ようこそ I 世。実力至上主義の教室へ 作:コーラを愛する弁当屋さん
リボーン側にオリジナル要素沢山ですが、読んでいただけると嬉しいです!
—— 明治時代、東京 ——
とある自治組織の本部。その玄関先で、2人の仲間に見守られながら、金髪の男は木製の表札に手を掛けた。
「では、外すぞ」
「……ああ」
「……ぐすっ」
かちゃんと音を立てながら、「自治組織 あさり會」と書かれた表札が外された。
金髪の男は外した表札を脇に抱え、後ろにいる仲間達の方に振り返る。
「! おい美鈴、泣かないでくれよ」
「ぐすっ……む、無理です」
仲間の1人、短い黒髪で着物姿の女性が涙しているのに気づき、金髪の男は困ったように笑った。
「ぐすっ」
「……おい、そろそろ泣きやめよ美鈴。俺達のボスが決めたことだぞ」
未だ泣き止まない女性、そんな彼女に声をかけたのはもう1人の仲間である茶髪の男性だった。
男性はなだめるつもりだったのだが、癇に障ったのか女性は声を大きくして反論した。
「そんなことわかってるわ! でも! ……寂しくてたまらないのよ」
悲しみが増したのか、さらに肩を震わせて涙を流す女性。
茶髪の男性はやれやれとため息を吐いてその姿を見ている。
「……美鈴」
「! 家康様?」
今度は金髪の男が女性に近づき、片手の指で女性の目に溜まった涙を拭う。その行動に女性は頬を赤く染めた。
「……落ち着いたか?」
「は、はい」
涙が拭われた後、顔の熱が上がったからなのか再び涙が流れることはなく、やがて女性は落ち着いたようだ。
女性を落ち着かせた金髪の男は、再度女性と茶髪の男性に語りかける。
「俺達の組織は今日で解散するが、俺達の関係は永遠に変わらない。これからもお前達は大切な仲間であり、大事な友人なんだ。それは忘れないでくれ」
「……もちろんです。私はこれからもずっと、離れ離れになっても貴方を思っていますわ、家康様」
「分かってる。まぁお前達のことは、忘れたくても忘れられないだろうけどな」
「はははっ、そうかそうか」
2人の返事を聞き、満足そうに頷く金髪の男。
「よし、じゃあ朝利邸に行くか。お前達の引越しをしないとだしな」
「そうだな」
「お、お待ちください家康様!」
『?』
男達はそのまま移動をしようとしたのだが、女性がそれを引き留めた。
「どうした美鈴」
「あの、最後にお願いがあります」
「なんだ?」
金髪の男が聞き返すと、女性は髪につけていた髪飾りを外して手に持った。
髪飾りには、白い花の装飾が付けられている。
「この、7³(アンティ・トゥリニセッテ)の力を試したいのです」
「……力って、これで未来を見るってことか?」
女性に続き、茶髪の男性が懐から銀色の懐中時計を取り出した。
「……未来、か」
金髪の男性は、自身の左手の薬指に輝く指輪を見つめた。
「はい。7³、アンティ・ボンゴレギアの力を使い、3つのアイテムの未来の所有者の姿を見ましょう」
「見て、どうするんだ?」
「決まっているでしょ。私と家康様の絆が、未来永劫であることを確信したいの」
「……俺が入ってないな」
「何を当たり前のことを」
「……」
女性は、茶髪の男性に対しては辛辣なようだ。
「……」
「家康様、ダメでしょうか?」
「……いや、やろう。美鈴の言う通り、俺達の絆を確かめよう」
「あ、ありがとうございますっ!」
「いいだろ? 是清」
「はぁ……まぁお前がそう言うなら」
金髪の男の決定に、女性は目を輝かせて茶髪の男性は仕方ないと頭を掻いた。
「……じゃあ、やるぞ」
「頼む」
