A.もう相手にすらされなくなります
AFOの消滅。その一部始終は全世界へと届けられていた。
拳太郎の一撃と共に、AFOの肉体は打ち砕かれ、消滅した。
その瞬間____
『『『『『『うォオオオオオオオオ!!!!』』』』』
___世界中が大歓声に包まれた。
日本のみならず世界をも手中に収めようとした恐怖の魔王の消滅に皆は、抱き合いながら喜び、天に向かって手を大きく上げながら勝利を喜んだ。
『オーガが勝ったぁぁああああ!!』
『やっぱりアイツこそ地上最強ダァああああ!!!』
『オレらのヒーローはオーガだぁああ!!!』
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AFOが消滅した空は、青く輝き、太陽が照らしていた。そんな中でAFOを葬った拳太郎は晴天の空を見上げながらゆっくりと息を吸い込む。
「ふわ〜…お腹すいた」
人を1人殺した。だが、罪悪感などは湧くことはない。殺す前に覚悟は既に決めていたため、何の負い目も後悔も感じる事はなく、ただ終わった事と腹に響く虫の音に悩んでいた。
そんな風に空を見上げながら黄昏ていると、目の前に黒い霧が現れた。
「お迎えか?…じゃあいくか」
黒い霧は恐らく待機する施設に繋がっている筈だろうと、そう思い立ち上がって入ろうとした。
すると
「パパ〜!!!」
「「「「神堂ぉおおお〜!!!!」」」」
「うぉ!?」
その中から壊利やA組の皆が飛び出してきた。驚く暇もなく、飛び出してきた皆のうち、峰田と上鳴と切島が号泣しながら拳太郎へと抱きついた。
「うぉおおおおお!!!生きてたぁぁあああ!!!!!」
「はいはい。抱きつかないで峰ちょんくん」
「よがっだぁあああ!!!!お前本当に凄ぇよ!!!」
「どうも切島くん」
「アイツが個性めちゃくちゃ発動した時はもうダメかと思ったぜぇ〜!!!お前本当にすげぇよぉお!あんな化け物倒しちまうなんてよ〜!!」
「拳太郎さん…本当に無事で良かった…!!」
「いやいや。泣く程じゃないでしょ上鳴くん。というかどこ掴んでんですかヤオヨロッチさん」
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その後、事態は収束へと向かう___
_____訳なかった。
「え?まだ終わってないんですか?」
「そうだ」
拳太郎に頷きながら、黒霧の中からタブレットを持った相澤が現れた。
「あ、相澤先生」
「神堂、お疲れ様…アイツの個性『マイノリティ』ってのが発動した時はヒヤヒヤしたぞ」
「確かに、僕もヤバいと思いましたよ。まぁなんか集中しまくったらそれも無くなりましたけど」
「お前なぁ…いくらなんでも冷静すぎるだろ…少しは疲れたとか、肩を貸してくれとか………いやもう良い。それよりも、お前がAFOを倒しても、まだ奴らは暴れる気まんまんだぞ」
「え?」
相澤はタブレットを操作して、画面を拳太郎へと見せる。そこに映っていたのは、各地でまだ暴れようとしている超常解放前線の残党達が映し出されている映像だった。
相澤が見せた映像に拳太郎は目を点にする。
「あらま」
「という訳だ。2次災害は何としてでも防がなきゃなんねぇ。だから俺達は今からその鎮圧に向かう。お前らも準備は良いか?」
相澤の言葉に皆は頷く。どうやらAFOが倒されたとしても、それを現実だと認識しない者もおり、いまだに各地で暴れているらしい。
だが、相澤達はそれを見越しており、それを知った上で事前にチームを選別し、戦う準備をさせていたのだ。
「なるほど。なら僕も___」
「お前は寮に戻って休んでろ。お前がきたら間違いなく死人が出る。敵側から。それに…お前も疲れてるだろ?」
