拳太郎と緑谷の決闘。
それはオールマイトだけでなく、エンデヴァーやホークス、サー、そしてMt.レディ、シンリンカムイといった名の知れたヒーローも巻き込んだ大事となってしまった。
「死柄木を巡ってダツゴク狩りか…」
その様子を見守っていたエンデヴァーは言葉を漏らすと、隣に立っていたホークスが反応する。
「馬鹿げた内容ですよね。緑谷君が勝てば神堂君はAFOと一騎打ち…負ければ2人とも神堂君が相手にする。こんなの、この先一生聞きませんよ」
「そうだな。お前は一度、アイツを取り調べした事があったな?」
「えぇ。まぁ」
その言葉にホークスは拳太郎を見つめながら取り調べした日を思い出すと、冷や汗を流す。
「あの時は謙虚ながらもハキハキと答える元気な男の子でしたよ…とてもあんな取引を持ち掛ける様な雰囲気じゃあ無かった」
「俺もだ…この話を持ち掛けられた時は絶対に断ろうとした」
ホークスの言葉にエンデヴァー自身は数時間ほど前に拳太郎から今回の決闘についての話を持ち掛けられた時の事を思い出した。
話を聞いた当初は、あまりにも身勝手すぎるその要望を当然ながら断った。今でも救助活動などが行われている中、そんな事をすれば市民を巻き添えにしかねないだろう。
だが、拳太郎は引き下がろうとしなかった。何度も何度も食い下がるその姿勢は自身らを納得させるよりも寧ろ__
__“断る自身らを暴力で屈服させてでも実行する”勢いであったのだ。
最終的に期限は明朝とし、更に市民に被害が及ぼうとした場合はすぐに止める事を条件に承諾したが、それでも不安がある。
「奴はそれほどまで死柄木とAFOを憎んでいるということか…」
「そのようですね。それと、取り調べして分かったんですが、彼、海外じゃ結構有名だったらしいですよ?」
「なに…?」
その後、塚内からダツゴクのリストを受け取った拳太郎と緑谷はその場でウォーミングアップすると、戦場へと飛び出していった。
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緑谷が向かったのはまだ避難が遅れた住民が残っているとされる方角であり、歴代継承者達の個性を活用しながら進んでいた緑谷は、敵を捕捉すると次々と捕獲していった。
そして、敵を拘束すると用意していた拘束具でその場に拘束する。
「オールマイト!この人達をお願いします!!」
そう言い緑谷は、後から車に乗りながら追ってきたオールマイトへと託していきながら次々と相対したダツゴク達を捕縛していった。
この決闘には、もう一つルールがあり、それは任意でヒーローなどを1人、同行者として連れて行くことができるのだ。
その中で、オールマイトは自身の弟子を見守るべく同行者として名乗り出て、自身の所有する車を操作しながら後ろに取り付けた籠に緑谷が倒したダツゴク達を次々と入れていったのだ。
それからしばらくして。
周辺のダツゴクを全て捕え、更に避難が遅れた住民を誘導し終えた緑谷はその場で息を整えた。
「ふぅ…」
「飛ばしすぎだよ少年!焦る気持ちも分かるが…冷静にならないと。ほら!弁当!」
「すいません…」
オールマイトから渡されたカツ弁当で栄養補給をしていた緑谷はその指摘に頷くも、首を横に振る。
「でも…モタモタしてたら、神堂君に負けてしまいます。こうしている合間にも神堂君はダツゴクの1人や2人…もう捕まえているかもしれません」
「確かにそうだが…それで緑谷少年が疲弊してしまえば、それこそAFOの思う壺だ。途端に刺客を向けられてしまうぞ」
「はい…」
そして、緑谷は栄養補給を終えると、再びダツゴクを捉えるためにその場から飛び立った。
◇○◇○◇○◇○
一方で。
緑谷とは別方向に進んだ拳太郎。その先には多くのダツゴク達の姿があった。
だが、そのダツゴク達の表情は恐怖に染まっていた。
___うぁああああ!!!
__何でだよ!?何で“オーガ”がここにいんだぁ!?
___逃げろぉおお!!!!
久々の外に出てきた事で開放感に満ち溢れていたダツコク達だが、その表情は絶望に満たされ、必死に目の前の存在から逃げていた。
「逃げる?」
その時であった。
「バーカ」
「うぎゃぁあ!!!」
空から拳太郎が飛来し、逃げ惑うダツゴクの内の1人を地面へと叩きつけた。
「1匹も逃す訳ないでしょ。僕を怒らせた分は一億倍にして返してやるわ」
そう言い拳太郎は地面に叩きつけたダツゴクの頭を掴むと紐で縛り上げる。
「これで10匹めか。よっ」
そして拳太郎は近くに置かれていたトラックの荷台へと拘束したダツゴクを放り投げた。そこには既に9名もの拘束されたダツゴク達の姿があったが、全員が顔面が腫れ上がると共に手足のいずれかが青く染まる程の打撲傷を負っていた。
