目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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ギルド結成

―ギルドの巣窟 ダングレスト 出口付近

 

 ユーリ達が外へと歩いていると、デュークが居た。カロルがケーブ・モックで会った……と呟く。エステルは元気よくこんちには!と挨拶した。デュークは無言のままだ。

ユーリ「エステルが挨拶してんのに……愛想ねーな」

ユーリが言うんだ……とカロルがボソリとつっこんだ。

カロル「それより、また戻ってきたりしてさっきの魔物に襲われるよ」

エステル「そ、そうですよね」

先程のことを思い出したのか表情にすこし恐怖が滲む。

デューク「奴に襲われたのは、おまえたちか?」

彼はカロルの魔物に襲われるという言葉に振り返り、ユーリ達に問う。

エステル「……え?はい。えっと、その、忌まわしき……」

エステルはデュークの問いに肯定し、魔物から言われたことを話そうとして、ユーリが遮った。

ユーリ「なんだ、あんた、あいつの飼い主か、何かか?」

デューク「私と行動を同じくするものだ」

ユーリ「同じ……?あの化け物とか?」

エステル「じゃあ、あなたももしかして、わたしを狙って、ここに……?」

デューク「私の刃は人を裁くためにあるわけではない……」

エステルの質問を、デュークは否定しユーリ達から視線を外すと魔物が去った方向を見ている。

デューク「……面妖な……奴は去ったというのか……何故……?」

彼は不可解だと独りごちる。ジュディスはそれを少し複雑そうな顔をして見ていた。

デューク「私の勘違いなのか……いや……」

彼はものを考える時、口に出してしまうタイプなのだろうかブツブツと言いながらその場を去っていく。

レナ(……あっ、連れてこられた理由……聞くの忘れた)

少女は、遠くなっていく白髪の彼の背を見送りながら思った。

ユーリ「相変わらず、わけのわかんねー野郎だな」

カロル「何してる人なのかな?」

ユーリ「さぁな……さて、こんなところでぐずぐずしてる暇、オレたちにゃないよな」

カロル「そうだった……!先を急がなきゃね」

騎士団に追いつかれないようにユーリ達は走る。

 

 ある程度人や荷馬車が通る道として設けられている所まで来た。カロルやエステル、レナの足が止まる。

カロル「はぁ、はぁ、街を出なきゃはわかるんだけど正直へとへと〜」

両膝に手を付き、肩で呼吸しながら少年は言った。エステルとレナもカロルと同じように、息をはずませていた。

カロル「てゆうか、なんでジュディス付いてきてんの?」

完全にその場にしゃがんだカロルはジュディスの方に顔だけを振り向かせている。

ジュディス「ゆきがかり上、そういうことになったみたい」

手を後ろで繋ぎ、カロルの質問に答える。

ユーリ「道連れが増えんのは構わねぇけど今はもうちょっとがんばって踏ん張ろうぜ」

ユーリは泣き言を言うカロルを励ます。

ジュディス「どこまで踏ん張ればいいのかしら?」

ユーリ「ここから近いのはヘリオードか。とりあえずそこまでかな」

ユーリの答えに、レナは呼吸を整えながら分かったと呟き、カロルはえ〜っ!と無理だよぉと声を上げる。

エステル「街を出て少ししたら休憩します?」

そんなカロルを心配してか、彼女はユーリにそう提案した。カロルはそ、それ賛成〜!と片腕を上げる。

ユーリ「へいへい。んじゃ行きますか」

 

 数十分程歩き、やがて空に厚めの雲が覆いポツポツと小雨が降り出したかと思えば、本格的な雨になり身にまとっている服を湿らせた。カロルはまた立ち止まると、そろそろ休憩しようよ〜とユーリに勧める。ジュディスが後ろに振り向き、そうね追ってこないようだしと確認する。ユーリとエステル、レナ、カロルはその言葉に後ろに振り向くが追ってこないかどうかまでは分からない。

エステル「……どうしてわかるんです?」

レナ(……きっと、バウルが教えてくれるんだよね)

ジュディスはこめかみに指先をあてると勘、かしらと答えた。カロルが不思議そうに勘?と呟く。

ユーリ「ま、ここなら大丈夫だ。とりあえず休もう」

 

