擦り切れた亡者とエルフの魔法使いの話   作:黒プー

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襲撃、そして旅の始まり

 フリーレン達が旅に戻ってから数十年が経った。

 あれから私は彼女達を見習うように歩き始めた。

 まずは近くの村に足を伸ばした。

 近くとはいえ小屋からそれなりに離れていて、年月も経っていたことから誰も私のことは知らなかった。

 だが、それはむしろ都合が良かった。

 村の人々は何もいうことなく私を迎え入れてくれた。

 過度な期待はなく、かといって失望されることもないこの場所は、私にとって心地の良いものだった。

 

 彼らと話しているうちに思い出したが、もともと私は人と話すのが好きだったのだ。

 長い間一人だったのもあって不器用な笑い方になっていたが、それでも楽しかった。

 

 村と私の家の間にある森の中はどうやら魔獣が多いらしく、村に通うようになってからはその魔獣狩りを手伝うようになった。

 私がくるまで弓と剣で魔獣を倒していたらしい村の人たちには感謝された。感謝されただけだというのに、心が少し温まったような感覚を覚えた。

 

 いつの間にか村との交流は、私にとって楽しいイベントのようなものになっていた。

 

 

 ♢

 

 

 いつものように小屋から村に向かっていた時。

 村に向かうときはそれなりに高い山を越える必要があり、山の上からは村がくっきりと見える。私はその景色がそれなりに好きで、いつもその景色を見てから村に向かうようにしていた。

 今回も見ていこうかと思い、山の頂上から景色を眺めた時。

 

 

 村が燃えていた。

 

 

 あまりの景色に唖然とした後、私は急いで山を下り村へと向かった。

 とはいえ馬がいるわけでもなく、どれだけ急いでも半日かかる距離だ。どれだけ急いでも、間に合うことはなかった。

 

 村に着いた頃にはすでに火は消え、後に残ったのは燃え、崩れ落ちてしまった家だったもの、そして黒焦げた遺体だけだった。

 生き残りを探そうとあちこちを探し回った。けれど誰一人生き延びてはいなかった。

 女子供も、老人も、ただ一人の例外はなく黒くなっていた。

 私にはどうすることもできなかった。

 

 何もできなかった自分に泣きたくなりつつ、彼らの遺体を埋めていく。

 ほとんど黒焦げていて誰かもわからないが、薄汚れている犬の人形を持った遺体を見つけた時、崩れ落ちそうになった。

 村に初めて来た時、私を引っ張って、村の中を案内してくれた子だった。犬の人形は、母親に作ってもらった大事なものだと言っていた。

 私には何もできなかった。ただ、彼女の遺体を埋めることしか出来なかったのだ。

 

 彼らを埋めていると、山の方から三人ほどの人影が現れた。

 頭からツノが生えているその妙な輩達は、魔力量が少ないだの、魔王様の命でだのごちゃごちゃ言った後、村を燃やしたのは自分たちだと言った。

 

 こいつらだった。

 村を燃やし尽くしたのも、住んでいた人々を殺したのも。

 そういえば妙だった。初めて出会った少女の死体。体は黒焦げるほどに燃やされていたのに、人形だけは無事だった。

 災害などではなく、人為的なものだったのか。

 

 そんなふうにぼんやりと考えながら、ずっと抜いていなかった闇朧を鞘から抜き放ち、舐め腐ってベラベラと喋っていたそれの頭を切り飛ばす。

 突然宙に浮かんだ頭に気を取られたもう一匹は頭から一刀両断し、最後に残っていたそれは惨めに命乞いをしようとしたので手足を切り落としだるまにしてから生きたまま焼いた。

 特に何も感じなかった。

 

 

 

 数日後にやってきた冒険者に話を聞いた。どうやらあの奇妙な生き物どもは魔族というらしい。

 そういえばフリーレンがそんな話をしていた気がする。もっと深く聞いておくべきだった。

 さらに話を聞くと、魔王はすでにヒンメル達勇者一行に倒されたものの、残党が各地に残っているらしい。

 特にこの大陸の北部は強力な魔族がいるらしく、魔王が倒れた今でも危険地帯らしい。

 地図を見せてもらいながらもそう教えてもらった時、私は北部に向かうことを決めた。

 結局私にできることなどそれくらいなのだと、よく理解したからだ。

 

 

 ♢

 

 

