ちょっと!!勉強の邪魔しないでよ!!   作:狂骨

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少数派の恐怖

 

拳太郎とAFOとの戦いは周囲に張り巡らされたドローンのカメラに加えて衛星によって、全世界へと放映されていた。

 

 

各地に散らばり、暴れる超常解放前線達を捕らえ終えて待機していたヒーローや雄英高校の皆もタブレットを通して、その映像を見ており拳太郎とAFOの戦闘を見守っていたのだ。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

場所は変わり戦場にて。

 

「あ…ああ…!」

 

緑谷達は拳太郎から殴り飛ばされたにも関わらず立ち上がるAFOの姿に驚いていた。

 

「なんで…!?神堂くんの一撃をモロに喰らったはずじゃ!?それに無傷なんて!」

 

「そうさ。確かに痛い一撃をもらった。流石に僕も死ぬかと思ったよ。だが、これも『マイノリティ』という個性のお陰様で完全に対策できちゃったよ」

 

「マイノリティ…!?」

緑谷の驚く声にAFOは不気味な笑みを浮かべながら答える。

 

「君は【平方根の法則】というのを知っているかい?100個の原子のうち10個は例外的な動きをする。10000個なら100個。数が少なければその影響は受けやすいが、逆に大きければその影響は受けにくくなる。人間は膨大な数の原子でできてるからその影響はほぼ皆無といっていいだろう。だがこの個性【マイノリティ】はその例外的な動きをする少数派原子を操る事ができるのさ」

 

「え…?」

 

語られたその内容に緑谷は理解できなかった。

 

「なにを…言ってるんだ…?」

 

「まだ分からないのかい?この個性によって物理法則の中に存在する微小な例外を実現させる事ができるんだよ。本来なら致命傷となる神堂くんから受けたダメージを少数派原子を操る事で瞬時に回復させたのさ」

 

「…!!!」

 

その言葉に緑谷は嫌でもようやく理解した。すなわち拳太郎の一撃一撃が必殺となる打撃によるダメージを、個性によって回復させるどころか、傷すらつけられなくさせる事が可能だと言うわけだ。

 

「そんな…馬鹿げてる!」

 

「馬鹿げてるも何も、こうして僕は無傷で立っている。それが何よりの証拠だろ?それにいいのかな?」

 

「え…?」

 

そんな中であった。

 

『出久くん!!ソイツから離れろ!!!』

 

頭の中に志村奈々の声が響く。

 

 

その瞬間

 

 

【マイノリティワールド】

 

 

「う…!?」

 

突如として吐き気や頭痛、目眩が緑谷と青山を襲う。心の奥底から感じられる恐怖心に加えて、朦朧とする意識や吐き気によって緑谷と青山の身体はその場に崩れ落ちた。

 

「なんだこれ…!?いきなり…吐き気が…」

 

「【マイノリティワールド】この個性の応用技でね」

 

見れば先程まで遠方に立っていたOFAの姿が目の前まで迫っており、まるで見下すかのような瞳で此方を見下ろしていた。

 

「僕ではなく、ここら周囲一体の少数派を操った。その影響が君の身体にも出始めたんだよ。本来なら生に働くシステムが今、死へと向かい始めたのさ」

 

彼の説明が終える頃には、緑谷と青山はもう顔すらもあげる事ができない状態になっていた。

 

「が…あぁ…!!」

 

少数派の支配の影響が体内の重要器官にも出始めてきたため、既に分解作用や血流の動きも遅くなり、緑谷の臓器も機能を停止しようとしていたのだ。

 

それを見ていたAFOは近づきながら右手を握り締める。

 

「さて、そろそろ返してもらうよ…?僕の与一を_____」

 

 

 

 

その時であった。

 

「えいっ」

 

「!?」

 

___ッ!!!

 

今まで壊利を背負いながら前方に立っていた拳太郎がAFOの背後に現れると、AFOの身体を蹴り飛ばした。

 

「ぬ!?」

 

その一撃は先程と同様にAFOに致命傷に等しいダメージを与え、その場から遠方へと吹き飛ばしていった。

 

それにより、少数派の支配から逃がれる事ができ、緑谷達の体内のシステムが再び生の方向へと進みだした。

 

「神堂くん!!」

 

「ほら。さっさと逃げて」

 

