目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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彼らの企み

ーダングレスト 街中

 

 ユーリと合流した、エステル、カロル、レナ。三人の慌てた様子にユーリは何かあったのだと察した。カロルが何があったのかを説明していく。ユーリはドンの狙い通りか……と呟く。ユーリ達はリタ達の元へと駆け出して行った。

 物陰に隠れているリタとラピードを見つけて、カロルが駆け寄る。リタ……!とカロルが呼べば、リタはカロルの声の大きさに顔を顰めて、しっと人差し指を口に当て静かにしろとジェスチャーする。リタの見ていた視線の方へと目を向ければ、確かにそこに紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)の男たちが居た。

ユーリ「……ありゃ、ちょっと無理矢理押入るってやけにゃいかなそうだな」

エステル「でも、あの中にバルボスがいるとしたら……」

ユーリ「指くわえてみてるってわけにもいかねぇよな」

レナ「どうする?」

不意にうしろから声が聞こえた。

レイヴン「いーこと教えてあげよう」

リタは腰に手を当て、うわ……という顔をした。

リタ「……また、あんたか」

ユーリ「おいおい、いいのか、あっち行かなくて」

レイヴン「よかないけど、青年たちが下手打たないようにちゃんとみとけってドンがさ。ゆっくり酒場にでも行って俺様のお話聞かない?」

ユーリに近づきながら、レイヴンは悠々とした態度で誘った。

エステル「わたしたちにはそんなゆっくりしてる暇は……」

レイヴン「いいから、いいから、騙されたと思って」

リタ「そんなこと言われて、騙される奴がいると思って……!」

イラつきながら早口で言った。

ユーリ「二度騙されるのも三度騙されるのも一緒だ。でも、仏の顔も三度までって言葉、おっさんも知ってるよな」

ユーリはリタを宥めつつ、次はないと忠告する。

レイヴン「そんな怖い顔しなくても、わかってますって。ほら青年、笑って笑って。こっちよ」

いつものおちゃらけた調子だが声が上ずっていた。

 

 レイヴンについて行き、ユーリ達は酒場へ行った。中に入ると、ギルドの人達で賑わっている。白い鎧を纏った人にレイヴンがちょい通してもらうよと一声かけ小部屋に入っていく、ユーリ達もその後に続いた。訝しげに、なんだここは?とユーリがレイヴンに問う。

レイヴン「ドンが偉い客迎えて、お酒飲みながら秘密のお話するところよ」

ユーリ「ここで大人しく飲んでろっていうのか」

レイヴン「おたくのお友達が本物の書状持って戻ってくれば、とりあえず事は丸く収まるのよね」

上を見上げてなにか考える仕草をしている。

ユーリ「悪ぃけど、フレンひとりにいい格好させとくわけにゃいかないんでね」

エステル「わたしたち、この騒ぎの犯人を突き止めなければならないんです!もしバルボスが……」

レイヴン「まあまあ、急いでは事を仕損じる♪」

茶化しながら、落ち着くようにエステルに言う。

掛け軸がかかった壁の傍にレイヴンが立つ。レイヴンの横をよく見ると壁にドアの取っ手が付いていた。ユーリがレイヴンに近づき、これは?と聞く。

レイヴン「この街の地下には複雑に地下水道が張り巡らされてる。その昔、街が帝国に占領された時、ギルドはこの地下水道に潜伏して、反撃の機会をうかがったんだと」

カロルがレイヴンにちょっと近づく。

カロル「まさか……ここが……その地下水道につながってる……とか言わないよね」

ちょっと怯えたような感じで、否定してほしそうにレイヴンを見た。

レイヴン「そのまさかよ。で、ここからこっそりと連中の足元に忍び込めるって寸法なわけよ」

カロルの言葉を肯定し、作戦を伝えた。

ユーリ「ちゃちゃっと忍び込んで奴らをふん捕まえる。回り道だか、それが確実ってことか」

レイヴン「そういうこと。信じてよかったでしょ?」

ユーリ「まだよかったかどうかは行ってみないとわかんねぇな」

レイヴン「やっぱりおっさんは信用ならない?」

ユーリ「当然、おっさんもつき合ってくれんだろ?」

レイヴン「あっらー?おっさん、このまま、バックれる気満々だったのに」

嘘でしょと嫌そうな顔をした。

ユーリ「おっさんにもいいかっこうさせてやるってんだよ、ほら行くぜ」

レイヴンはガックリと肩を落とし、ドアを開けて地下水道に入っていく。みんなもその後に続いた。

 

