その後、事態は収束した。
エリの個性によって元通りとなった治崎は警察に引き渡され、その他の幹部達も逮捕されていった。
だが、問題は山積みであった。それもそうだ。なぜならこれは捜査ではなく_____
_________事件として取り扱われるのだから。
○◇○◇○◇
「うぉおおおお!!!帰ってきたぞぉお!!!」
峰田の号泣する声と共に帰還した緑谷達を爆豪を除いた皆が出迎えた。既に治崎達に関する事件はニュースとしてメディアによって放送されており、そのことについて皆もようやく知ったのか緑谷、麗日、蛙水、切島の4名へと労いの言葉を掛けていった。
そんな中であった。八百万が、“1人足りない”ことに気づく。
「そういえば…神堂さんが見当たりませんが…」
「「「「……」」」」
八百万の言葉に緑谷達は頬をポリポリと掻きだす。
「どうしましたの?」
「そ…それが…」
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ーーー
ー
それは騒動が収束した直後であった。
緑谷とミリオは相澤によって何とか暴走を抑えたエリを介抱していた。
「大丈夫?エリちゃん…」
緑谷の手の中で収まっていたエリは暴走が終わり、気を失ってしまったのか眠っていた。
すると、近くの救急隊員が駆けつけ、担架を運んできた。それを見た相澤は緑谷の肩へと手を置く。
「緑谷、あとは医者に任せろ」
「はい」
その時であった。
「やめろぉおお!!!離せぇええ!!!」
「「「!?」」」
突如として治崎の叫び声が聞こえ、見れば拳太郎が治崎の髪を引っ張りながらこちらに向かってきたのだ。
「ちょちょちょ!!神堂くん何してんの!?」
「決まってるでしょ。落とし前ですよ。コイツには謝罪する義務があるんですから。ほらとっとと謝んなさいやッ!!!!」
「ごはぁ!?」
そう言い神堂は治崎の身体を投げ飛ばす。それによって治崎の身体はエリを介抱する緑谷達の前に放り出された。
「神堂くん!やりすぎだよ!」
「お黙り!!」
「なんで急にオネエ!?」
治崎を放り出した拳太郎は彼の頭を掴み上げると、エリの前に差し出した。
「土下座しろ」
「誰がするかぁ!おいエリ!!起きろ!!お前にはまだ____がはぁ!?」
その瞬間 拳太郎の腕が治崎の顔面を地面に叩きつけた。
「土下座しろ」
「がぁ…て…てめ…ヒーロ…がこんな…ま…がはぁ!?」
「ヒーローじゃないです。一般人です。ほら土下座しろ」
治崎が言葉を発しようとすれば拳太郎はその掴んでいた頭を地面へと叩きつけた。それによって鼻や歯がへし折れ、端正な顔立ちが台無しになっていく。
そんな中であった。
「…んん…」
「エリちゃん!?」
緑谷が抱えていたエリがゆっくりと目を覚ました。目を覚ました途端に彼女の目の前に入ってきたのは_____
「え…り…!!!」
___へし折れた鼻や口元から血を流し白目を向いている治崎の悍ましい顔面であった。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!_______
________がく…」
「あああああ!!!エリちゃぁぁぁん!?」
「テメェエエエエ!!!!」
そのままエリは再び気絶してしまった。緑谷が悲鳴をあげる一方で、拳太郎は治崎の胸ぐらを掴み上げていた。
「虐待どころか顔見たら叫ぶ程にまでトラウマを植え付けてたのかぁぁぁ!!!!グチャグチャにするぞコラァぁぁ!!!」
「「いや明らかに原因君だよね!?」」
緑谷とミリオの声が重なる中、拳太郎は治崎の襟首を掴み、遂には振り回し始めた。
その時であった。
「拳ちゃん!!」
「ねじれさん!!」
「波動先輩!?」
ねじれが飛び出し拳太郎へとしがみついた。
「弱いモノいじめしちゃダメ!!!」
「「(弱いモノ…!?)」」
ねじれに続くように相澤が彼の身体を縛る。
「おい神堂!!!いい加減にしろ!監督不行き届きだけでなく死体蹴りの後始末までさせる気か!?」
「「(死体蹴り!?)」」
更に相澤に続き蛙水が舌を拳太郎に巻き付けた。
「そうよ神堂ちゃん!こんな小さい子を痛ぶる悪趣味なロリコンサディストごときに神堂ちゃんが手を汚す必要はないわ!!」
「ちょっと3人とも!さっきからドサクサに紛れて酷いこと言ってません!?」
「離してくださいよ!!!僕はこんな小さい子を傷つける輩が許せないんですよ〜!!!ほらさっさと謝んなさいや!この悪趣味なロリコンサディストやろぉおおお!!!!」
