ちょっと!!勉強の邪魔しないでよ!!   作:狂骨

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地味な生徒が実は結構やらかしてたっていうのはあるのだろうか?

 

その日、あるニュースが全国へと放映された。

 

『新たに生まれた敵団体がたった1日で壊滅』

 

『事前に派遣されていた匿名ヒーローの潜伏活動により情報を得ていたため、本格的に活動を起こす前にエンデヴァー達が駆けつけて捕縛。それに繋がるようにして各支部の者達も自首する形で捕縛されていった』

 

『その合計は総勢で10万人近く』

 

『まだ首謀者を含む1万人はその行方と情報は掴めていない』

 

首謀者である死柄木や四ツ橋達は捕まっておらず、いまだに逃走中だが、多くの構成員達がヒーローとスパイによって逮捕された事で、人々に安寧と共に再びヒーローへの期待と希望を抱かせていった。 

 

 

 

だが、それらが100%、真実ではない。

 

寧ろ100%______

 

 

 

 

 

 

________虚偽である。

 

全て“たった1人の少年”の暴力によって蹂躙され鎮圧されたのだ。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

「ふざけているのか…?」

 

ヒーロー公安委員会のあるビルの最上階にある執務室にて。静かなる怒りの声が響き渡る。そこにはヒーロースーツに身を包む現No. 1ヒーロー『エンデヴァー』の姿があり、彼の鋭い目線が目の前の椅子に腰をかける重役達に向けられる。

 

「悪いが…君にはどうか納得してもらいたい。この話が大々的になれば我々の信用に関わる」

 

「だが幾ら何でも誇張がすぎるぞ!俺は何もしていない!ただ一本の通報を聞き駆けつけた時には全て終わっていた!!」

 

「分かっている…だが、考えても見てくれ…大規模な敵団体を壊滅させたのが1人の少年であったという“馬鹿げた話”が知られたらどうなる?人々の目はその少年に注目されて彼自身の日常の妨げになる。それに、仮に信じられなかった場合は新たな誤解を生みかねない…そうなれば益々、奴らの思う壺だ」

 

「…」

 

その言葉にエンデヴァーは荒げていた息を納めて冷静になると、少しずつ納得してきたのか、落ち着きを取り戻す。

 

「く…分かった」

 

「すまない」

 

そんな中であった。部屋を出ようとしたエンデヴァーは立ち止まる。

 

「その少年は確か取り調べを受けているようだな。どうなっている?」

 

「既に終わってるよ。詳細はホークスから聞くといい。直に対面し取り調べをした彼にね…」

 

そして、その後にホークスから詳細を聞いたエンデヴァーは顔を真っ青に染め上がらせるのであった。

 

その情報は公安だけではない。彼らと関係のある雄英高校の教室兼ヒーローの皆にも伝わっていたのだ。

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「嘘……だろ!?」

 

雄英高校職員室にて。塚内から書類を渡された雄英高校の職員達は顔面を真っ青にさせていた。そこに書かれていたのは、取り調べによって明らかになった拳太郎が起こしたと疑われている事件の数々であった。

 

「し…信じられない…これをあの子たった1人で起こしたというのか…!?」

 

その書類に目を通していたセメントスが全身を震わせる。

 

 

そこに記されていたのは________

 

『個性持ちの巨大生物数体を素手で殴殺し捕食』

『ムカつくという理由で5万人規模の敵団体を暴力で制圧し全員を再起不能の重体へ追い込む』

『自身を襲った指定敵組織全員の手足をへし折り二度と歩けない程の重傷を負わせる』

『謎の仮面を被った大規模かつ過激な宗教団体を襲撃し、全員を素顔を晒したままスクランブル交差点に縛りつけるなどして精神的苦痛を与える』

『世界最大の麻薬組織を単独で壊滅させる』

『太平洋を生身で渡り不法入国』

 

____と言った、御伽話や悪ふざけとしか言えない内容であった。

 

それらの事件全てが、発生当時、世間を震撼させたものばかりであり、多くはヒーロー達による取り締まりとして幕を下されていたが、その真実は裏で調査され続けていたのだ。

 

そして、遂にその真実が明らかになり犯人が分かったのだ。

 

「これを…あの純粋無垢な神堂くんが!?」

 

「あぁ。事件発生当時の映像と照らし合わせて本人にホークスが尋問したところ頷いていたよ」

 

ミッドナイトの問いに塚内が答える中、その報告書の内容に目を通していたオールマイトもあの日の事を思い出した。

 