―ダングレスト 地下水道

 

 ドアを開けて入ると、中はあかりひとつもなく真っ暗だった。

エステル「うわぁ……真っ暗です……」

発せられた声が少し反響する。

ユーリ「迷子になって永遠に出られねぇってのは勘弁だぜ」

レイヴン「ほら、天才魔導士のお嬢ちゃんよ、ここは一つ、火の魔術でバーンと先を照らしてくれんかね」

リタ「あたしをランプ代わりにしようっての?いい根性してるわね」

すこしイラついた声だ。

エステル「リタ、なんとかなりませんか?」

その声にリタはうーんと考えるが、無理と答えた。火の魔術は攻撃用だからと理由も添えて。

リタ「照明みたいに持続させるには常時エアルが供給されないと、光照魔導器(ルクスブラスティア)みたいにね」

レイヴンがありゃ……そうなの?と困ったように呟いた。

ユーリ「当てが外れたみたいだな、おっさん」

 不意にラピードが何かを知らせるようにひと鳴きする。

リタの手元にラピードがくわえたなにかを押し付けた。受け取ったリタは暗闇の中でそれが何なのかを調べる。どうやら、魔導器(ブラスティア)らしい。だいぶいたみが出ているが、何とか使えそうとリタが呟いた。リタは魔導器(ブラスティア)にエアルを注ぎ込んだ。魔導器(ブラスティア)が起動し、リタの顔をが照らし出される。辺りがある程度確認できるほど明るくなった。

レナ「明るくなった……」

カロル「わ、ちょっと爆発したりしない?大丈夫!?」

突然明るくなったそれにカロルはちょっと怯えている。

リタ「する訳ないでしょ。これ光照魔導器(ルクスブラスティア)の一種よ。あの充填器でエアルを補充して光る仕組みね」

エステルがさすがです、リタ!と嬉しそうに褒めた。

リタ「でもかなりガタがきてるみたいだから、多分、長持ちしないと思うわ」

ユーリ「じゃあ、こいつが光ってるうちにとっとと行こうぜ」

 レイヴンの道案内で一同は地下水道を歩いていく、カロルが立ち止まって柵から下を見下ろす、すると魔物が彷徨いており、カロルは思わずま、魔物……!と驚いた。

エステル「……襲って……来ませんね」

レナ(灯りがあるから……かな)

ユーリ「無理にことを構える必要はねぇ」

チカチカと光照魔導器(ルクスブラスティア)が点滅し、徐々に暗くなっていく。

エステル「あ……灯りが……」

リタ「消える前にまたエアルを補填しないと」

 その時、魔物がユーリ達に襲いかかってきた。みな一斉に武器を構える。ほぼ暗闇同然の戦闘はかなり苦戦した。視界を奪われるとこうもやりにくいとは。周りを巻き込みやすい魔術なんて使えたものじゃない。広範囲の魔術の方が得意なレナは補助にまわることにした。レナは、皆にバリアーをかけ、続けてシャープネスをかけて攻撃力を高めた。戦闘が終わると、皆武器をおさめてホッとした。

カロル「……びっくりした……油断させておいて、攻撃してくるなんて……」

リタ「魔物にそんな知恵、あるわけないでしょ」

レナ「灯りがあったから近づけなかった……って感じかな」

エステル「そうですね、光が苦手なんじゃないでしょうか」

ユーリ「そんなのがいるのか?」

エステル「洞窟や海底といった暗い場所に棲息する生物の中には光に対する耐性がなくなり、強い刺激として避けるものがいる、です」

本に書いてあった知識を、彼女は説明する。

カロル「そっか……だから、明るい時は襲ってこないんだね」

説明に納得したカロルが、あっと声を上げて充填器を見つけた。ユーリ達は充填器に近づいて、光照魔導器(ルクスブラスティア)を近づける。魔導器(ブラスティア)はエアルを吸い上げて灯りを強めた。

