その後、次々と他の選手達が入場口へと戻ってきていた。
だが、それでも皆の目線は緑谷と話している謎の少年へと向けられていた。それもそうだ。今まで姿を見せなかった生徒、それどころかヒーロー科ではない普通科の生徒が突然と緑谷の元に姿を現したのだから。
「ね…ねぇアイツ誰なの…?気づけば爆豪と轟の2人追い越して緑谷と並走してたけど…」
「分かりませんわ…ただこれだけは言えます…相当な実力者であると…」
A組所属の耳郎響香と八百万百が話しているその一方で、2人の話題となっている少年『拳太郎』と話していた緑谷は先程の出来事が忘れられずに彼に尋ねていた。
「えっと…神堂くん…だっけ?君ってどんな個性なの!?」
「個性?僕は……」
すると
「よぅ神堂、やっぱり1位だったか」
背後から声が聞こえ、振り返ると心操が手を上げながら歩いてきていた。
「あ、心くん。そっちも無事にゴールできたんだね。あ、じゃあまたね緑谷くん!」
そう言い拳太郎は緑谷に手を振りながら心操の元へと向かっていった。
すると
『さぁ!!これで全員ゴールに到達したわ!!予選を通過した上位42名はこちらよ!!』
そのアナウンスと共に巨大なモニターには上位42名が表示されていた。
『因みに写真判定の結果、同時通過の二人の内、緑谷くんの足が神堂くんの足よりも先に会場への入り口へとついていたので緑谷くんを1位とします!!』
「だとよ」
「あちゃ〜…」
モニターを見ていた拳太郎は落胆する。
その一方でアナウンスは続いていた。
『因みに予選に落ちてしまった生徒は大丈夫!!これからまだまだ出番はあるわ!!続いての競技はこちらよ!!』
そのアナウンスと共に背後のスクリーンに先程と同じく次の競技種目が表示された。
______“騎馬戦”
『ルールは簡単!2人から4人のチームで騎馬を組んでチームになった選手全員のポイントが合計した鉢巻を騎手が巻いて相手と奪い合う!ただし事故防止の為に鉢巻は首から上に巻いておくように!』
新たな種目がチーム競技である事に拳太郎は頭を抱える。言うなれば親しい人と組むことが重要である。だが、拳太郎と心操を除いて普通科生徒達は脱落してしまった為に組む人がいない。
その一方で、アナウンスはさらに続いた。
『因みにポイントは42位は5ポイントから始まり、41位は10ポイントと5ポイントずつ増えていくわ!!そして1位に与えられるポイントは…1000万!!!上位の奴ほど狙われちゃう下剋上サバイバルよ!』
そのアナウンスと同時に皆の目線が一位である緑谷へと注目する。それもそうだ。彼の鉢巻を一本取るだけでたとえ最下位でも逆転が可能なのだから。
「心くんどうする?僕と組む?」
「俺はそうだな…」
疑問に思った拳太郎が心操へと尋ねと、彼は一度考えながら答えた。
「遠慮させてもらう」
「え!?なぜ!?」
「別にお前と組んでもいいが、そうなるとお前を騎手にして俺が下にならなきゃならん。お前は身体能力が強すぎて他の奴らだと動作が遅れちまうからな。だが、俺が騎馬になると洗脳して集めた奴らと動作を合わせなきゃならん。そうなりゃバランスが崩れやすくなって倒れるリスクもできちまう」
「そっか。確かにね」
心操の言葉に拳太郎は納得すると別の人を探す。だが、残っているのがヒーロー科(一名はサポート科)のみであるために誰一人、顔見知りがいない。
そんな中であった。去ろうとした心操が立ち止まる。
「あ、でもちょうど良い策があった」
ーーーーーーーー
それからチーム決めの時間が終了して各々が騎馬を作り位置に着いていく。
因みに迷っていた拳太郎は結局、心操と組む事になった。その役割としては拳太郎が騎手となる形である。
「大丈夫?重くない?」
「あぁ。ギリギリだな」
「「……」」
因みに心操の他に無表情で拳太郎を支えているのはそれぞれヒーロー科のA組とB組の生徒である。
