ちょっと!!勉強の邪魔しないでよ!!   作:狂骨

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雄英体育祭 決勝戦

 

『マジかよぉぉぉ!!!ビンタでノックアウトしちまったぁぁぁ!!!神堂拳太郎!決勝戦進出だぁぁぁ!!!!』

 

「あ、だ…大丈夫かな…まぁいいか」

 

プレゼントマイクの実況と共に周囲から再び歓声が巻き上がった。ビンタされ壁にめり込んだ爆豪が救急ロボによって運ばれていく中、拳太郎も自身の陣地へと戻っていく。

 

すると

 

「すげぇぞ神堂!まさか首席を倒しちまうなんてよ〜!!!」

 

「よぉ!!スーパールーキー!!!」

 

見上げる観客席からは手を振る同級生達の姿があった。その中にはもちろん、心操の姿もあり此方に向けてサムズアップしていた。

 

「お疲れ、神堂」

 

「うん!!」

 

そんな中であった。

 

_____それよりもアイツ情けねぇよな〜!

 

「………ん?」

 

突如として聞こえてきた声に拳太郎は手を振ることを止めて、目の前の手すりに掴まる数名のうち、2名へと目を向けた。

 

___1位取るとか抜かしてたのに負けやがったよ〜!

 

__そうそう!恥ずいだろうなぁ〜!

 

そう言い2人は運ばれていく爆豪に向けて蔑みの笑みを浮かべていた。彼の属するA組の皆はすでに慣れていたが、爆豪の傍若無人な振る舞いは初めて見る人からすれば気に入らないだろう。特に選手宣誓における優勝宣言を行った時の態度から皆は彼を目の敵にしていた筈だ。

そんな彼が1位にもなれない上に見下していた普通科の生徒にビンタ1発で倒された。それは彼に対しての陰口の材料にはうってつけとなるだろう。

 

 

 

 

 

 

だがその言葉を耳に入れた瞬間_______

 

 

 

 

_______拳太郎の目の色が変わった。

 

「すいません」

 

「「え…ぐぼへぇ!?」」

 

その瞬間 拳太郎の姿が一瞬にしてその場から数メートル以上もの高さにある観客席へと現れると、爆豪をバカにしていた2人の生徒の首を両腕で掴み上げた。

 

「ちょっと!なにやって___」

 

「あ"ぁ…?」

 

「ヒィ!?」

 

横に立っていた女性生徒が止めようとすると、拳太郎は今まで聞いたこともない様なドスの効いた声で威圧した。

 

「確かにあの人は横暴な態度だったけど…それがなに?あの態度でいられるのもここまで上がってこれたのも、全てあの人の今までの努力があってこそ…入試成績が1位なのも彼がそれほど努力してきたという事の証…普通科の僕に運悪く負けたとしてもそれを嘲笑うのは許さないよ?」

 

「い…いや、ダサいと思わないのかお前も!?」

 

「全く。宣言して失敗する人なんて世の中にごまんといるよ。特に受験とかね。第一志望受かるって宣言して第二志望とか全落ちとかする人は珍しくない。ヒーロー科目指してた君らもそうでしょ?」

 

そう言い拳太郎は掴んでいた手を離す。

 

「ヒーロー科目指してたくせに普通科とかダッサー…そう言われたら君らも落ち込むでしょ?嘲笑うんだったら心の中だけに留めておきなよ。戦ってすらないのに爆豪君をバカにする資格は君らにはない」

 

そう吐き捨てた拳太郎は皆の間を通り過ぎると控え室へと向かっていったのであった。

 

「ごめん驚かせて。僕はこの後、控え室で過ごすよ」

 

拳太郎は努力する者を称賛し嘲笑う者を嫌う。

 

 

その一部始終は観客を除いて周囲の他の普通科やサポート科そして一部のヒーロー科の皆も見ていたのであった。

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

それから時間が経過しリングが再び新調されると決勝戦の幕が上げられた。

 

『さぁいよいよラストだぁぁ!!!この一戦で雄英一年の頂点が決まるぅぅぅぅぅ!!!『轟焦凍』vs『神堂拳太郎』今、スタァァァトッ!!!!』

 

最後の一息かと思える程の大迫力のゴングと共に、轟と拳太郎の戦いが始まった。

 

「よろしくお願いします。轟くん」

 

