「やれやれ。とんだ無駄な事をしてくれたねぇ…」
日本のとある山間部にて。死柄木によって脱獄し、簡易的な医療用の椅子に座っていた大柄な男『オールフォーワン』は荼毘から聞いた現状に眉を潜めていた。
「いくら何でもこの報復はデメリットが大きすぎる。彼が執念深い事は知ってるでしょ…?」
「俺は知らねぇぞ。リ・デストロの部下どもが勝手にやっちまったんだ」
「う〜ん。弔には統率力についても教えておくべきだったね。まさか…ぶつかる壁が2つに増えるなんて」
「壁?」
「僕の計画の障害となる奴さ。特にこの2名は確実に消さなきゃならない…!」
「あのチビと、もう1人は?」
「ヒーローの発祥地…アメリカのNo. 1『スターアンドストライプ』奴さえ消して個性を奪えばあとは消化試合になり得るはずだったんだけどな〜」
オールフォーワンは少しばかり焦っているのか、笑顔に満ちていた表情を曇らせる。
「まさか…神堂拳太郎の家に火を放つなんてね。僕の計画の難易度が上がっちゃうじゃないか」
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その後、なんとかねじれを宥めてベッドへと寝かせると拳太郎は八百万から件のビデオを見せられた。
「拳太郎さん…こちらについてですが、ご存知ですか?」
「…へ!?」
その映像を見た拳太郎は驚き、即座にテレビをつけた。すると、ニュース番組が映り、偶然か否か、今の映像が紹介されていた。
「あれ?えぇ!?ニュースに出てる!?」
「いや見てなかったのかよ!?お前何やってたの!?」
「ずっとねじれさんの看病してましたけど…えぇ!?嘘!?」
耳郎の言葉に淡々と答えた拳太郎はそのニュースを見た途端に手で顔を覆った。
「う〜わ終わった…もう就職できないや…」
「打たれ弱!!いやいやここまで言われて黙ってるタマじゃないでしょ!?」
「いやいやいや!!」
その様子に驚いた耳郎が拳太郎へと問いかけるもの、拳太郎は首を横に振る。
「無理ですよ!こんな大々的になったら何言っても響かないですし!!」
「…確かにな」
相澤も改めてニュースへと目を向ける。やはりどこのチャンネルも拳太郎の話で持ちきりであった。
「コイツはしばらく大人しくするしかねぇな…」
その時であった。
『えぇ!?』
「「「「?」」」」
突如としてニュースキャスターの驚く声が聞こえ、皆はテレビへと目を向ける。見れば、新たに入ってきた情報のペーパーを見ているが、その驚き方が普通ではない。
その様子を気になった皆が見つめる中、改めて持ち直したニュースキャスターは冷静にペーパーを読み上げる。
『____た…たった今、入った情報によりますと、神堂 拳太郎の家が…何者かによって放火された模様……!』
「…え?」
その知らせと共に、ある映像が映り込む。それは激しく燃え上がる拳太郎の実家の映像であった。
燃え盛るその炎は更に激しさを増していき、木の割れる音と共に柱が焼け落ちると共に瓦の屋根が崩れ落ち、それにつられて家全体が倒れた。
「そんな…お義母さん…!!お義父さん…!!!」
それを見たねじれは驚きのあまり目から光が消え去り、虚な瞳を震わせる。
「ねぇ拳ちゃん!すぐに向か____」
ねじれが目を向けた時には_______
_________既に拳太郎の目は理性を失った獣のように真っ白に染まり、凶暴な肉食獣の様に鋭い牙を剥き出しにしていた。
「「「「「…!!!!」」」」」
その姿を見た一同は戦慄する。その雰囲気はねじれを痛ぶった死柄木に対していた時よりも更に激しくなっており、全身から溢れ出るそのオーラとまるで獣の如き凶暴性を剥き出しにした表情は周囲の空気や空間さえも歪めてしまいそうな勢いで揺らしていたのだ。