 休めそうな場所を探し出した時には外はもう暗く夜になっていた。

カロル「一休みしたらギルドの事も色々ちゃんと決めようね」

ユーリ「一休みしたいのはカロル先生だけどな」からかうように言った。

ジュディス「ギルドを作って、何をするの?あなたたち」

そう問われてユーリは何を、か……と考える。

カロル「ボクはギルドを大きくしたいな。それでドンの跡を継いで、ダングレストを守るんだ。それが街を守り続けるドンヘの恩返しになると思うんだ」

エステルは立派な夢ですねと胸の前で手を握り感心する。

ユーリ「オレはまぁ、首領(ボス)について行くぜ」

レナ「私も、首領(ボス)について行くわ」

ユーリとレナは真っ直ぐカロルを見る。

カロル「え?ボ、首領(ボス)?ボクが……?」

きょとんとした顔で自分の顔をを指している。

ユーリ「ああ、おまえが言い出しっぺなんだから」

カロル「そ、そうだよね。じゃあ、何からしよっか!」

嬉しそうに声を弾ませて、グッと両手を握る。

レナ「嬉しいのは分かるけどちょっと落ち着いて」

テンションが上がっている少年にレナは自制を促した。

うん!とカロルは元気よく返事をしているが、分かっていなさそうだ。

ジュディス「ふふっ……なんだかギルドって楽しそうね」

微笑ましいと言わんばかりにニコリと笑う。

エステル「ジュディスもギルドに入ってはどうです?」

つられてエステルも微笑みながら、ジュディスに勧めた。

ジュディス「あら、いいのかしら。ご一緒させてもらっても」

エステルはどうです?とカロルを見る。

カロル「ギルドは掟を守ることが一番大事なんだ。その掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだ。だから掟に誓いを立てずには加入は出来ないんだよ」

少年は先輩の顔で皆に話した。

エステル「カロルのギルドの掟は何なんです?」

エステルは首を傾げる。まだ考えていなかったのかカロルはえっと……と言葉を詰まらせた。そんなカロル様子にユーリが助け舟を出す。

ユーリ「お互いに助け合う、ギルドのことを考えて行動する。人として正しい行動をする、それに背けばお仕置だな」

エステル「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのために。義をもって事を成せ、不義には罰を、ってことですね」

ユーリの言葉をそれらしい言葉にエステルは置き換える。

レナ「掟に反しない限りは、個々の意志は尊重する」

ユーリの言葉を借りて少女は続けた。

カロル「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのため……う、うん!そう!それがボクたちの掟!」

少年はそっと呟くと、顔をパッと輝かせた。

ジュディス「今からは私の掟でもある、ということね」

話を聞いていたジュディスが確認をとる。

ユーリ「そんな簡単に決めていいのか?」

ジュディス「ええ。気に入ったわ。ひとりはギルドのため……いいわね」

ジュディスの様子にカロルが期待を込めるようにじゃあ……と促す。

ジュディス「掟を守る誓いを立てるわ。私と……あなたたちのために」

ラピードも誓うと言わんばかりにユーリに近寄る。

ユーリ「あんたの相棒はどうすんだ?」

ラピードが来て思い出したのかユーリはジュディスを見る。

ジュディス「心配してくれてありがとう。でも、平気よ、彼なら」

ユーリとジュディスの会話に、カロルが相棒って?と口を挟む。

ジュディス「前に一緒に旅をしてた友達よ」

彼女はニコリと笑ってカロルの質問に答えた。

カロル「へぇ、そんな人がいたんだね。じゃあ今日からボクらがジュディスの相棒だね」

嬉しそうな少年の声に、ジュディスはよろしくお願いねと言った。カロルはよろしく!と返し、ラピードが続けてワン!とひと鳴きした。そんな中、エステルは俯き悩んでいるようだった。そんな彼女を見かねてかユーリは今日はもう休むかと皆にすすめた。皆それに頷いて、各々で身を休める。

 

 レナはなんとなく眠れなくて、どこか落ち着ける場所に行こうと歩く。ふと、レナが来た場所より、離れたところの岩にエステルが座っているのが見えた。

レナ(珍しい。いつもはもう寝ている時間だよね。今日は遅くまで起きてるなんて、あの魔物に言われたことを気にしているのかも)

