治崎との激動というより拳太郎による蹂躙劇より数日。
事件は収束し、拘束された治崎は監獄へと護送されていたが、その護送車を敵連合が襲撃し彼の研究物は奪われ、それを作り出した彼は死柄木によってその両腕を破壊されてしまい2度と個性が使えなくなってしまった。
それだけではない。敵連合の襲撃によって先程まで解かれた警戒体制は更に強まり、世間は敵連合の襲撃に対して備えるのであった。
その一方で雄英高校には体育祭に続くもう一つの一大イベントが迫ってきていた。
「雄英文化祭が迫ってきています」
「「「「「「「うぉおおおおお!!」」」」」」」
担任の教師のその一言に普通科であるクラス全員のボルテージが上がり、巨大な歓声が巻き上がった。
『雄英文化祭』
それは体育祭に続くビッグイベントであり、OBは勿論だが、上位層のヒーロー達も集まってくるのだ。また、生徒自体が主体となって開催するイベントもあり、ミスコンやクラス発表など様々な行事もあるため、一般の参加者も多いらしい。
それから担任が席を外し、クラスでの出し物を決める事となった。次々と意見が出る中、拳太郎はウキウキしながら心操へと話しかけていた。
「ねぇねぇ心くん!出し物どうする!?動画でも撮ろうよ!『マリアナ海溝最深部でメガロドン捕まえてみた』や『原生林の巨大アナコンダ捕まえて食べてみた』とか!!それか『仮面つけた変な宗教組織を潰して素顔晒してスクランブル交差点のど真ん中に締め出してみた』は!?」
「全部テメェがやった事ばかりだろ!?というか、珍しいな。お前ならこういうのは参加せずに勉強してるかと思ったよ」
「何を言ってるんですか!勉強に全力を注ぐのも勿論ですがこういうイベントにも全力を注がないと!」
「そうか。なら、ここは派手にヒーロー特撮でもいいんじゃねぇのか?」
「確かに…じゃあヒーローが街を歩いて悪事を働く人達を次々と八つ裂きにする感じで!」
「んなもんヒーローじゃなくてただの殺人鬼だろ!?」
そんな中であった。
〜♪
『1年C組の神堂 拳太郎くん 放課後に職員室まで』
校内放送が鳴り、拳太郎に呼び出しが掛かった。その呼び出しを聞いた心操はため息をつき拳太郎へと目を向ける。
「お前…また何かしたのか…?」
「そんな!するわけないでしょ!僕が呼び出される程の事をする人に見える!?」
「見えるどころか見えなきゃおかしいだろ!?言っとくけどこれで入学してから10回目だからな!?」
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その後、呼び出しに応じて職員室まで向かうと、そこには相澤と緑谷、そしてミリオの姿があった。
「あれ?デッくんとミリ先輩お二人ともどうしてここに?」
「変な呼び方になってる!?………実はね…」
「待て緑谷。俺が話す」
緑谷が説明しようとすると相澤がそれを止めて代わりに説明した。
相澤によると、以前、保護した壊理が目を覚まし、緑谷、ミリオだけでなく拳太郎にも会いたいと言っていたのだ。
「本来なら、事件当日の出来事を連想させる人物を連れていくのは気が引けるが…彼女自身が会いたいって言っていたからな。断るわけにはいかん」
「なるほど」
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それから拳太郎は緑谷、ミリオと共に壊理の元へと向かった。
だが、
「お前は呼んだ覚えはないが…?」
「すいません。でもどうしてもその子が心配で…」
「帰れ」
「やです」
何故か同じ一行に、拳太郎の肩に手を置く形でねじれが混じっていた。相澤は目を鋭くさせて戻るように促すものの、彼女は首を横に振った。
ねじれは拳太郎と幼少期を過ごしており、彼の影響もあってか、彼と同じく自身よりも幼い子が酷い目にあってしまうとどうしても気にかけてしまうのだ。それは緑谷やミリオも同じであり、さすがはヒーローの卵と言えるだろう。
それでも事件を連想させる相手を会わせてしまえば、それこそ壊理ちゃんにとってもつらく本末転倒である。
だが、ねじれは壊理が気絶した時に現れたため、特に彼女と面識はない。
