床が絨毯などではなく液体を拭いやすいタイルで敷き詰められていたのはこれが予期されていたからだろう。実際この夥しい量の血液を掃除するのに床が絨毯では途轍もなく面倒な事になっていたに違いない。だがそれでも固まった血液はなかなか取れないもので、モップをひたすらに擦る昼間は額に汗を浮かべていた。
「まーこんなもんですかね。いやー疲れた。」
隣で白いスーツを着てバケツリレーのアンカーを務めていた男(?)雪村真が馴れ馴れしく昼間に声をかける。誰だよてめえはと口の中だけで零し無視するが肩に手を置かれて ねえ?とさらに馴れ馴れしく、馴れ馴れ馴れ馴れしく同意を求められる。
「誰だてめえは。」
「うわーガラ悪いなぁ。せっかく仲間が増えるってことで歓迎してるのに。」
口の中に零した言葉が口を開けたことで外へと零れ出る。その言葉を気にも留めていないのか雪村はなおも親し気に話しかけた。
手を払いつつ 仲間?と問い返すと同時に別の業務で席を外していた伊藤吉兆が部屋に入ってくる。
「そいつはまだ正式に特四伊藤班に入っていない。バイトから引き抜きはしたが特四に入るかは昼間次第だ。」
伊藤吉兆はゲームで使われた机を顎で示し昼間に着席するよう促す。対面に伊藤吉兆も座り卓上に契約書を敷いた。そこには特課・異動契約書と記されている。
「部外者のお前にわざわざ4リンクの試合を見せたのはお前の意思を固めさせるためだ。入社してから『こんな業務は聞いていない』と喚かれても面倒かつ"雇用権"の無駄遣いだからな。」
「お前はどうする。」
「…。」
昼間唯は高卒のフリーターだ。頭の出来は良くないが後に「交渉人」と呼ばれるその能力に付随して地頭が他人より優れていた為に昼間はなんの努力も才能もなく並み以上に物事をこなし苦労を避け娯楽に漬かっていた。友人も多く所属しているグループの中でも比較的地位も高い。彼が金を貸してくれともし頼めば八割がたの友人が貸してくれる程友人との仲も良好である。
つまるところ昼間は満たされていた。自分の人生に満足していたのだ。
しかしそんな昼間に圧倒的に足りないものが熱意だった。なんの努力もしたことが無い人生とはなんの熱意も抱けなかった人生だ。人生に何度も訪れる人が全力の努力を向けられる対象。読書、競馬、ゲーム、勉学、モノづくり、料理などそれは時、環境、人によって様々だが昼間は自身の人生でただ一つもそんな対象を得られなかった。
だが。
あの瞳が。
表情が。
造形が。
肢体が。血液が。衣装が。口調が。
一度意識してしまえばその全てが美しく見える。血に濡れて、痛みで動けなくともおかしくない程の裂傷のはずなのに汗と共に浮かべた蠱惑的なあの笑み。
今でも目を閉じればその情景が瞳の裏に現れる。昼間は古明地さとりが欲しくてたまらなかった。これが恋かと昼間は考えているが正確には少し異なる。昼間がその生で初めて得た努力できる熱意だった。
「お願いします、ボス。」
画して昼間唯の入社は決まる。
原作の昼間は何故バイトを止め危険極まる特四に入社したんでしょうね。やっぱ金?
次のゲームの罰ゲームは?
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火
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水
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風
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毒
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圧
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刺し
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出血
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温度
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空気
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折り
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飯
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色
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爆発
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絞め
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閉め