 どこか考え事をしているエステルに、ユーリが近寄った。エステルはユーリに気づいて立ち上がる。二人はレナには気づいていないみたいだった。さすがにじっと見ていては邪魔してしまうだろうと考えたレナは空を見上げる。静かな夜、エステルとユーリの会話は聞くつもりはなくてもレナには聞こえていた。

ユーリ「よう、寝ないのか?」

エステル「ええ……。それよりどうかしました?」

彼女は首を傾げた。

ユーリ「いや、これからどうするつもりかと思ってな」

エステル「そうですね……。旅を続けられると思ってなかったし……考え中です。ユーリはギルドがんばるんですよね」

ユーリ「ボチボチって言いたいところだけど、フレンにも格好つけちまったしな」

エステル「カロルもうれしそうです。少しうらやましい」

ユーリ「おっと、お姫様もギルドに入りたくなったか」

うらやましいと寂しそうに零した彼女にユーリは少しからかう。

エステル「入れてくださいって言ったら……入れてくれます?」

ユーリ「ちゃんと考えて決めたんなら、止めやしないぜ」

エステル「そうですね、ちゃんと考えなきゃ……わたしも」

肩に力が入っている彼女の様子に、ユーリは考えすぎてもダメだけどとニヤッと笑って釘を刺す。そんなユーリに、エステルは自然とふふふと笑っていた。ユーリは笑顔になったエステルに安心したのか見回りに戻った。

エステル「わたしの決める……」

彼女はそう呟いて空を見上げた。

 

 レナはまだ眠れそうにないなと、また別の場所に静かに歩いた。焚き火の近くを通りかかろうとした時、ちょうどユーリとカロルが話していた。

レナ(……しまった。またかぶった)

レナはなんだか気まずくて思わず木に身を隠した。

ユーリ「なんだ、寝てないのか」

と言って少年の隣に、腰を下ろす。

カロル「うん、ギルドの名前考えてたんだ。格好いいの考えるよ」

楽しそうに自信満々の顔をしている。ユーリはその顔を見て、ああ、任せたと笑った。ユーリと、ふと少年がしずかに呼ぶ。呼ばれた彼はん?と返事をした。

カロル「よく考えたらボクらも誓いを立てずにギルド作っちゃってたね」

ユーリ「まぁ、さっきちゃんとしたから良いだろ」

そう返されて、少年は頷いた。

すこし間が空いて、またカロルはユーリの名を呼ぶ。ユーリはなんだよと返した。

カロル「あの掟、誰かに聞いたりしないで自分で考えたの?」

ユーリ「ああ、なんなまずかったか?」

カロル「ううん、ボクも同じ掟を考えてたから。……ボク、ユーリとギルド作れてホントうれしいよ」

少年は改めてそう言うとニコリと笑う。

ユーリ「はっは、なんだ、気持ち悪いな」

えーと少年は照れくさそうにしたあと、あっ!と声を上げて立ち上がる。ユーリは驚きながらつられて立ち上がった。

カロル「名前思いついた!」

これまた嬉しそうにユーリに伝える。

カロル「勇気凛々胸いっぱい団!」

レナ(……それはちょっと、恥ずかしくない?)

聞き耳を立てていた少女は心の内でつっこむ。

ユーリ「はっはっは。カロル先生らしいな、んじゃそれでいくか」

カロルは元気よくうん!と返事した。んじゃもう寝ろよとユーリは声をかけて、その場を後にする。なんだか面白くなってきたレナはバレないようにユーリの後を着いていくことにした。

 

 次にジュディスの方へユーリは歩いた。足音で気づいたジュディスはユーリの方へ振り返るとご苦労さまと声をかける。ユーリはなにがたよと返した。

ジュディス「寝ずの見張り番、でしょ?」

ユーリ「そんなんじゃねぇよ」

そっぽ向いて答える彼にジュディスは素直じゃないのねと不服そうに言った。言われたユーリはあんたもなと言い返す。

ジュディス「おかしいわね。自分では素直だと思うけれど」

ユーリ「よく言うぜ、ギルドに入ったホントの理由を言わないくせに」

ジュディス「ホントに気に入ったからよ」

頑なな彼女に、それだけか?とユーリが聞けば、違うわと答えて続けた。

ジュディス「掟に反しない限りは、個々の意志は尊重、でしょう?安心して、掟は守るわ。必ず、私なりに」

ユーリ「そっか……わかった。ま、近いうちに本当のところ、聞かせてもらうぜ。……ダングレストに居たのは偶然か?」

ジュディス「そうね、それは本当。素敵なことに」

素敵ね……とユーリが呟く。そんな彼にご苦労さまとジュディスは言った。ユーリはジュディスに振り向くと、見張りか?と聞いた。彼女は私の相手と強かな笑顔をした。

ユーリは、程々にななんて言いながらその場から離れた。

焚き火の方に戻ろうとユーリが歩きだすのをレナは見送る。少女はついて行くのをやめて適当な場所で星を見ることにした。

 