ユーリ「ようは消えないように注意して、充填しながら進めってことだな」

ユーリの言葉に返事をするようにラピードはワン!と吠えた。

 

 さらに奥に進んだ時、灯りに照らされた壁に何かが刻まれていることにユーリが気づいた。どうやら文字が刻まれているらしく、エステルが読み上げていく。

エステル「……かつて我らの父祖は民を護る務めを忘れし国を捨て、自ら真の自由の護り手となった。それ即ちギルドの起こりである。しかし今や圧政者の鉄の鎖は再び我らの首に届くに至った。我らが父祖の誓いを忘れ、利を巡りお互いの争いに明け暮れたからである。ゆえに我らは今一度ギルドの本義に立ち戻り持てる力をひとつにせん。我らの剣は自由のため。我らの盾は友のため。我らの命は皆のため。ここに古き誓いを新たにす」

読み終わったエステルにカロルが近づく。

カロル「ねぇ……これって『ユニオン誓約』じゃない?」

リタがカロルに近づいて、何よそれ?と質問する。その横をレイヴンが壁に近づくためにすり抜けた。

カロル「ドンがユニオンを結成した時に作られた、ユニオンの標語みたいなもんだよ」

レイヴン「自分たちのことは帝国に頼らないで自分たちで守る。そのためにはしっかりと結束し、お互いにためなら命もかけよう、みたいなことね」

エステルが読んだそれを、レイヴンが要約し分かりやすく説明する。

カロル「でも、なんでこんなところに、誓約が書かれてるの?」

レイヴン「ユニオンってのは帝国がこの街に占領した時に抵抗したギルド勢力が元になってんのよ。それまでギルドってのはてんでバラバラ好き勝手やってて、問題が生じた時だけ団結してた。でことが済めばまたバラバラ。帝国に占領されて、ようやくそれじゃまずいって悟った訳ね」

カロルの疑問にレイヴンは答える。

カロル「そのギルド勢力を率いたのがドン・ホワイトホースなんだ!?」目を輝かせている。

レイヴン「そそ。そん時、この地下水道も大いに役に立ったはずよ」

カロル「じゃあ、その時ここで結成の違いを立てたってことなんだね」

レイヴンは肯定する。

レイヴン「確かに誓約書の実物がどこかにあるって話だっけど、こんな壁の落書きだったとはね」

レイヴンはどこか残念そうだという言い方だが、さらに壁寄ったエステルはなんだか素敵ですねと言った。なにかに気づいたエステルは少し屈む。

エステル「ここ……アイフリードって書いてあります」

ユーリ「ああ、あの大悪党って噂の海賊王か」

レイヴン「ドンが言うには一応、盟友だったそうよ。でも、頭の回る食えない人物で、あのドンですら相手にするのに苦労したってさ」

ユーリ「それでも盟友とか言うあたり大した器のじいさんだな、ドンってのは」

カロル「……我らの命は皆のため……か……」

ボソリと胸に刻むようにカロルは口にした。

レナ(今まで気づかなかったけど、私、なんでここの世界の言葉理解できるんだろう。文字の形とか別物なのに……)

少女は少し考え込む仕草をした。

ユーリ「面白いもんが見れたが、今はバルボスだ。そろそろ行こうぜ」

先に進むようにユーリはエステル達を促した。

 