「…あぁ」

 

拳太郎が礼儀としての挨拶をすると、爆豪と違い彼は頷く。

 

 

すると、轟の右半身から冷気が溢れ始めた。

 

「お前の戦い…ずっと見ていた。お前は強い…だから____

 

 

 

____初めから全力で行くぞ…!!!」

 

その瞬間 右半身から巨大な氷が洪水の如く生成され、拳太郎へと向かっていった。それは最初の第一戦において、瀬呂と対峙した際に彼の感情が爆発した時よりも威力は高く、瞬く間に拳太郎を飲み込み会場の客席どころか天井にまで到達してしまう程の高質量の氷が生み出されていった。

 

 

「……ふぅ…」

 

大量に生成したことで轟の吐く息が白く染まる中、その目の前には拳太郎の姿が見えないほどにまで形成された氷山が作られていた。

 

『な…なんだよこれ…さっきよりも規模がデケェぞぉ!?』

 

「お…おい…これってやりすぎなんじゃ…」

 

「アイツ生きてるのか!?下手すれば凍死じゃ……」

 

プレゼントマイクの実況は勿論だが周囲からも威力が高すぎるあまり巻き込まれた拳太郎を心配する声が聞こえ始める。

 

いや、だからこそだ。轟は予選の障害物競走が終わった後からずっと拳太郎を警戒しており、彼の試合もずっと見ていた。故に轟は感じ取っていたのだ。

 

 

______“殺す気でいかなければ確実に倒せない”_と。

 

 

「…やりすぎたか?」

 

それでも、流石に大規模すぎる氷山に轟は冷静になると、氷を溶かそうと近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

その時であった。

 

「よっ」

 

 

_______ッ!!!!!

 

 

目の前の氷山の中心が巨大な音を立てながら爆発した。

 

「「「「!?」」」」

 

その音に轟のみならず会場中の全員が驚き、その場に注目する。

 

その一方で、中心が破壊された事で周囲の氷山が次々と崩れていき、周囲に真っ白な冷気が舞い始めていく。

 

それと共にその中をゆっくりと歩いてくる影が見え始めた。

 

 

「なるほど。これが貴方の個性ですか」

 

そして、冷気が晴れると共にそこからは所々に氷を被りながらも平然としながら歩いてくる拳太郎の姿が見え始めた。

 

「ッ!!無理やり出てきたのか!?」

 

「えぇ。氷を砕くのは慣れてます。以前、北極で実践がてらに20メートルくらいデッカい氷塊をサンドバッグ代わりにぶっ壊してましたからね」

 

「は…何言ってん___いや…こんなこと出来んならあながち嘘じゃねぇな…」

 

拳太郎の底知れぬ戦闘能力に轟はもはや規格外の事でさえも納得してしまい、彼に対して再び戦闘態勢を取る。

 

 

すると

 

「では…僕もいきますよ」

 

今度は拳太郎も構え出し、先程の爆豪戦の時と同じく脚を振り上げていた。

 

 

そして

 

「フンッ!!!」

 

その脚が勢いよく振り下ろされると同時に先程と同じ光景である巨大な亀裂が目の前に広がった。

 

「爆豪ん時と同じか…なら…接近させなきゃいいだけだ…!!!」

 

それに対して轟は先程の爆豪との戦闘を思い出すと、すぐさまリングの幅と同じ大きさの氷を流出させた。それによって、拳太郎の踏み込みによって浮かび上がられた岩石が次々と氷のオブジェへと変わっていく。

 

 

すると

 

「ほっ!!」

 

拳太郎がその氷の波を飛び越え、氷塊の上を走りながら迫ってきた。

 

そして、迫り来る氷塊を駆け抜け一瞬で轟へと迫った拳太郎はそのまま身体を回転させると轟に向けて脚を振り回した。

 

「せいやぁ!!!!」

 

「く!?」

対して轟は寸前で氷の放出を止め、その蹴りを左腕で防ぐ。

 

 

 

その瞬間

 

 

ゴキッ___ッ!!!!

