ちょっと!!勉強の邪魔しないでよ!!   作:狂骨

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決着

 

その日。全人類は震撼する。決して合間見える事のない古代生物をこの目で視認したのだから。

 

「す…すげぇ…」

 

「なんなんだ…アイツ…」

 

誰が予想できただろうか?

 

数多の個性を持つ魔王と、無個性の現役の高校生との戦いを。

 

誰が予想できただろうか?

 

無個性の高校生が、古代生物を顕現させることを。

 

 

モニター越しにその戦いを見ていた各地ヒーロー達は勿論だが、対峙していた敵やダツゴク達も、あまりにも規格外な現象に、戦いの手を止めてモニターを見たままその場に立ち尽くしてしまう。

 

 

この戦いを誰が予想できただろうか?

 

魔王と古代生物の対峙を___。

 

 

○◇○◇○◇

 

場所は変わり緑谷達の待機場所にて。同じく拳太郎の構えを目にしていた一同は、その再現性に目を奪われていた。

 

「なんだありゃ…」

 

「トリケラトプス…?」

 

モニター越しであるにも関わらず、拳太郎の背後に立つトリケラトプスを全員が視認し、その大きさに目を奪われていた。

 

そんな中、皆と同じく佇んでいた尾白が呟いた。

 

「象形拳…」

 

「「「「!?」」」」

 

その言葉に皆は驚き、彼に目を向けると、緑谷が尋ねる。

 

「尾白くん知ってるの!?」

 

「有名な拳法だよ。構える姿勢からまるで猛獣や昆虫のような動きを模倣するものさ。蟷螂の蟷螂拳に鷹を模した鷹爪拳など、色々ある。どれもこれも気迫と姿勢で僕らにそう認識させるだけ…だけど」

 

改めて尾白は大量の冷や汗を流しながら画面に映る拳太郎を見つめた。

 

「あそこまで完璧に顕現させるなんてまず不可能だ!それにトリケラトプスを模した象形拳なんて聞いたことがない!」

 

「「「!?」」」

 

クラスの中でも武術に詳しい尾白のその慌てように皆は再び拳太郎へと目を向けたのであった。

 

 

○◇○◇○◇○◇

 

場所は変わり、決戦の場にて、目の前に顕現したトリケラトプスにAFOは驚きを隠せなかった。

 

溢れ出た闘気によって作り出されたトリケラトプスは、その鋭い目を向けながら佇んでおり、いまにも突進してきそうな雰囲気である。

 

その気迫の正確さは最早、目の前に存在しているかのように認識させ、気のせいか質量も感じていた。

 

「象形拳…聞いた事はあるが、まさかトリケラトプス…しかもここまで完璧に再現するとはね…いや、君だからこそ。と言うべきなのかな?君のその気迫と細胞の意識全てを統一させる集中力、殺意を持ってしてようやく顕現できたという訳だ」

 

「何言ってるのか分かりませんが、まぁその通り」

 

AFOが分析する中、目の前で構えていた拳太郎は鼻を鳴らす。

 

「プシュー…初めから全力でぶちかましますよ?」

 

「…!!」

 

その一言と共に、拳太郎の構えと狙いが定められた。それによって自身の全身の筋肉が強張るとともに個性の意識が騒ぎ始める。生物としての本能と、個性因子に宿る意識達が、向けられた拳太郎の気迫を感じ取り、反応したのだ。

 

「はっ…馬鹿正直に突進かい…?」

 

AFOが一歩、後ずさると、拳太郎の構えは更に低くなり始め、3本の剛角が此方へ向けられる。

 

それを見たAFOは冷や汗を流す。

 

「(恐らくトリケラトプスを模倣するならば突進…避けないと、大ダメージものだ…だが、避ければ問題ない…!)」

 

突進だとしても、その突進の直撃を受けてしまえば、衝撃によって内臓までぐしゃぐしゃになり、再生を待っていたとしてもかなりのダメージを受けてしまう。その懸念を常に置きながらAFOは構える。

 

「当てて見せなよ」

 

「上等」

そして、それを既に準備完了と受け取ったのか、拳太郎はゆっくりと右脚に力を込める。

 

「いくぞ?」

 

「…!」

 

その言葉にAFOはすぐさま避ける姿勢を取る。来るのは真正面からか?それとも自分が避ける事を察知し、いずれかの方向転換か?

