「え…?ちょっと待ってくださいよ…」
エンデヴァーの判定に拳太郎は詰め寄った。
「何でですか…?僕の方が…僕の方が奴より多く捕まえたッ!!見りゃ分かるだろうがッ!!!!」
その言葉と共に拳太郎の目から瞳孔が消え去り獣のような真っ白な目へと変化するとエンデヴァーへと怒りを露わにする。
「…あぁ」
それに対してエンデヴァーは冷静に答えた。
「確かにそうだ。“敵”も含めればな。だが今回のターゲットはダツゴクのみ。だからダツゴクリストにあった奴を多く捕らえたデクの勝ちだ。お前も事前に受け取っていただろ?」
「__!!!」
その言葉に拳太郎は自身が提示したルールを思い出した。今回の決闘の内容は『時間内にどれだけダツゴクを捕まえられるのか』
故にダツゴクのリストに乗っていない敵はカウント対象外である。
それと同時に途中からダツゴクリストを確認していない事も思い出した。
「く…ぐぅ…!!!」
内心、納得ができなかったが、自身が仕掛けた勝負で、自身が持ちかけたルールで“負けた”。
これ以上の何があるのだろうか?
ここで引き下がらならければ、それはただの“駄々っ子”に他ならない。認めざるをえないだろう。
「分かった…よ…」
故に拳太郎は目元を震わせながらも認めた。
「僕の負けだ」
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その後、勝負は終了し、警備隊の皆は元の配置へと戻って行った。
更にナガンが目を覚まし、ホークスへと情報提供した事で事態が進展し、ヒーローと警察は警備体制を整えつつ情報どおりの場所へと向かう事となったのだ。
「お前はどうする?」
「はい?」
着々と準備が進む中、エンデヴァーが尋ねると拳太郎は首を傾げる。
「僕も行くのですか?」
「どちらでも良い。一緒に来てくれるならば心強い。雄英に戻るのであれば向こう側の警備の強化にもつながるだろう。今は強化された雄英バリアによって、大多数の市民が避難している」
「…」
エンデヴァーの問いに対して、拳太郎は答えた。
「一度、戻ります。少し頭を冷やしたいので…」
「そうか。分かった」
拳太郎の答えにエンデヴァーは頷くと、同行するヒーロー達の元へと歩いて行った。
「それと神堂……戻っても俺達の事は焦凍達には黙っていて欲しい。俺が深夜…報告に来ることもだ」
「はぁ…?まぁ分かりました」
そんな中であった。
「神堂くん」
「…んあ?」
雄英へと戻ろうとした拳太郎を緑谷が呼び止めた。
「何ですか?」
「今回は…僕の我儘の所為で我慢させてしまって…本当にごめんね…」
「…別に」
それに対して拳太郎は一瞬、不満な表情を浮かべながらも答えた。
「勝負を申し出た上にその勝負で負けたんだ。僕がとやかく言う立場じゃない。自分で勝ち取ったんだろ」
「うん…だからこそ…神堂くんが譲ってくれたこの機会は…絶対に無駄にしないよ…!!」
「…」
向けられたその目はとても真っ直ぐでこれから起こる全てを覚悟しているかのようであった。
「…まぁせいぜい頑張りなよ。無理なさらず」
その後、拳太郎はその場を後にし、道中で束になって襲い掛かってきた数百体以上もの敵達を殴り飛ばしがてら、(※全員、もれなく粉砕骨折)雄英に戻ったのであった。
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その後、雄英高校に戻り、警備センサーなどに気付かれることなく校内に入った拳太郎は、今回の件について報告するために根津の元へと向かった。
「全く。言ってくれれば迎えにいったんだよ?」
「いえ、校長先生直々にお出迎えさせる訳にはいかないので」
そう言い拳太郎は根津が淹れたコーヒーを啜ると、根津は切り出した。
