擦り切れた亡者とエルフの魔法使いの話   作:黒プー

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UAなんだかんだ伸びているのはさすがフリーレンって感じです。
こんな駄作でも伸びるのはやっぱり原作が良いからなんでしょうね。


勇者一行

「魔術の師に会いに行きたい?」

「うん。この近くに住んでいるはずだからね」

 

 ヒンメルの言葉にそう返したフリーレンに、ハイターは困惑しつつも質問する。

 

「……しかし、あなたの師匠は大魔導師フランメなのでしょう? かの御仁はすでに亡くなられているはずでは?」

「……ああ、そういえば言ってなかったっけ。私の師匠は二人いるんだ」

「……なるほど。しかし、なぜ今になって?」

 

 ハイターがそういうのも無理はないだろう。王都から魔王討伐の旅に出てそれなりの年月が経っている。魔王城までの道のりも随分進んできたというのに、いまさら師匠に会いたいというのも謎である。

 そんなハイターにフリーレンは言葉を返す。

 

「…少し師匠が心配でね。色々あって弱ってる人だから。」

「……あまり深掘りしないほうがいいみたいですね。」

「そうだな。…だが大丈夫なのか? お前のことだ、最後に会ってからそれなりに時間が経っているんじゃないのか?」

 

 若干信頼されていないような言い草のアイゼンの言葉に、フリーレンは若干しょんもりとしつつ言う。

 

「うーん、だよねぇ……師匠不死だけど時間感覚は割と普通だしな……」

「不死……? まさか、アンデッドとかですか?」

 

 フリーレンの呟きにハイターが問いかける。彼は僧侶であり、女神の魔術を扱う。故に不死者などの女神の理を外れた存在には少しだけ詳しいのだ。

 とはいえアンデッドが師匠な訳もないだろうと思っていた彼は、少し冗談めかしつつ言った。

 だがフリーレンはその言葉に少し考え込む。

 

「うーん……そう……なのかなぁ……?」

「……そこは自信をもって否定して欲しかったんですが……まさか本当にアンデッドなんですか?」

「いや、少なくともアンデッドではないと思うんだけど。ただ師匠は自分のことアンデッドに近い存在だとも言ってたしなーって」

「……まあ、会えばわかるだろう? とりあえず行ってみようじゃないか」

 

 そんなヒンメルの鶴の一声で、勇者一行はフリーレンの師匠のもとへ向かうことになった。

 

 

 

 ♢

 

 

「……本当にここに住んでるのかい?」

「……多分。ちょっと自信無くなってきた」

 

 勇者一行が谷やら森やらを乗り越えつつ辿り着いたのは、人が住んでるとは到底思えないほど荒れ果て、ボロボロになり、草まで生い茂っている小さな小屋であった。

 

「……まともな人間ならこんなところには住まないだろうな」

「おや、キノコまで。つまみにちょうど良さそうです」

「拾うなハイター。捨てろ」

 

 ハイターの拾ったキノコがアイゼンによって星になったのを見届けたところで、フリーレンの後に続いて一行は小屋の中へと入る。

 壁などよりも若干新しい扉を開く。

 だが中もやはり外と同じような様相で、相変わらず人は住めそうにない場所だった。

 

「……本当にここに?」

「うん。そこの椅子に座ってると思う」

 

 扉から中を見渡すと見える椅子をフリーレンが指し示す。

 確かに誰か座っているように見え、なおかつ少し揺れている。

 

「……みんなはちょっと待ってて。師匠、知らない人が本当に嫌いだから」

「わかった」

 

 ヒンメルたちを外に残し、フリーレンは一人で椅子に座る人物に声をかける。

 

「……師匠。師匠、起きてる?」

「………………ああ、フリーレン」

 

 どうやら眠っていたらしく、椅子に座る人影がモゾモゾと動き出す。

 フリーレンがその様子に安心した時、椅子から何かが落ちる。

 それはすでに乾いているが、明らかに血に濡れている短剣だった。

 その様子を見たフリーレンは、いまだに椅子に座ってモゾモゾと動いている師匠に話しかける。

 

「……大丈夫、師匠?」

「…………わからない。 怖かったんだ。 ずっと一人で」

「……ごめんね、すぐに帰ってこれなくて」

「…………いい、わかっている。お前がエルフなのも、時間感覚が私とずっと違うのも。だからこれも、私が悪い」

 

 そうか細く言った彼女は、そっと短剣を拾い上げ、それを懐にしまった。

 それを見たフリーレンは少しため息をついた後、彼女に見えるようにドアの方を指し示す。

 

「……今日は友達を連れてきたんだ。会ってくれる?」

「……ああ」

 

 その言葉を聞いたフリーレンがヒンメルたちを呼んだ。

 間も無くして外で待っていたヒンメルたちが中に入ってくる。

 

「私の友達のヒンメルとハイター、それにアイゼン。……こっちは私の師匠。アッシュって呼んであげて」

「よろしく、アッシュ」

 

 紹介されたヒンメルは、握手をしようとアッシュに手を差し出す。

 だがアッシュは、そんなヒンメルの手を握らず、じっと見つめる。

 

「…………」

「……どうしたんだい?」

 

 困惑するヒンメルをよそに、アッシュは視線を手から彼の顔に動かすと、言った。

 

「…………お前は、勇者か」

「僕のことを知っているのかい?」

「…………知らない。だが、お前は私が目指したものだ。だから、わかる。……苦しくはないのか」

 

 そう言ったアッシュに、ヒンメルは少し驚いたのち、ふっと笑いながら言った。

 

「辛くはないな。むしろ僕は勇者でいられる自分が好きだ」

「…………そうか」

 

