意識を失っていた緑谷は、個性に宿る歴代の継承者達と話していた。
度重なる死柄木やAFOとの接触により、意識が繋がった事で、緑谷は彼らから自身の受け継いだ個性の真価と、宿命そしてその後継者について聞いた。
OFAとは元はAFOの一部であり、与えられた『力をストックする』個性が初代の中で『個性を譲渡する』個性と変化したことで『力をストックし他者へ譲渡する』個性即ち【ワン・フォ・オール】となったのだ。
初代の兄であるAFOはそれを取り込むために幾度も歴代継承者たちとぶつかってきた。即ち緑谷もその宿命に立たされる事になる。
更に初代はあることを告げる。
「それと出久くん…OFAはもうただの個性ではない。個性保有者に譲渡すれば先代の比ではない上に譲渡するにしても君のような無個性は現代では絶滅危惧種だ…だから下手をすれば君が最後の継承者になるだろう」
「…」
その言葉に緑谷は覚悟するかのように表情を固める。自身の他にも無個性はまだいる。それも自身よりも遥かに強く器に適正な者が。だが、彼の性格からして受け取りは拒否するだろう。
故に緑谷はその言葉を強く噛み締める。
それから緑谷は、志村奈々から死柄木を殺す覚悟を問われるが、奔流した死柄木の憎しみの渦の中で見た『泣いている死柄木の姿』そして大切な師匠であるオールマイトから教わった『人を救う力』という考えから自身の想いを表明する。
『彼を助けたい』と。
その思いに自身の行動に悔やんでいた志村が涙を流す中、“二名”を除き全員が頷き個性を解放する事に決まったのだった。
その後、目を覚ました緑谷は見舞いへと訪れた母親へとオールマイトと共に全てを説明した。
OFAとは何なのか。そしてその個性を受け継いだ事で自身がAFOに狙われる事を。
それを聞いた緑谷の母親は絶望に染まり、何度も何度も止めようと声を上げるが緑谷は自身の想いと昔の母との記憶を語り必ず帰ってくる事を約束する。
そして彼は“皆のため”“決着をつけるため”雄英を去り戦地へと向かう事を決めたのであった。
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「よし」
目が覚めてより翌日。明け方になったばかりの頃。緑谷はベッドから起き上がると、事前に持ち込んでいたスーツを着用する。携帯を開くと、既にオールマイトからメールが届いており、病院の外で待っているとの事であった。
「…皆ごめん…」
緑谷はクラスメイトを思い返す。向かう前に皆にも会いたいという気持ちが芽生えてしまうが、そこは死地へ赴くため自身に厳しくし、堪える。
そんな時であった。
「あ!緑谷くん。目が覚めたんですね!」
「神堂くん!?」
入り口から声が聞こえ、見れば拳太郎が立っていた。
「何でここに!?それにその格好…」
「いやぁ…ちょっとね…」
質問をすると、拳太郎は何か話せない事情があるのか、目を逸らす。いや、怪しいのは服装だ。見れば神堂は上半身は軽いTシャツ、下半身は動きやすいダボダボなカンフーズボンとシューズといった服を纏っていたのだ。
「どこか行くの?」
「うん。これから死柄木とオールフォーワンの2匹を探しに」
その言葉と共に拳太郎の表情からは先程の柔らかな表情が消え去り、鋭い目へと変わる。
「アイツらの所為で僕の人生が台無しにされた上にねじれさんや家族まで危険に晒されたからさ…落とし前つけにいくんだ。取り敢えず2人とも両手両足複雑骨折させた上で口も動けない手も足も動かせない植物人間になるまで追い詰めてやろうと思ってね…」
「…!!!」
淡々と話す拳太郎の目は笑ってなどいない。確実に仕留めるような瞳をしていたのだ。
「じゃあ僕はこれで」
「待って!」
「ん?」
「話を…聞いて欲しい」