カチンとボタンを押して、懐中時計の蓋が開かれる。そして——。
「——Verso il futuro」
茶髪の男性の言葉に反応し、懐中時計の時計盤の中心に光が灯る。そしてその光は広がって、3人を包みこんでいく。
しばらくして光が消えると、3人の姿は煙のように消え去っていた。
—— 東京、某所 ——
—— I 世、家康side ——
「……! ここは?」
懐中時計の光が消えると、俺は見知らぬ部屋に立っていた。
視界が晴れて真っ先に感じたのは、未来を見ている高揚感ではなく違和感だった。
俺の目の前には台座のようなものがあり、そこに1人の少年が寝かされている。
(……容姿が俺と似ているな)
普通に考えればこの少年が未来の指輪の所有者であるはずだが……死んでいるかのようにぴくりとも動かない。
——おかしい。7³の1つであるアンティ・ボンゴレギアの力は、未来の所有者の刻む時間を追体験すること。なのに、いきなり所有者の死体を見せられるなどありえないだろう。これでは追体験する前に終点に着いたことになってしまうではないか。
「……よくおいで下さいました。ボンゴレ I 世」
「っ!」
少年に気を取られていると、部屋の奥の方から白髪の老年の男性が現れた。
「……何者だ?」
「私です、ボンゴレⅨ世です」
「……ボンゴレⅨ世、だと?」
老年の男性は、自らをボンゴレⅨ世だと名乗った。つまり9代目のボンゴレボスだということか。
(デイモンがよく「ボンゴレは未来永劫続くべき最強のマフィアだ」と言っていたが、俺の後に8代も続いているとはな)
……なんて考えている場合ではない。まずは現状を確認しなくては。
「ボンゴレⅨ世とやら。質問してもいいだろうか」
「はい、もちろんですとも」
「助かる。ではまず、なぜ俺の姿が見えている?」
「え、なぜと言われましても……見えるから見えるとしか言いようがありません」
見える理由は分からない、か。
それならもう1つの質問だ。
「ならばもう1つ質問させてくれ」
「はい、なんでしょうか」
「……その台座で寝ている少年は、何者だ?」
「え?」
俺が寝ている少年を指差すと、Ⅸ世は困ったような表情を浮かべた。
「……どうかしたか?」
「いえ、あの……その少年はボンゴレⅩ世ですが」
「ボンゴレⅩ世? つまりこの少年が、あなたの次のボスということか」
「え、ええ……」
「?」
少年のことを聞いてから、Ⅸ世の反応がおかしい。まるで、どうしてそんなことを聞くのか理解できないと言いたげに。
「あの、 I 世。まさかⅩ世のことをお忘れになったりなど、していませんでしょうね?」
「お忘れも何も、この少年と俺は初対面なんだが」
「えっ?」
Ⅸ世はさらに目を大きく見開き、驚愕する。
どうしてそんなに驚いているのか……驚きたいのはこちらの方なのだが。
「まさか……本当に記憶を失って? 一体どうしてそんなことに……」
「……」
ぶつぶつと独りごちるⅨ世。そして無言の俺。お互いに困り果てていると、部屋の外から甲高い笑い声が聞こえてきた。
「ふぉ〜ほっほっ」
「!」
(……何だ?)
笑い声が消えた後、部屋の奥にあった扉が開いた。
そして、確実にⅨ世よりも高齢であろう個性的な格好の老人が杖を突きながら入ってきた。
「タルボじじ様! いつ日本にお着きに?」
「ついさっきじゃ。9代目の小僧よ」
老人が部屋に入るなり、Ⅸ世は慌てて近寄って行った。どうやら顔見知りらしいな。
……というか、さっきⅨ世は老人のことをタルボじじ様と呼ばなかったか?