「『個性持ちの巨大生物』といえば、数年前にちょうど私にアフリカゾウの討伐依頼が届いていたな。現地に着いた時には既に倒されていたが…まさか神堂少年が犯人だったとは」

 

「それも確か世界ニュースになったやつですよね?何でも、全長が100メートルくらいの」

そう言い相澤はスマートフォンで当時のニュース記事を見る。そこには大地に倒れる超巨大なアフリカゾウの死体が写されていた。

 

拳太郎が討伐したアフリカゾウの件は当時、ニュースとして世界中に放映されており、今でもその巨大な身体から世間の注目を集めていた。それもそうだ。体高50メートルの生物など、この世に存在する筈ないのだから。

 

だが、それは実在し、あろうことか討伐されてしまった。当初はオールマイトが討伐したと報じられたが、オールマイト自身とその場にいた軍人が否定した事で人々の騒ぎは更に加速されていった。

 

数年の時を経て暴かれたその真実は正に予想外と言うほかない。

 

「これ…下手をすれば逮捕案件になりかねないような気がするんだが…」

 

「いやガッツリなってるよオールマイト」

 

「やっぱり…」

 

オールマイトの言葉に塚内はアッサリと告げる。

 

「『暴行罪』『不法入国』『傷害罪』この3つだけで彼はタルタロスに収監されてもおかしくない」

 

生徒の逮捕が示唆された事によって、その場が沈黙に包まれる中、塚内は首を横に振る。

 

「だが、我々は今あの子を逮捕するつもりはないし、逮捕するべきではないとも思っている。彼の活躍によって犯罪係数が減少しているからね。それどころか、上では彼を利用して敵連合を一網打尽にするべきだという考えが出始めているんだ」

 

「それはつまり…彼をヒーローにするということ?」

 

「その通り」

 

ミッドナイトの言葉に塚内が頷くと、校長はそれを止めた。

 

「待ってよ塚内警部。いくら彼に力があろうと彼は生徒であり、ヒーロー希望でもない。希望しないカリキュラムを彼に課して無理やり仮免講習を受けさせる訳にはいかないよ」

 

「勿論、僕も同意見だ。本来なら我々大人が解決すべき事情に普通科の彼のみならず、ヒーロー科の生徒をも巻き込む事自体が普通ではない。……だが、上が本格的に動けば…僕も従わざるをえないだろう」

 

そう言い塚内は難しい表情を浮かべる。彼も交流があり、多少の融通が効くとしても限度がある。上層部の命令となれば、動かざるを得ないだろう。

 

「まぁ最終的な判断は神堂くん自身だからそこは心配ないんじゃない?」

 

「確かに…ミッドナイトの言う通りだ。彼は信念が固い。直接言われたとしても問題はないとは思う…」

 

 

 

それから不安を抱いたまま会議は無事に終了し、職員ことヒーロー達は今後のために動き始めるのであった。

 

「とりあえず神堂の奴にも詳しく話しときます。アイツはどこですか?」

 

「さっき、プールに向かっていったよ。なんでも、サポート科の生徒達の実験を見に行くとかで」

 

「実験…?」

 

根津から話を聞いた相澤は首を傾げながらプールのある場所へと向かった。

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

『雄英高校 専用プール』

 

敷地内の離れに設置されており、多少は歩くもののその大きさは市民プールの倍近くはあり、水系統の個性を持つ生徒達の練習場にもなっている。

 

 

だが、何故か今日は人だかりができていた。

 

「あ?なんだこの騒ぎは…誰か勝負でもしてんのか?」

 

職員室から歩いてきた相澤は、その人だかりを不思議に思いながら生徒達の間をすり抜けて扉を開け、プールサイドへと入る。

 

 

「……………は?」

 

扉を開けた瞬間 相澤は思考が停止した。

 

そこに広がっていたのは______

 

 

 

______プール内の水が激しい水飛沫を上げながら流れる光景であった。

 

 

「な…何だこりゃあああ!?」

その流れるプールはもはやプールとはいえないものであり、まるで洪水の様に激しい水の騒音を鳴り響かせながら流れていたのだ。

 

周囲ではその光景を驚きながら見つめている多くの生徒達の姿があり、そこには自身の管轄であるA組の生徒達の姿もあった。

 

「おいお前ら!!」

 

「あ、イレイザー!」

「相澤先生!」

 

相澤の声に、群衆の中にいた緑谷やミリオが気づき声をあげると相澤はすぐさま2人に事情を聞く。

 