レナ(……私は、この世界に連れてこられた者。連れてこられた理由は分からない。そして、あの魔物……ううんフェローは、憐れだと言った。なんだか、別の意味を含んでいそうで、気になる。胸の中が、ザワザワして変な感じ)

ボーッと空を見上げて思考し、それから下を向いてフーっと少女はため息をつく。土がズレる音がして、レナが視線を向ければユーリが居た。

レナ「……ユーリ」

名を呼べば、ユーリはまだ寝てなかったのか?と言いながらレナの元に行く。

レナ「まぁね、なんだか寝れなくて」

ユーリ「寝ないと明日、つらいんじゃねぇか」

少女はうんと頷くが、素直に寝る様子は無い。

ユーリ「……そういや、あの夜、なんて言ったんだ?」

唐突な質問に、少女は内心戸惑う。

レナ(掘り返してきた……あの夜ってラゴウのだよね)

レナ「大したことじゃないよ」

気になるじゃねぇかという顔をしてユーリはレナを見る。

しょうがないと少女は小さく息を吐いて、口を開いた。

レナ「……もし、わたしが、エステルと同い年だって言ったらどうする?って、言ったの。ね、くだらないでしょ?」

少女は、少し眉を下げて微笑む。対してユーリは、腑に落ちた顔をしていた。

ユーリ「なるほどな、おまえが随分しっかりしてて大人びているのもそれで説明はつくな」

まさか本気にされるなんて思ってなかった少女は、ビックリしていた。

レナ「くだらない冗談……だと、思わないの?」

ユーリ「そういう顔するやつは大体、ホントのこと言ってる場合が多いからな」

そう言われて少女は思い返す。

レナ(そういえばハルルの時、カロルの言葉を誰も信じてくれない人ばかりだったのに、彼は違った。真っ直ぐに信じた、そういう人だった)

レナ「……そっか」

ユーリ「ああ……さて、月もだいぶ傾いてきたし、寝た方がいいぞ」

レナ「うん、おやすみ、ユーリ」

ああ、おやすみと彼からの返事を聞いてから少女は、寝れる場所に進み横になった。

レナ(……受け入れてくれるなんて、思いもしなかったな。だって体は十なのに、中身は十八なんて、虚言だと言われても仕方ないのに)

 

―翌朝

 