「大分集まったが…緑谷なら、個性使ってスムーズにやってる筈…僕も急がないと」
そして、ダツゴクを投げ入れた拳太郎は更に駆け出していく。
「オラァ!!!」
「がはぁ!?」
放たれたその拳が逃げ惑うダツゴクの腹へと深く突き刺さると、その身体を吹き飛ばし無人ビルへと叩きつけた。
「11匹目〜」
更にその場から姿を消すと、それを観察していたダツゴクの背後へと一瞬で周り、その肩目掛けて手刀を振り下ろす。
「ふんッ!!」
「ひぎゃぁ!?」
打ち込まれた手刀が、ダツゴクの肩どころか、背中全体を陥没させる。
「12匹目〜。さて、この辺りは片付いたか?」
12人目をトラックへと放り投げた拳太郎は周囲へと目を向けると、先程まで、脱獄で騒がしくなっていた空気が消え失せており、他のダツゴクの姿はなかった。
「……いねぇな。“遠くから狙ってた奴”も銃を下ろしたし、後で捕まえに行こ」
その時であった。
___ッ!!!!!
「見つけたぜぇえええ!!!オーガぁあ!!!」
「あ…?」
付近のビルが木っ端微塵に粉砕されると共に、そこから全身を筋繊維で覆った大男が飛び出してきた。
その大男を見た拳太郎は見覚えがあるのか、目を鋭くさせる。
「ダツゴクの1人『マスキュラー』か」
「嬉しいぜ。まさかお前に知られてるなんてな〜」
すると、マスキュラーは全身から筋繊維を更に生成し、超巨大な筋肉の鎧を形成し自身へと纏わせた。
「あぁ!!ワクワクが止まらねぇやあ!!!緑谷の前にオーガ!テメェとやり合えるなんざ最高だぜオイ!!!」
「オーガ?何だそれ」
「テメェの事だよ!!アッハッハ!!笑いが止まらねぇやあ!!!」
高らかと笑い声を上げながらマスキュラーの身体が全身から構成された筋繊維によって完全に、包まれ筋肉の鎧と化した。
これがマスキュラーこと今筋強斗の個性『筋肉増強』であり、その鎧は正に金属すら簡単にブチ破るほどの威力を誇る。
「俺は待ってたんだ!テメェとやり合う日をなぁ!!!」
そして、その鎧を纏ったマスキュラーは拳太郎へと狙いを定めると、その巨大な拳を握り締めてその場から飛び出した。
「さぁ遊ぼうぜぇええ!!!!」
「悪いけど、大人しく捕まってくれませんか?めんどうなので」
「やだね!!俺ぁ戦えりゃそれでいいんだよぉおお!!!!」
その鎧と化した身体はまるで弾丸の如く拳太郎へと向かっていく。
だが、そんなもの、拳太郎から見れば____
ガシッ
「…へ?」
____ただの野球ボールであった。
見れば拳太郎以上に図太いその剛腕を拳太郎は片手で受け止めていたのだ。
「へ…へへ!驚いたぜ!まさかアッサリ受け止めちまうなんてな!だったら次は___なに!?」
さらにマスキュラーは驚く。動かそうとした手が一ミリも動かせなかったのだ。まるで、その部位だけ鉄の中に埋まっているかのように。
「あ…あり…?抜けねぇぞオイ…」
「あれれ?アッサリと止まっちゃったよ?」
「!?」
その声が聞こえた時には既に遅い。そこには優しげながらも不気味な雰囲気を漂わせる様な笑みを浮かべる拳太郎の顔があった。
「個性は強力だけども、そんなの対策されちまえばどうにもならねぇ。特にお前のような増強型はそれよりも強い奴にあたっちまえばな。まぁ僕からして見れば個性にあぐら描いて自滅してる人は何人も見てきたし、今更めずらしくもないけどね」
その言葉と共に、拳太郎のもう一方の腕が頭に肩に添えられる。
「そしてその筋肉の鎧は見る限り結構重いから体重かけたらアッサリと崩れそうだね」
「!?」
添えられた腕から感じられるその腕力にマスキュラーはようやく拳太郎が何をするのか理解し、途端に焦り出す。
「ま…待て…!!!」
「バカですよアンタ♪」
その瞬間
_______
「ぬん…ッ!!!」
拳太郎の一声と共にその場に骨が砕け散る音が鳴り響き、同時にマスキュラーの悲鳴が響き渡ったのであった。
「さ〜て。一回戻るか」
拳太郎から決闘の話を聞いた各ヒーローの反応
シンリンカムイ、Mt.レディ、などなど 「「「「は…?」」」」
エンデヴァー「何を馬鹿げた事を言っている!?そんなもの許す訳ないだろうッ!!!」
ホークス「う〜ん…君が言うと、現実性あるんだけども、それ満足しちゃうの自分だけよね?気持ちは分かるけども、市民の事も考えなきゃいけないから、了承できないな」
サー・ナイトアイ「ユーモアの域を超えている…そんなこれから先絶対に聞くことがない身勝手な提案、了承できないぞ」
相澤「いやおかしいだろ!?どういう状況か分かってんのか!?」
ミッドナイト「いくら何でも見過ごせないわ。…ちょっと…そんなに強く見つめないでよ…」
校長「ダメだよそんなの!!君は自分の置かれてる立場わかってるのかい!?」
ねじれ「拳ちゃん…少し休もうよ」