ようこそ I 世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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第1話  大空と謳われた男、高校に入学する

 

 —— 春、入学式当日 ——

 

 

「……いよいよ、今日から入学か」

「ああ。覚えてもらいたいことは全て伝えた、学校生活を送るのに支障はないはずだぞ」

 

 今俺と会話しているのは、アルコバレーノのリボーン。Ⅸ世が最も信頼するヒットマンであり、Ⅹ世の家庭教師でもあるらしい。

 

 実際その手腕は確かなもので、俺がすんなりと理解できるような教育を施してくれた。

 

「指導者が優れていたからな。お前が家庭教師を務めるⅩ世は幸せ者だ」

「その言葉、中にいるダメツナによーく言い聞かせてくれ。あと、呪いを解かれる時までものんびりせずに、中から I 世を見てボスとしての資質を学べってな」

「心配ない、おそらく俺の周囲の音は中のⅩ世にも届いている」

 

 本当はそんな気がするだけだが、超直感で感じたのなら間違いないとは思う。

 

「それよりリボーン、俺の事は I 世じゃなくジョット、もしくは家康と呼べと言ったはずだぞ」

「そうだったな。……ならジョット。これから俺達は学校に向かうわけだが、その前に最終確認しておくぞ」

 

 有能なリボーンの提案で、学校に向かう前の最終確認を行うことになった。

 

「まず、 ジョットにはイタリアから帰化したばかりの15歳の少年、〝沢田家康〟として『高度育成高等学校』に入学してもらう」

「ああ」

 

 名前はともかく、俺の見た目は完全なイタリア人だ。完全な日本人と言い切るのは無理だということで、イタリアから帰化したという設定にすることにした。

 

 ……まぁ設定というか本当のことなのだが。

 

 イタリアから来たとなると、謎の組織にボンゴレ関係だと怪しまれる可能性もあるが……ボロを出させるためにも少しは怪しまれるべきという意見でまとまった。

 

「入学後、ジョットには生徒として過ごしつつ、ツナを襲った組織やこの時代の7³の在り処についての調査を進めてもらう。そして、なるべく早くツナの呪いを解いてほしい」

「奪われた7³を取り戻すのに、俺とⅩ世の両方の存在が必要だからだな」

「ああ。ジョットが過去から持ってきたアンティ・ボンゴレギアと、ツナの持つボンゴレギア。そしてこの時代のアンティ・ボンゴレギアの力が必要なんだ」

 

 俺、そして美鈴と是清の持つ7³は、この時代の東京のどこかにある。それは是清の『左翼の懐中時計』の力が発動したことからも間違いない。

 

 組織については、Ⅹ世が高度育成高等学校への入学を決めてすぐに襲撃されたことから、高度育成高等学校に行けば手がかりが掴めるのではないかという推測でしかない。だが、その可能性は高いと俺も思う。

 

 ……待てよ? いつからリボーンは組織と言うようになった? この前までは謎の組織と言っていたはずだが。

 

「……確認すべきことは以上だな」

「待て。今お前は、謎の組織のことを『組織』と言ったよな。もしかして何か分かったのか?」

「ありり、伝えてなかったっけぇ〜?」

 

 首を傾げながらふざけた言い方をするリボーン。

 ……なぜ誤魔化そうとするのか。

 

「……」

「……」

 

 俺が真顔で見つめていると、リボーンは観念したのか話し始めた。

 

「ふぅ、別に隠したわけじゃない。学校に入ってから話そうとしただけだ」

「……そうか。それで? 何が分かったんだ?」

「組織について分かったのは、残念ながら名前と簡単な情報だけだ」

 

 名前と簡単な情報か……それだけでも十分な進歩だろう。

 それにしても、とても迅速な情報収集だ。まるでアラウディのような——そうか、この時代のCEDEFが調査してくれたのかもしれないな。

 

