拳太郎によって、振り回されていたギガントマキアが、もう片方の腕に掴まれていた死柄木の腕に触れた事によって、その身体が硝子の様に砕け散り、空気へと消えていった。
「マキア!?……がはぁ!?」
マキアの身体が消えた直後、死柄木の顔を掴んだ拳太郎は地面へと叩きつけた。
「さて仕切り直しといくか」
「て…テメェッ!!!…ぐはぁ!?」
「どうした?今ちょっと見せた威勢はどうしたぁ‥?フンッ!!!」
更に追い討ちを掛けるように蹴りを放つ。鈍い音と共に死柄木の身体が岩盤へと更に強く叩きつけられていき、死柄木は遂に血を吐き出す。
「ダメだ神堂くん!!それ以上やったら本当に死んじゃうよ!!」
「知るかよ」
背後からボロボロな身体を引きずりながら叫ぶ緑谷に対して、倒れた死柄木の頭を掴み上げた拳太郎は振り返りながら答える。
「どいつもこいつも。やらかしたガキは殺さずに生かせってか?くだらねぇ。一回やった奴はまたやる。一度やらかした奴は内容によっては死ぬぐらい痛い目見ねぇと治らねぇんだよ。それに、ちゃんと急所は外してるし10%くらいの力で手加減してる。この程度でくたばってもらったら僕が困る」
「10パーセント…!?」
拳太郎のその言葉に緑谷は言葉を失ってしまった。
その一方で、拳太郎は掴み上げた死柄木へと目を向ける。
「死柄木。仮にお前が未成年だとしても、僕は許さねぇ。たとえどんな奴だろうと…殺意を持ってきた以上、保護観察だの綺麗事抜かす連中に渡される前に後遺症残るくらいぶちのめすって決めてるんだよ…ッ!!!」
すると、
「…お?」
死柄木の痣だらけの身体から痣が消え去り傷も修復していた。
「なるほど。自己修復系の個性か。随分と便利だな。まぁ見る限り体力までは回復できてねぇみたいだが」
「……」
拳太郎の言葉通り、全快し意識が残っているとはいえ、死柄木は腕を動かすことができなかった。動けない自己修復の個性を持つ者など、拳太郎から見れば『サンドバッグ』に他ならないだろう。
「さて。そろそろ終いだ」
そう言い拳太郎は体勢を整えると、先程と同じように拳を握り締め、死柄木目掛けて放とうとした。
「じゃあな」
その時であった。
「…あ?」
突如として周りの景色が一変し、巨大化していくと共に目の前の景色が薄いガラスのような透明な色で満たされた。
「なんだこれ…?」
「悪いが坊ちゃん。そこまでだ」
「あ…?」
その言葉と共に、巨大な手が拳太郎の入った“ビー玉のような入れ物”を摘み上げる。
「これは…そうか。僕を小さくして閉じ込めたのか」
その状況から、拳太郎は周囲が巨大化したのではなく、自身が縮み閉じ込められたのだと悟る。
拳太郎の入ったビー玉を掴む仮面をつけた男『Mr.コンプレス』の姿があったのだ。
「今すぐ出せ」
「残念ながらソイツは無理な願いだな。坊ちゃんにはここで退場してもらうぜ!!!」
「な…!?」
その言葉と共にMr.コンプレスは拳太郎が入ったカプセルを握り締めると、大きく振りかぶると____
____力一杯投げ飛ばした。
「そらよ!!!」
「!?」
投げられたそのボールはその場からクレーターを突き抜けていくと付近にある林まで飛んでいき、そのまま見えなくなってしまった。
「神堂くん!!!」
緑谷の声が響く中、倒れた死柄木もビー玉へと包んだコンプレスはマスクを取り去る。
「ここからは俺の出番だ…最後の意地ってもんを見せてやるぜ」
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その後、コンプレスによって、死柄木達を捕えることができず、コンプレスを拘束した時には既に迎えにきた別の脳無に乗り、死柄木やスピナー、荼毘、スケプティック達はその場から姿を消した。
コンプレスを逮捕する事はできたが、首領である死柄木を逃してしまったため作戦は失敗に終わったのであった。
それだけでなく、死柄木が覚醒した際に発動させた個性や、ギガントマキアの移動によって、数十名ものヒーローや市民が犠牲になってしまった故に決して喜べる結果とはならなかった。
