所は変わり、モニターに投影された映像が撮影された場所にて。
「(お…おいおい嘘だろ…!?私と奴の一撃を片手で…!?)」
オールマイトは顔中から冷や汗を流しながら目の前の存在を見つめていた。自身の全力とオールフォーワンの全力を間に入り、片手で止めた超人的な力を持つその男を。
「し…神堂少年!どうしてここに!?それに私のパンチを真正面から受け止めてなかった!?」
「そんな事はどうでもいいです」
「そんな事って…ふが!?」
現れた拳太郎はオールマイトの方へと振り向くとその顔面を口を塞ぐ形で掴んだ。
「貴方、いくらNo. 1ヒーローといえども、深夜の酒酔いによるどんちゃん騒ぎはいかがなものかと思いますよ?こちとら明日は試験だってのに全然眠れないじゃないですか?あぁ?」
「そ…sorryぃ…まさか神堂少年が前泊してるとは___(いや…寧ろこれだけで済んで何よりだけど…)」
※オールマイトは全く悪くありません
すると
「ははは!まさかこんな形で会えるとはね!神堂 拳太郎くん!」
「あぁ…?」
背後から聞こえてきたオールフォーワンの笑い声に拳太郎はオールマイトから手を離すと振り向く。
「誰ですかアンタ…?というか、騒音の原因は貴方ですか?」
「君の新しい先生だよ」
「いやそんな変な格好した家庭教師なんて雇った覚えないですし、明らかに不審者じゃないですか。あ、まぁ今の世の中、個性が溢れてるから変な格好してても普通か」
「わざわざ私見て言わないでもらえる!?パツパツのスーツはメジャーでしょ!?」
「でも今はダボダボじゃないですか。あ〜ダイエットですか?」
「違う違う!…え?なんで私って分かったの!?」
オールフォーワンの言葉を横目に拳太郎がオールマイトと言い合う中、オールフォーワンはさらに拳太郎を称賛する。
「まさか僕の全力どころかオールマイトの一撃も同時に…しかも片腕で防ぐなんてねぇ!やはり君の力は素晴らしいよ!」
「はぁどうも。それよりも、この騒動って貴方の仕業ですか?不審者」
「君はその力をもって、将来は何を目指しているのかな?」
オールフォーワンのその問いに拳太郎は淡々と答える。
「いや…ただ普通のサラリーマンですが…というかそろそろ質問に答え____」
「おやおや…可哀想に」
その言葉を耳にしたオールフォーワンは片手で顔を覆い嘆きながらもう片方の手を拳太郎の肩に置く。
「幼い頃から無個性という現実を見てきたから悲観的になってしまったんだねぇ」
「いや別に、身の丈にあった夢持ってるだけですが…あの…そろそろ質問に___」
「ハッハッハッ。随分と謙虚だね。だが、この個性社会において謙虚など枷にしかならない」
「どういう事です…?」
オールフォーワンのその言葉に拳太郎はプルプルと震えながら問い掛ける。すると、オールフォーワンの人差し指が向けられた。
「君のその力は本来ならば称賛されるべきなんだよ。だが周りの連中を見てみろ?誰も彼もオールマイトやその他のヒーロー、君の力には目もくれない。おかしいとは思わないのかい?君はオールマイトやぼく以上の力を秘めている…なのになぜ注目されない?」
「さぁ、何ででしょうね………あの、いい加減にしないと怒りますよ?」
「簡単さ…君のその謙虚さだよ…!他人事であると捉えるかのように自己主張のないその君の性格こそが君本来の力を誇示する活躍の場を奪っているのさ」
「いや、さっきから何か分かったようにゴチャゴチャ言ってますけど、何一つ合ってないですから。というか僕、注目されるの苦手ですし」
そしてオールフォーワンは拳太郎に向けて手を差し出した。
「僕の元へおいで。そして示そうじゃないか…君のそのち_______」
その瞬間
「いい加減にしろって言ってんでしょう!!この不審者がぁ!!!」
____パシィィィン
「ガヘェ!?」
拳太郎の右手の掌がオールフォーワンの頬を叩いた。
「フンッ!!!!」
ゴシャン
「あふん!?」
その際に開いた股へ向けて脚を振り上げ、股間を強打し、
そして
「せいやッ!!!!」
ドシャァァン
180度に等しいほどにまで振り上げられた右脚が、股間を蹴られうずくまるオールフォーワンの頭へと振り下ろされた。
____ドサッ
それによって、オールフォーワンの身体はゆっくりとその場に静かに倒れたのであった。股を押さえながら
「えぇ…」
その光景を後ろから見ていたオールマイトは、呆気なさすぎるどころか、寧ろ可哀想に思えてしまうオールフォーワンのその姿に何も言えなくなり、彼をその体勢へとさせた拳太郎の容赦なき連撃にドン引きするのであった。
その一方で、
「全く…いい年した大人が何言ってるんですか。マジで意味が分かりませんし宗教の勧誘みたいで震えますよ」
オールフォーワンをねじ伏せた拳太郎はまるで一仕事でも終えたかのように手をパンパンと払っていた。
「じゃあ僕は寝るので失礼しますよ。次起こしたら貴方もぶっ飛ばしますからね」
「あ…待って神堂少年!!」
その言葉にオールマイトは流石に感謝の言葉を伝えなければと思い彼を呼び止めようと動く。
「今回ばかりは君のおかげだ!お礼を言わせてく____」
その時であった。
「逃す訳にはいかないねぇ…ッ!!!!」
「「…!」」
背後から再びオールフォーワンの声が響き、振り向くとそこには内股で立ちながら全身から黒い鎖のようなものを溢れ出すオールフォーワンの姿があった。
「断られるのは分かってたからねぇ…!悪いけど力づくでも連れて行くよぉ!!」
その言葉と同時に、オールフォーワンが拳太郎へと向けて手を向けると、それに従うかのように溢れ出した黒い鎖が一斉に拳太郎へと向かっていった。
「神堂少年!危ない!…ぐぅ!?(もう力が…こんな時…にぃ…!!!)」
それを見たオールマイトは拳太郎を助けるべく動こうとするが、先程の一撃に全てを使ってしまったために、もはやまともに動くことすらできなかった。
そうしている合間にも生み出された鎖たちが拳太郎へと迫っていく。
「神堂少年!!!」
その時であった。
「阿呆が」
拳太郎の身体が残像を残す程の速度で低姿勢になるとともに一瞬でオールフォーワンの足元へと移動した。
そして
「フンッ!!」
片手を地面につき、その腕を軸にしながら伸ばした脚をオールフォーワンの足へと大きく振り回した。
「がぁ…!?」
その振り回しは骨が砕け散る音をその場に鳴り響かせながら、オールフォーワンの脚をへし折り、その巨大な身体を再び大地へと沈ませたのであった。
「じゃ、今度こそ失礼しますね」
「あ…うん…何かごめんね…」
その光景にもはやオールマイトは何も言えなくなり、ただ普通に頷き、手を振りながら拳太郎を見送るのであった。
だが、問題は山積みである。
辺りに舞っていた砂煙が晴れると共に、その場をテレビ局のカメラが映し出し、周囲からも歓声が湧き上がり始めたのだ。
「どう言い訳しよ…」