タルボという名前には覚えがある。イタリアでも日本でも世話になった友人がいるのだが、そいつもタルボと言う名前だった。
(偶然か? いや、それにしてはこの老人の格好は……)
老人は頭頂部に青い逆向きの三角錐のような髪を生やし、目元には黒の布を巻きつけ、独特な柄のマントを羽織っている。
「……その格好は」
「ふぉ〜ほっほっ! 生身のお主を見るのは何百年ぶりかのぉ…… I 世よ」
「っ! やはり、お前はあのタルボなのか!?」
俺のことを I 世と呼んだ。どうやら本当に、この老人は俺の知るタルボだったらしい。
「——ふふっ。かなり老けたな、タルボ」
「そりゃそうじゃ! ワシは長生きじゃからのぉ、お主と違ってなぁ!」
「その軽口……中身は変わっていないようで安心したぞ」
「ふぉっほっほっ。ワシもまたお主と逢えてうれしいぞい」
タルボと笑みを浮かべながら見つめあっていると、Ⅸ世が間に入ってきた。
「タルボじじ様、申し訳ありません。感動の再会に水を刺したくはないのですが……想定外のことが起きているのです」
「ぬ? 想定外じゃと?」
「はい。それが…… I 世が私やⅩ世に関する記憶を失っているようなのです」
……だからそんなことはないぞ。
俺はⅨ世とⅩ世はもちろんだが、Ⅱ世以降の継承者を誰も知らないのだ。
一方タルボは、慌てるⅨ世とは正反対に、落ち着いて答えを返した。
「そりゃそうじゃよ。ここにいる I 世はお前達を知らぬのじゃ」
「なっ!? タルボじじ様まで、こんな非常時に何を言うのです!」
(非常時?)
Ⅸ世の語気から、少し苛立っているのが分かる。しかし、それでもタルボは落ち着いたままだ。
「落ち着け9代目よ。ここにいる I 世は、お前の会ったことのある I 世ではないのじゃ」
「! どういうことですか?」
「簡単なことじゃ。お前が会ったことのあるのは、ボンゴレリングに宿っている I 世の意思。しかし、ここにいる I 世は実際に生きていた頃の I 世そのものなのじゃよ」
「なっ!?」
(……)
俺は7³の力で、未来の所有者の刻む時間を追体験している……と思っていたが、実際は俺という存在が肉体ごと未来の世界に来てしまった……ということか。
(どうしてこんな事が……美鈴と是清も同じような事態に陥っているのか?)
「ぬ? お主まで困惑しているのか、 I 世」
仲間達のことを考えていると、タルボに話しかけられた。
「まあな。この状況は俺にとっても想定外なんだ」
「ほっほっ、アンティ・ボンゴレギアで未来を追体験しようとしたのに、なぜか肉体ごと未来に来てしまったからか?」
「! タルボ、なぜ分かるんだ?」
「そりゃ〜、こいつが教えてくれたからじゃよ」
そう言いつつ、タルボは杖で台座に寝ている少年の右手を指した。
少年の右手には、チェーンで繋がれた2つの指輪が付けられていた。
「この感じ……形は違うが、ボンゴレリングなのか?」
「さすがじゃな I 世。その通り、これは元ボンゴレリングよ」
「元?」
「ああ、今はⅩ世とその守護者専用のシリーズ、ボンゴレギアに変化している」
「Ⅹ世の代専用……ボンゴレギア、か」
そう言いつつ、俺は自分の左手の薬指で輝く指輪——アンティ・ボンゴレギアを見た。
「10代目の小僧が持つ大空のボンゴレギアと、 I 世の持つ大空のアンティ・ボンゴレギアは表裏一体じゃ。7³の一角、大空のボンゴレギアならば、7³の一角、大空のアンティ・ボンゴレギアと意思疎通を図れるのよ」
「……そんな事が」
「そして、お前が過去でアンティ・ボンゴレギアの力を使った瞬間。対となるボンゴレギアがお前の魂を肉体ごとこちらに引っ張ってきたというわけじゃな」
「7³にそんな力があるとは、俺も知らなかったな」
「今は非常事態じゃからな。ボンゴレの危機を察し、ボンゴレギアが奇跡を起こしたのじゃろう」