 そう言ったヒンメルを、アッシュはどこか眩しそうに見つつ、彼の手をそっと握った。

 

 

 ♢

 

 

 フリーレンとその友人がやってきた後、私は彼らにいろいろなことを教えることになった。

 ヒンメルという勇者には彼の使う直剣の扱いを。

 ハイターという僧侶には私の知る限りの奇跡を。

 アイゼンという戦士には私が見て学んだ斧の扱いを。

 

 そんなふうに過ごして半年ほどたったある日のことだった。

 いつものように安楽椅子に座っていた私に、フリーレンが話しかけてきた。

 

「師匠。どう? 私の仲間」

「…………強いな、彼らは。私の技をあっという間に吸収していく」

 

 三人とも才能があったからか、私が数十年かけて得た技術を数日で吸収していく。羨ましい限りだ。

 私にもあのような才能があれば、あるいは。

 そんな私に、フリーレンが問いかけてくる。

 

「……約束、覚えてるでしょ?」

「…………知らん。覚えていない」

「…………」

 

 約束、とは。

 随分昔、フリーレンがフランメと共に旅に出た直前にした約束のことだ。

 私の扱うソウルの魔術は、生半可な魔術師が使えば魔術そのものに魅入られ、そして最後には自らの魂を使い切り、亡者と化す危険なものだ。実際私はそういった最期を迎えた魔術師を何人も見送った。

 だから私は、彼女にソウルの魔術を教えてと言われた時に約束をしたのだ。

 

『…………私が認めるほどの強者を仲間にしろ。そうすれば、お前にこれを教えてやる』

 

 ソウルに魅入られた魔術師たちを見送り続けた時、私はいつも後悔していた。

 彼らを引き止めることができていれば。私に、そのくらいの力があれば、と。

 だから私はフリーレンにそう約束させた。

 約束通り、彼女は勇者たちを連れてきた。

 彼らは強い。それにフリーレンと彼らの間には、信頼関係があった。

 

 _____彼らがいるのであれば。

 

 だが、私は怖かった。もし彼らでさえも引き止めることができなかったら。

 フリーレンは間違いなく亡者になってしまうだろう。

 それは嫌だ。そうなって仕舞えば、私は本当に。

 だから。

 

「…………お前にはこれはまだ早い。教えるわけにはいかない」

 

 そうフリーレンに告げると、彼女の目から水滴がこぼれ落ちる。

 ……涙、か? 

 

「……何で? ……何で、ダメなの?」

「…………」

「ずっとそうだ。私が魔法を勉強し始めても、私が初めて魔法を使った時も、フランメと一緒にここを出た時も、ずっと。 ……今までずっと、私は師匠の弟子じゃないみたいじゃないか」

 

 ……そんなはずがない。フリーレンは私にとって最初の弟子だ。

 これは嘘でも何でもない、他の言葉で表せるようなやわなものじゃない。

 

「…………そんなわけが」

「じゃあなんで教えてくれないんだ! フランメでさえ最後に魔法を教えてくれたんだ! なのに師匠はいつも魔導書で学べるような魔法ばかり! 私は! 師匠の魔法が使いたいんだ!」

 

 そういったフリーレンは、「弟子って、そういうものだろ……」といったきり、声を押し殺して泣くばかりだった。

 

 その夜、私はずっと悩んでいた。

 私の魔法が使いたい。そういったフリーレンの言葉が、私の心にずっと引っかかっていた。

 確かに私は彼女に一度だって私の魔術を教えたことがなかった。普通の魔術師であれば、一つくらいは弟子に自らの研究した魔術を渡すものだというのに。

 ……思い返せば、私はフリーレンに貰ってばかりだった。

 彼女は私の孤独を打ち消し、人と話す喜びを思い出させてくれた。

 だというのに私は、彼女に何を返した? 

 

「……何も、返していないじゃないか」

 

 

 ♢

 

「…………フリーレン」

「……何、師匠」

「少し、用がある。ついてきてくれ」

 

 家の外から出て、少し歩いた先。

 植物のせいで少しわかりにくくなっているその谷の反対側には、大きな丸い岩が鎮座していた。

 その岩を見ているフリーレンに、私は懐から出したスクロールを彼女に渡す。

 

「……これは?」

「…………スクロールだ。私が使う結晶魔術、その最奥の秘術。……今のお前なら、使いこなせるだろう」

「…………! ……あり、がとう……師匠」

 

 表情には出ていないが、それでも嬉しそうな彼女の様子を見て、私は彼女の頭をそっと撫で、その場から去る。

 彼女に渡した魔術は、ソウルの奔流という魔術。扱いは難しい、私の中であの魔術は間違いなく最も難しい魔術だ。故に弟子を送るのであれば最も相応しい魔術と言える。

 彼女ならば、私の弟子ならば必ず成功させるだろう。

 そう考えていたその時の私の心は、何だか暖かかった。

 

 

 ♢

 

 

「じゃあ師匠。行ってくるね」

「…………ああ、気をつけろよ」

 

 スクロールを渡した数日後。ソウルの奔流を成功させた彼女は、どこか晴々とした様子で下の旅へと戻っていった。

 この半年間で彼らは十分に強くなった。きっと魔王などすぐに倒して戻ってきてしまうだろう。

 ほとんどあの時から変わっていない私と比べると、いつか置いて行かれてしまう気がする。

 

「……街にでも、降りてみるか」

 

 私も、少しぐらい努力するべきだろうか。




文字数は書けるけどこれで面白いのかなぁと若干モヤついています。

※投稿日に即修正入れました。
いくらフリーレンでもこの師匠相手に会いにいく動機が忘れてたからじゃ流石にね。
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