それでも犠牲を残した分の功績は大きい。
本部に潜伏していた2万名のうち1万9000名の確保。因みにそのうちの、幹部を含めた5000名は拳太郎の暴行によって全員が全治数ヶ月以上もの重傷であったという。
また、ギガントマキアという巨大な戦力も撃破し敵勢力を大幅に削る事に成功したのだ。犠牲に見合った以上の功績と言っても良い。
だが、ここから更なる問題が次々と起こるのであった。
一つ目はNo. 1ヒーローであるエンデヴァーに対する声明を求める声である。
2点同時襲撃作戦から3日後。
緑谷やエンデヴァー達が入院している病院の前には、大量のマスコミが集まっていた。
___エンデヴァー!!答えてください!
__荼毘との関係は本当なのですか!?
人々は次々と、入院しているエンデヴァーの耳に届かせようと大きな声で投げ掛けていく。
エンデヴァーこと『轟炎司』と超常解放前線の幹部『荼毘』こと『轟燈矢』が親子関係であると共に、複雑な家庭環境を暴露された事で、現No. 1ヒーローにあるまじき事実に世間は驚愕し、皆やマスコミは彼自身の言葉を聞くためにこうして押し寄せていたのだ。
そして、もう二つ目は『神堂 拳太郎の素性』である。
本部に仕掛けられた隠しカメラなどで、拳太郎が超常解放前線の構成員達へ行った暴力行為や、それよりも以前の敵団体や宗教組織への過剰な暴力を与える映像が人脈を利用して手に入れたスケプティックによって全国のスクリーンなどに映し出されてしまったのだ。
それは正にエンデヴァーの家庭内暴力に並ぶ程の大ニュースとなり各種メディアに取り上げられる事となり、それに相乗するかのように今まで拳太郎によって入院や転校を余儀なくされた者などが配信者や文春などに匿名で拳太郎から行われた所業を、さも自身が一方的な被害者であるかのように暴露していったのだ。
故に現在の世間ではこう認識されていた。
『神堂拳太郎はヒーローという肩書きにモノを言わせ暴威を振るう暴力性異常者である』と。
そんな過去を持った彼をヒーローとして訓練に参加する事に許諾した校長へと皆は疑念の声を上げていたのだ。
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そして、そのニュースは当然ながら全国の高校生は勿論、雄英高校、そしてそのヒーロー科の皆も目にしていた。
「嘘…だろオイ…」
爆豪の見舞いに来ていた皆は、病院内に取り付けられたモニターから、その映像を目にしており、その映像を見た峰田は身体を震わせる。モニターに映っているのはなんと、大勢の敵をたった1人で殴り飛ばしていく拳太郎の姿だったのだ。
その表情は笑ってはいなかったものの、まるで何とも思わないかのように次々と敵達を殴り飛ばしており、辺りには血の海が出来上がっていた。
「アイツ…こんな事してたのかよ…!?」
「まだ出てくるぞ!しかも数年前のアフリカゾウの事件もコイツが犯人だってよ!」
次々と表に出てくる拳太郎の過去の事件に上鳴や瀬呂に続き、目にした皆は冷や汗を流していった。世間を騒がせ未解決になっていた事件のほぼ全ての犯人が自身らの同級生かつクラスメイトだったのだ。
更に、視聴していたニュースでは拳太郎の情報が次々と雪崩れ込み、記者が焦りながら紹介していた。
『た…たった今入った情報によりますと、過去に接触を図った敵組織全員に抵抗し、その際に全員に骨格が粉砕する程の暴行を加えたとの事です。中でもリーダーとみられる男は動作どころかコミュニケーションも取れない状態であり現在も治療中との事。この組織のリーダーの男は政界や警察にパイプを待ち数々の事件を口止めしていた事が____』
『2年前に連続強盗の犯人を意識不明の重体へ追い込むほどまで暴行を加えたとのことで__』
『数年前にカナダで発見された30メートル級のグリズリーの死体について、殴られた形跡が見つかり__』
『世界各地に拠点を持つ麻薬組織を全て制圧し本部を倒壊させたと__』
『ピエロに扮した連続幼児誘拐事件の犯人を顔面が陥没するまで殴りつけ___』
『人身売買のリーダーとその部下数百名を歩行と対話が不可能になるまで殴りつけ___』
『特殊なマスクをつけ人気のない屋敷の中で過激な宗教儀式を行っていた数十名もの男女全員をスクランブル交差点の街灯に吊し上げたと___』
『環境保全を訴えながら道路を封鎖している団体の組員を橋の下へ投げ飛ばしたと___』
『襲いかかってきた国際指名手配である凶悪敵の四肢を蝶々結びするなどして____』