そして、遂にスタートの合図が鳴った。
「いくぞ」
「うん」
合図が鳴ったと同時に、先方に見える緑谷の元へと複数のチームが向かっていく。それもそうだ。彼の持つ鉢巻を取れば逆転が可能なのだから。だが、それでも彼らの元へは向かわずに拳太郎を乗せた騎馬に近づいてくるチームの姿もあった。
『おぉ!!やはり殆どのチームが緑谷を狙いに行くー!!!……がぁ!?なぁんと!!2位の神堂チームにも向かっていくやつがいたぁあ!!!』
プレゼントマイクの実況と共に拳太郎チームに迫ってきたのは2組のチームであった。
「よぅよぅよぅ!!2位の普通科のやつはお前かぁ!?俺はB組の鉄哲だぁ!!」
「早速で悪いけど、取らせてもらうよ!!」
攻めてきたのはヒーロー科B組である鉄哲と拳藤の2チームである。迫り来る二つのチームに対して予想はしていたのか、心操は慌てずに拳太郎へと尋ねる。
「行くか?」
「いや、まだ早いと思うよ。心くんの個性は後半になってから使えば良いよ」
その言葉と共に拳太郎は呼吸を整えながら両腕を広げる。
その瞬間
「「え!?」」
鉢巻へと手を伸ばしてきた2人の手の軌道を逸らした。それによって向かってきた2チームは鉢巻を奪うことすらなく通り過ぎていった。
「なんだぁ!?何が起こった!?正確に鉢巻狙った筈なのにすり抜けやがった!?」
「いや…違うね。アイツ…かなりできるよ…。アタシらの手…触ったって分からないぐらいの速さで防いだんだ…やっぱりただの普通科の生徒じゃなさそうね…」
困惑する鉄哲に拳藤が答える中、肩の骨を鳴らした拳太郎は笑みを浮かべた。
「戦闘ならまだしも、このような競技での相手方の捌き方なら慣れているので。お手柔らかにお願いしますね。ヒーロー科の皆さん」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー
ー
それからは騎馬戦は順調に事が進んでいった。普通科である拳太郎が突然と2位へ躍り出た事で皆は拳太郎の力を警戒していたのかあまり彼の所属するチームに攻撃してくる様子はなかった。緑谷のチームを諦めたチームが攻撃してくる事が多かったが、それも全て拳太郎の捌く技術と心操の洗脳によって全て防がれていった。
それによって、誰も近寄らなくなった事で見物する立場となり、ずっと目の前の試合を観戦する事となった。そうする事で騎馬戦の残り時間は1分へと差し掛かり、それによって心操は目を鋭くさせる。
「そろそろ頃合いだな」
「うん」
そして、一気に拳太郎達は攻めに入る。狙いを定めたのは3位へとランクインしている鉄哲達のチームだ。
「よぅカチンコチンのチーム!!取りに来たぜ!勝負だ!」
「あぁ!?上等だよ!!絶対渡さねぇぜ!!」
「あら…私達を狙うなんて…これも宿命なのかしら…?」
「いや、違うと思う…」
心操の呼びかけに鉄哲に続き、チーム全員が反応した。
その瞬間
「「「…」」」
突如としてそのチームの動きが止まる。それを見た心操はすぐさま命令を出した。
「お前らの鉢巻をウチのチームの騎手に渡せ」
「…」
すると、その命令通りに鉄哲はすぐさま頭に巻いていた鉢巻を外すと拳太郎へと手渡した。それによって、拳太郎達のチームが1000ポイントを超えて一気に上位へとランクインする。
その直後
『終了!!』
競技終了の合図を知らせるチャイムが鳴り響いた。それによって周囲で動いていた騎馬達は動作を停止して、ポイントが記載されているモニターへと目を向ける。
『結果発表といくぜぇえええ!!!1位轟チーム!!2位爆豪チーム!!3位鉄哲……え?神堂チーム!?いつのまにか!?そして4位はぁ…緑谷チームだぁぁ!!!』
「うぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