 

 

全神経を研ぎ澄まし、行動を観察する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

「ガハァ!?」

 

 

________拳太郎の姿が虚空へと消え去ると同時にAFOの目の前に現れ、激突する。

 

「な…に…!?」

 

 

何が起こったのか分からない。いや、認識出来なかった。神経の隅々まで感覚を研ぎ澄ませ、どんな方向にでも避けられるように準備していた。

 

だが、気づいた時には既に自分の身体に拳太郎の身体が迫っていたのだ。それに続くように全身に衝撃が響き渡る。

 

「ぐぅ…!?」

 

__!!

______!! __!!!

 

全身を駆け巡る強烈な痛みに加えて、内部から次々と衝撃によって弾け飛ぶ内臓の破裂音が響き渡る。それによって口元からは大量の血液を吐き出した。

 

「グボヘェ!?臓器‥が‥腕が…!?」

 

臓器は勿論だが、その衝撃の強さによって、遂には皮膚さえも引きちぎれ、腕が消し飛んだ。

 

 

そして

 

「ガァ…!!!」

 

遂には巨大な地面へと衝突したのであった。

 

「ぐ…!?」

 

背中に広がるのは先程とは比較的、優しめな痛みであったが、それでも強烈なダメージであることは変わらない。さらに先程の痛みが今もなお全身を駆け巡っており、『再生』によって、修復しているにも関わらず、全身を蝕んでいた。

 

「お……の…れ…拳太ろ_______へ?」

 

 

 

そんな中、目を開けたAFOは言葉を失ってしまった。

 

目の前に広がっていたのは、自身を見下ろす拳太郎。

 

そして、先程まで自身がいた_______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______地球だった。

 

「な…に…!?」

 

それを見た途端に自身がいま倒れ伏している大地の正体がわかった。自分らがいるのは『月』だったのだ。

 

「まさか…突進だけで…ぐぼぅ…!?」

 

空気を吸いかけた瞬間、嫌悪感と吐き気が襲いかかって来る。

 

「(しまった!宇宙には酸素がない…先程の突進で酸素も吐き出し尽くした…まずい…!!)」

 

そんな中であった。

 

「おい。まだ終わりじゃねぇぞ」

 

倒れ伏したAFOの頭を拳太郎が掴み上げて、拳を握り締めた。

 

「場内に戻れ」

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

「あれ…?」

 

一方で、待機場所にて。2人の激闘をモニター越しに見守っていた皆は、突如として消えた2人、そして静寂に包まれたその場に驚き、画面を見つめていた。

 

「2人とも…消えた…?」

 

「あ…あぁ…そうみたいだ…」

 

緑谷の問いに焦凍が恐る恐る頷く。

 

何もない。2人が消えて何もなくなった戦場は砂煙のみが立ち込めていた。

 

 

 

 

すると

 

 

______ッ!!!!

 

 

いきなり上空から凄まじい速度と共に二つの物体が飛来した。

 

「な…なんだ!?」

 

峰田が驚きの声を上げ、皆の目がその巻き上がる砂煙へと注目する。

 

「「「「……」」」」

 

一体何が降ってきたというのか?そう疑問を抱えながら皆は固唾を飲みながら見守る中、立ち込める煙がゆっくりと晴れていく。

 

 

すると、何かの影が現れ、上鳴が声を上げる。

 

 

「あ!見ろ!!」

 

そこに立っていたのは全身がボロボロとなり、再生中の筋肉や血管が剥き出しとなっているAFOと、それを見下ろす拳太郎だった。

 

それを見た八百万は目を輝かせる。

 

「拳太郎さん!!」

 

「アイツ圧倒してるぞ!?」

 

「しかも無傷だぜ!?すげぇええ!!!」

 

その光景を目にした皆は次々と感情を爆発させながら歓声を上げていき、勝利を確信する。

 

 

 

 

そんな中であった。

 

「あ…あぁ!!!」

 

峰田の叫び声に皆がモニターへと注目する。

 

「アイツ!まだ立ち上がる気だぞ!?」

 

見れば、既に完治したのか、傷口が塞がったAFOが再び立ち上がっていたのだ。それを見た芦戸や切島達は冷や汗を流し始める。

 

「どんだけしぶといんだよ!?」

 

「しかも個性で傷も体力も回復してる…不味いよこれ!!いくら神堂くんでもこのまま消耗戦に入ったら負けちゃうよ!!」

 

 

 

そんな中であった。

 

「いや、回復できたとしても、痛みまでは無理な筈だ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その場に聞いたこともない声が聞こえた。その声は緑谷の足元からだ。

 

「え?この声……へぇ!?」

 

耳にしたことのある声に緑谷が思わず足元に目を向けると仰天する。

 

「し…志村転孤!?」

 