 依頼のあった村の調査に来たとき、すでにその村は壊滅していた。

 焼け落ちた家々に死体が焼かれた時の特有の匂い。

 そんなひどい状況の中、村の中心だったであろう場所に生き残りらしい人影を見つけた。

 黒いドレスを身につけた女性。この村で何があったのかを知る唯一の手がかり。

 彼女から話を聞こうと、俺は彼女に声をかけた。

 

「……あんた、大丈夫か?」

「……冒険者か」

 

 そう言って彼女はこちらを振り向く。

 なかなかの美人だった。表情は暗いが、むしろそれがいいと言いたくなるほど。

 とはいえ本人にそんなことは言えない。ましてや村が襲われたあとなのだ。

 とにかく仕事をするために何があったのか聞く。

 

「あんた、村の生き残りだろ? 何があったんだ」

「……これが村を襲った。殺しはしたが村は守れなかった」

 

 そう言って彼女は目の前の焼死体を指し示した。

 てっきりこれも村の犠牲者かと思ったのだが、どうやら違うらしい。

 よく見たら死体にツノが付いていた。

 

「ツノか。魔族に襲われたみたいだな。運がなかったみたいだ。……だがなんで死体が残ってやがる? 普通魔族の死体って消えるもんなはずだが?」

「……ソウルだけを焼いた。ソウルが先に消えたから死体は残ったんだろう」

「……ってことはあんた、魔法使いかなんかか? そんな変な芸当出来るのは魔術師くらいだろ」

 

 魂だけ焼いた、か。そんな芸当が魔法使いにできるとは。

 ただの冒険者の俺には遥かに遠い存在だが、やはりすごい存在らしい。

 そんなことを考えると、彼女がこちらを向く。

 

「……魔族とはなんだ?」

「あん? なんだ、知らないのか? 魔族ってのはこいつみたいに人間にそっくりな化け物だよ。人喰いのな」

「これ以外にもいるのか」

「ああ。最近じゃ魔王が死んだから随分数を減らしたらしいが、北の方にはまだ残ってるらしいぞ」

「……北側とは、何処だ」

「あー、ちょっと待ってろ」

 

 俺は彼女のために地図を開いて指し示す。具体的には魔法都市オイサーストの方を。

 

「今魔族が多いところと言えばこの辺だろうな。……って、どこ行くんだ?」

 

 いつの間にか地図を見ていた彼女は俺から離れ、そばに落ちていた抜き身の刀を拾い上げ、どこかへ向かおうとしていた。

 慌てて呼び止めると彼女はこちらを振り向き、そして言った。

 

「魔族を殺しに行く」

 

 その声は、ゾッとするほど冷たかった。あまりの気迫に声を出せなくなる。

 止めるべきだと直感で感じた。だがそれを上回るほどの恐怖感が、俺を押さえつけていた。

 彼女はそのまま歩いていき、村を出ていった。

 俺が動けるようになったのは、彼女が出て行ってからしばらくたった後だった。

 その後は依頼のために現地を調べ、そのまま帰ったが、帰ったあとでも俺の頭は彼女でいっぱいだった。今でも止めるべきだったか、悩んでる。




アッシュ

せっかく1歩踏み出せたのにその1歩先は崖だった。
魔族絶対殺すマンになった。多分人に関わるのは前よりも苦手になった。そりゃそうだ、自分のせいで村が壊滅したんだから。
ちなみに今回魔族Cを焼き殺したのは亡者の王エンドで得た始まりの火。
具体的な描写ないから実際奪ったのか分からないけどこの小説では王になったあと火を奪ったって設定で行きます。

魔族ABC
魔族らしく相手魔力ないから余裕やろ、なんか魔王様ビビってたけど余裕余裕wとか舐めてかかったらボコボコにされた。どうしてお前らは魔力でしか強弱を判断しないんですか?(現場猫)
ちなみに魔王様の直接の命令で動いてた人なのでそれなりに強いはず。具体的には作中でフランメと戦ってた3人組くらい。

冒険者ニキ
普通の冒険者ニキ。村同士の連絡が途絶えてそれの調査を依頼されてた。
本人はビビってるせいで気づいてないが一目惚れしてる。でもこの先二度と会えずにその思いを抱えたまま死んだ。可愛そう。


赤評価&ブクマ100越えありがとうございます。まさか3日で行けるとは思ってなかったです。
書きだめ大嫌い人間なせいで更新頻度はまちまちですが、できる限り頑張って更新するつもりです。なのでのんびり待っていただけると嬉しいです。

※時代設定を修正 十数年→数十年
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