「組織の名は——ブラックルーム」

「ブラックルーム?」

「最近できたばかりで、人間兵器を育てるための教育機関だそうだ」

「……きな臭い。裏社会が大元の組織としか思えんな」

「ああ。まだ調査中だが、裏社会の組織が母体で間違い無いだろう」

「わかった。ブラックルームだな。その名前についても調査してみよう」

 

 今度こそ最終確認が終わり、俺とリボーンは高度育成高等学校へと向かうこととなった。

 

「おいジョット。そっちはバス亭だぞ」

「分かってるぞ」

「バスに乗らずとも、ボンゴレが学校までハイヤーを回してくれることになってる」

 

 学校に行くのにハイヤーとは……Ⅸ世が要らぬ気を回したな?

 

「そうか、悪いが俺はバスで行く」

「何でだよ」

「乗ってみたいからだ」

「……子供かよ」

「ああ。今は15歳の子供だ」

 

 そういうわけでⅨ世には悪いが、俺はバスで学校に向かうことにする。

 

「ん? おいリボーン。バス停はこっちだぞ」

「俺はハイヤーで行く。んじゃな〜」

 

 ……一緒に行かないのか。

 

 

 

 

 —— バス、車内 ——

 

 

「すみませんねぇ」

「いいえ。ゆっくりでいいですよ」

 

 何個目かのバス停。そこで杖を突いた恒例の御婦人が乗車してきた。

 

 運転手はご婦人がきちんと乗車したのを確認してから、ドアを閉めている。

 

 うむ、素晴らしい心遣いだ。

 

 

 ——プシュー、バタン。

 

 ドアが閉まり、バスが再び走り出す。

 

『次は〜、高度育成高等学校〜』

(もう着くのか、もう少し乗っていたかったのだが)

 

 走り出してすぐ、次の停車先を告げるアナウンスが流れた。

 

 次が目的地のため、俺はカバンを持ち直してすぐにでも降りれるように準備することにした。

 

「……ん?」

 

 準備を終えて視線を前に向けると、先ほど上下ご婦人が座る席がなくて困っているようだ。ご婦人以外にも、俺と同じ学校の制服を身につけた女の子が席が無くて立ったままの移動となってしまっている。

 

『……』

「……」

 

 見えているだろうに、近くの席座る者達は席を譲ろうとしない。女の子はともかく、御婦人には席を譲るべきだろうに。

 

『……』

「……仕方ないか」

 

 俺の席はかなり後ろの方なので移動をしてもらわないといけないが、誰も譲らないのなら俺が譲ろう。

 

 そう決めた俺は席を立ち、前方にいるご婦人と女の子の元に近寄った。

 

「……すみません、マダム」

「えっ? ま、マダムって……まさか私ですか?」

 

 俺の呼びかけに、ご婦人はまさか自分ではないだろうという風な反応を示した。

 

「はい。あなたですよマダム。奥の方にはなりますが、どうぞ私の席にお座りください。私はもう次で降りますので」

「っ! 本当ですか? わざわざありがとうございます」

 

 ご婦人はペコペコと何度も頭を下げてきた。

 

「お気になさらず。さぁ、運転中の移動は危ないので私におつかまりください」

「まぁ、本当にお優しいのねぇ〜」

 

 俺は自分の手でご婦人の手を取り、倒れたりしないように自分が座っていた席へと連れて行った。

 

 再度ペコペコと頭を下げるご婦人に挨拶し、俺はご婦人が立っていた場所へと戻る。

 

『……』

(……視線が刺さるな)

 

 席の間の通路を歩く中、乗客達の視線が刺さった。

 全く、なぜそんなに見てくるのか。

 

 そのまま視線を無視して歩き続けていたのだが、とある席で俺の足は止まった。

 

「っ!」

 

 足が止まった理由は、俺を挟んで隣合う座席に、見知った人間と瓜二つな顔が揃っていたからだ。

 

「……」

 

 チラッと見ただけだから、もう一度よく見ようと思ったのだが、いきなりジロジロ見ては不審に思われるだろうと考えてやめた。

 