そこには死柄木こと志村転孤の姿があり、幼児化しているにも関わらず、堂々と座っていた。

 

「お前!相澤先生達に連れてかれたんじゃねぇのかよ!?」

 

「抜け出してきた。先生がどうなるのか、いや、アイツが先生をどうやるのか見ておきたいんだよ。俺でも壊せなかった無個性のアイツが…な…」

 

「いや…それよりも、アイツ勝てるのかよ…!?相手は再生しちまうんだぞ!?」

 

「ハッ。どうだかな」

 

上鳴に笑いながら転孤はモニターの前に座ると、指を向ける。

 

「それは結局、アイツ次第だろ」

 

そこに写っていたのは、傷が全快したにも関わらず、震えながら立つAFOと、一切震えることなく、堂々と仁王立ちする拳太郎であった。

 

 

○◇○◇○◇

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!!」

 

場面は戻り決戦場にて。立ち上がったAFOは完治しながらも、荒い呼吸を繰り返していた。

 

「なんだ?もう終わりか?」

 

目の前には、こちらを見下ろす拳太郎の姿。息切れ一つ起こしておらず、疲れも一切見せていなかった。

 

「おかしいだろ…何故だ!!何故ぼくの力が通用しない!?お前は一体何者なんだ!!!どこから来たんだ!?」

 

「はぁ?」

 

だが、その質問に拳太郎は淡々と答える。

 

「何言ってんだ?僕は『神堂拳太郎』神堂家の一人息子で、ただ無個性な人間だよ」

 

「無個性なだけでここまでの力を手にできる筈がない!!教えろ!!どうやってこれほどまでの力を得たんだ!!」

 

「教えろって言ったって…ただ筋トレして実践がてら猛獣や不良とやりあっただけだよ。戦っては鍛えて、戦っては鍛えて。その繰り返しだよ」

 

「〜〜!!!!」

 

あり得ない。そんな凡人が行える程の鍛錬でここまでの力が身につくものなのか?そんな事はあり得ない。ならば、今まで自身が費やしてきた時間は何なのか?ここまで個性を集めてきた己の百数年は一体何だったのか?

 

 

無価値だというのか?

 

そう考えた瞬間、怒りが込み上げてきてしまった。

 

「ふざけるな…この僕が…!!!!」

 

百数年も生きてきた自分よりも、たった十数年生きてきた少年が自分を上回るなど、それは自分のこれまでの努力を踏み躙る物に他ならない。

 

即ち、彼の存在自体が、自身のこれまでの人生を否定するものだった。

 

 

そう認識した瞬間、湧き上がる怒りは遂に頂点へと達した。

 

 

「ふざけるなぁあああああ!!!!!」

 

 

すると、AFOの周囲一帯の地盤が崩壊し始めてていく。

 

「100年以上も生きてきたこの僕がぁあ!!!たった10年生きただけのお前に負けるだとォオオオオオオオオ!!!!!」

 

全身から湧き上がる痛みも恐怖も全て怒りで捩じ伏せると、AFOは全身に力を込めて立ち上がり、全身に力を込める。

 

 

「ふざけんなぁああああああ!!!!!!!!」

 

 

その瞬間___

 

____個性『筋骨発条化』+『瞬発力×100』+『膂力増強×100』+『筋繊維強化×100』+『骨格強化×100』+『心肺強化』+『光』+『金剛体』+『細胞分裂加速』+『疲労回復』+『エネルギー効率化』+『瞬間筋収縮制御』+『反射神経強化』+『関節可動最適化』+『腱靭帯超強化』+『打撃吸収分散』+『打撃増幅付与』+『接地グリップ増幅』+『踏み込み推進力』+『軸保持自動補正』+『バランス動的安定』+『瞬間姿勢補正』+『触覚高分解能』+『敵動作予測演算』+『連撃同期化』+『打撃タイミング同調』+『局所痛覚遮断(選択的)』+『筋疲労遅延』+『骨密度極大化』+『筋繊維収縮最適化』+『握力永久固定』+『打撃角度制御』+『回避ベクトル演算』+『短距離瞬間加速』+『反撃カウンターフレーム生成』+『皮膚耐衝撃強化』+『局所熱生成(打撃強化用)』+『全身同調増幅』+『姿勢慣性制御』+『衝撃波生成(打撃付随)』+『踏み込み破砕力集中』+『連続打撃持続化』+『運動効率最適化』+『筋力出力可変レンジ』+『微調整精密制御』+『脳内戦術サブ演算(局所)』+『深層体幹強化』+『反応遅延付与(相手側へ影響)』+『打撃貫通集中』+『受け流し慣性吸収』+『瞬間静止(姿勢固定を伴う加圧攻撃)』