 それぞれ体の疲れを癒し、次の目的について話していた。

カロル「せっかくギルド、立ち上げたんだし、何か仕事したいね」

嬉々とした表情でユーリを見上げるカロル。二人をニコニコしながら見守るレナ。

ユーリ「そう慌てるなって……エステルはこれからどうするつもりなんだ?」

カロルを抑えつつ、ユーリはエステルに方を見る。

エステルは俯き、ふっと口を噤む。考えるように少しの間があいて、口を開いた。

エステル「わたしは、あのしゃべる魔物を探そうと思います。狙われたのがわたしなら、その理由を知りたいんです」

覚悟の灯った瞳で、エステルはグッと両手を胸に握る。

ユーリ「理由がわからないとおちおち昼寝もできないか」

カロル「でも……見つかる?どこにいるかわからない化け物なんて……」

ユーリ「化け物情報はカロル担当だろう」

カロル「いくらボクでもあんなの初めてだもん。わかんないよ~」

カロルは困ったような顔でユーリを見る。

ジュディス「化け物ではなくて、あの子はフェロー」

急に口を開いたジュディスにみんな振り返る。エステルは口に手を当て知っているんですか?と驚いていた。急に注目を浴びたジュディスは、横をむく。

ジュディス「前に友達と旅をした時に見たの。友達が彼の名前を知っていたわ」

カロル「一緒に旅をしてたって人?その人、なんでそんなの知ってたの?」

ジュディスは何も言わない。

エステル「見たってどこでですか?」

ジュディス「デズエール大陸にあるコゴール砂漠で、よ」

ジュディスはエステルの方を向いてそう答えた。

エステル「このトルビキア大陸の南西の大陸ですね」

デズエール大陸……砂漠……と彼女は本で読んだ知識を頭の中で探る。

ユーリ「ただ見たってだけでほいほい行くようなとこじゃないぞ。砂漠は」

ユーリの言葉にカロルはそうだよねぇと呟く。

 なにか思い出したのか、もしかしてあのおとぎ話の……とエステルが囁いた。聞いていたカロルがおとぎ話?とエステルに聞く。

エステル「お城で読んだことがあります。コゴール砂漠に住む、言葉をしゃべる魔物の物語を」

カロル「でも、いくらでもあるじゃん、そんな話。ほら、海の中から語り掛けてくる魔物の話とか」

話を聞いていたジュディスがそれはきっと逆ねと差し込む。カロルは逆?と首を傾げた。

ジュディス「そのままそういうお話になったのよ、彼らのことが」

エステル「火のないところに煙は立たない、ですね」

ジュディスは首を縦に振った。

レナ「それで、フェローがいる場所にエステル一人で行くつもりなの?」

一人は危ないんじゃ?と心配そうな顔をして少女はエステルを見た。エステルは、え?あの……と戸惑ったようにレナとカロルとユーリを見る。

ユーリ「やれやれ。こりゃ護衛役続けとかねぇとマジで一人でもいっちまいそうだ。なぁ、これ、ギルドの初仕事にしようぜ」

いいことを思いついたという口調でユーリはカロルに提案した。

カロル「そっか!ここでエステル一人で行かせたらギルドの掟に反するよね」

そういうことねとジュディスは賛同する。レナも首を縦に振った。

カロル「……でも、仕事にするなら、エステルから報酬をもらわないと」

レナ「別にいいんじゃない、お金なんて」

カロル「ダメダメ、ギルドの運営にお金は大切なんだから」

エステル「あ、あの……わたし、今、持ち合わせがないです……」

彼女は申し訳なさそうに肩をくすめる。

ジュディス「だったら、報酬は、あとで考えても良いんじゃない?」

腕を組み、こめかみに手を当てて考えたジュディスはそう提案する。

エステル「報酬、必ず払います。だから一緒に行きましょう!」

彼女はずいっと体を前に出し、ユーリ達にお願いする。ユーリは頷き、んじゃ決まりだなとにっと笑った。

 エステルは空を見上げていた。その表情はすごく嬉しそうだった。

カロル「よーし!じゃあ勇気凛々胸いっぱい団出発!」

片腕を上にあげて気合を入れるカロル。唐突な名前にエステルとレナはえっ、と驚く。

エステル「ちょっ、それなんです?」

カロル「え?ギルド名だよ」

レナ「……悪いけどカロル、そのネーミングセンスはちょっと」

少女は若干引いている。子供らしいセンスだが、名乗るのは恥ずかしい。

エステル「それじゃだめです!名乗りをあげるときに、すばっと言いやすくないと!」

長い名前は言いにくいと、エステルは指摘する。指摘されたカロルはそ、そうなの?と言うとじゃあ……と考え出す。エステルも少し考えて、思いついた顔をした。

エステル「凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)なんてどうです?夜空にあって、最も強い光を放つ星……」

レナ(さすがエステルっ。何度聞いても綺麗な名前ね)

カロル「1番の星か、格好いいね!」

ユーリ「凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)……ね。気に入った、それにしようぜ」

ユーリも頷き、レナもいいと思うと首を縦に振る。

カロル「大決定!じゃあ早速トリム港に行って船を調達しよう!デズエール大陸まで船旅だ!」

少年は気合いの入った声を出す。

ユーリ「ヘリオードで休むのはもう良いのか?」

カロルを気遣うユーリに、カロルはもうへっちゃらだよ!と元気に返した。

ユーリ「どっちにしろ、ヘリオード通んないとトリム港にゃ行けないけどな」

ヘリオードと聞いて、エステルが思い出したように口を開いた。

エステル「ヘリオードと言えば、魔導器(ブラスティア)の暴走の後、街がどうなったのか気になります」

ユーリはたしかにありゃ凄かったからなと呟く。

レナ「確かにあの後、住民たちは大丈夫だったのかな」

カロル「んじゃ、ちょっと街の様子だけでも見ていく?」

エステルはええ、と頷いた。

ユーリ「んじゃまずはヘリオード、そのあとトリム港から船でデズエール大陸だな」

ユーリはみんなに確認を取るようにまとめた。

カロル「じゃあ改めて……凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)、出発!」

カロルは元気よく片腕を天に伸ばした。そんなカロルに答えるように、ワン!とラピードが鳴いた。

ユーリ達一行は、ヘリオードへと歩を進めた。

 