「でも…転孤達が!」

 

「それなら大丈夫。さっき無事に転送されたから」

 

拳太郎の指差した方向へと目を向けると、そこには既に転孤や倒れている敵達の姿が消えていた。

 

「あ!」

 

「アイツがご丁寧に説明してる合間にモノマネくんの個性が発動しましてね。___ん?」

 

すると、緑谷達の足元にも黒霧特有のワープゲートが現れ始めた。それを見た拳太郎は背負っていた壊利を緑谷へと預ける。

 

「どうやら其方も退却の時間のようですね。戻るまで壊利ちゃんを頼みますよ」

 

「うん。任せて」

 

拳太郎から託された彼女の頭を撫でながら緑谷は頷く。

 

 

 

すると

 

「酷い事してくれるねぇ。この個性が無かったら終わってたよ」

 

「ん?」

吹き飛ばされた遠方から個性によって完治したAFOが此方へと迫ってきていた。

 

「わ!?来た!?」

 

「青山くん落ち着いて!神堂くん…アイツの『マイノリティ』という個性に気をつけて…近くにいるだけで、体内臓器の器官の動きを止めてくるから…」

 

ワープゲートに吸い込まれていく中、緑谷は先ほどのAFOの個性について伝えると、拳太郎は_____

 

「パパ!これが終わったら遊園地いこ!!」

「うん!行こう行こう!………え?なんか言いました?」

 

「へ…?」

 

壊利と話していて、まったく聞いていなかった。

 

「ち…ちょっと待って!!もう一回言うからよく聞いて!?アイツの個性は_____」

 

「また後でね!パパ!」

 

 

緑谷と青山は壊利と共にワープし、その場から消えた。

 

 

「んあ?アイツの個性がなんだって?」

 

 

その時であった。

 

「あれ…?」

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

「おぉ〜!!帰ってきたぞぉおお!!!」

 

ワープゲートを潜り抜け、無事に遠方に転送された緑谷を峰田を始めとする皆が出迎えた。

 

だが、

 

「ああああああ!!!!!」

 

緑谷は頭を抱えながら絶叫していた。

 

「まずい!!まずいよぉおお!!!」

 

「うぉ!?どうしたんだ緑谷!?落ち着けって!!」

 

「何がまずいんだ!?」

 

大声を上げながら慌てる緑谷に同じく慌てながら切島と佐糖が尋ねると、緑谷は声を震わせながら答えた。

 

「まずいんだ!!アイツの個性は神堂くんにとって___」

 

 

その時であった。

 

「皆さん!!これを見てください!!」

 

八百万の声が響き、それを耳にした皆はタブレットへと目を向ける。(遠隔操作のロボットから送られてる映像)

 

そこには_____

 

 

 

 

 

ドサッ

 

 

_____膝をつく拳太郎の姿があった。

 

 

「拳太郎さんが…!!」

 

 

○◇○◇○◇○◇

 

「…妙だな。急に気持ち悪い」

 

「さっきも言っただろう?この個性は少数派を操る。君に個性が通用しないのは、強力な力を宿す身体を構成する全身の一個一個の細胞が個性因子を瞬時に分解するからさ。だから弔の崩壊は通じなかった。

だが、それでも個性を分解しきれないモノも存在する。それを多数派にする事で個性を通じるようにしたのさ…!」

 

「あらら。…え?それってどういう」

 

「試してみようか」

 

その言葉と同時にAFOの姿が拳太郎の目前へと迫ると、顔にめがけて手を伸ばした。

 

 

その瞬間

 

「…!!!」

 

その指先から“何か”を感じ取り、咄嗟に拳太郎は後方へと跳躍する。

 

「あれ?」

 

後退した拳太郎自身もなぜこの行動をしたのか理解できず、困惑していた。

 

「おかしいな…なぜかあの手に触れられたら何だか不味いような…」

 

「やはり君の本能は素晴らしい。僕は弔の崩壊を発動させようとしたのさ。指先から発せられる不穏な個性因子を君の本能は“命の危機”として感じ、身体に強制的に命令した。『離れろ』とね。だから君は無意識であるにも関わらず避けたのさ。今までの君なら個性は通じなかったから、こんな事なかったと思うけどねぇ」

 