 

巨大な咆哮と共に、大量の個性が発動され、AFOの全身が輝きだす。

 

 

「拳太郎ォオオオオオオオオ!!!!!」

 

 

その叫び声と共に放たれる巨大な黄色いオーラは大地を揺さぶり空気を振動させていき、遂には地球全土を震わせ始めていった。

 

 

「フルパワーだぁあああ!!!!!お前はここでぇええええ!!!ここで殺してやるぅうううううう!!!!!」

 

「やってみろよ」

 

 

その瞬間

 

 

AFOの身体が虚空へと消え去ると、目の前に現れ四方八方から巨大な連撃を放った。

 

ッ!! ___ッ!!!  _ッ!   ッ!!!!!

__ッ!!   ッ!!____ッ!   ___ッ!!!

ッ!!!   ッ!  ッッッッッ!! ___ッ!!   ッ!!!

 __ッ! ____ッ!!!   ッ!! __ッ!!!

ッ!!!__ッ!   ッ!!__ッ!!!   ッッ!!

___ッ!!!!!   ッ!! ッ!!   ッ!!_ッ!!!

ッ!! ____ッ!!!   ッッ!!____ッ!   ッ!!!

___ッ!!!   ッッッ!!   __ッ!!!!!

 

 

「キィイイエエエエエエエエエエ!!!!!!」

 

次々と響き渡る打撃音は止まるどころか、更に速度を上げて激しく鳴り響き、無数の連撃が拳太郎へと襲い掛かる。

 

「まだだぁあああ!!!まだまだぁああああ!!!!!!」

 

その速度は更に激しく上昇していく。1秒に50撃だった攻撃が更に増していく。100撃、150撃そして____1000撃へと。

 

 

そんな中であった。拳太郎の拳が握り締められ______

 

 

「フン!」

 

「グォ…!?」

 

______その一撃が虚空へと放たれると同時に、AFOの腹へと深く突き刺さった。それによって、AFOの身体は口元から血を吐き出しながら吹き飛ばされるも、すぐに体勢を立て直し立ち上がる。

 

「そうだ…そうだ拳太郎!!それでこそ殺し甲斐が…!!」

 

目の前の光景を目にした途端、AFOは思わず動きを止めてしまう。見ればたった一発で自身を吐血させた拳が、無数に迫ってきていたのだ。

 

 

【本気の連打:数千発ver】

 

「オラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

 

ッ!! ___ッ!!!  _ッ!   ッ!!!!!

__ッ!!   ッ!!____ッ!   ___ッ!!!

ッ!!!   ッ!  ッッッッッ!! ___ッ!!   ッ!!!

 __ッ! ____ッ!!!   ッ!! __ッ!!!

ッ!!!__ッ!   ッ!!__ッ!!!   ッッ!!

___ッ!!!!!   ッ!! ッ!!   ッ!!_ッ!!!

ッ!! ____ッ!!!   ッッ!!____ッ!   ッ!!!

___ッ!!!   ッッッ!!   __ッ!!!!!

__ッ! ____ッ!!!   ッ!! __ッ!!!

ッ!!!__ッ!   ッ!!__ッ!!!   ッッ!!

___ッ!!!!!   ッ!! ッ!!   ッ!!_ッ!!!

ッ!! ____ッ!!!   ッッ!!____ッ!   ッ!!!

ッ!! ___ッ!!!  _ッ!   ッ!!!!!

__ッ!!   ッ!!____ッ!   ___ッ!!!

ッ!!!   ッ!  ッッッッッ!! ___ッ!!   ッ!!!

___ッ!!!   ッッッ!!   __ッ!!!!!

 

本気を出した拳太郎の両腕から放たれた乱舞は光の速度と同等の速さで放たれ、一瞬にして数千発もの連撃がAFOの身体を木っ端微塵に粉砕した。

 

「な…!?」

 

もはや殴られた感触やダメージすら感じなかった。気づいた時には既に脳を残し、それ以外が粉状に粉砕されていた。

 

 

 

だが、AFOの執念は決して諦めなかった。

 

個性『再生』

 

「ヴォォァアアア!!!!」

 

個性で肉体を再生させるとその場から飛び立ち、拳太郎目掛けて両手を広げる。

 

すると、AFOの全身から黒い稲妻がオーラと共に溢れ出し、その周囲一体を覆い尽くす。

 

「お前は僕が殺すッ!!!!」

 

溢れ出る稲妻やオーラは周囲の地面へと触れると、地盤を崩壊させ始めていった。

 