―新興都市 ヘリオード

 

 ヘリオードに着く頃には日は落ち、夜になっていた。

以前よりも人通りが少なく、歩いているのはほんの僅かな商人や旅行客たちだけみたいだった。

エステル「なんだか……以前より閑散としてません?」

辺りを見渡しながら彼女は不思議そうに言った。

ユーリ「ああ、なんか人が少なくなった気がするな」

レナ「やっぱり?私もそう思ってたんだよね」

カロル「そう言えば、あれかなぁ……」

カロルはなにか心当たりがあるようだ。

ジュディス「あら?どうしたの?」

カロル「ダングレストで聞いたんだけど、街の建設の仕事がキツくて、逃げ出す人が増えてるんだって。本当か嘘か知らないけどさ」

ユーリ「ふーん……そんなことが……」

ほっとけない……とユーリがエステルの方を見て言う。エステルは驚いたようにえ?とユーリに方を向いた。ジュディスがユーリの言葉に、って顔をしてるわねと続けた。

レナ「じゃあ、まずは宿屋に行って作戦会議ね。魔導器(ブラスティア)の様子も見に行かないとだし」

ユーリ「だな、エステルのほっとけない病も出ちまったし」

エステル「だって、ほっとけないじゃないですか」

訴えるように言った彼女に、分かってるってとユーリは返す。

カロル「じゃあ、いこう!宿屋に出発~」

カロルは元気よくそう言うと、宿屋に走っていく。

ジュディスがその様子に張り切ってるわと笑う。

エステル「ユーリとギルドを作れたのがホントにうれしいんですね」

エステルは優しい眼差しを走っていったカロルの方へ向けた。

ユーリ「別に、カロルのために作ったんじゃないけどな」

ジュディス「でも無関係ってわけでもないのでしょう?あなたにとって」

さぁてなとユーリは誤魔化す。

ユーリ「ほら、オレたちもさっさと宿屋に行こうぜ」

そう言われてエステルとジュディス、レナ達はユーリと共にカロルを追いかけるように宿屋に向かった。

 

―宿屋

 

 大きな部屋を一室借りて、二つのベッドをカロルとエステルで使いすぐに寝てしまい、ソファーにユーリ、適当な場所にレナが居た。ユーリとレナは眠れないのかそれとも別の目的があってか、水が流れる音を聞きながら起きていた。ふと、どこかのドアが開く音がして、誰かが走っていくような足音が廊下に響いた。ユーリとレナはドアの方に視線だけを向ける。ユーリがオレもほっとけない病だなと呟き、ソファーから起き上がると外へ出る。少し遅れてみなを起こさないようにレナもその後に続いた。宿屋の玄関のところでレナはユーリと合流する。

ユーリ「!……レナ、お前起きてたのか」

レナ「昨日に続いて眠くなくて」

ユーリ「……倒れるなよ」

レナ「それはユーリにも言えることでしょ。昨日、ほとんど寝てないんでしょ」

ユーリはバツが悪そうにそっぽを向いた。

レナ「とりあえず、外行こうよ」

ああとユーリは返事をして、レナと共に外に出る。橋の方に行けばジュディスが居た。

ユーリ「夜の散歩か?」

ユーリはジュディスの傍により近くの橋の塀に体を預けた。レナはユーリの隣に立つ。

ジュディス「故郷に似てるわ。この景色」

彼女はどこか懐かしむような目をしていた。

ユーリ「へぇ……じゃあ、ジュディの故郷はキレイなとこなんだな」

ジュディス「ただ高いところにあって見晴らしがいいってだけ。高いところは嫌いじゃないけれど」

ユーリ「ふーん……あんな魔物に乗ってたのもだからか」

魔物と言ったユーリにレナが服の袖を思いっきりグイッと引っ張った。

ユーリ「ちょっ、なんだよ、レナ」

レナ「……ユーリ、魔物じゃないよ。ジュディスの相棒なんだから」

ジュディス「そうね、魔物じゃなくて彼はバウル」

少し怒ったような声で彼女は、訂正した。

ジュディス「それに空が泳げるからというわけでもないわ。一緒だったのは彼が戦争から救ってくれたから」

ユーリ「戦争?帝国とギルドのか?」

レナ(……違う、多分人魔戦争の事だよね)

