ちょっと!!勉強の邪魔しないでよ!!   作:狂骨

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番外編 他人の生活を観察するのは良い経験だ

 

これは、拳太郎が1-Aの寮に引っ越して間もない日の事である。

 

 

 

 

「(知りたい…神堂くんは一体…どんなトレーニングしてるんだろ?あんな強さを手に入れるほどのトレーニング…凄く興味がある)」

 

ある日、緑谷は突然と、拳太郎の強さの秘密に興味を持ち、すぐさま拳太郎へと尋ねた。

 

「はい?今度の自由日に僕と同じ生活を?」

 

「うん。神堂くん凄く鍛えてるでしょ?僕も個性の都合上…もっと筋力が必要になってくるから…そのために神堂くんの生活から何かヒントを貰いたいなって…」

 

「まぁ…僕ので良ければ別にいいですよ」

ーーーーーー

ーーーー

ーー

【自由日(フリーデイ)】

 

それは月に一度、自由に活動できる日であり、出掛ける事も、一時的に帰省することも可能なのだ。それでも遠方に家族が住んでいる生徒は申請が必要である。

 

また、他学年、他学科の寮に入り、部屋で共に過ごしたり食事もすることも出来る。

 

故に他の部屋にも同じように交流のある者達が遊びに来ていた。

 

その中でも緑谷は観察のために拳太郎の部屋へとお邪魔していた。

 

○◇○◇○◇

 

朝8時〜12時

 

食事を終えた緑谷が拳太郎の部屋へと赴くと、既に拳太郎は机に向かっていた。

 

習慣その1 【普通科目の勉強】

 

「僕は進学するつもりなので、それに備えてます」

 

「あ、そうだったね。じゃあ僕も」

 

その姿勢に緑谷は納得すると、自身も勉強道具を持参して同じように勉学に励んだ。

 

「(午後からトレーニング始めるのかな…?)」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

その後。昼となった。

 

各部屋からは料理を行う音が聞こえ始め、その音を聞くと、

 

グゥゥ〜

 

腹の虫が音を立てた。

 

「あはは…お腹すいたね」

 

「そうですね。では昼食としましょう」

 

そう言い拳太郎は冷蔵庫から材料を次々と取り出した。

 

「今日は豪勢に秋刀魚とステーキでいきましょか」

 

「えぇ!?いいの!?」

 

「いいですよ。その代わり、今度何か奢ってくださいよ?」

 

「うん!」

 

拳太郎から食事を振る舞われる事に緑谷は期待に胸を膨らませながら彼と共に下の調理場へと向かった。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

その後、食事を作り終えて部屋に戻るとおかずやサラダを皿に盛り付けて用意を終えると、手を合わせた。

 

「「いただきます」」

 

因みに献立は白飯に味噌汁、サラダそして主菜は2人分の秋刀魚と我々男児の大好物と言って良い『ステーキ』だ。

 

○◇○◇○◇

 

それから食事の時間となる。拳太郎は黙々と食事を進めており、そんな姿を緑谷は観察していた。

 

だが、緑谷はある一点をみた途端に箸の動きが止まってしまった。

 

「…す…すごい…」

 

見ればそこには、先程まで身がぎっしりと詰まっていた秋刀魚の身体が骨と尻尾のみ綺麗に残されたまま置かれていたのだ。柔らかい身などは一切残っていない。内臓までもだ。全て綺麗に取り除かれていたのだ。

 

「(魚ってあんなふうに食べるんだ…)」

 

それを見た後に自身の食べ終えた秋刀魚をみてみる。

 

内臓は勿論だが、未だ食べられる箇所は残っており、更に上手く取り除かなかったのか、骨がぐしゃぐしゃになっていた。

 

 

 

 

すると

 

「食べ方がなっちゃいない」

 

「え…?」

 

拳太郎の声が聞こえ、顔を上げると、拳太郎の目が此方に向けられていた。

 

「漫然と口に物を運ぶな…何を前にし、何を食べているのかを意識しろ…それこそ命を喰らうものに課せられた責務…義務と知れ。僕らは命を食べて生きている…即ち生物の犠牲の上に成り立っている。その犠牲となった生物に感謝しながら食すことを心がけろ」

 

「あ…はい!」

 

とても同い年の子が言うようなものではない上に、先程の雰囲気とは全く異なるその台詞に緑谷は思わず返事をしてしまう。

 

同年代の者からすれば、屁理屈だのめんどくさいだのという感情が湧くだろう。だが、拳太郎の言葉にはそれを感じさせない程の“説得力”というものがあった。

 

そして、その言葉を耳にした緑谷は自身の目の前に並べられた料理へと目を向ける。

 

「(そうだ…改めて見ると…この魚やステーキは元々、生きてる動物…もっと長生きしたかっただろうけど…僕らの都合で殺し…いま目の前にある…)」

 

拳太郎から言われたその言葉を噛み締め、目の前の料理の存在を改めて認識すると、取り除いていた秋刀魚の内臓や骨についた身を口に運び、ゆっくりと噛み締めた。

 

「…」

 

噛み締める度に自身の中へと流れていく感覚に見舞われる。その感覚の中で緑谷は感謝する。この身体の血肉へと変わり、今の自分を作り上げてくれた数々の食べ物達へと。

 

 