 レイヴンの道案内で、奥に進み目的地のドアを開ける。ドアを開けた先はどこかの酒場のようだった。ユーリがここは……と呟くと、レイヴンが答える。

レイヴン「バルボスがアジトに使ってる街の東の酒場、つまりおたくらが忍び込もうとしてた場所よ」

カロル「じゃあ、このどこかにバルボスが……?」

ユーリは周囲を見渡し、階段を見つける。上がってみるか……と呟きユーリ達は階段を上がっていった。

 階段を上がって直ぐのドアの前から、男の老人の怒鳴り声が聞こえた。皆、耳をすませる。

ラゴウ「バルボス!これはどういうことです!」

怒鳴り声の主は、どうやらラゴウみたいだ。

バルボス「何を言っているのか、ワシにはさっぱりだな」白を切る態度に、ラゴウはさらに声を張る。

ラゴウ「例の塔と魔導器(ブラスティア)のことです!私は報告を受けていませんよ!」

バルボス「なぜ、そんなことを報告しなきゃならない?」

ラゴウ「な、なんですと!?雇い主に黙ってあんな要塞まがいの塔を……それに海凶(リヴァイアサン)の爪まで勝手に使って!」

依然としたバルボスの態度に、ラゴウは両の手を震わせ憤慨する。

バルボス「ワシは飼い犬になったつもりはない。ただおまえの要望通り、魔核(コア)を集めたのだ。そのおかげであの天候を操る魔導器(ブラスティア)を作れたんだろう」

バカにしたようにニヤリと笑いながらラゴウに告げる。

ラゴウ「誰が余った魔核(コア)を持っていっていいと言いました!?」

バルボス「お互い不可侵が協力の条件だったはずだかな」

ラゴウ「な、なにを……!」

バルボス「ワシが貴様のやることに口出しをしたか?」

ラゴウ「……バルボス、貴様!」

バルボス「執政官様がお帰りだ」

バルボスは部下に合図する。

ラゴウ「覚えておきなさい!貴様のような腹黒い男はいつか痛い目を見ますよ!」

バルボス「貴様がな」

 ラピードが唸り声をあげ、ユーリ達はバルボス達の前に飛び出した。

ユーリ「悪党が揃って特等席を独占か?いいご身分だな」

バルボス「そのとっておきの舞台を邪魔するバカはどこのどいつだ?」

そう言ってバルボスはこちらに視線を向けた。

バルボス「ほう、船であった小僧どもか」

エステル「この一連の騒動は、あなた方の仕業だったんですね」彼女は前に進み出ながら、バルボスを指さした。

バルボス「それがどうした。所詮貴様らにワシを捕らえることはできまい」

リタ「はあ、どういう理屈よ」

ユーリ「悪人ってのは負けることは考えてねぇってことだな」

カロル「なら、ユーリもやっぱり悪人だ」

ユーリ「おう、極悪人だ」

レナはふふっと三日月のように口角を上げた。

レイヴン「やれやれ、造反確定か。面倒なことしてくれちゃって」顔を背けて呟く。

バルボス「ガキが吠えおって」

そう言いながら、視線はユーリ達から外れ外の方へと向ける。

 それが合図と言わんばかりに、バルボスの部下達が剣を構えてユーリ達を囲んだ。ユーリ達は武器を手に取る。

バルボス「手向かうか?前にも言ったはずだ。次は容赦しないと」

ユーリ「その方が暴れがいあるってもんだ」

バルボスの威嚇に、軽口を叩くユーリ。バルボスは部下にとっとと始末しろ!と怒鳴った。リタが詠唱に入ろうとしたその時、外から大きな音が鳴った。バルボスは、バカどもめ、動いたか!と言って椅子から立ち上がる。

バルボス「これで邪魔なドンも騎士団もぼろぼろに成り果てるぞ!」含み笑いをした。

カロル「まさか、ユニオンを壊して、ドンを消すために……!」

エステル「騎士団がぼろぼろになったら、誰が帝国を守るんです?ラゴウ、どうして……あっ」

悲痛な声で呟く彼女は彼らの意図に気づく。

リタ「なるほど、騎士団の弱体化に乗じて、評議会が帝国を支配するってカラクリね」

レイヴン「で、紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)天を射る矢(アルトスク)を抑えてユニオンに君臨する、と」