「マジですか?いやいや、変な個性ですね全く」

 

その説明を耳にした拳太郎は、すぐさま体勢を立て直すと、瞬時にAFOの目の前に移動すると、拳を握り締める。

 

「じゃあその前にぶっ倒します」

 

その言葉と同時に、AFOの周囲360度から巨大な拳が現れ、次々と迫る。

 

「ふん…!!」

 

だが、

 

「無駄だよ」

 

その言葉と同時に周囲から放たれた巨大な拳が全て軌道が逸れ、AFOを避けていった。

 

「あれ!?当たらない…妙だなぁ…」

 

「不思議だろ?これが【マイノリティ】さ。君の拳を放つその動きの中には必ず別の方向へと働こうとする原子がある。僕はそれを多数派に変えたのさ。これで君の馬鹿げた力は封じた。さぁ、どうする?」

 

「ふむ…不味いなこりゃ…」

 

 

拳も蹴りも、何もかも通じない。それどころか戦闘が長引けば長引くほど此方の体力は減少どころか『死』へと向かい始めていく。

 

まさかの打つ手無しであった。

 

 

「ハッハッハッハ!!!ようやくその顔が見れて嬉しいよ!だが、こんな個性じゃ殺さないよ」

 

そして、それを拳太郎が認識したと確信したAFOはこれまで以上に不気味な笑みを浮かべる。

 

その瞬間 AFOの全身から金色のオーラが溢れ出した。

 

 

個性

 

『筋骨発条化』+『瞬発力×100』+『膂力増強×100』+『筋繊維強化×100』+『骨格強化×100』+『心肺強化』+『光』+『金剛体』+『細胞分裂加速』+『疲労回復』+『エネルギー効率化』

 

全身に駆け巡るありとあらゆる個性の中から筋力を強化する個性を中心に次々と発動させていく。すると、それによってAFOの四肢の筋肉が発達すると共に大地を揺るがしていく。

 

「今の僕の中にある最高の個性さ。超高密度の筋肉の拳に加えて驚異的な慣性を受け付けない強靭な肉体を得る『金剛体』そしてその質量が無限となる『光の速度』これで今から“君をメチャクチャ殴る”__ッ!!!

いくら強靭な肉体を持つ君とて無傷では済まないだろう?」

 

「確かに…光の速度だと」

 

 

その瞬間______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________AFOの姿が拳太郎の目前へと現れ、極限まで圧縮された拳が光の速度でその頬へと放たれた。

 

「光の速度で殴られた事はあるかな…!?」

 

「え?ないけ_____」

 

「セイヤァアッ!!!!」

 

 

_____ッ!!!!!

 

放たれたその拳は鈍い音を鳴り響かせると同時に拳太郎の身体をその場から吹き飛ばした。

 

 

だが、これだけでは終わらない。

 

「ヒヒ…!!」

 

AFOは再び個性『光』を発動させると、一瞬にして吹き飛ぶ拳太郎へと追いつくと、周囲360度から次々と連撃を放った。

 

 

「ソラァッ!!!」

 

__ッ!!!  __ッ!!! 

 

  __ッ!!!  __ッ!!!   __ッ!!! 

 

    __ッ!!!  __ッ!!!

 

 __ッ!!!       __ッ!!!   __ッ!!! 

 

__ッ!!!

 

 

次々と放たれていく拳、蹴り、拳、蹴り、拳、蹴り。それら全てがあらゆる角度から拳太郎の身体へ鈍い音を鳴り響かせながら打ち込まれていき、全身を歪ませていく。

 

「光の最高速度を推進力とし…エネルギー効率と細胞分裂速度の最大化そして筋力の強化によって……常時、生物の限界を超えた速度と……パワーを引き出す…ッ!!!」

 

その言葉と共に掴んでいた拳太郎を上空へと投げ上げると、その場から一気に踏み込み、跳躍した。

 

 

そして、最大限の力を込めて拳を握り締めると、落下する拳太郎目掛けて、一気に放った。

 

 

 

 

 

「終わりだぁああああ!!!!神堂拳太郎ぉおおおおお!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

___ッ!!!!!!

 

 

その瞬間

 

次元を鳴り響かせる音と共に大地を…否、地球全域を揺らしながら、拳太郎の身体へと拳が打ち込まれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ

 

 

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