ジュディス「いつだって、この世界は戦争だらけ」

彼女は遠くを見つめながらそう呟いた。少しの間を開けてユーリがそうだなと頷く。

ユーリ「前にこの街で、エステルを襲ったの、ジュディだよな?」

ジュディス「目ざといのね。狙いが誰だったかわかるなんて」

ユーリ「そういう性分でね」

ジュディスはそれっきり黙ってしまった。

ユーリ「フェローってのも、エステルを狙ってた。なんか関係あんのか?バウルって相棒と」

レナ(……それは、エステルが、満月の子だから)

レナは知っているがここで言えばストーリーが変わるかもしれないと思い言えないまま、ジュディスとユーリから視線を外した。ジュディスは頭に手を当てて考える仕草をするがすぐに、上手く説明出来そうにないわと返した。

ユーリ「否定はしないんだな。狙ったこと」

嘘は得意じゃないのとジュディスは眉をひそめて言った。

ユーリ「……わかった。もう聞かねぇよ。でも、またエステルを狙うようなら……」

ユーリが纏う雰囲気がピリつく。

ジュディス「心配しないで、もうそんなことはしない。保証するわ」

彼女はユーリの目を真っ直ぐ見つめる。ユーリはまだ信用出来ないようで本当か?と問う。

ジュディス「どう言えば、信用してもらえるかしら?」

ユーリ「嘘は得意じゃないんだっけ。……まぁ、言ってねぇことがあんのは、オレもおんなじだしな……」

彼はそう言うと宿屋に戻って行った。

 

ジュディス「あなたは、戻らないの?」

ジュディスは突っ立っているレナに話しかける。

レナ「え?あぁ、うん。もうちょっとだけ外の空気吸おうかなって」

そう……とジュディスは返した。少しの間、沈黙が流れる。ジュディスがねぇとレナに話しかける。

ジュディス「あなたは……彼の事も、彼女の事も分かっていて、そこにいるのよね。それは、どうして?」

そう問われて少女は考える。

レナ「どうして……か。考えたことなかったかも。だってユーリは私の命の恩人みたいなもので、エステルは守りたいと思った人だから。もちろん、ジュディスもカロルやラピードもそう」

少女はニコリと微笑みを浮かべてジュディスの瞳を真っ直ぐに見て答えた。

ジュディス「そう。あなたも救われた側なのね……私は、まだ話してないことがあるわよ。それでも守りたいと思うのかしら?」

目を細めて薄く笑いながら彼女は少女を試す。

レナ「思うよ。私だって、秘密ぐらいあるよ。誰かに話してしまったら嫌われてしまうかもしれないほどの……ね。」

考える間もなく少女は答えた。ちょうど月光が少女の背を照らし表情がジュディスからは読み取れなくなる。しかし答えたその声は確かにしっかりとした意志を持ち、覚悟があった。ジュディスはすぐに答えた少女に、目を見開いてすぐに微笑んだ。

ジュディス「ありがとう。強い子ね、あなた」

レナ「強い子じゃないよ私。それとちょっと気になってたんだけど、あなたじゃなくて、レナって言って欲しいかな」

少女は眉を下げて困ったような微笑みをして首を傾げた。

ジュディス「ふふっ……ええ分かったわ、レナ」

案外子供らしい所もあるものねと心のうちで思いながらジュディスは笑った。

レナ「ふぁ~あ……ごめん、眠くなってきたから、宿屋に戻るね」

少女は欠伸をすると、ジュディスに一言断りをいれて宿屋に帰って行った。

 ジュディスはええと眠そうな少女に返して、空を見上げる。

ジュディス「おかしな人達ね」

そう呟いた彼女の声はどこか楽しそうだった。

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