2人が推察し、それを聞いたエステルは、なんてこと……と囁く。

ユーリ「騎士団とユニオンの共倒れか。フレンの言ってた通りだ」

バルボス「ふっ、今更知ってどうなる?どうあがいたところで、この戦いは止まらない!」

男は勝ち誇ったように笑う。

ユーリ/レナ「それはどうかな/それはどうかしら」

フレンと会話したユーリ、先を知っているレナ、この2人だけが落ち着き払っていた。

バルボス「そして、おまえたちの命もここで終わりだ」

バルボスはユーリ立ちに振り向きそう告げる。ふとエステルはなにかに気づいたように窓に駆け寄った。ったく、遅刻だぜとユーリがニヤリとしながら呟く。遠方の方から馬にまたがったフレンが草原を駈ける。目を見張り、驚いたようにフレン!?とエステルが声を出す。フレンは、刃を下げ戦をやめるように声を張り上げる。バルボス悔しげな表情を露わにして、ラゴウをキッと睨む。

バルボス「ラゴウ、帝国側の根回しをしくじりやがったな!!」

コソコソと逃げようとしていたラゴウはヒッ!と声を上げる。バルボスはイラついたように舌打ちをした。バルボスの部下が兵装魔導器(ホブローブラスティア)でフレンに狙いを定める。

エステル「ユーリ!あの人、フレンを狙ってます!」

部下が持っていた兵装魔導器(ボブローブラスティア)に何が当たり金属音がなる。当たった兵装魔導器(ホブローブラスティア)は、部下の手から離れ床にころがった。カロルが当たった!と片腕を挙げる。どうやら、兵装魔導器(ホブローブラスティア)に当たったのはカロルの武器のようだ。

ユーリ「ナイスだ、カロル!!」

バルボス「ガキども!邪魔は許さんぞ!」

そう叫ぶと、バルボスは兵装魔導器(ホブローブラスティア)をユーリ立ちに向かって構える。そして、そのまま引き金を引いた。壁に当たり爆発が起きる。その場にいたユーリ達は悲鳴をあげつつ四方八方に分かれて避ける。

ユーリ「逃げろ、出口に向かって走れ」

エステルとカロル、リタ、ラピードは出口の方へ走った。

振り向いたエステルがユーリに危ないと声をかける。

リタ「エアルを再充填するまで、少し間があるはず。その隙を狙って……」

レナ(いやそれじゃあ間に合わない……。いつでも魔術障壁をだせるようにしとかなきゃ)

リタの言った通り、再充填するまで時間がかかるらしい。

カロルが今だ……!と合図する。しかし、遅いわ……!とバルボスがこちらに銃口を向ける方が早かった。

リタ「うそ!?エアルの充填が早い!」

予想よりも早いそれに手を打つ隙がない。

 ふと、リタ達の前を竜が通る。そしてそのまま、バルボスに突撃したのだ。竜の攻撃にあったバルボスは床に伏せ、なんだぁっと言いながら竜の飛んだ先を睨む。竜使いの姿がそこにあった。レイヴンがなんだ、ありゃと呟く。

リタ「また出たわね!バカドラ!」

いつかの魔導器(ブラスティア)を壊された時の怒りを思い出すリタ。火の魔術を放とうとする彼女に、ユーリは敵はあっちだと注意する。リタはあたしの敵はバカドラよ!と憤った。ユーリは今はほっとけ!と声を荒らげる。

バルボス「ワシの邪魔をしたこと、必ず後悔させてやるからな!」

舌打ちしそう告げると、バルボスは兵装魔導器(ボブローブラスティア)を掲げ地面から浮く。カロルがうそっ!飛んだ!と驚いていた。

レイヴン「おーお、大将だけトンズラか」

バルボスはそのままどこかへ飛び去って行った。竜使いもどこかへ去ろうとする。

リタ「あ!まて!バカドラ!あんたは逃がさないんだから!」

リタは竜使いの方へ駆け出す、その前をユーリが出た。

ユーリ「やつを追うなら一緒に頼む!羽のはえたのがいないんでね」

リタ「あんた、なに言ってんの!こいつは敵よ!」

ユーリ「オレはなんとしても、やつを捕まえなきゃなんねぇ。……頼む!」

ユーリは竜使いを見つめる。竜使いは承諾の代わりにユーリの傍に近づいた。ユーリは助かる!とお礼を言う。待って!ボクたちも!とカロルとエステルが駆け寄るが、こりゃどう見ても、定員オーバーだ!とユーリが窘める。カロルは諦めきれないようで、ボクたちも!と言うが、ユーリにお留守番してろ!と言われてしまう。