そしてもう一度、拳太郎へと目を向ける。静かに食事をするその姿はまさに自分や大人よりもマナーを心得ており、まるで感謝をするかのように料理を味わっていた。

 

 

これこそ、自身と拳太郎の圧倒的な違いの一つだろう。

 

習慣その2『感謝しながら食事』

 

 

すると 

 

〜♪

 

突然と携帯の通知音が鳴り、見ればそこには

『ヴィーガンデモ進行中』

 

という題名の記事があった。その画面に拳太郎は食事の手を止める。

 

「ヴィーガン…ですか?」

 

「うん。海外だとそういうデモ活動が活発になってきてるらしいよ。凄いな…僕、カツ丼とか肉が好きだから絶対に合わないな〜」

 

少々、笑みを浮かべながら記事の感想を溢すと、今度は興味本位で拳太郎へと問い掛ける。

 

「神堂くんはどう思う?」

 

「ふん」

 

その問い掛けを待っていたと言わんばかりに拳太郎は鼻を鳴らすと答えた。

 

「ヴィーガン…菜食主義…宗教は別として、世間では食への偏りを多様性と謳いますが、そんなもの、ただ己の責任から逃げているだけです。命を食うという意識と責任を持ち、全て平らげる度量こそが食には肝要。それを持ち合わせていないソイツらは同じ人間とは思えません」

 

そう言い拳太郎は嫌悪感を示す。

 

「ヴィーガンを押し付けてくる奴がいたらぶん殴ってますよ。それに近頃、『子供にヴィーガンを勧めるのは虐待ではない』とか抜かす奴がいて、つくづくバカがいなくならないなと思います。栄養や医学知識もねぇ癖に偉そうに語りやがって…」

 

「あはは…」

 

 

それから食事を終えると、拳太郎は立ち上がる。

 

「さて…食後の運動と行きますか」

 

「…!」

 

その言葉に緑谷は息を飲んだ。いよいよ始まるトレーニング。一体どのようなものなのか、果たして自分が真似できるものなのだろうか?

 

固唾を飲み込みながら緑谷は頷いた。

 

「うん!」

 

その後、食後の運動という名のトレーニングが始まった。内容は______

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

___日本1周である。ちなみに北海道も込み。

 

「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…日本1周なんて……聞いてない…」

 

戻ってきた緑谷はその場に大の字で倒れながら言葉を漏らす。因みに緑谷は拳太郎と同じスピードで向かうもついていけず、青函トンネル付近でバテてしまい、その後は拳太郎に担がれたまま戻ってきたのだ。

 

「これが…運動!?」

 

「えぇ。前までは朝“も”やってたんですが、相澤先生に止められましてね。昼だけやるようにしたんです」

 

「ほ…他には…?」

 

「あとは、腹筋背筋とかの筋トレ10種類をそれぞれ100回100セット。実践は巨大なワニやアナコンダ、熊で試して…」

 

「…」

 

その言葉に緑谷は絶句すると共に確信した。

 

拳太郎は強さどころかトレーニングですら自身らと次元が違うと。

 

 

習慣その3『日本一周と筋トレ』

 

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ーーー

 

それから日が暮れ、遊びに来ていた他の寮の皆も帰り始めていった。

 

「今日はごめんね。僕の都合に合わせてもらって」

 

「いえいえ。それよりも、何か掴めましたか?」

 

その問いに対して、緑谷は苦笑しながら頷く

 

「掴めたというより、圧倒的な差を思い知ったよ…」

 

「え?」

 

それから食事を終えると緑谷は拳太郎の部屋を後にしたのであった。

 

 

分かったのはただ一つ。

 

「(自分のできる事から始めよう…)」

 

自分に合ったトレーニングから始めることが何よりも大切である。いきなり強い人の真似など逆効果なのだ。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

「ふぅ…疲れた」

 

一方で、緑谷を見送った拳太郎は扉を閉めた。

 

「でもなんで僕の生活を参考にしたんだろ……」

 

突然と自身の生活について観察したいと申し出た緑谷に、拳太郎は疑問に思いながら、扉を閉める。

 

 

 

そして、ゆっくりと振り返ると_____

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。拳ちゃん♡」

 

「ッ!?」

 

そこには満面の笑みを浮かべたねじれが立っていた。突然と彼女がそこに立っていた事で拳太郎は驚きのあまり尻餅をついてしまう。

 

「な…なんでここに!?というかいつ入ったの!?」

 

「え?さっき。窓が空いてたから。…あ、ダメだよ?ちゃんと鍵掛けないと」

 

そう言いねじれの手が拳太郎の後ろにある扉の鍵へと伸びると、ゆっくりとロックした。

 

__カチャン

 

「え…えっと…何の用ですか…?」

 

「え〜?決まってるじゃん」

 

恐る恐る尋ねるとねじれは笑みを浮かべながら、後頭部に手を添え、顔を胸に押し付けた。

 

「むぐ!?」

 

「月に一度の一緒に過ごせる貴重な時間なんだよ…?“溜まってる”んだから_____

 

 

 

 

 

 

 

________2人でカラカラになるまでスッキリしないと♡」

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

その後、

 

八百万が拳太郎の部屋の前を通り過ぎようとした時に、部屋からは激しい物音が聞こえたという。

 

 

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