(……まぁ、また後で会えるだろう)

 

 再び歩き始め、俺は御婦人がいた場所へと進んだ。

 そして、すぐ横に立っていた同じ制服の女の子に声をかけた。

 

「……あの、すまない」

「えっ? どうして謝るの?」

 

 急に声をかけたせいで、またも驚かせてしまった。

 

「君も立っているのに、あの御婦人にしか席を譲れなかった」

「御婦人? ……あははっ♪ 君って珍しい言い回しをするんだねっ」 

 

 そう言って女の子は笑った。

 

 珍しい言い回し? 日本では御婦人とは言わないのか……あとでリボーンに確認しよう。

 

「それに気にしなくていいよ、私も次のバス停で降りるからね」

 

 赤いブレザーをポンポンと叩き、自分も同じ学校に入学するのだと示してくれた。

 

「それに、君がやらなかったら、私がその辺の元気そうな人に席を替わるように言ってたよ」

「それならよかった。君も俺と同じ新入生……でいいのかな?」

「うんっ! あ、私の名前は櫛田桔梗」

「俺は沢田家康だ」

「あれ、日本名? 勝手にヨーロッパの人かと思ってたよ」

 

 意外だったらしく、櫛田桔梗は目を丸くして驚いた。

 

「つい先日イタリアから帰化したばかりだ。名前も帰化してから付けた日本人としての名前で、君の予想通りで元はイタリア人だ」

「あ、やっぱり? ねね、帰化する前のファーストネームって聞いてもいい?」

「……ジョットだ」

「……へぇ! かっこいい名前だねっ♪」

 

 にこやかに笑う櫛田桔梗。だが……その心のうちに何か暗いもの感じた。

 

(俺のファーストネームを知りたがるとは……何か意味が? ……いや、流石にそう考えるのは早計すぎるか)

 

 俺は彼女を疑うのをひとまずやめ、未来での初めての友人との会話をしばらく楽しむことにした。

 

 それから程なくして目的地に着くと、俺と櫛田桔梗はバスを降りる。

 

 バス停の先には天然石で作られた門が待ち構えていた。

 

「……重厚な門だな」

「東京都高度育成高等学校。日本政府が作り上げた、未来を支えていく若者を育成する、それを目的とした学校。つまりは国営だからね〜。お金を掛けまくってるんだろうね」

「なるほどな……じゃあ、行くとしようか」

「うんっ、ジョット♪」

「……桔梗、今の俺は家康だ」

「え〜、ジョットの方がカッコいいもん」

 

 距離の詰めかたが早い。

 桔梗にも海外の血が流れてるんじゃないか?

 

「もうお好きにどうぞ」 

「はーい、お好きにしまーす♪」

「じゃ、今度こそ行こう」

「待ちなさい」

「!」

 

 桔梗と共に門を潜ろうしたその瞬間。真後ろから呼び止められてしまった。

 

 真後ろには、俺達同様にさっきのバスに乗っていた男女が立っていた。

 そして、2人は俺の足を止めた人物でもある。

 

「っ! ごめんねジョット。私お手洗いに行ってくるから」

「え? あ、ああ……」

 

 女の子の方を見た途端、桔梗は慌てて手を洗いに行った。

 手汗でもかいたのだろうか。

 

『……』

「俺に何か用か?」

 

 そして、残された俺に対し、目の前の2人が口を開く。

 

「ねぇ、さっき私の方を見ていたけれど、何?」

「…… 俺のことも見ていたよな」 

「すまない。君達にそっくりな知人がいるものでな。驚いて思わず見てしまったんだ」

 

 本当に驚いたんだ。まるで生まれ変わりなんじゃないかと思う程に瓜二つだった。

 ——美鈴と是清に。

 

 

「……そう」

「……」

 

 2人とも一応は納得してくれたようだったが、女の子の方にはまだ気になっていることがあるようだ。

 