レナ(……着いていきたかったけど、これは仕方ない。なら私は私ができることを)

ユーリ「ちゃんと歯磨いて、街の連中にも迷惑かけるなよ!」

そう言って去っていく彼に、カロルはユーリのバカぁっ!と声を荒らげる。

ユーリ「フレンにもちょっと行ってくるってつたえといてくれ!」

そう告げ、彼は竜使いと共にバルボスの後を追って行った。

 

レナ「……私、ユーリを追いかける」

エステル「待ってください、私たちも行きます」

少女が一人で先に行こうとするのを、エステルは止める。

カロル「そうだよっ、ボクたちも行くに決まってるでしょ」

レナ「カロルはともかく、エステルはいいの?本来はケーブ・モック大森林の調査だったでしょ」

エステル「そうですが、ラゴウやバルボスを放っておけません」

強い意志の瞳をする彼女に、少女は仕方ないと頷いた。

レナ「……分かった。」

リタ「あたしも行くわ。バカドラを今度こそ逃さないんだから」

そう意気込む彼女に、レナは内心苦笑しながら首を縦に振った。

レイヴン「ちょっとちょっと、おっさんも忘れないでちょうだいよ」

頭の後ろで手を組みながら、レナ達の後を着いていく。おっさん含む五人はユーリ達が去った方角へ向かった。

 

―歯車の楼閣 ガスファロスト

 

 辿り着いたそこは、ラゴウが言っていた通り要塞まがいの天高くのびる塔だった。なんとか、バルコニーから侵入したレナ、エステル、リタ、カロル、レイヴン、ラピードは暗い通路を進み、敵を蹴散らす。レイヴンが先陣にきりこみ、リタが魔術で応戦する。エステルは補助を、レナは残党を初級魔術でとどめを刺す。

リタ「はい、これで最後!」

目の前の敵を全滅させた時、ユーリが姿を現した。エステルはユーリ!!と彼の名を呼ぶと、傍に駆け寄って抱きつく。そのまま怪我がないかを確認していた。ユーリはビックリしつつもエステルを受け止め、離れるように言った。

エステル「だいじょうぶですか!?ケガはしてません?」

ユーリ「なんともないって、心配しすぎ」

レナ、リタ、レイヴン、カロルもユーリの方へ駆け寄った。

ユーリ「おまえらも……、おとなしくしてろって言ったのに」と呆れながら言った。

カロル「だって、みんな、ユーリのことが心配で!」

カロルはユーリにそう訴えた。

レナ「そうそう、心配だったのよ」

カロルの言葉に同意するレナとは別に、リタはカロルに向かって拳を振り上げる素振りをする。

リタ「ちょっと。別にあたしは心配なんてしてないわよ」

振り上げていた手をおろし、両手を横に広げて彼女はそっぽを向いた。

レイヴン「おっさんも心配で心配で」

レイヴンは下に俯いた。

ユーリ「嘘つけ。っていうか、なんでおっさんまでわざわざ来てんだ?」

レイヴン「それが、聞いてくれよ。ドンが、バルボスなんぞに舐められちゃいけねぇとか言い出して、いい迷惑よ」

相変わらずの口調で大袈裟に彼は説明する。エステルはダングレストから一緒に来てくれたんですよとニッコリと微笑んでいた。

ユーリ「そもそも、おまえたち。どこから入ってきてんだよ」

カロル「しょうがないじゃん。表の扉が閉まってんだなら」

少年は口をとんがらせる。ユーリはだからってなぁ……と、言葉を失っていた。ユーリの傍でエステルがなにかに気づいたように、ユーリの後ろを覗き込んでいる。すると、青い髪を後ろにまとめ、露出の多い服装に身を包み、長い耳を持ったクリティア族の女性が現れた。レイヴンが素早く女性の方に振り向く。

