遂に最終種目が始まった。会場中の何万人もの客達の視線が競技場の中心に形成されたリングへと向けられる。
そして、最初の一戦を飾るのは緑谷出久と心操人使である。
「心くん!頑張って!」
「おぅ」
リングへと向かう中、彼に向けて次々と声援が送られる中、最後の拳太郎の声援に心操は頷きながらリングへと出ていった。
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その後、緑谷と心操の戦いが始まり、心操は緑谷へと個性を発動させることで洗脳が成功したものの、リングの外へと出る直前に彼は何らかの方法で洗脳を解いた。
心操は何とか抵抗し彼を場外へと出そうとするものの、緑谷の筋力の方が上回っていたのか、背負い投げによって結果は惜しくも敗北となってしまった。
「…」
『〜!!』
プレゼントマイクの実況の中、互いに頭を下げると心操は緑谷に背を向けて退場する。
「心操くんは…何でヒーローに…?」
「…憧れちまったもんは仕方ねぇだろ」
すると
「ナイスファイトだったよ心くん!!!!!」
目の前にある観客席から拳太郎の声が聞こえた。それと共に次々と普通科の生徒達の称賛の声が聞こえてくる。
「正直ビビったよ〜!」
「俺ら普通科の星だなぁ!」
「障害物競走1位のやつと良い勝負してんじゃね〜の!」
それだけではない。別の観客席からはその個性について議論し合うヒーロー達の声も聞こえてきた。
その声を耳にした心操は叫ぶ。
「…今回はダメだったけど…絶対にヒーロー科に編入して資格取って…お前らより立派なヒーローになってやる…!!!」
その決意に普通科の皆は勿論だが、背後に立っていた緑谷も頷くのであった。
すると心操は目の前の観客席にいる拳太郎へと指を向ける。
「それと神堂!お前このあと絶対勝て!!俺の分も勝ちやがれ!!!」
「えぇ!?そんな無茶な〜!!」
そんなやり取りと共に普通科の陣営は爆笑の渦に包まれたのであった。
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それから次々と試合が行われていった。A組vsA組は勿論だが、その逆、もしくはA組vsB組の生徒達の試合も繰り広げられ次々と勝者が決まっていく。
そして、A組の生徒である芦戸と常闇の試合が終わった事で遂に、拳太郎の出番が来るのであった。
◇◇◇◇◇◇◇
『さぁさぁ次の試合へといくぜぇぇえええ!!!』
プレゼントマイクのアナウンスと共に、再び観客の視線がリングへと注目する。
すると、双方の入場口からそれぞれ選手が現れた。
『時に優しく時に厳しく!!一年A組の姉御的存在!!!その頭脳から導き出される分析力はオールマイトもビビっちまう程の的確さ!!今日もあの身体から何を創造するのかぁー!?1年A組『八百万 百』〜!!!』
「ヤオモモ〜!!頑張って〜!!」
「応援してるよぉお〜!!」
プレゼントマイクの実況の中、A組の陣地では彼女のクラスメイトである耳郎や葉隠が激励の声を上げる。
そして八百万の紹介が終わると、皆の目線が今度は片方の入場口へと注目した。
すると
入場口の奥から歩いてくる影が見えてくるようになり、その影がゆっくりと太陽に照らされ次第に鮮明となる。
『遂に来たァー!!!心操と共に突如として体育祭で名を挙げ予選からリスナーや俺たちの目線を奪った新参者!!予選や騎馬戦で見せつけたスピードと華麗な手捌きは一体なんなんだぁー!?性格、実力、趣味、好きな子のタイプまでも、全てが謎に包まれたルーキー!!!!1年C組『神堂 拳太郎』ッ!!!!』
「ぶっちゃけ明るくて清純な方が好みです」
プレゼントマイクの実況に答えながら拳太郎がリングへと入場すると、会場の声が止まる。
『それではStaaaaaarTッ!!!!!』
◇◇◇◇◇◇
遂に始まった試合。拳太郎の相手となる八百万は相手の出方を伺っていた。
すると
「よろしくお願いします。八百万百さん」
突然と拳太郎はゆっくりと丁寧に頭を下げた。それに対して八百万は驚くことはなく、返答する。
「えぇ。こちらこそ」
彼女は油断などしていない。先程の戦いは勿論だが、障害物競争の時から拳太郎を警戒していたのだ。一瞬にして自身らを追い抜く脚力に加えて騎馬戦でも安々と二方向からの攻撃をいなす技術。
見るからに普通科にいるような生徒ではないと理解していた。
「(個性は恐らく増強型…肉弾戦ですわね…)」
すると
『おおぉっと〜!!神堂が突然と態勢を変えたぁ!この姿勢は…獣ぉ!?』
拳太郎の身体がゆっくりと前のめりとなり、走り出す姿勢となる。その姿勢はまるで、四足歩行の獣のようであった。
その態勢から彼女は彼が肉弾戦である事を確信すると共に策を考える。
「(突進か接近して殴打…または蹴り…盾が適正ですわね)」
そして、適正な武器を決めると彼女は生成する盾の構造をあらかじめ想像して決めておく。
「(相手は俊敏な方…1秒も気が抜けませんわ…)」
八百万は戦闘態勢を取る拳太郎に対して最大レベルまでの警戒をし、ゆっくりと瞬きをした。