「…何で…関係ねぇ親を…僕の家族を…ッ!!!」
まるで獣の様に不気味に喉を鳴らし、目元から涙を流しながら、拳太郎はその家の周辺に立っている者へと目を向けた。
「全員…殺す…!!」
そして、自暴自棄になったのか、拳太郎は病院前で叫ぶマスコミ達へと目を向けると、その窓から飛び降り向かおうとした。
「〜!!!」
それを見た相澤は何かを思い出したのか、咄嗟に駆け寄り彼の肩に手を置いた。
「待て神堂…!!」
「あぁ…?」
振り返り、こちらへと向けられた拳太郎の目を見た瞬間 相澤は全身が震えると共に汗を流す。その目はもはや完全に冷静さを失っており、止めた自身さえも敵として認識して襲いかかってくるかのように思わせてきたのだ。
「邪魔すんなら…アンタでもタダじゃおかねぇぞ…!」
「ぐ!?」
拳太郎の発せられる強烈な威圧感に至近距離から浴びた相澤は冷や汗を掻きながらも耐え抜き、携帯を開くとある画面を見せた。
「落ち着け!お前の両親は無事だ!!」
「え…?」
相澤の見せた画面を見た拳太郎は、動きを止める。その携帯の画面には、塚内から説明を受けている両親の写真があったのだ。しかもその背景は家ではなく、一般的な宿泊ホテルの内装であった。
「これは…どういう事ですか…?」
拳太郎が尋ねると相澤は答えた。
「話すのが遅れたんだが…事情を考慮して、お前と波動の両親は秘密裏に保護してもらってたんだ。今は監視下のもと、ホテルに避難してもらってる。他にも、敵連合に深く関わった生徒の両親を優先的にな」
「そう…だったんです…か…」
相澤から聞いた話とその写真を目にして、両親が無事であると確信すると、拳太郎のゆらめいていた髪もオーラも完全に消え去り、いつもの穏やかな雰囲気を取り戻した。
それによって、その殺気から解放された八百万達はその場に座り込み、相澤も片膝をついた。
「ふぅ肝が冷えた…マジで殺されるかと思ったぞ」
「す…すいません…つい気持ちが抑えられず…」
「いや、両親が殺されたと思えば、誰だってお前と同じ気持ちになる。まぁしばらくは病院から出ねぇ方が良いな。院長には俺から上手く話しておく」
「ありがとうございます…ただ」
「ん?」
拳太郎は再び獣の如き真っ白な瞳を剥き出しにしながら拳を握り締める。
「あの死柄木とオールフォーワンは…この僕が確実に再起不能にする…誰にも邪魔はさせませんよ…!」
ねじれと自身の両親を危険に晒されたその怒りが臨界点を突破したのか、拳太郎はその2人を生涯を掛けてでも確実に仕留める“獲物”として捉えたのだった。
その意思の強さは固く、相澤でさえも口出しできないものでああり、ただ頷くだけである。
「……分かった」
その後。日が暮れたこともあり、一同は解散となった。
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それから翌日である。
「デクくん…そろそろ目が覚めたかな…」
拳太郎と同じインターン先である麗日は相澤から許可をもらい緑谷の見舞いへと訪れていた。
緑谷は先の大規模な作戦が終わってから突然と倒れ眠り出してしまい、拳太郎のニュースが放映された時も目が覚めなかったのだ。
すると
「ふざけてるのか…?緑谷くん…」
「え…?」
緑谷の病室から何やら拳太郎の声が聞こえ、その声を聞いた麗日はすぐさま向かうと、その病室のドアを開けた。
「えぇ!?」
病室を開けた麗日は思わず硬直してしまう。
そこには、拳太郎と対峙する緑谷の姿があった。だが、その雰囲気は決して良い物ではなく、寧ろ険悪であった。
「ふざけてない。僕は何がなんでも死柄木…いや、志村転孤を助ける」
「緑谷…テメェ!」