レイヴン「……だ、誰だ。そのクリティアッ娘は?どこの姫様だ?」鼻の下が伸びている。

リタ「おっさん、食いつきすぎ」

興奮しているレイヴンにリタは引いている。

ユーリ「オレと一緒に捕まってたジュディス」

ジュディス「こんにちは」

彼女は手を後ろで組み、にこやかに挨拶した。

カロル「ボク、カロル!」

エステル「エステリーゼって言います」

カロル「ボクらは、エステルって呼んでるんだ」

リタ「リタ・モルディオ」

レナ「私は、レナ」

レイヴン「そして俺様は……」

おっさんとリタが続けた。それにレイヴンは、レイヴン!レ・イ・ブ・ン!と自分の名前を主張した。

カロル「そういう言い方する人って信用できない人多いよね」

少年の辛辣なコメントがおっさんに突き刺さる。

レナ(カロルって、ほんとたまに、急に人に刺さる言葉を言うわよね)

レイヴン「なーんか、納得いかないわ」

不満そうにしている。

ユーリ「ま、いいんじゃねぇの。とりあえず」

ジュディス「ウフフ……愉快な人たち」

レイヴン達のやりとりを聞いていたジュディスはおかしそうに笑った。レイヴンは、おお?なんだか好印象?と嬉しそうにした。それにリタがバカっぽい……と呟いた。

エステル「ジュディス、あなたはここへ何しに来てたんですか?」

ジュディス「私は魔導器(ブラスティア)を見に来たのよ」

レナ(誤魔化すのがうまいこと、でも疑い深い子がいるのよね)

リタ「わざわざこんなところへ?どうして?」

変に感じた彼女は質問する。ジュディスが私は……と続けようとしたのを、ユーリが遮って続けた。

ユーリ「ふらふら研究の旅してたら、捕まったんだとさ」

リタ「ふ〜ん、研究熱心なクリティア人らしいわ」

どうやらユーリの説明で一応納得したらしい。ジュディスは何も言わず微笑んだ。

エステル「水道魔導器(アクエブラスティア)魔核(コア)は取り返せたんですか?」

ユーリ「残念ながらな」

カロル「じゃあ、この塔のどこかにあるのかなぁ……」

っと呟いた所で、上から敵が剣を振り上げながら降ってきた。カロルはちょうど上を見上げていた為避けることが出来た。ユーリが舌打ちした。いつ来たのか分からないが、騎士の鎧を身につけた彼が敵を斬り伏せた。大丈夫か!とリタ達に声をかける。ユーリはフレン!?と目を見開く。

ユーリ「おまえ、仮にも小隊長がなにやってんだ、ひとりで」

フレン「人手が足りなくてね。それにどんな危険があるかも分からなかったし」

エステル「衝突はもう大丈夫なんです?」

フレンは大丈夫ですという意味で首を縦に振る。

フレン「ドンが真相を伝えたので、みな落ち着きを取り戻しました。もう衝突の心配はありません」

次にユーリの方を向いて伝える。

フレン「ラゴウの身柄は部下が確保した。街の傭兵たちもユニオンが制圧した。あとはバルボスだけだ」

再びエステルの方に向き直る。

フレン「危険ですからエステリーゼ様はユーリたちとここにいてください」

エステル「ひとりで行くなんて危険です!わたしたちも一緒に行きます!」

フレンはそんな、いけません!と首を横に振る。

ユーリ「待てよ、こっちもバルボスには色々と因縁があるんだ。ここまできて止まる気はねぇ。それにどのみちエステルはお前を追いかけて行っちまうと思うぜ?」

ユーリ……とエステルは彼の名前を呟いた。

フレンは少しの間考えると頷く。

フレン「……分かった、なら一緒に行こう。時間もないし、その方がまだ安全だろう」

リタ「話はまとまった?じゃ、行くわよ」

リタは先を歩き出す、みな続くように最上階へを目指し始めた。

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