時は遡ること数週間前
「「「「壊理ちゃんの個性で死柄木達を若返らせる!?」」」」
「ザッツなライト」
青山を捕縛したあの日、拳太郎から、考案した作戦を聞いた瞬間に皆は驚きの声をあげ、会議室中が揺れた。
「壊理ちゃんの個性は巻き戻し。なら、それを溜めて敵連合の連中を巻き込むほどの範囲で発動させれば、戦力は大幅に削れます。
特に今の死柄木とか、あと、轟燈矢でしたっけ?あぁいう連中だけでも子供に戻して個性とかもあんま使えないようにすれば、大きな戦力削減になるかと」
その作戦に皆は納得の声をあげる。以前の彼ならば。真っ向から立ち塞がり、まとめて叩き潰していただろう。だが、それでは余波による被害が尋常ではない。だが、壊利の個性ならば、被害を最小限に抑えることができる。
以前の彼ならば、考えられない作戦だろう。
「因みに、これは壊理ちゃんとサー・ナイトアイさんの考えた作戦であって、僕の考えた作戦じゃありません。この案が出なかったら全員まとめてぶち殺してたので、それは忘れないように」
「お前が言うとガチでシャレにならねぇよ…」
「静かに相澤先生。とにかく、如何でしょう?この案は。一応、相澤先生とオールマイト先生、校長先生、エンデヴァーさん、塚内のとっつぁんにはお話ししてあります」
「できれば警部と呼んでほしいな…」
拳太郎の提案に皆がざわめき出す。
そんな中であった。
「ちょっと待ってくれないか…?」
塚内が手を挙げ、なにか思うところがあるのか、拳太郎に尋ねる。
「確かに良い案だが…考えてみれば子供に戻すと、刑罰の適用など…色々と問題が出てくる…。奴らに殺された被害者は相当な数だ。たとえ無力化したとしても…被害者の遺族達は黙ってないし…その怒りが全て君に向けられてしまう可能性がある…その時はどうするつもりなんだ…!?」
「別に。その時はその時です。別に誰がどう言おうと、殺したら殺したで、何の被害も受けてない外野が『殺人だー』やら『かわいそー』やら、最近の北海道みたく、またゴチャゴチャ騒ぎ出すでしょ。それ考えたら無力化がもっとも安全です」
「ま…まぁ確かに…」
「それに言い方を変えれば____」
塚内の不安点について拳太郎が納得すると共に、言葉を溜めながらエンデヴァーへと目を向ける。
「見つめ直す機会も与えられる…とでも見れますかね」
「…」
その目にエンデヴァーは驚くと同時に、自身が突き放してしまったあの日の事を脳裏に思い浮かべる。
「戻れるのか…?俺達が…燈矢と…」
「別に。まぁ作戦が上手くいけば戻れるんじゃないですか?貴方の家庭事情は知らないですが、あのドライヤー小僧が無力化できれば、腹割って話す機会くらいはできるかと思いますけど」
「「「ど…ドライヤー…?」」」
アッサリと多くのヒーロー達を苦しめた業火をドライヤー呼ばわりした事にエンデヴァーや焦凍達の驚きの声が聞こえたが、無視しよう。
一方で拳太郎は続ける。
「まぁこんな感じです。取り敢えず、全員幼児化させたら、回収お願いしますね」
ーーーーー
ーーー
ー
場所は変わり、その光景を遠く離れた場所から物間と共に見守っていた相澤は笑みを浮かべる。
「成功だ…!!」
「本当ですかぁ!?」
その言葉に物間も歓喜の声を上げる。 そんな中で、相澤はすぐさま気持ちを持ち直すと、改めて物間へと指示を出す。
「だが、まだ君には役目が残ってる。急いで“神堂以外”を…!!」
「ま〜かせてくださいよ!!」
その言葉に物間も頷き、事前にコピーした黒霧のワープの個性を発動しようとする。
その時であった。
「…!!」
物間の動きが止まった。
「どうした…?物ま____!?」
その表情を見ようとしたその瞬間、相澤を巨大な恐怖感と威圧感が襲う。
「イレイザー…この感じは…」
「えぇ…ホークスさん…」
共に立っていたホークスも同様である。額からは大量の冷や汗を流していた。
そして、その全身を駆け巡る威圧感の正体へと目を向ける。
「まさか…こんだけ離れててもこの威圧感…まるで神堂じゃねぇか…!!!」
○◇○◇○◇
場所は変わり、最前線にて。
その場を包み込んだ巨大な光は次々と周囲の壊れていた建物などを素材や、元の形へと逆行させていく。
「成功した!?」
「そのようだね⭐︎」
その光に、届かない範囲まで走り切った緑谷と青山は振り返り、背後に輝く巨大なエネルギーへと目を向ける。その範囲は、治崎と戦闘した際に暴走した時の比ではない。
「まさか…あのために溜め込んでたなんて…」
「凄いな。雄英に来たばかりの彼女じゃここまで制御できなかっただろう…これも神堂くんといたからかな⭐︎」
「あ!見て!!」
すると、その場所を包み込んでいたエネルギーがゆっくりと輝きを失いながら収束していく。
そして、煙が晴れると、そこには以前の禍々しい姿が消え去り、代わりに小学生程度の姿となった死柄木___否、志村転孤が倒れていた。
『「転孤…!」』
それを見た途端、緑谷の中にいる志村奈々もその姿を目にすると涙を流し始めた。壊理の個性によって、以前の戦いで皆を苦しめた『伝する崩壊』という個性のみならず、脳無化された身体も元の人間の身体に戻ったのだ。これで彼が苦しむ事はもうないだろう。