「この僕の中にある全ての因子を解き放ち!!お前もろとも…この星を消し飛ばしてやるぅううううううう!!!!!!」

 

そう言いAFOは自身の体内にある無数の個性因子のエネルギーを全てねりあげ、掲げた両腕へと生成した。

 

 

生成されたエネルギーの塊は黒い球体として現れ、拳太郎へと狙いを定める。

 

 

最終奥義___

 

 

 

______【“全因解放:ALL FOR ONE 全ては一つの目的のために”】

 

 

 

「消えてなくなれぇええええ!!!!!!」

 

その言葉と共に________極限まで圧縮された個性因子達のエネルギー弾が放たれた。

 

 

そのエネルギーは空気を突き抜けて、軌道上の地面を抉り飛ばしながら拳太郎へと迫っていく。

 

 

 

「……なるほど」

 

対して、目の前からエネルギー弾が迫っていく中、その様子を観察していた拳太郎は右腕を握り締める。

 

「じゃあこっちも本気の一撃で応えてやる」

 

その一言と共に、拳太郎は拳を握り締めた。

 

「ぬぅん…!!!」

 

力強く握り締められたその拳は筋を湧き上がらせると共に、全身から再びドス黒いオーラを溢れさせていき、そのオーラが右腕へと吸い込まれていった。

 

 

そして、自身の“本気の一撃”の準備を完了させると、AFOへと狙いを定め_____

 

「いくぞ…!!!」

 

 

_______一気に飛び上がった。

 

 

…ッ!!!

 

飛び上がった拳太郎の速度は初速からマッハを超越し、重力を無視するほどの勢いでAFOへと迫っていく。

 

 

「ちょい邪魔」

 

 

______ドシャン!!

 

「はぇ?」

 

そして、迫り来るエネルギー弾を上空に蹴り飛ばすと、そこから更に空気を蹴り、AFOの目の前へと迫っていく。

 

「ヴォオオオオオオオオ!!!!!」

 

「はぁ!?え!?ちょ…ま!?」

 

全身の筋肉と神経が連動し、最高潮まで高まった瞬間、拳太郎の速度は“光を超えた”

 

「いくぞォオオオオオオオオ!!!!!!」

 

「!?」

 

AFOは咄嗟に避けようとするも、既に遅かった。

 

目の前に映るのは、スローモーションで向かって来る拳太郎の姿。それを見た途端に、AFOは死を覚悟し、顔から冷や汗を流し始めた。

 

「ま…待て!!来るな!?」

 

避けようとするが、身体が動かない。その合間にも拳太郎の拳が近づいてくる。

 

 

「やめろ…来るな!!僕はまだ…!!!」

 

 

頭の中に残るのは、最後まで自分に抗い続け、拒んだ弟『与一』の顔だった。

 

いや、その思考もすぐさま迫り来る拳への恐怖心によって打ち消されてしまった。

 

 

「来るなぁあああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間_____

 

 

 

 

_____拳太郎の拳がAFOの肉体を貫いた。

 

 

「が…はぁ…!?」

 

光を超えた拳太郎の一撃は、血に濡れることなく、細胞諸共、すり抜けていき、AFOの背後に止まった。

 

痛みなどは一切ない。あるのは巨大な喪失感だけであった。

 

「けんた…ろ…」

 

背後に佇む拳太郎に振り向き、目を向ける。

 

 

 

 

すると

 

 

パキ__

 

AFOの腕の先から亀裂が走り始める。

 

 

その亀裂を見たAFOは個性で再生を試みるが、その崩壊は止まらない。指の先から腕、上半身、そして遂には全身に亀裂が生じ始めた。

 

「が…ああ…個性……が……」

 

いくら『再生』を発動しようと止まらない。拳太郎の人体をすり抜けてしまうほどの本気の一撃は、もはや傷を与えるどころではない。『個性』という概念を完全に消し去り、存在そのものを消滅させてしまう程のものだった。

 

 

故にもう、助かる道など、存在しない。

 

 

「この…僕が…こんな……!!!」

 

思わず見た右腕は、既に砕け散り、破片が宙を舞ってた。それと共に視界が崩れ始めていく。

 

 

「この僕がぁああああ!!!!!!___________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の言葉は無かった。響き渡る断末魔を残しながら、AFOの肉体は粉々に砕け散り、空気へと溶けて消えていったのであった。

 

 

「…ふぅ」

 

背後に立ち、握っていた拳を収めた拳太郎は空を見上げながら呟いた。

 

「お腹すいた」

 

 

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