相澤の言葉に皆も拳太郎へと目を向ける。たとえ拳太郎の強さが未知数であろうと、あれ程の猛攻を耐え凌いだ上に渡り合ったのだ。傷もある。立っているだけで精一杯だろう。
だが、拳太郎はあっさりを首を横に振る。
「いや?全く。ただ眠いだけです」
「「「「ええええ…」」」」
相変わらずの化け物ぶりであった。
その後、拳太郎も残りの敵達の鎮圧へと向かうこととなった。それでも相澤は今までの事を踏まえた上で再度、注意する。
「まぁ、お前がいてくれた方が早く片付きそうだからな…」
「どうも」
「だが、波動と同じチームで動いてくれ。アイツしかお前を止められない。何度も言うが…くれぐれも!!とんでもない重傷者は出すなよ!?くれぐれも!!」
「イエッサー」
それから拳太郎は相澤に壊利を預けると、皆と共にまだ暴れ回っている敵達の鎮圧へと向かうのであった。
「な…なぁお前ら…何かアイツぴんぴんしてっけど…これラスボスとやり合った後なんだよな…?」
「「「「「……」」」」」
峰田の声に皆は改めて拳太郎のスタミナやタフさそして強さを目の当たりにして、固まってしまうが、それと同時に半年ではあるものの拳太郎と生活を共にしてきたからこそ納得した。
“アイツだから”
その後、拳太郎や皆は各地で暴れている敵の鎮圧へと向かった。
因みに拳太郎のチームでは、拳太郎が現れた途端に敵達は一斉に態度を変えて土下座したため、5分で鎮圧完了してしまったという。
更にそこから拳太郎は各地に移動して回り、同じように鎮静化していった。
その結果、1時間で日本全国の騒動を鎮圧させたのであった。
そして、すべての敵の鎮圧が終わり、残りは全て警察や民間のヒーロー達へと任せると、拳太郎を含めたA組の皆は寮へと帰還したのだ。
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それから数時間後
「んあ〜!!!疲れた〜!!」
無事に鎮圧を終えて、皆は寮へと帰還した。待っていた家族達との時間をたっぷりと過ごしたのち、それぞれの部屋へと向かい、スーツを脱ぎ普段着へと着替えていく。
「まだ信じられないよな〜。作戦開始からまだ6時間しか経ってないんだぜ?それなのにラスボス撃破に敵の鎮圧なんてよ〜コイツがいなきゃまず無理だぜ!」
「んが……?」
そう言い峰田の言葉とともに皆の目線が、脚を組ながら座っている拳太郎へと向けられる。
「どうしました?」
「いや、自覚なしかよ!?」
瓶の上側をデコピンで弾き飛ばし、コーラをガブ飲みしていた拳太郎が皆の目線に気づくと、その様子に今度は耳郎が突っ込んだ。
「というか何でまだそんなに元気なの!?AFOと戦った上に残りの制圧にも参加したってのに!」
「いや、元気と言ってますけども、これでも結構疲れてる方ですよ?ジロポンさん」
「ジロポンて言うな!!」
「確かに、今でも動けますが、あのクソ野郎との戦いで、だいぶ、スタミナ使ったからなぁ〜30分くらい休憩したいぐらいです」
「30分!?」
「あ〜疲れた。風呂入ってきます」
「いやいやいや!次から次へとマイペースすぎるでしょ!?ってもういないし!」
それから拳太郎は入浴のため、大広間から出て行った。
「ったくアイツ……ん?」
そんな中であった。耳郎は先程からやけに暗い上鳴に気づく。
「どうしたの?随分と沈んでるじゃん」
「…あぁ…」
耳郎から尋ねられた上鳴は頷くと共に、表情を曇らせながら答えた。
「なんていうかさ…今回は事情あったにせよ、アイツは俺達と違ってヒーロー目指してねぇ上に無個性だろ?なのにたった1人で連中を片付けちまってよ…凄く自分が不甲斐なく思っちまったんだ…」
すると、上鳴と同じ気持ちであったのか、蛙水や麗日も表情が暗くなった。
「確かに上鳴ちゃんの言う通りかも…私達、今回何も役に立てなかったわ…」