「奇跡……ね。他のアンティ・ボンゴレギアも、同じような奇跡を起こしているのか?」
もしそうなら、俺と同じように美鈴と是清も未来に肉体ごと来ていることになるからな。一刻も早く合流したい。
——が、残念ながらタルボは首を横に振った。
「いや、未来に来ているのは お主1人じゃろうて」
「じゃあ、あいつらは」
「本来の予定通り。未来の所有者の時間を追体験し、その後は過去に戻っているじゃろう」
「……そうか」
俺がいない状態の過去に戻ったら、2人とも慌てるだろうな。(特に美鈴は)
だが、2人が未来でバラバラに放り出されるよりはマシだと思おう。
7³の奇跡で未来に来た以上、俺にはボンゴレ創始者としてこの時代で果たすべき使命があるはずだ。
(俺は必ず使命を果たして、いつか2人の待つ俺達の生きた時代に戻る。まずはそれを目標にして行動しよう)
色々と思うことはあれど、自分の運命を受け入れて前を向くことにした。
「あ、あの。申し訳ないのですが、7³とは何なのです?」
「ぬ、すまんな。9代目の小僧にはまだ話してなかったのぉ」
話についていけていなかったのだろう、Ⅸ世がタルボに向かって質問をした。
「7³というのは、7³と真逆の性質を持つ存在。いわゆる〝反物質〟というやつじゃ」
「7³とは正反対の性質、ですか」
「うむ。つまり、7³がこの世界を安定させる為の装置なら、7³は世界を崩壊させる装置というわけじゃ」
「なっ! そんな危険なものが? しかも I 世がそれを持っていると!?」
「心配はいらんぞ、7³が全てに死ぬ気の炎が注がれていないと力を発揮できぬように、7³は全てが揃わないと世界を崩壊させる力は発揮できん」
「そ、それと、なぜそれがボンゴレに伝わっていないのです? I 世が持っているのでしょう?」
「うむ。しかしそれはボンゴレを引退した後、日本に渡る直前のことじゃ。ユニの先祖であるセピラが I 世に預けたのじゃよ。もしかしたら、いつかこうなることを予知していたのかもしれんな」
「……」
封印していた7³が全て奪われたりすれば、世界が崩壊してしまう。だからそれを避けるために7³の一角を俺に預けた……か。
(なるほどな。セピラ様らしい)
「……それで、俺が未来に来た理由はなんだ?」
「! そうですね、きちんと説明します」
納得はしていないだろうが、今は本題に入って欲しいとⅨ世を促す。
彼は少し間を置いて落ち着くと、詳しい説明をしてくれた。
「1ヶ月前のことです。謎の組織にボンゴレⅩ世、沢田綱吉君が襲撃を受けました」
「沢田綱吉?」
「そういえば言っとらんかったな。10代目の小僧はお前の直系の子孫じゃ」
「……なるほどな」
容姿が似ているのは、俺の子孫だからだったのか。
納得して頷くと、Ⅸ世は話を続けた。
「もちろん綱吉君も抵抗したのですが、ボンゴレギアの力を持ってしても対抗しきれず……最終的に、彼は謎のエネルギーを浴びて、そのまま動かなくなったのです」
「動かなくなった……つまりまだ死んではいないのだな?」
「はい。呼吸はしていますし、鼓動もあります。意識だけが戻らない状態なんです。ボンゴレの医療チームの見解では、何か『呪い』のようなものを受けていて、それを解かない限り綱吉君は目覚めないだろうと……」
そこまで言うと、Ⅸ世は拳を握り締めてワナワナと震えた。
手の打ちようがなくて悔しいのだろう。
「そこでタルボじじ様に相談を持ちかけたのですが、タルボじじ様が示してくれた解決策が……」
「俺を過去から呼び出すことだったと」
「その通りです」
「10代目と共にいた守護者の話を聞くに、どうも7³と関わりがあるのではないかと思ってな。だからワシは、封印されているはずの7³を見に行ってみたのじゃ」
「……それで?」
話の流れ的に答えは1つしかないのだが、一応確認をしておく。
「綺麗になくなっておったよ。残りの7³全てがな」