「なんだこれは!?」

 

「いや…僕らも今きたばかりで何が何だか…」

 

すると、プールの流れてくる方向に立ちながら様子を伺うサポート科の生徒『発目明』の姿が見えた。

 

「おい発目!なにやってんだ!?」

 

「おやおやイレイザーヘッドではないですか!実はですね。私新作のベイビーちゃん『強烈水力発電水車』の試運転をしていたのですが、強すぎてこんなになってしまって」

 

「強すぎる!?そんなレベルじゃねぇだろ!時速何キロだ!?」

 

「う〜ん。大体、80キロくらいでしょうか」

 

「いますぐ止めろ!!」

 

「それが、燃料が尽きて止まるまであと10分もかかるんですよ。それに“彼”がまだ潜水中ですし」

 

「は…?潜水中!?誰か泳いでんのか!?この中を!」

 

発目の言葉に相澤は耳を疑うかの様に激しく彼女に聞き返すと彼女はさも当然の様に頷いた。

時速80キロなど、電車並みのスピードだ。そんな速さで流れるプールなど入ってしまえば確実に壁に打ち付けられて死に至るだろう。そんなプールを泳ぐバカなど存在する筈ない。

 

 

 

 

 

その時であった。

 

 

 

バシャン

 

「ぷはぁ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

突如として水面から短パン状の海パンとゴーグルを装着した小柄な少年が飛び出した。鉄砲水の数十倍以上の激しい水の中から現れた事で全員の目が注目する。

 

「し…神堂くん!?」

 

「「「「!?」」」」

 

それを見た緑谷の第一声と共にその場にいる全員の目が再び飛び出してきた少年へと向けられた。ここで泳いでいたのはなんと拳太郎だったのだ。

 

その一方で、現れた拳太郎は再び、水面に飛び込むと、バタフライを始めた。バタフライとは、水泳での競技において最もスタミナの消耗が激しい泳ぎ方である。この激流の中でそんな泳ぎなど自殺行為に等しいだろう。だが、拳太郎は一定の距離どころかグングンと前に進んでいたのだ。

 

「お…泳いでやがる…あんな激流の中をあっさり…しかも消耗の激しいバタフライで…!?アイツいつから泳いでんだ!?」

 

「かれこれ1時間くらいですかね?」

 

「1時間もずっとバタフライかよ!?アイツマグロかなんかか…!?」

 

「マグロというより鯱ですね」

 

 

 

すると

 

 

ザパァァァァン!!!

 

巨大な水飛沫と共に拳太郎がイルカのように飛び出すと、そのまま発目の横へと着地した。

 

「どうでしたか神堂さん!」

 

「ふぅ…ふぅ…」

 

飛び出した拳太郎は少し息を整えるとゴーグルを外した。

 

「バケーションに丁度いい。ありがとうございます発目さん。今度はちゃんと100キロで泳がせてくださ……ん?」

 

そんな中、ゴーグルを外した拳太郎は相澤だけでなく、周囲にも人だかりができている事に気がついた。

 

「相澤先生じゃないですか。…あれ?何でこんなに人だかりが?」

 

 

その光景に相澤や周りの生徒達はもはや何も言えなくなってしまった。特に相澤は先程の拳太郎が過去に起こした事件も重なり合った事で彼を完全なる別次元の生物として認識してしまう。

 

 

だが、ここは取り敢えず教師として彼に伝えるべく肩に手を置いた。

 

「神堂…お前あとで職員室来い…!!!」

 

「えぇ!?」

 




拳太郎が捕食した動物

アナコンダ

全長25メートル 身体幅1メートル

個性『筋力強化』『個性無効化』

突然変異で生まれた超巨大な大蛇であり、その巨大な身体でワニどころか牛までも喰らっていた。また、知能も高く人間ではなく主に栄養価の高い家畜を襲っており周辺住民を困らせていたが、拳太郎によって首をもぎ取られ、そのままBBQにされて喰われた。
更に筋力増加個性によって、全身の筋肉が更に強化されており、締め付ける威力は勿論だが移動速度もアオダイショウ以上である。

グリズリー

体長10メートル(4速歩行時であり、立ち上がれば30メートルに達する)

個性『筋力超強化』『個性無効化』

カナダで発見された突然変異のグリズリーであり、腕の一振りだけで人体を細切れにしてしまう。全身が筋肉の塊であるために刃は通らない。
軍隊が到着する前に拳太郎に殺され喰われた。

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