見れば見るほど、拳太郎の情報が流れ込んでくる。その範囲は頂上解放前線という日本国内にはとどまらず、世界中の犯罪組織へと乗り込みその力を払っていた事が発覚してくる。
もはやニュース番組はエンデヴァーやオールフォーワンではなく、拳太郎の話題で持ちきりであり、他の番組の枠を取り延長する程であった。
「いやいやいや!!!やってる事おかしすぎる上にやらかしすぎだろぉ!?」
「これまじで全部、アイツがやったのか!?スケールが違いすぎるだろうが!!」
もはや酒の席での話としか思えないような所業に砂糖や瀬呂に続き皆は驚きの声をあげていった。
そんな中であった。
ガラガラガラ
「院内では静かにしろ〜」
「「「「「!?」」」」」
突如として扉が開き、相澤が顔を出した。
「先生!お怪我はもう大丈夫なのですか!?」
「軽傷だからな。それより…お前らニュースは見ただろ?」
八百万に答えながら椅子に座った相澤の問いに皆は頷くと相澤は大きくため息をつきながらも答えた。
「出ちまったモンは仕方ねぇ。お前らには話しておく。神堂がなぜヒーロー科に編入が決まったのか」
ーーーーーーー
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ーーー
ー
その後、相澤は全てを話した。拳太郎の罪を免除するためにヒーローになる条件を公安と交渉の末に提案して、拳太郎がそれに従う形で編入を決めたことを。
「少なくとも、それを提案して承認した俺にも責任がある…。黙っててすまなかったな」
「いや…ウチらも薄々感じてました…。神堂のやつ…敵への当たりが結構強かったので」
耳郎の言葉に、拳太郎と同じ制圧チームであった皆も頷いた。
彼自身がヒーローになる事に不本意であり、それをせざるを得なくなった原因だからこそ、敵団体への当たりが強かったのだ。
だが、それでもこれ程までに批判を受けている事に皆は納得できなかった。
「ですが先生!いくら何でもこの報道は偏見がすぎますわ!」
「落ち着け八百万。そりゃ神堂が潰してきたのは全部がとんでもない犯罪者共だ。特に大規模な敵組織はあれこれパイプ使って事件を揉み消してたからな。そんな連中をぶっ飛ばした神堂が刑罰を受けるってのは可笑しな話ってのは分かる…だが、世間はそう安々と受け止めちゃくれねぇのさ。結局は免許すら持ってない青年の暴行事件として捉えられちまう…特にメディアなんか都合の良い様に解釈してすぐ広めちまうからな」
「…」
相澤の言葉に皆は改めて自身らの考えが未だに世間とは相違があり、残酷である事を理解する。
そんな中であった。
「そういえば神堂は…?アイツ…作戦の後から姿が見えないんですけど」
「あぁ」
耳郎が問い掛けると相澤は答えた。
「ずっと波動の看病につきっきりだぞ」
○◇○◇○◇
相澤から話を聞いた皆はすぐさま拳太郎がいるねじれの病室へと向かった。
「まずは話を聞いてすぐに弁解の声をあげなければ!クラスメイトがここまで非難されるのを黙って見過ごすわけにはいきませんわ!!」
「そうだぜ!アイツがいなきゃ俺達どころか、先生やヒーローまで殺されてたんだからよ!」
そう言い八百万達は病室へと向かっていく。
そして、ねじれの病室へと着くと八百万は扉を開けた。
「拳太郎さん!ニュースをご覧になられまし_____」
その瞬間 八百万は固まってしまった。
「〜!!!」
「ハァ…ハァ…ハァ…拳ちゃん…!拳ちゃん拳ちゃん拳ちゃん…♡」
目の前に映り込んできたのは拳太郎をベッドに押し倒したねじれが服を脱がしながら何度も何度も舌を絡ませる濃厚なキスを強行している光景であった。
「やめ…むぐぁ…!?」
「…ん♡ダメだよ拳ちゃん…僕の女だなんて言われたら私…もぅ…我慢できない…私ずっと我慢してたし壊理ちゃんだって弟や妹が欲しいって言ってたから…もうやっちゃおう…ほら…嫌がっておきながら拳ちゃんの小ちゃいアソコが……♡」
「〜!!!だ…だめ…!!起きたばかりで…!!」
そう言いねじれは頬を真っ赤に染め上げ蕩けた表情を見せながら拳太郎へと更に覆い被さり下半身へと手を伸ばしていく。
すると
「……ん?」
ねじれの目が八百万や彼女の背後から此方を見つめる皆へと向けられた。
「…」
それを見たねじれは服を引き剥がす手を止めると、ゆっくりとベッドから立ち上がり手を向けた。
「え…?何デ入っテキてルの…?ワタしと拳ちゃんの愛ノ巣に…ぶっ飛ばすヨ…?」
「「「「「「ぎゃああああ!!!!」」」」」」