「神堂くんに頼りっきりだったね…」
「「「「「…」」」」」
蛙水や麗日に続くように同じ気持ちを持つ皆も表情を曇らせていき、その場は沈黙に包まれていった。
確かに今回は拳太郎と壊利、そしてサー・ナイトアイが考案した作戦で、拳太郎がメインであったとしても、彼はたった1人で超常解放前線の主力を無力化させており、自身らはサポートすらできなかった。それどころか、残りの敵の制圧も全て拳太郎に任せっぱなしであった。本来ならば彼では無くヒーローを目指す自身らがすべき事を全うできなかったため、無力感しかなかったのだ。
そんな中であった。
「んなもんどうでも良いだろアホ」
「「「「!?」」」」
ソファーに座りながらドリンクを飲んでいた爆豪が声を上げ、それに皆は驚き、彼に目を向けた。
「爆豪!何言ってんだよ!?寧ろお前が一番悔しいんじゃねぇのか!?」
「アイツに任せっきりって事は、世間のヒーロー共も同じだろ。俺ら学生はまだ毛が生えたど素人だ。だが活動してる連中は全員、経験があるヒーローだ。なんならソイツらが一番、項垂れてんだろ」
「た…確かに…」
爆豪の言葉は最もだ。今回は自身らヒーロー科の生徒は勿論だが、シンリンカムイやMt.レディといった本職のヒーロー達ですら拳太郎の援護どころか些細なサポートすら行えず、ただ指を咥えて見るだけしか出来なかったのだ。
今回で一番傷ついたのは、寧ろ本職の彼らだろう。
「だから俺らはそうならねぇためにやるしかねぇんだよ。それにAFOをやる為だけにヒーローなったんじゃねぇだろ?」
「た…確かに…」
「俺らの世代にオールマイト以上のバケモンがいるだけの話だ。アイツが出ることねぇように俺らが強くなりゃいいんだよ」
爆豪のその言葉に、皆は納得すると共に、彼の意外な面に驚いていた。
「なんか、凄く変わったな…」
「あぁ。何かあったのか?」
「ふん」
その中でも特に爆豪と関わりのある切島や上鳴が尋ねるも、爆豪は答える事はなかった。
だが、彼の言葉で沈んでいた皆の表情が少しずつだが、晴れてきたのだ。
「爆豪の言う通りだな」
「あぁ!」
彼の言葉に頷く様に、砂藤や尾白が声を上げると、皆は少しずつ自信を取り戻していったのであった。
すると
「あ〜良い湯だった〜……あれ?どうしました?」
風呂から拳太郎が現れ、その雰囲気に首を傾げると、緑谷が答えた。
「なんでもないよ」
「そうですか。…………ん?」
緑谷の言葉に拳太郎が頷くと同時に、ポケットにしまっていた携帯がなり出し、それを確認すると拳太郎はすぐさま玄関に向かう。
「ちょっと僕出ますね」
「どこ行くの?」
「ちょいと校長先生のところに」
緑谷に答えながら、玄関についた拳太郎が、入り口となる扉に手を掛けた時であった。
「神堂」
「はい?」
焦凍が拳太郎を呼び止め、振り返ると焦凍は真っ直ぐ、拳太郎の目を見つめながら頭を下げた。
「言うのが遅くなった…本当にありがとな…燈矢兄のこと…」
「あ〜」
焦凍からのその言葉に拳太郎は思い出したのか、頷いた。
「別に良いですよ。あとはどうするか、轟くん達次第なので」
「あぁ」
そして、拳太郎は寮から出ていったのだ。
○◇○◇○◇○◇
「あ!パパ〜!」
「拳ちゃ〜ん!!」
寮を出ると、そこには壊利と彼女を抱き抱えたねじれの姿があった。
「お待たせしました2人とも。さ、行きますか」
「うん。だけど拳ちゃん…本当に良いの?」
そう言いねじれは少し表情を暗くさせながら尋ねると、それについて拳太郎は頷く。
「うん。もう決めたから。取り敢えず校長先生にも話さないと」
そして拳太郎は壊利と手を繋ぎながら校長室へと向かっていったのであった。
もうすぐ最終回です。番外編として、メリッサとの出会いのやつもまた投稿します