拳太郎の放ったその一言によって、先程まで会場中を包み込んでいた拍手や歓声が一瞬にして止まった。
「…ん?今なんて言ったのかな…?」
「だから、こんな変な宗教に勝手に加入させないでくださいって言ってんですよ。元々、企業見学って言うから来たんですよ?なのに何ですか?解放戦士だのなんだの……そういうのは中学生で卒業してくださいよ」
そう拳太郎は淡々と言い放った。
その瞬間
「ふざけんなコラァ!!!」
「リ・デストロ様になんて事を!!!」
「取り消しやがれぇ!!!」
「う〜わ。宗教あるあるだキツ」
周囲から次々と野次が飛び出した。周囲からけたたましく鳴り響き、耳を刺激するほどの大音量の野次に拳太郎は耳を塞ぐ。
その一方で壇上にてソファーに腰を下ろしていた死柄木は四ツ橋へと鋭い目を向けた。
「おい。何でアイツを招いた…?」
「彼は無個性ながら精鋭揃いの雄英体育祭を優勝する腕がある上に、ヒーローへの憧れが薄い…力を持ちながらもそれを抑制する今の社会構想に疑問を持っている証拠だ」
死柄木へと答えた四ツ橋は拳太郎へと詰め寄る群衆へと声を上げた。
「まぁまぁ諸君!彼はまだ学生なんだ。自制の効かない部分もあるし大目に見ようじゃないか」
群衆を鎮まらせた四ツ橋はその場から拳太郎へと目を向ける。
「神堂くん。此度の件については申し訳ない。だが君ならば我々の話に耳を傾けるのではないかと思い招待したのさ」
「はぁ?いや、全く聞き入れませんし聞きたくもないです」
「まぁ話だけでも聞き____」
「やです」
「我々は元は『異能解放軍』という組織で_____」
拳太郎の言葉を耳に入れる事なく、四ツ橋は語り出した。今の原型である『異形解放軍』がどのような経緯で設立されたのか、何が目的なのか、そしてその目的を成し得た先に何が見えるのか。
その話はおよそ30分ほど続き、遂に終わった。
「以上が《超常解放前線》へとなり得た偉大なる歴史だよ」
すると
〜!!!!
〜!!〜〜〜!!!
会場中から凄まじい拍手喝采が鳴り出した。中にはその話に感動したのか涙を流す者もおり、浴びせられるその歓声に四ツ橋は笑みを浮かべ、拳太郎へと目を向ける。
「どうかな神堂くん。ここにいる約11万人もの戦士達がこの考えに賛同し立ち上がった勇気ある者達さ…分かってもらえたかな?」
「はい分かりました。じゃあ失礼しますね」
四ツ橋の言葉に対して拳太郎は軽く返事をし、すぐに背を向けて入り口へと向かう。
だが、
「…ん?」
その行く先を多くの賛同者達が塞いでいた。
「何ですかこれ?」
「君はもう戻れないよ。ここまで我々を知った以上…逃すわけにはいかない」
そして四ツ橋は手を前に出し、拳太郎へと立ち塞がる何百人もの賛同者達へと指示を出した。
「捕まえろ。忌まわしき社会へと染まる前に我々の手で救うのだ!」
「「「「「「おおおおおお!!!!!」」」」」」
四ツ橋の言葉に周囲の者達は大歓声をあげながら拳太郎目掛けて迫っていった。
その時であった。
「何なんださっきから…救うだのなんだの…」
群衆が向かってくる中、拳太郎の額に青筋が浮かび上がると共に瞳孔が消え去り、真っ白い獣のような目へと変貌する。
その瞬間
「やかましィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」
______ッ!!!!!!
その場に巨大な一喝する声が鳴り響く。まるで目の前に落ちた落雷の如き轟音が地下という密室空間内に響き渡り、周囲の壁に反射しながら巨大な反響音がホール全体に行き届いていく。
そして声が鳴り止むと
____ドサッ
拳太郎の目の前に立ち塞がっていた者のみならず、周囲に立っていた賛同者全員が倒れていった。離れた地点に立っていた者達も倒れはしないものの、全身が金縛りにあっているかのように硬直しており、一歩も動く事ができなかったのだ。
それは壇上に立っていた者達も例外ではない。
「おいおい…なんだよあのガキ…!?」
「エゲつない肺活量だな…声だけで失神させるとは」
「私も…ちょっと寝ちゃうところでした」
「気絶どころじゃねぇぞおい…感覚鈍ってる俺でさえも動けねぇ…」
壇上に立っていたスピナーやMr.コンプレス、トゥワイスやトガは勿論だが、荼毘も先程の轟音に身体が動けなくなっていた。
その一方で、
周囲の者達を気絶させた拳太郎はその鋭い目を周囲の者達へと向ける。その目を向けられた者達は恐れ慄き、ゆっくりと彼から距離を取っていく。
「…ふん。他人の考えに依存するどころかその考えを押し付ける者ほど鬱陶しいものはない」
群衆を威圧した拳太郎は不快感を露わにしながら舌打ちをすると、壇上で固まっていた死柄木達へと目を向ける。
その時であった。
「…ん?」
拳太郎は違和感を覚え、足元に目を向ける。
「なんだこれ」
見れば両脚が氷に包まれていたのだ。突然と発生したその氷は間違いなく個性によるものであった。
すると
「貴様…リ・デストロに対して先程の主張…万死に値するぞ…!!!」
背後から声が聞こえ、振り向くとそこには青いフードがついたコートを纏った青年の姿があった。
彼の名は『外典』
個性は【氷操】
氷を操るというシンプルな個性だが、その個性の威力は同系統の中でも突出して高い上に水さえあればその水の温度を変化させて氷にする事が可能であり、下手をすれば街全体を凍らせてしまう事も可能なのだ。
「それ」
彼が手を向けると共に拳太郎の脚を覆っていた氷は更に増量し遂には顔を残し全身を氷漬けにした。
「これが僕の異能だ。いいか?リ・デストロの言葉は絶対だ。それを否定する貴様はもはや我々のて_______」
外典が最後の言葉を言い終えようとした時であった。
「フン」
___ッ!!!!
拳太郎の姿が一瞬にして氷から脱出すると共に外典へと迫ると拳が放たれ、脆い音を鳴り響かせながら外典の顔面へと深く突き刺さった。
「ゴチャゴチャうるせぇんだよ。信者が」
「がぁ…!!」
放たれた拳はそのまま彼の身体を壁に目掛けて吹き飛ばし、彼の身体は壁へと深く突き刺さった。
「な…外典!!!」
「取り敢えず…この僕を騙して連れてきた上にそっちから仕掛けてきたんだ」
「ヒィ!?」
拳太郎の声を耳にした四ツ橋は全身を震わせた。見れば氷から出た拳太郎の全身からはドス黒い殺気が湧き上がっており、先程まで真っ白であった瞳が今度はドス黒い血の色へと染まっていた。
「今度はこっちが正当防衛として全員、殴り飛ばさねぇとな…!!!」
「おいおい…まずいなこれ…!!」
その言葉を耳にし殺気を全身で感じた死柄木は立ち上がるとホールの中でも突出して巨体を持つ『ギガントマキア』へと叫んだ。
「やれマキア!!!そのガキを潰せ!!!」
_____ヴォオオオオオ!!!!
死柄木の言葉と共に全身が岩石のような皮膚に包まれた筋骨隆々の男の目が光出すと共に、その巨大な拳が拳太郎目掛けて振り下ろされたのであった。