故に相澤は大きくため息をつく。
「…まぁ1人くらい女子がいれば壊理ちゃんも話しやすいかもな」
「やった!!」
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その後、5名は病院に到着すると、壊理の寝ている病室へと向かった。
そして扉を開けると、そこには目を覚まし、窓の外を見上げる壊理の姿があった。
「「壊理ちゃん!」」
緑谷とミリオが名前を呼ぶと彼女は振り返った。
「あ……モジャモジャの人…目がクリクリの人…ちっちゃいムキムキの人… ねじれてる人…?」
○◇○◇○◇
その後、ミリオは持参したフルーツの中で壊理が選んだりんごを切り分けて彼女へと渡した。
食欲はあったのか、彼女はそれを次々と口の中に入れていき、全て食べ切ったものの、それでも治崎の洗脳による後遺症がまだ残っているのか、笑顔など喜怒哀楽を表すことは無かった。
「その……ごめんなさい…私のせいで色々な人に迷惑をかけて…」
「え?別に君のせいじゃ…」
壊理の言葉に拳太郎は首を傾げる。するとミリオが耳打ちする形で小さな声で伝える。
「まだ影響が残ってるのか、どうしても自分のせいだと思い込んじゃうらしいよ…」
「マジですか?」
「…」
拳太郎が納得する中、緑谷はいまだに俯いている壊理へと目を向ける。彼女はまだ救われていない。まだ支配されているのだ。治崎という恐怖によって。
そしてそれを聞いた拳太郎は額に筋を浮かび上がらせる。
「ちょっと監獄ぶち破ってソイツ締め上げてきます」
「ちょちょちょ!!神堂くんが言うと冗談に聞こえないからやめて!」
そんな中であった。
「は〜い。笑顔♪」
「ふにゅ!?」
「「「!?」」」
ねじれが手を伸ばし、彼女の頬をゆっくりと釣り上げた。それによって、壊理の腑抜けた声がその場に静かに聞こえる。
そんな彼女に対してねじれは優しく語り掛けた。
「だめだよ何でもかんでも自分のせいにしちゃ。誰だって困ることはあるんだよ?もっと周りを頼らないと」
「頼る…?」
「そ。壊理ちゃんだけじゃないよ。壊理ちゃんよりも大きい人でも困っちゃう時がある。その時に助けるのが私たちヒーローの役目だから。頼られてそれに答えるために助けるのが私たち。だから今回は壊理ちゃんは何にも悪くないんだよ。壊理ちゃんを助けた拳ちゃんも絶対に君を離さなかったでしょ?」
「…」
そう言いねじれは抱きしめながら彼女の頭を撫で、優しく語りかけていく。その様子はまるで泣いた子供をあやす母親のようなものであり、普段の天真爛漫な様子とは一変した様子にミリオや緑谷は驚いていた。
「驚いた…ねじれさんにこんな面もあるんだね…まるでお母さんみたいな」
「それに壊理ちゃんも少しばかりが表情が緩んでるように見えます………あれ?でも何かこのまま続くと何か凄いことが起きそうな予感が…」
その一方で、壊理に寄り添っていたねじれはニィっと笑みを浮かべた。
「はい!笑って笑って♪」
「…」
その言葉に壊理は何度も笑おう試みようとする。だが、
「…分からない…笑うって…どんなふうにしたらいいのか…」
それでも彼女の顔は輝くことはなかった。それを見た緑谷達はどのようにすれば彼女が笑ってくれるのか考え込む。
そんな中であった。
「そうだ!」
緑谷はあるアイデアを思いついたのであった。
「相澤先生!壊理ちゃん1日だけ外出できませんか!?」
「ん…?まぁ本人次第だが、できなくもない」
「じゃあ…来れませんか!?文化祭に!!」
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それから日が経ち、ヒーロー科も他の学科の皆も次々と内容が決まり始めていた。ヒーロー科のA組はダンス、B組は演劇を行うらしい。特にA組は壊理が来ることが決まり皆は張り切っているようだ。
「神堂さんの方は何になったのですの?」
休みの日の朝、一番早く起きた(3時に起きて静岡県1周を終えた)拳太郎とロビーでお茶を飲みながら談笑していた八百万(4時に起きた)が気になり尋ねると拳太郎は答えた。
「お化け屋敷です」