「ほぅ?雄英生が君の会社に…ね。しかもその子は体育祭の優勝者じゃないか」
愛知県のとある場所の住宅地の中に佇む一棟の巨大なビルの最上階にて、尖った鼻を持つ1人のスーツ姿の男がその街を見下ろしながらワインを口にした。
「リ・デストロ…どうする…?」
「決まっているだろう?」
男は背後の影から聞こえた声に答えながらグラスを持ち上げて光にかざす。
「彼には我が『異能解放軍』へ加わってもらおう。異能に勝る身体能力…実に興味深い。それに雄英へと通っているのならば尚更だ」
そして、その男は指示を出す。
「彼を招待しよう。我が同志達の元に」
「了解した」
だが、その男が率いる軍は後に敵連合と衝突し別の名前に変わる事で壊滅するのであった。
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その一方で、オフィスを訪れた拳太郎は案内役の社員とともに数箇所のオフィスを巡り、その後は同じ参加者とともにディスカッションなどを行った。
そしてその簡易的なプログラムは数時間程度で幕を下ろし、拳太郎の初めての企業見学は何のトラブルもなく終わりを迎えたのであった。
だが、それだけでは終わらなかった。
社会見学から1週間後。拳太郎はねじれと共に喫茶店へと訪れており、食事を終えると先週向かった先の企業の内容や今後の予定について話した。
「え?合同説明会?」
「うん。3ヶ月後に和歌山県で行われるらしい。特別に招待されたんだ!」
そう言い拳太郎はチラシを見せる。そこには大量の超有名企業の名前が記載されており、説明会のみならずインターンの募集も行っていた。
「凄いんだよ!世界有数の企業を集めて大規模に行われるんだって!!」
「ふぅ〜ん…何か話が美味しすぎる気がするな〜」
ねじれはそのチラシに首を傾げるのであった。
「それよりも拳ちゃん、髪伸びたね」
「確かに」
拳太郎の髪の毛は背中まで伸びていた。
「ツインテールにする!?」
「嫌だ」
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それから学校生活は進み、ついに2学期の後半へとさしかかった。この時期となると敵達の活動も盛んとなり、各地に現れた敵の対処に多くのヒーロー達が駆り出されていた。
それとは別に、企業の合同説明会の予定があった拳太郎は緊張しながらも軽く荷物を整えると、雄英の寮を出て和歌山県のとある山奥の山荘へと足を運んでいた。(もちろん徒歩で)
「ここか…」
たどり着いたのは____山の中に佇む豪華な屋敷『群訝山荘』
周囲から多くの市民達がその場所へと入っており、行列が出来ていた。
「他にもこんなに…まぁそりゃそうだよね。就活してる人もいるんだから」
そして拳太郎はもう一度呼吸を整えると、彼らとともに中へと入りエレベーターで地下へと向かい、その巨大なホールへと入室したのだ。
○◇○◇○◇○◇
「よっと…ほわぁ!凄い人だ!!」
中へと入ると、そのホールのはもはや数える事ができない程にまで多くの市民の姿があった。中では身長が数メートル以上もの巨人のような男の姿もあり、どこもかしこもざわめいていた。
「すごいなぁ…!!!皆必死なんだ…よし!僕もたくさん質問しないと!」
すると
パン!
突然と目の前のステージにスポットライトが当てられ、そこには特殊な車椅子に座る両脚を欠損した男がいた。
「…!!」
その人物を目にした拳太郎は驚く。
「(あの人ってデトラネット社の…!?やっぱりすごいな…)」
そこに立っていたのはやや特徴的な高い鼻を持つスーツ姿の男であった。その男の名は『四ツ橋力也』世界有数のサポート企業【デトラネット社】の社長であり、度々テレビにも出演している経営界での超大物であった。
それ程の人物が主催をすることから、この合同説明会の規模の大きさを改めて拳太郎は実感した。
すると
「よくぞ集まってくれた解放戦士諸君!私はリ・デストロである!」
その男 四ツ橋が一声を発するとともに周囲のざわめき声が止まる。周囲の声が止まり辺りが静寂に包まれると四ツ橋は続けた。
「異能解放軍はこれより生まれ変わる!!以前は敵連合の存在は不要であると考えていた!!我々こそ解放の先に立つのだと!!だがそれは全くもって愚鈍な考えであった!!先の抗争により私は実感したのだ!!!ここにいる男こそ!!!真の解放者であるとッ!!!」
その言葉とともに更にスポットライトが光だし、四ツ橋の横にいる男へと照らされた。
そこにはスーツを纏い、不気味な手形のマスクを身につけている男『死柄木 弔』の姿があった。
「これより異能解放軍及び敵連合は融合し新たなる組織へと変わる!!!
その名を!!」
四ツ橋の声に死柄木は答える。
「『超常解放戦線』」
その言葉とともに彼らの背後から10名もの謎の男女達が現れる。
「敵の枠組みを排除し…異能というものを更に広く解釈できるものにした。また壇上の奴らを行動隊長とし…傾向ごとに部隊編成する。ま…これも名前と同じ…単なる建前だ______
______好きにやろう」
「「「「「うぉおおおお!!!!!!」」」」」
その言葉とともに新たなる解放者の登場に会場中から大歓声が湧き上がった。
そんな中、その群衆の中で立っていた拳太郎は
「なんだ…?この_____
______くだらない茶番劇は」
酷く呆れていた。本来の目的と全く違う。合同説明会と聞いてきてみれば、こんなもの合同説明会などではない。言うなればただの宗教だ。これではまるで自分が騙されたみたいではないか。
「…」
拳太郎は先ほどまで期待していた表情を一変させ、騙された事に対する怒りを露わにさせながら背後の入り口へと向かう。
「全く…合同説明会と聞いてきてみれば、ただの新手の宗教じゃないですか。デトラネットの社長が出てきて期待してたけど、もういいや。別の企業のところ行こ」
その時であった。
パッ!!!
「…あ?」
突如として自分にスポットライトが当てられた。
「では諸君に紹介しよう!この歴史に残る素晴らしき日に参入する新たな戦士を!!!」
「は?」
四ツ橋の突然の言葉に拳太郎は硬直するが、彼が発した言葉によって周囲全員の目が向けられた事でその硬直はすぐに解けるとともに、拳太郎は四ツ橋へと目を向ける。
「忌まわしき社会を作り出す国家とそれに付き従うヒーローを多数輩出するヒーロー科。その中でもオールマイト、エンデヴァーといった我々の行手を阻む障害物を生み出した『雄英高校』そこには今の社会の現実に目を向けず、ただ人を助けるという目の前の事象のみしか見る事のできない哀れな子供達がいる!!!だが!彼はそんな同級生達を救うために自ら革命を志願した!!!その名を_____
______『神堂拳太郎』!!!!!」
「「「「「うぉおおおお!!!!!」」」」」
またまたその場に響いた突然の声明。四ツ橋の放った言葉によって会場中からは歓声が湧き上がり、周囲から拳太郎の行動を讃えるかのように拍手を送る音も聞こえてくる。
「いや待て待て待て待て待て」
そんな中、四ツ橋の放った言葉に理解が追いつかなかった拳太郎は頭の中が真っ白になってしまうがすぐさま冷静になると、ただ一言口にした。
「変な説明とともに参入決定とか勝手に決めないでもらえます?誰が入るんですかこんな変な宗教」
その瞬間
会場内を包み込んでいた歓声と拍手が止まった。