「……そんな事が可能なのか? セピラ様が封印していたはずだろう?」
「うむ。しかしな、ここ数年色々と7³関係で色々あった影響で、封印に綻びが生じていたらしい」
「その綻びを突かれた、と」
「そういうことじゃ」
つまり、謎の組織にアンティ・ボンゴレギア以外の7³が奪われ、その力でボンゴレⅩ世が呪いを架けられたということか。
「……それで、俺にその謎の集団を見つけて、7³を取り戻せと?」
「そうじゃ。それには同じ7³を持つ I 世と、ボンゴレギアを持つ10代目の小僧の力が必要なのじゃ」
「しかし、Ⅹ世は呪いで眠り続けているんだろう? まずはⅩ世の呪いを解かないと話にならないんじゃないか」
「うむ。ゆえにお主にはまず、10代目の小僧を襲撃した組織の調査と、この時代にもあるはずの3つのアンティ・ボンゴレギアを探して欲しいのじゃ」
「!」
この時代のアンティ・ボンゴレギア……。
つまり、この俺達の後継者を見つけ出さないといけないわけか。
「……しかし、どこにあるかも分からないアンティ・ボンゴレギアを探すのは難しいな。超直感でも探し出せるかどうか分からないぞ」
「それについては心配ない。ある程度目星を付けている」
「! 本当か?」
「ああ。まず、10代目の小僧が襲われたのは、奴のとある高等学校への入学が決まったすぐ後じゃった」
「高等学校?」
「お主の時代での、高度教育私塾のことじゃよ。で、その高等学校に入学してすぐに襲われたことから考えるに、謎の組織は10代目の小僧をそこに行かせたくなかったのではないかと考えたわけじゃ」
「行かせたくなかった……なるほど、そこに謎の組織にとって不都合なことがあるからだと?」
「そういうことじゃ」
Ⅹ世がその高等学校に行くと、謎の組織にとっては都合が悪い、か。
「タルボ、お前はその高等学校にヒントがあると思っているんだな? 謎の組織についても、アンティ・ボンゴレギアについても」
「ああ。10代目の小僧が行くことで組織が困ることがあるとすれば、その可能性が高いからのぉ」
「……じゃあ俺は、その高等学校に行けばいいわけだな?」
「そうじゃ。幸い、その高等学校の長は9代目の小僧と友人関係にあるそうじゃ。10代目の小僧の代わりにお主を入学させることも問題はないそうじゃ。な、9代目の小僧や」
「ええ。すでに話は通してあります」
「そうか……分かった」
これで決まった。俺は高等学校とやらに行き、謎の組織について調べる。そしてアンティ・ボンゴレギアの後継者を探し、最終的にはⅩ世の呪いを解いて7³を取り返す。
「それで、その高等学校にはいつから行けばいいんだ?」
「1週間後じゃ」
「少し先か」
「いえ、1週間しかありません。 I 世にはこの1週間で出来るだけこの時代について理解して貰わなければなりません」
「む、そうだな。昔と今では大分様変わりしているだろうし。誰かに教示してもらわないと」
「それはご安心ください。私の最も信頼するかてきょー、いえ家庭教師を派遣しますので」
「助かる。では早速……」
そう言って行動に移ろうとしたのだが、まだ解決すべき問題があることを思い出した。
「いや待て。高等学校というのは、成人した者が通ってもいい場所なのか? 高度教育私塾は成人していない若者が通う学び舎だったが」
「いいえ。高等学校は15歳から18歳までの子供が通う学び舎です」
やはりそうか。これはまずいな、俺はすでに成人している。このままでは高等学校に通うことはできないぞ。
「 I 世。そこはタルボじじ様にお考えがあるそうです」
「ん? 何かあるのか、タルボ」
「当然考えておる。お主が過去から持って来てくれたその指輪の力を使うんじゃ」
「!」
アンティ・ボンゴレギアの一つ、『大空の婚約指輪』。
この指輪が持つ力を使うということは——。
「まさかだよな?」
