AFOは絶句していた。
奴の位置など、個性『探索【サーチ】』によって、直前まで確かにブラジルにいた事を確認していた。直前だ。戻ってくることは予測していた。
だが__
_____幾らなんでも到着が早過ぎるッ!!!
「僕がここに来て…まだ数分しか経ってないぞ…?どうやってここに!!」
「いや、どうやってって言われても…取り敢えず、指示がきたから、ワニ少し食べて、そこから雄英高校まで走って、んで、ワープして、ここに来た」
「な…!?」
そう言い拳太郎は、さも当たり前であるかのように答えてしまう。いや、それよりも彼は何と言った?
「ワープ…だと?」
「えぇ。なんか、相手の個性をコピーできる同級生がいて、その人に協力してもらってこうして」
「__ッ!!!」
完全に誤算だった。まさかこちらの専売特許であった空間移動の個性を扱える者が、向こう側にもいた事を完全に見落としていた。
「まさか黒霧の個性をコピーしたとはね…予想外だよ」
「んな事はどうでも良いんだよ」
すると、拳太郎は拳の骨を鳴らし始める。
「それよりも、テメェ…よく見れば神野で僕に絡んできた変質者じゃねぇか。まさかお前がAFOだったとはな。ここでギッタンギッタンにしてその無様な姿を全世界に晒しあげてやる」
「ッ…面倒なことになったねぇ」
完全に不味い。AFOは最大の警戒サイレンを発する。今の限界を迎えた肉体で無理に戦いでもすれば、拳太郎のパンチ一発で全身が弾け飛んでしまうだろう。
「(いや、僕ならもう弔のなかにいる…!!)」
否、何を恐れることがあるか?もともと、“この肉体”を捨てるために死柄木を育て上げたのだ。
「僕はコイツの相手をする。君達は二人を狙え!!青山優雅は殺しても構わん!」
「「「「ヒャッハぁあ!!!!!」」」」
AFOの咄嗟の指示に、出現した敵のうち、屈強なダツゴク達が奇声をあげながら脳無数人と共に緑谷と青山へめがけて駆け出す。
「まずい!青山くん!掴まって!!」
「うん!」
迫り来る大軍に緑谷はすぐさま青山の手を掴み、個性を発動させると、駆け出した。
だが、それでもダツゴク達の追う脚が途絶える事はなかった。それどころか、その中でも特に超次元な速度で誰よりも早く緑谷へと追いついた影があった。
「逃がさねぇぜ!!!緑谷出久…!!」
「く…!?志村…転孤…!」
死柄木弔こと志村転孤であった。全身から溢れ出る禍々しいオーラを放ちながら、一瞬にして緑谷へ追いつくと、その手を向けて迫っていったのだ。
「もらうぜ…お前の個性…ッ!!!!」
「緑谷くん!?」
「青山くん!先に行って!!」
迫り来る死柄木に緑谷は青山を離し、すぐさま構え、それに青山は叫ぶも緑谷は個性を発動して迎撃体制を整える。
その時であった。
「はい待った」
「!?」
緑谷へと手が届こうとしたその寸前に、目の前に拳太郎が現れ、その腕を掴み取る。
「神堂!?またテメェか___グボヘェ…!?」
拳太郎に妨害されたことで憤慨した死柄木が、複数の個性を同時に発動し擬似的なレールガンを放とうとするが、その寸前に拳太郎の拳が腹へと放たれた。
「黙れよ三下風情が。テメェもあの仮面被った変態おじさんと一緒にぶち殺してやりてぇけど、緑谷くんとの約束だからぶちのめすだけで勘弁してやるよ」
「誰が三下だ…!?___がハァ!?」
「お前」
そう言い死柄木の腹へと深く一撃を放つと、怯ませた死柄木の頭を掴み後方へと投げ飛ばした。
「オラァ!!ストレート一本ッ!!!!」
「「「「「「ぎゃぁぁぁぁあああ!」」」」」」
投げ飛ばされた死柄木の身体は見事にまとめて迫ってくるダツゴク達へと直撃し、ボーリングのピンのごとく周りに撒き散らせてるいった。
せっかく率いてきた大群が拳太郎によって蹴散らされていくその光景にAFOは舌打ちする。
「くそ…まさか奴がここに来るなんて…来た以上は失敗だな。すぐに撤退を___ん?」
そんな中であった。拳太郎の背中を覆う妙な風呂敷に注目してしまう。
「妙だね…人の気配がする」
それは、まるで赤ん坊でも入っているかのように拳太郎の背中を覆っており、みれば胴体らしきシルエットも見えていたのだ。
AFOは視力がないために、見えないが、生物が発する独特な電磁波によって生体反応を感じる事ができるため、気付いていたのだ。
だが、不明なのはその子供とその子供を連れてきた理由である。
「子供…?まさかまた妙な個性を持つ子供でも………いや…」
___まさかまた妙な個性で場を撹乱するつもりか?否、拳太郎の強さならば寧ろ邪魔であり必要ないだろう。
___ならばなぜ?どういった目的で連れてきた?
AFOが試行錯誤している合間にも、闘いは進んでいく。
そんな中であった。
「よっ」
「ん…?」
突如として拳太郎がその場から跳躍すると、死柄木が佇む大軍のど真ん中に降り立った。
「なんだ…?今度はまた何をする気だ…?」
緑谷達を追う最大の好機ではあるが、相手は拳太郎だ。行動の一つ一つに何かしら仕込みがあるはずである。
故に油断も目を離す事もできず見つめていた。
すると
_バサァ
拳太郎が背中を煽っていた布を解き、中にいた子供の正体が完全に露わとなり、AFOもその正体をようやく認識する。
「な…!!!」
それを認識した瞬間 AFOは驚愕しながら全身から鳥肌が立ってしまう。
「ごめんね。こんな危ないところに連れてきちゃって」
「ううん!パパと一緒だから全然怖くないよ!」
拳太郎の背中を煽っていた布の下から現れたのは________
______壊利だったのだ。
それを認識したAFOはすぐさま叫ぶ。
「全員!!!離れろぉおおおおお!!!!」
「遅いよ」
だが、時はすでに遅い。拳太郎に抱き抱えられた壊利の全身からは黄金のエネルギーが溢れ出ていた。
「いくよ!壊利ちゃん!!思い切りぶちまけろ!!!」
「うん!!パパ!!!」
その瞬間______
______拳太郎と壊利を中心に巨大なエネルギーが膨れ上がり、周囲に立っていた死柄木や燈矢含めた敵達の大群を飲み込んだのであった。