「さて、今回の事について、改めて教えてくれないかな」
「…分かりました」
根津から尋ねられた拳太郎は今回の決闘について話した。
「ただ単に間接的とはいえ僕の家族と恋人を危険に晒した死柄木も許せず、僕の手で殴りたかった事もそうですが…緑谷くんの考えにムカついたのもあって、彼を黙らせるために思いつきました」
「うんうん。家族思いの君らしい動機だね」
「それで負けて、帰ってきました」
「なるほどなるほど……え?」
拳太郎の話を根津は思わず驚くも、それ以降は何一つ言わず、優しく聞き入れていった。
そんな中であった。
拳太郎はある事を尋ねた。
「先生…僕がしてきた事は全部、暴力沙汰ですが、やり返したまでです。でも、何故か僕は世間から『異常者』として扱われてますが、僕は異常者何でしょうか…?」
それは、連日報道されている自身の批判。今もなお、SNS上では彼を批判する声が上がっていた。中には、彼を擁護する声もあったものの、報道の方が信憑性が高いのか、他の多数の声によって、それも掻き消されていた。
それによって、自身は本当に異常者なのか何なのか分からなくなってしまったのだ。
「う〜ん」
その問いに対して、根津はコーヒーを一口飲むと答えた。
「私は全くそうは思わないよ。やられたらやり返す。ごく普通の事さ。暴力沙汰でも、神堂くんからやった訳じゃないんでしょ?」
「まぁ…」
「罪もない人に暴力を振るうのはただの敵さ。確かに君は幾つもの事件を起こして警察のお世話になってるけども、全て相手側から仕掛けられた事。それも凄く酷くね。神堂くんがしたのは、それに酷く腹を立てた仕返し。全く普通の行動だから、私は君を『異常者』などと思ってないよ。ただの年頃の中高生さ!」
「…だけど世間では…」
「確かに閉鎖的な空間となった今の日本ではそうかもしれないね。けどね」
拳太郎が今もなお、自身にはられている異常者というレッテルについて話すと、根津は頷きながらある画面を見せた。
「これを見てごらん」
そう言い根津がある画面を見せる。そこには、世界各地の紛争地域であった場所や国々の者達が声をあげていた。
『オーガこそ我々の英雄!!』
『彼を悪に仕立てるなど日本のメディアは腐っている』
『真の敵はトムラ・シガラキだ!』
『彼を人間国宝へ!!』
などなど、次々と拳太郎を支持する声が上がっていたのだ。
「これは…」
「今の閉鎖された日本では、君は多方面から忌み嫌われているだろう。だけどね、それすら上回る世界中の人々が君の味方なんだよ?それに、君が今回、各地で敵を捕獲したお陰で一部の脱獄した敵達が自首し始めてるのさ。結果論とは言え、これも立派な成果だよ!」
そう言い根津は拳太郎の肩に手を置いた。
「だから胸を張って!君の貴重な戦果をこれ以上、スキャンダルなんかによって汚すわけにはいかないさ!必ずこの騒動は私達が何とする。だから心配しなくていいよ!」
「校長先生…」
その言葉に拳太郎は彼へと最大限の敬意と感謝の念を抱き、彼に頭を下げる。
「ありがとうございます…!!!」
「うんうん」
感謝の言葉を述べながら頭を下げる拳太郎に根津は頷く。
そんな中であった。
「さてと、ここからもう一つだけ、話を聞きたいんだけど、良いかな?」
「はぁ…まぁ僕が話せることでしたら」
「うん。実はね。聞きたいのは私じゃなくて“彼ら”なんだ」
「彼ら…?」
その時であった。
バン!!
後ろの扉が開かれると、そこには緑谷と同じA組の皆が立っていた。
「すまないね。彼らがどうしても緑谷くんを連れ戻したいと言ってたから」
「はい?連れ戻す?え?どう言うこと?」
突然と現れたA組の面々のみならず、根津の言葉に拳太郎は首を傾げるのであった。