・監禁
・肉体を分解
・洗脳
その日 地球上の全人類はある行動に出た。
ある者は突然と身近な者に最後の晩餐を問い、また、ある者は目の前の食物を狂うように喰らい、そしてある者は最後の晩餐を思い浮かべた。
「……なぁ、お前最後に食べるとしたら何がいい…?」
「あぁ…焼肉かな…」
事務所に向かう中、同行していた警察官やヒーロー達が次々とその話をしていく中、緑谷たちも同じ言動を取っていた。
「ねぇデクくん…君は最後に食べるとしたら何がいい…?」
「か…カツ丼かな…あれ!?なんでだろう…何でこんな…」
ミリオの問いに緑谷は何の迷いもなく答えるが、何故、その質問を不審に思えず、普通に答えてしまったのか全く理解できなかったのだ。
「あぁ…拳ちゃん食べたい…」
「「「「「「「!?」」」」」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇
全人類が一時的に最後の晩餐を思い浮かべる中、そんな現象が起きる数秒前に激怒した拳太郎は治崎の首を掴み上げていた。
「が…ぁぁ…!!」
「まさかとは思いますけど…この子に虐待みたいなことしてませんよね?床に飛び散ってるこの血の量…どういうことですか?」
発せられる殺気と共に治崎の首を掴む拳太郎の腕の握力は更に高まっていく。
「気安く触る…な…!!!」
そんな中であった。治崎は力を振り絞り、近くの壁へと手を当てた。
するとその壁は一瞬、粉々に砕け散るとまるで槍のように先端を尖らせた形状へと変化し拳太郎へ向かってきた。
「ふん」
その向かってくる鉄を拳太郎は腕を振り破壊するが、治崎は手を緩めない。次々とその場から周囲の壁を分解して、拳太郎目掛けて石の槍を向かわせた。
だが、無数に襲い掛かってくるその石の槍が向かうのは拳太郎だけではない。
「…え?」
なんと、背後のベッドの上にいたエリにまで届いていたのだ。
「!?」
それを見た拳太郎はすぐさま治崎から手を離すとエリの元まで移動し、彼女を抱き抱え迫りくる石の槍を片腕で全て破壊した。
だが、治崎は手を緩めない。
「ふん…!!!」
拳太郎の腕から逃れた治崎は床へと手を当てる。
すると、周囲一帯が一瞬にして粉々に砕け散ると共に形を変え、再び石の槍へと変化した。だが、その大きさは先程の数倍はあり、それらが周囲に無数に形成された。
「さぁ…エリを返してもらおうか…!!」
その言葉と共に形成された石の槍が再び拳太郎とエリに向けて向かってきた。
「…」
だが、拳太郎は慌てるどころか、避けもせず、ただ無言に拳を放つ。それによって向かってる石が全て粉々に砕け散った。
「おい!この子がいるにも関わらず…!!!」
全ての岩が砕け散っていく中、拳太郎の鋭い目が治崎へと向けられるが、それでもなお治崎は手を止めなかった。
「ソイツが壊れても支障はない」
「…あぁ?」
その言葉と共に治崎は再び周囲を分解させると石の槍を形成させ、拳太郎へ向けて放つ。
「すぐに修復すれば蘇生できる。原型を留めていなくとも元通りに治せる。その子は身をもって知ってるはずだ」
そして、周囲には先程とは比較にならない程の石の槍が形成され、エリごと貫くかのように拳太郎に向けて放たれていった。
だが、それと同時に先程の治崎のまるで日常活動の一環であるかのように放ったその一言が_____
「テメェ今なんて言った?」
_______拳太郎の怒りを臨界点に到達させ、彼の中に眠る“悪魔”を呼び覚ましてしまった。
「やれ!!クロノ!!!」
「はい!!」
背後から治崎と同じくペストマスクを被った白いフードの男が現れ、フードの中から槍のように尖った髪が飛び出すと拳太郎へと突き刺さった。
「私の針が刺さったものは動きが遅くなる。お前の今の動きは本来の…60分の1に_____」
その時であった。
「…ッ!!!!」
拳太郎の腕が背後に立っていたクロノの服を鷲掴みにし、治崎目掛けて投げつけたのだ。
「ぐぅ!?」
投げつけられたクロノの身体を寸前に避けた治崎はその所業に驚きを隠せず拳太郎に目を向ける。
「お前…中々エグいことをや_____!?」
だが、目を向けた時には既にその姿は目の前まで迫っており、拳は既に腹に向けて放たれていたのだ。
その瞬間
______治崎の腹に向けて拳太郎の拳が突き刺さると共に周囲一帯に稲妻が迸りながら巨大な余波が広がり、ありとあらゆる障害物が木っ端微塵となった。
「消えろ…ッ!!!」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