その実況と共にどこからか嬉しすぎて泣き叫ぶ声が聞こえてくるが、無視しておこう。
『以上の上位4チームが体育祭の最終種目に出場決定だぁー!!!』
そのアナウンスに拳太郎はガッツポーズを決める。
「やったね心くん!」
「おぅ。お前もな」
その後、騎馬戦に参加した生徒達が招集され、最終種目についての説明が始まった。
内容は至ってシンプル。『ガチンコ勝負』だ。一対一で生徒同士が個性を使用してバトルを行うというもの。この体育祭においてフィナーレを飾るといっても良い種目であり、レクリエーション種目の後に行われるのである。
そして、説明が終わると対戦相手を決めるためのくじ引きが行われる事となった。だが、その際に心操が操ったA組の尾白とB組の庄田の2人が自身の力不足とポリシーに反するという理由で辞退し、代わりに鉄哲と彼と同じチームであった塩崎が出る事となった。
出場選手が決まった事で、皆は次々とくじを引き始めていく。
「取り敢えず…お前とは絶対に当たりたくないな。病院送りにされちまいそうだ」
「そんな事しないよ!?」
1位のチームから順に皆が次々と引いていく中、心操と拳太郎もくじを引く。
そして、全員のくじが引き終わるとミッドナイトはアナウンスを出した。
『さぁ!!くじ引きが終わった事で組み合わせはこうなりました!!!』
その言葉と共に目の前の掲示板には確定されたトーナメント表が出されていた。見れば心操と拳太郎が当たる組はなく、心操がAブロックで拳太郎がBブロックであった。
「ふぅ…どうやら粉々にされる心配はねぇな」
「だからしないって!!」
心操の相手となるのは、緑谷である。
「俺の相手は……アイツか」
心操は自身と同じく対戦相手である緑谷へと目を向けると、彼の元へと向かっていった。
その一方で、拳太郎も自身の対戦相手の名前を見つける。彼の相手となるのは____
「僕の相手は…ん?はっぴゃくまん…?」
『八百万』という生徒であった。その生徒を見つけるべく拳太郎は周囲を見渡す。
すると
「『やおよろず』ですわ」
背後から訂正する声が聞こえ、振り返ると長い髪を一纏めにした背の高い女子がこちらを見下ろしていた。
「おぉ貴方が…これはこれは失礼を」
「いいえ。よく間違えられるから慣れていますわ…それよりも、次の試合ではお互いにベストを尽くしましょう」
そう言い彼女は優しい笑みを浮かべる。それに対して拳太郎は顔を赤く染め上げながらも笑みを浮かべながら頷いた。
「はい!こ…こちらこそ!!」
すると、
「お〜い。飯食いにいくぞ〜」
「あ、うん!!では失礼します」
心操の呼ぶ声が聞こえ、拳太郎は頷くと八百万に頭を下げながら彼の元へと走っていったのであった。
ーーーーーーーーー
その後、八百万はA組の元へと戻ると、緑谷へと声を掛けた。
「緑谷さん。ちょっとよろしくて?」
「え?」
八百万は先程まで自身の対戦相手である拳太郎と話していた緑谷に、彼について尋ねた。
「貴方から見て…神堂さんはどんな方でしたか?」
「どう…って、う〜んちょっとしか話せなかったからな…普通に明るい子だったよ。個性については聞けなかったけど、僕に瞬時に追いつけたから…多分、増強型の個性じゃないかなぁ」
「増強型の個性…(ではなぜ騎馬戦の時は積極的に動かなかったのでしょう…?)」
緑谷の答えに八百万は顎に手を当てながら考える。
「ありがとうございます緑谷さん。初戦の方、頑張ってくださいね」
「うん!」
その後、緑谷と別れた八百万は少しでも情報を集めるべく、騎馬戦の際に彼と対峙した生徒の元へと赴き、拳太郎についての情報を集めて集めて集めまくっていったのであった。
だが、その直後に女子陣と共に何故か同クラスの峰田と上鳴の伝達の元、チアガールをやらされたのはまた別の話である。
そして、レクリエーションが終わり、遂に出番が来るのであった。
バトル回は結構長くなると思います。