「神堂くんもやめてぇえええ!!!色んな意味で可哀想だよその人がぁぁぁ!!!!」
その後、ねじれの必死の説得によってようやく拳太郎から治崎を引き離せたが、引き剥がした時には治崎は意識を失っていたという。
それから周辺の調査が行われ、構成員の逮捕と植物状態となった組長の保護、そして拳太郎が救出したエリは病院へと運ばれ、拳太郎は見事に警察署へと連れて行かれることになったという。
「そ…そんな事が…」
「じゃあアイツっていま…」
八百万と峰田が声を震わせる中、緑谷は頷いた。
「取り調べ受けてる…」
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「さて、詳しく聞かせてくれ。なぜ君はあの場所にいた?…あれ?これってデジャヴ?」
「いや、なぜと言われましても…」
現在、塚内の目の前には事件の当事者である拳太郎の姿があった。今回ばかりは流石に拳太郎もやりすぎてしまった自覚はあるのか、姿勢を正しながらも縮こまっていた。
「ただ単にジョギングしてただけで…」
「ふむふむ…報告によると君が連れてかれたという報告が入ったのが朝の3時…………朝の3時だよ!?幾ら何でも早すぎない!?」
「そりゃ日課だからしょうがないじゃないですか!それなのにあの人たちにいきなり因縁つけられて無理矢理連れ込まれたんですよ!?怖くて怖くて!!」
「うん。怖かったろうけど、組員達のほうが何百倍も怖かっただろうね。あのあと幹部含めて全員が泣きながら自首してきたよ」
「そりゃあんなにヒーローがいたらそうなりますよ」
「何度も言うけど君が原因だからね!?そろそろ自覚して!?」
それからしばらくして、落ち着きを取り戻した塚内は本題へと入る。
「さて…君には幾つか聞きたい。あそこにいた事情については大体分かったが、我々が聞きたい事はもう一つある。それは君の【個性】についてだ」
「僕の個性?」
拳太郎が返事をする中、塚内は資料を読む。
「君の個性だが…届けによれば【無個性】と記されているが本当なのかい?」
「まぁ…医者が言うには個性因子が全くないし、身体的特徴の変化も見られないから【無個性】らしいですが……なぜそれを?」
拳太郎がこの質問の目的について尋ねると塚内は答えた。
「保護した壊理ちゃんの個性『巻き戻し』はそのエネルギーに当てられた物の時間を巻き戻すことができる。例えば人間なら受精卵、木なら小さな草。場合によって存在すらも抹消することができる」
「はぁ…」
「問題はここだ。彼女の個性が暴走してその膨大なエネルギーが溢れ出した時に君は彼女を背負っていた。そうなると君はそのエネルギーを浴びて確実に存在を抹消されている。だが、君は消えるどころか、個性の影響すら受けていない。あれ程のエネルギーを浴びておきながらだよ?自分でも不思議に思わないかい?」
「確かに」
拳太郎が頷くと塚内はパソコンの画面を見せた。そこには国内でも最も有名かつ精細な技術が揃っている大学病院のページが映っていた。
「そこで君に軽く検査を受けてもらいたいんだ。個性を診断する時のと同じ検査をね。いいかな?」
「まぁいいですけど、検査費はそちら持ちですよね?」
「勿論さ」
その後、拳太郎は検査を受けたが、全くもって異常はなく、特別な因子が見つかる事もなく、釈放されたのであった。
判明したのは拳太郎の筋力による身体能力がもはや人間の作った計測器では測定不能であることだけであった。
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そんな中、解放された拳太郎はようやく寮に戻る事ができた。
「ふぅ…ようやく解放された」
「そりゃこっちのセリフだ…まぁお前も無事で何よりだよ。まさか事務所に連れ込まれてたなんて、聞いた時は肝を冷やしたぞ?」
「それについてはすいません…」
迎えにきた相澤と共に寮へと入り、皆から労いの言葉を受けながら拳太郎は自室へと戻っていった。
そして、自分の部屋の前に到着するとゆっくり扉を開ける。
ガチャ
「ただいま〜って言っても誰もいな______」
扉を開けた瞬間 拳太郎は動きを止めてしまった。
そこには、拳太郎の服を手に持つ八百万の姿があった。
「あ、神堂さん。皆さんでお服の方、洗濯しておきまし____」
「きゃぁぁぁぁあ!!!!泥棒よぉおおお!!!!!!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」