その同時刻。緑谷達は事務所の前へと到達していた。
「…」
サポートに徹するためにその場に複数の生徒達と共にミリオと並び参上した緑谷は固唾を飲みながらその門を見つめる。
「(壊理ちゃん…今度は必ず…!!)」
あの日、助けられなかった事を悔いながらも再び決意を胸にゆっくりと開くその門を見つめた。
すると
「「「「「!?」」」」」
突然と入り口が開き、数メートルはある巨大な体躯を持つマスクを被った男が現れた。
「来たぞ!!」
「待て!何か…様子がおかしい…」
警戒の声を上げた警備員の1人をサーは制しながら見つめる。現れたその男は全身がボロボロであり、争う意思もなく、寧ろ何かから逃げているかのように出てくると、震えた声を発した。
「たす……け…て…」
その言葉を最後にその巨体はゆっくりと地面に倒れた。男が倒れた風圧によって、開けかかっていた扉も全開となり、その事務所内の庭の景色が露わとなる。
「「「「「…!!!」」」」」
その中の景色を見た全員は絶句した。
「何が…あったというのだ…!?」
そこには自身らが取り締まるはずの組員達が倒れている光景が広がっていたのだ。
「サー…どうする!?」
「…」
ミリオが尋ねる中、サーはすぐさま近くの倒れている組員の1人に触れ未来を見ようとした。
その時であった。
_____ッ!!!!
目の前の庭が突然と地鳴りが鳴り響くと共に爆ぜた。
「「「「!?」」」」
突如として地面が爆発した事で一同は更に驚きすぐさま後退し、その状況を凝視する。
すると、その爆発の中、一つの影が飛び出して地面へと倒れた。それを見た緑谷は驚きの声を上げる。
「あいつは…オーバーホール…!!」
そこには捕縛対象である敵『オーバーホール』こと治崎廻の姿があったのだ。だが、その身体は全身が傷だらけであり、トレードマークであるペストマスクは粉々に砕け散っていた。
調査対象である事務所の壊滅に加えて捕縛対象である治崎の不可解な無惨な姿。
一体何が起きたというのか?まさか本当に敵連合とぶつかり、敗北したのだろうか?いや、それならばもっと大騒ぎになっていたはずだろう。
皆が警戒し、その先頭に立ちながらサーが推測する中であった。
治崎が飛び出した地面から溢れ出る砂煙の中から人影が現れた。その人影が現れた事で一同は警戒を強める。
すると、周囲の砂煙がゆっくりと晴れていき、その姿が露わとなる。
「あれ?緑谷くんじゃないですか」
「………へ?」
その言葉と共に、砂煙が晴れ、露わとなったその姿を見たヒーロー全員は目を大きく開かせる。
「どうも」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?????神堂くぅぅぅぅぅんッ!?」
「拳ちゃん!!」
現れたのはエリを背負っていた拳太郎であり、それを見た緑谷は驚きの声をあげ、ねじれは歓喜の声を上げた。
「まさかこれって…神堂くんが…!?」
「えぇまぁ。中の人達はジョギングしてたらいきなり因縁つけてきたので全員ボコボコにしました。あと、ソイツもソイツで相当なクソ野郎だったので取り敢えず100発殴りました」
「や…やっぱり神堂くん…エグいな…」
緑谷が拳太郎のその無慈悲な面に圧倒される中、拳太郎は倒れている治崎へと目を向けた。
「待っててください。今そこのゴミを粉砕機にかけるので」
「しかも真顔でとんでもないことやらかそうとしてる!?止めないと!!」
「そのようだな…それに彼だけでなくイレイザー…君からもキッチリと説明してもらうぞ…!?」
拳太郎の行動に緑谷が驚くと、サーは頷くと同時に彼が住まう寮の監督である相澤へと目を向ける。
「…」
それに対して相澤の目はいつも以上に死んでいたようだ。
その時であった。
「うあぁああああ!!!!くそがぁああああ!!!!」
「「「「「「!?」」」」」」
突如として倒れた治崎が血を吐き出し叫び声を発しながら立ち上がると、その場から駆け出し、倒れている大柄な男の元へと駆け寄るとその身体へと触れた。
その瞬間
治崎の身体とその大柄な男の身体が粉々になると共に合成され、数メートル以上もの巨体を持つ異形な姿へと変貌した。
「さぁ…エリを返してもらうぞ…!!!」
「この子じゃなくてテメェを土に還してやりますよ」