 

「!?」

 

巨大な鈍い音と共に、拳太郎の蹴りを受けた轟の身体が吹き飛ばされた。

 

 

『ちょ…直撃ぃぃ!!!神堂の回し蹴りが轟の腕にモロに入りやがったぁぁ!!!大丈夫なのかこれ!?』

 

 

「くぅ!?」

 

吹き飛ばされた轟は自身の腕へと目を向ける。そこには、明後日の方向に曲がっている自身の左腕があり、完全に“骨折”していた。

 

「(蹴り1発でこれかよ!?こんなもんもう1発でも喰らったらひとたまりもねぇ…!!)」

 

その骨折の酷さによって、轟は改めて拳太郎の一つ一つの攻撃が自身にとって一撃必殺に等しいと感じ取り、さらに警戒を強める。

 

 

すると

 

「逃しませんよ」

 

目の前の舞い散る冷気が晴れ、接近する拳太郎の姿が見えてきた。それを見た轟は左腕を押さえながら氷を放出する。

 

「ほっ」

 

だがそれすらも、拳太郎の拳の一撃によって崩れ去っていったのであった。

 

 

そんな中であった。

 

「さっきから思ってたんですけど、緑谷くんの時に使ってた炎って使わないんですか?」

 

「…!!!」

 

目の前に着地した拳太郎の言葉に轟は自身の左腕へと目を向けた。そこには、僅かながら熱が籠っており、氷を溶かしていた。

 

「さっきからずっと氷ばっかりですけど、何か使えない事情でも?」

 

「……」

 

そうだ。轟には炎を扱う中で葛藤があった。それは自身の個性のうち、炎の元となった父親であるNo.2ヒーロー『エンデヴァー』によるスパルタ教育、そしてそれによって精神を病んでしまった母親との確執。

 

炎を使うならば、恨む相手である父親と同じ個性を使ってしまう事となる。だが、彼のプライドがそれを許さなかったのだ。緑谷の言葉の投げ掛けで発動できたものの、キッカケである彼の叱責がない今、発動する事に未だ迷っていたのだ。

 

 

「俺は…」

 

 

その時であった。

 

 

「負けるなぁッ!!!」

 

「!!」

 

観客席から緑谷の声が聞こえた。その声と共に轟は先程の彼との試合を頭の中で思い出した。

 

___親父の力を……

 

_____君の力じゃないかッ!!!

 

炎の力そのものを父親のものであるという認識していた。だが、それを緑谷が強く否定し自分自身の力であると訴えたその声が再び頭の中へと響き渡り、轟自身の意思を覚醒させた。

 

 

「あぁそうだ…ありがとな緑谷ぁ…!!!!」

 

 

その瞬間 今まで熱気だけを放っていた左半身が____

 

 

「俺もヒーローに…!!!」

 

 

_____巨大な炎を纏い始めた。

 

 

『でたぉぁぁぁ!!!!轟のもう一つの炎の個性だぁぉ!!!さっきよりも出力がデケェぞぉぉぉぉぉ!!!!』

 

 

「「「「「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」

 

プレゼントマイクの実況と共に観客の歓声が湧き上がり、轟の炎はさらに激しさを増し周囲の氷を溶かしていった。

 

もはや迷う事はない。今はただ目の前の敵を倒すべく轟は力を振るうのみである。

 

 

「行くぞ神ど______」

 

 

 

 

 

 

その時であった。

 

 

 

「ふんッ!!」

 

「ごはぁ!?」

 

拳太郎の回し蹴りが轟の腹へと放たれた。それによって、轟の身体がその場から場外へと吹き飛ばされた。

 

 

『え…?』

 

「「「「「「「え…?」」」」」」

 

 

轟が地面へと倒れると、その光景に今まで盛り上がっていた実況や会場の空気が一瞬にして凍りつく。

 

そんな中、轟を蹴り飛ばした拳太郎は服についた氷を払いながら淡々と告げた。

 

 

「いや、凄い隙だらけだったんで。回想も含めて。あれ?これってやらなかった方が良かった感じでしたっけ?」

 

 

「う〜ん……まぁ…うん…でも勝負だから問題ないわ」

 

拳太郎の問いにミッドナイトは顔を引き攣らせ苦笑しながら、頷いているとも頷いていないとも取れるどっちかずの相槌をうち、ゆっくりと旗を上げるのであった。

 

「轟くん場外!よって神堂くんの勝ち!!!」

 

 

以上によって全ての競技が終了し、今年度の体育祭優勝者は神堂拳太郎となったのであった。

 

 

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