「そのまさかじゃ、大空の婚約指輪から出る『希死念の冷気』、大空の冷気の力を使うんじゃよ」
「……?」
またも怪訝な顔をするⅨ世に、今度は俺が説明することにした。
「死ぬ気の炎エネルギー、つまり体内の生体エネルギーを7³に流し込むと、炎ではなく、希死念の冷気という高密度エネルギーに変換されるんだ」
「希死念?」
「死を覚悟する死ぬ気とは違い、自ら死を望んでいる状態だ」
「! なるほど、死ぬ気とは真逆の境地ということですな」
「そういうことさ」
死ぬ気状態をプラス、普段の状態を0とするなら、希死念状態はマイナス状態になる。
死ぬ気の零地点突破の最大値と言うのが一番しっくりくるだろうが、これは俺の編み出した技だからな。Ⅸ世に言っても理解できないかもしれないし、この説明でいいだろう。
「それで、その希死念の冷気で何をするのです?」
「死ぬ気の炎同様、希死念の冷気にも7つの属性が存在する。そして大空の冷気の力は大空の炎の持つ『調和』の真逆。つまり『混沌』だ」
混沌——つまり、対象となる存在を無秩序で不安定な状態にして崩壊させる力を持つのだ。
「ま、まさかですが、その力で綱吉君と I 世の存在を崩壊させて融合させるとか言わないでしょうな」
「その通りじゃよ。そこまで言い当てるとは、さすがはボンゴレボスの超直感よのぉ」
「お待ちください、危険すぎませんか?」
戸惑いながら、Ⅸ世がタルボに詰め寄る。
「かもしれんが、それしか手はない。この計画には I 世が I 世 の姿で、10代目の小僧と共に高等学校に通うことが必須なのじゃ」
「しかしですなぁ……」
「いいんだ、Ⅸ世。俺はもう受け入れた。Ⅹ世の、そしてボンゴレの為にもやるしかないだろう」
「 I 世……あなたがそう言うのなら」
反対するⅨ世に俺の決意を告げると、渋りながらも引き下がってくれた。
「よし、では早速やってみよう」
「そうじゃな、頼むぞ I 世 よ」
タルボに頷き返し、俺は台座で眠るⅩ世の元に近づいた。そしてタルボとⅨ世には少し離れているように言い、眠る我が子孫の腹に左手を乗せた。
「……ふぅ。——fusione del caos」
薬指の指輪に生体エネルギーを流し込む。すると、指輪からは限りなく白に近い青色の冷気が立ち込め始める。
その冷気は俺とⅩ世を囲むように広がり、やがて収束して俺達だけを包み込む。
俺と言う存在を崩し、Ⅹ世の肉体と繋げる。そして、俺とⅩ世という別々の存在が無秩序に混ざり合い——やがて、1つの存在へと変貌を遂げる。
「……成功だな」
「! 何と……」
「ほーっほっほっ!」
再び視界が開けた時、俺は台座の上に寝かされていた。どうやら無事に成功したらしい。
とりあえず体を起こし、タルボ達に確認する。
「どうなっている? 違和感なく融合できたか?」
「は、はい。 I 世が綱吉君くらいの年に若返っている感じです」
「自分でも見てみるといい、ほれ」
俺はタルボがマントから取り出した鏡を受け取り、自分の姿を確認する。
そこには、確かに昔の俺の姿が写っていた。
(……自警団からボンゴレファミリーに名前を変えた頃くらいの姿だな。これなら問題なさそうだ)
なんとか無事にⅩ世と融合することができたらしい。自分の中にもう1人の人間が存在していることも感じられるようだ。
「よかった。ちゃんと俺の中でⅩ世は生きているようだ、安心した」
「ほっ……そうでしたか、私も安心しましたぞ」
安堵して胸を撫で下ろすⅨ世。
「ふお〜っほっほっ。これで準備は整ったのぉ。後は1週間しっかり準備して、入学に備えるのみじゃ」
「そうだな」
「ええ。この後は私にお任せください」
「頼むぞ9代目の小僧。……はて、そういえばこれから I 世が通う高等学校は、何と言う名前だったかの?」
「——高度育成高等学校です」
読んでいただきありがとうございます♪
感想お待ちしてます!
次回から原作一巻の内容に入ります。