「……ねぇ、あなたはどうして、あのご老人に席を譲ったの?」

「? もちろん、あの御婦人が座る席を探していたからだが」

 

 なんだ、気になっているのはそこか。

 

「にしてもよ。どうして奥の席だったあなたが譲るのよ。逆に歩かせてしまうとは考えなかったの?」

「考えたさ。その結果、それでも席を譲るべきだと思った」

「……なるほど、つまり自己満足なのね」

「そうだな」

「えっ?」

 

 自己満足だと認めたのに、意外そうな表情になる女の子。

 

「なぜそんな顔をする」

「い、いえ。てっきり否定するものと思っていたから」

「否定はしない。俺がやりたくてやってることだからな」

「……」

 

 と、ここで是清に似た男子も会話に加わってきた。

 

「ま、確かにな。こいつより近い席にいたのに、譲ろうともしなかった俺達よりはマシだろ」

「確かに私は譲る気なんてなかったわ。それがなんだと言うの?」

「いや、ただ同じだと思っただけさ。俺も席を譲るつもりはなかった。事なかれ主義としては、ああいうことに関わって目立ちたくない」

「事なかれ主義? 私を貴方と同じ扱いにしないで。私はご老人に席を譲ることに意味を感じなかったから譲らなかっただけよ」

「……それ、事なかれ主義よりひどいんじゃないか?」

 

 確かに……口には出さないが。

 

「そうかしら。自分の信念を持って行動しているに過ぎないわ。貴方のようにただ面倒事を嫌うだけの人種とは違う。どちらかと言えば私はそこの彼と同じ人種ね。でも、願わくばあなた達のような人とは関わらずに過ごしたいものだわ」

「……それは同感だな」

 

 言いたい放題だな……。

 

 会話が終わると、2人は互いにわざとため息をついて同じ方角へと歩き出した。

 

 その背中を見送りながら……俺は思わず笑ってしまった。

 

「フフッ、出会った頃のあいつらそのままだな」

 

 

 

 —— 入学式後、1年Dクラス ——

 

「ジョット、さっきはごめんね」

「いいよ桔梗、気にしてないさ」

 

 入学式が終わった後、俺は桔梗と共に自分達の教室へと向かっていた。

 

「一緒のクラスになれて嬉しいよ♪」

「そうだな。俺も嬉しいよ」

 

 ついさっき会ったばかりとは思えないこの距離の縮まりかた。やはり桔梗にも海外の血が流れているに違いない。

 

(……いや、それだけじゃないな)

「ん? どうしたの?」

「いや、何でもないよ」

 

 桔梗と瓜二つな女性がいたことを思い出した。

 そういえば彼女も距離の縮め方が以上に早かったな。

 

 まぁだからといって桔梗が彼女の子孫とは限らないがな。

 

「あ、ここがDクラスみたいだよ」

 

 そう言って桔梗が指差した先には、1-Dと書かれた看板があった。

 教室内から騒ぐ声が聞こえてくる。

 

「盛り上がっているな」

 

 ——ガラララっ。

 

 しかし、教室のドアを開いて中に入るとさっきまで騒がしさがピタッと止んだ。

 

「……なんだ?」

「みんな急に静かになっちゃったね」

 

 ——かと思えば、突然俺の周りには女子が、桔梗の周りには男子が押し寄せてきた。

 

「えーっ!? すごい綺麗な金髪!」

「瞳の色も金色じゃん!」

「ねぇねぇ、もしかしてハーフ!?」

「いや。今は帰化しているけど、元はイタリア人なんだ」

 

「き、君ちょー可愛いね!」

「おっふ!」

「ねぇ、俺とおしゃべりしようよ!」

「あはっ♪ そんなに一気に言われても困るな〜なんて」

 

 結局、俺達はクラスメイト達に囲まれて、しばらくの間は教室に入ることができなかった。

 

 

 




読んでいただきありがとうございました♪
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