すると、その光が収まった中心から壊理を抱き抱えた拳太郎が現れ、コチラへと跳躍した。
「神堂くん!壊理ちゃん!!」
「作戦成功だね⭐︎」
「「うぃ」」
2人に拳太郎と壊理はサムズアップする。
そした改めて4人は背後に広がる光景を見つめる。巨大な土煙が巻き上がっていく中、その中心には大半が子供の姿となり倒れている死柄木達の姿があった。
それを見た拳太郎は腕の骨をならす。
「さてと。2人とも、倒れてる連中をとっとと回収しましょう」
「うん!」
「了解⭐︎」
「壊理ちゃんも、2人と一緒に帰って。僕はお客さんの相手をするから」
そう言い拳太郎が煙の中を見つめる。
その時であった。
「ふぅ…」
「「____!?」」
突然と聞こえた息遣いとともに、緑谷と青山の2人が目眩と吐き気に襲われ、2人の身体がその場に崩れ落ちた。
何の前触れもない。まるで突然と落ちてきた雷に撃たれたかのような。しかもそのレベルは今まで経験したことが無いほどであり、今にも身体の奥底から嘔吐物が出てしまいそうなほどでたるか。
「なんだ…この感じ…」
分からない。その恐怖と絶望の塊であるかのような感情が、まるで意志を持った生き物のように身体の中を蠢いていく。一体何なのか?この途方もない不安と恐怖は。
すると
「壊理ちゃんには感謝しないとねぇ」
______不安と恐怖の正体が遂に姿を現す。
「「!?」」
その声に2人は顔をあげる。巻き上がる煙の中からAFOの声が聞こえてきた。だが、いつもと声質が違う。マスクによるくぐもった声ではなく、ハッキリとしている声であり、その声を耳にした途端に身体の奥底から先程の不安感や吐き気が巻き上がってきたのだ。
「まさか…!!!」
その中で緑谷はある考えが頭の中に過ぎる。
壊利の力は確かに敵連合達を飲み込んだ。死柄木は心を抱く幼い日へ。そのほかの皆もだ。
それは同時に______
「本来なら弔と融合して新たなる僕を作り出す予定だったけど、もはやその必要はなくなったよ」
_______限界に近かったAFOの肉体を戻したという事にもなる。
すると、その煙が一気に晴れ、姿が露わとなった。
「「…!?」」
煙が晴れるとそこには_____
______不気味な笑みを浮かべる大男の姿があった。
それを見た途端、先程まで感じていた嫌悪感や恐怖心が更に増していく。
「あ…ああ…!!!」
「こ…コイツが…」
今にも悲鳴をあげそうになる青山。そしてその隣でその気持ちを必死に押し殺していた緑谷は確信していた。
全身を襲う嫌悪感に吐き気、心臓を掴まれているかのような感覚。
間違いない。
あれがオールマイトとぶつかり合う前の_日本を裏から支配していた全盛期の魔王の本来の姿なのだと。
【完全復活】“魔王 AFO”
「まさかこの姿に戻れるとはねぇ」
若返ったAFOは全身を駆け巡る血流と、久しぶりに目にする広大な青空と大地に目を輝かせ、歓喜に満ちていた。
「う〜ん。身体が軽い!!空気が美味い!すこぶる良い!!最高の気分だ…ッ!!呼吸をする度に最高潮の感覚が押し寄せてくる!!!しかも晴天とはまさにベストコンディション!新たな一途を辿る記念に丁度良い!!」
魔王の喜びの声。それは周囲一体の生き物の生命を脅かしてしまうほど、威圧感のあるものであった。
すると、AFOの目が倒れている死柄木達へと向けられる。
「さて…君らはもう必要ない。持っている個性、全部もらうよ」
その言葉と共に、AFOの姿が一瞬で死柄木達の元へと現れると、その手で次々と触れていき、個性を吸収していった。
トガヒミコの『変身』
荼毘こと燈矢の『業火』
その他の死刑囚やダツゴク、敵達の数多くの個性
そして死柄木の『崩壊』それら全てがAFOの手中へと収まっていった。
「ん〜。崩壊…巻き戻しで5本の指で触れないと発動できなくなってるけど…まぁどうでもいい」
「「…!!」」
馴染ませるかのように手をなん度も握り締めると、その眉間の間から光る不気味な瞳をコチラに向けた。
「残念だったね。弔達を無力化し、一気に叩く算段だったと思うけど、代わりにとんでもない魔王が生まれてしまったようだ」
そう言いAFOは緑谷の中にいる“弟”へ指を向けた。
「さぁ“与一”…今度こそお前を取り返してや________
_____ぐぼへぇ!?」
「「へ…?」」
その瞬間 突如としてAFOの目の前に迫った拳太郎の拳がAFOの顔に深くめり込んだ。
「うるさいし長い!!こっちはサッサと帰って寝てぇんだよ!!!」
そして、その一言とともに打ち込まれた拳が更に深く抉り込むと、そのままAFOの身体を、近くの盛り上がった岩盤へと叩きつけたのであった。
「「………」」
叩きつけられた岩盤が崩れ落ちて土煙を上げていく中、その光景を無言で見つめていた緑谷と青山の前に拳太郎が降り立つと、手をパンパンと叩く。
「ほら!さっさと帰りますよ!はい支度!!!」
「「あ…はい…」」
個性【マイノリティ】発動