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その後。緑谷は全てを話した。自身の個性の秘密について。歴代の継承者の力を受け継ぐと共にその意識が残り、気を失っていた間は彼らと会話していた事を。
だが、その話をしていくうちに拳太郎の表情が強張っていく。
そして、話を終えた時には既に拳太郎の目は鋭くなり、拳を握り締めていた。
「…で?何が言いたい?」
「助けたい…」
その言葉を耳にした瞬間
「あ…?」
拳太郎の首から筋が湧き上がり、血走った鋭い目が向けられた。
「ふざけてるのか…?緑谷くん」
「ふざけてない。僕は死柄木弔を…志村転孤を助けたいんだ!」
「テメェ…」
その言葉に拳太郎は自身よりも背丈のある緑谷の首を掴み上げた。
「がぁ!?」
「意識だけの連中の言葉一つで僕が譲ると思うか!?そのおばあちゃんが後悔してんのか知らねぇが、身内に被害受けてないお前に譲るつもりは毛頭ねぇ!!」
「意識が…乗っ取られる時に凄く抵抗していたのが見えたんだ!!アイツだって苦しんでるんだよ!」
「だから助けるってのか!?今までの行いを全部許せってのか!!」
「許すだなんて言ってない!確かにアイツはたくさん人を殺したから…その報いを受けるべきでもある。けど…アイツも助けて欲しいんだよ!!それにこの個性は人を救うための個性…だからどうしても!助けを求める人に手を差し伸べたい!」
「このクソガキが…綺麗事なんざで収まる範疇じゃねぇぞ!」
その時であった。
「ちょっと2人とも!!」
入り口から慌てながら麗日が入ってきて、2人の合間に割り込むと、拳太郎から緑谷を引き離した。
「何があったの!?それに神堂くん!何でデク君を!?」
「そのバカがバカ言い始めたから問い詰めてたんだよ」
「え…?」
拳太郎の言葉に麗日は緑谷へと目を向けると、彼は表情を暗くさせる。
「緑谷。お前…ヒグマとかの害獣が駆除された時…どんな事が起きるか知ってるか?」
「クレームが必ずくる…」
「そうだ。何の被害も受けてねえどころか、本州の都心部、九州の安全地帯っつう熊と何の縁のない奴らからな。
『かわいそう』『山に帰せばいい』『麻酔銃使え』『殺すならお前が死ね』
被害も受けてねぇ、熊の習性も知らねぇ、麻酔銃の使用条件もデメリットも効力も知らねぇ能無しのゴミが口々に言い出した。実際に身内が食われちまえば同じ事が言えねえのによ……___
___今のテメェはそのゴミクズと一緒だッ!!!それに自分の親が同じ事されちまったら同じセリフが吐けるのか!!!」
「…!!」
その言葉に緑谷は言葉を失い、何も言い返すことが出来なかった。
「確かに…神堂くんの言う通りだと思う…。僕も君と同じ立場だったら、殺意を抱いてたし、殺したいと思ってたかもしれない…」
彼が言った事はまさしく正論だ。緑谷は自身のみだが、拳太郎は恋人のみならず家族まで危険に晒されたのだ。死柄木を殺したい程、憎いのは理解できる。
「そうだろ!?僕は親どころかねじれさんまで殺されかけた!!!これを恨む他に何がある!?正直言えば酷く殺してやりてぇぐらいだ!」
「…」
すると、突然と拳太郎は黙り込むと、緑谷の胸ぐらを掴んでいた手を離す。
「アイツに殺された奴らの遺族から恨まれる覚悟は?」
「できてる」
「そうか。そこまで先を見据えての発言を聞いた以上…無下にはできんな」
そう言うと拳太郎は緑谷へと指を向ける。
「僕と勝負しよう。お前の好きなヒーロー活動でな」
「…え?」
突然の申し出に緑谷は驚くと共に固唾を飲む。
「内容は…?」
「簡単。調子に乗ってるダツゴク共を1人でも多くぶちのめした方の勝ちだ」
これ、原作読んで思ったけども、出久ママ マジでよく病まなかったな…精神が人一倍強そう