そして 目を開けるとそこには_____
________こちらに向けて駆け出す拳太郎の姿があった。
「!」
咄嗟に八百万は頭の中で想像していた盾を生み出した。
すると、
『おぉっと!!八百万もここで個性を発動!!!生み出されたのは〜…わぉお!!『鉄』の盾だぁ!!しかも超分厚い!!!』
彼女の腹部から巨大な折りたたみ式の盾が生成される。
これこそ彼女の持つ個性【創造】である。自身の身体に合うサイズのものならばなんでも創り出すことができる。だが、そのためにはあらかじめ、その物の構造や作りまでも精密に思い浮かべておかなければならないために、場合によっては脆すぎる物を生成してしまう。
だが、この時彼女は冷静かつ事前に考えていたために無事に想像通りの物体を作りだすことができていた。
彼女が作り出した盾は形を変形させていき、やがて彼女の下半身を覆える程の巨大な盾となった。厚さは5センチ。更に素材はフライパンなどに扱われており、拳銃の球も弾く硬度を持つ鉄であり、それが分厚いため一般人が殴れば拳の骨など簡単にへし折れてしまうだろう。
そして、生成し構えた時には拳太郎の足は既にその盾へと迫ってきていた。
それを見た八百万は自身の予想通りであるためか盾を構える。
「(これであなたが怯んだ後に閃光弾で…!!)」
この時、八百万は既に次の策を講じていた。“拳太郎が盾に攻撃した事で怯む”もしくは“寸前に止まって後退する”ことを前提に。
そんな中であった。向かってきた拳太郎の目が鋭くなる。
「ヌン…ッ!!!」
「え…?」
すると、拳太郎の身体が回転し、その盾に目掛けて脚が振り回された。
その瞬間
_______ッ!!!!
盾を強打する脆い音と共に巨大な衝撃が八百万を襲った。
「がぁ!?」
盾を持っていたにも関わらず、構えていた腕から全身に衝撃が駆け回り、それと共に、分厚い盾は粉々に破壊され、発生した衝撃波によって彼女の身体がその場から大きく吹き飛ばされていった。
そして
ドサッ
その身体は静かにリング外の芝生の上へと落ちたのであった。
『な…ななななぁぁぁとぉおおお!!神堂の放つ蹴りが八百万の創造した盾を破壊したぁぁぁ!!!そしてその衝撃によって八百万が場外になり勝負も決まっちまったぁ〜!!!おいおい嘘だろぉ!?あんな分厚い鉄をぶっ壊すとか一体どんな身体の構造してんだぁ〜!?』
「「「「「「「わぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」」」
プレゼントマイクの実況と共に八百万の持っていた盾は木っ端微塵となり周囲へと散らばっており、それを見た周囲からは歓声とざわめきが同時に巻き起こる。
そんな中、審判であるミッドナイトも勝敗の判決を下す。
「『八百万』さん場外!!『神堂』くん2回戦進出!!!」
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拳太郎と八百万の試合が終了したと同時に、プレゼントマイクは横に座っている相澤へと疑問を投げかけた。
「おいおい!どうなってんだあの強さ!?アイツ一体何者なんだ〜!?」
「…見てみろ」
「あ?」
すると、毎試合に生徒の分析のために、取り寄せていたその生徒の資料を読んでいた相澤がプレゼントマイクへとその資料を見せる。
「お…おいおい…嘘だろ…?」
その記録を見たプレゼントマイクは顔面を蒼白させた。
そこに記されていたのは生徒の氏名と個性そして入学してすぐに行われた体力測定の記録が記載されていた。
50メートル 『測定不能』
ボール投げ 『測定不能』
握力 『測定不能』
立ち幅跳び 150メートル
反復横跳び 『測定不能』
どれもこれもが測定不能な上にたとえ増強型個性を使っても不可能な数字を叩き出していた。
「え!?なにこの測定不能の数!?」
「普通科の体力テストは教師によるが一般的なカリキュラムで行われる事が多い…当日に神堂は風邪で欠席だったらしく、先日の放課後にやったそうだ。なぜ測定不能かは分からん…だが、この立ち幅跳びの結果から神堂の身体能力が雄英の測定機材じゃ測れねぇって事が予想できる」
「い…いくら何でもおかしいだろ…!?しかも握力は障子の500キロまで計れたんだぞ!?一体どんな結果になったら測定不能になんだ!?」
「さぁな。俺も最初は目を疑ったさ。だが見てみろ。あの距離を一瞬で詰める脚力に、鉄の盾を破壊するほどの蹴り…。ハッタリじゃなさそうだ」
そして再び2人の目線が退場していく拳太郎へと向けられた。
◇◇◇◇◇◇
「大丈夫?八百万さん」
「は…はい…」
医療用ロボットの担架に乗せられ運ばれる中、八百万はミッドナイトに答えながら自身に背を向けて退場していく拳太郎の姿へと目を向ける。
「完敗…ですわ…」
その一方で、
退場していた拳太郎は入り口で待っていた普通科の皆へ向けて大きく手を振った。
「やったよ〜!勝てた〜!!」
「「「「あ…うん…」」」」
その満面な笑みと少年のような無邪気な振る舞いに皆は返す言葉がなく、苦笑いしていた。それは心操も例外ではない。