船を進めていると霧が出始め、視界はあっという間に白くなる。
ジュディス「霧が濃くなってきたわよ、なんだか」
海で霧とは、いかにも何か出てきそうな雰囲気で、カロルが不気味……と呟いた。
レイヴン「こういう霧ってのは大体、何か良くないことの前触れだって言うわな」
不吉なことを言うレイヴンに、カロルはビビりながら、やめてよ〜とレイヴンに言った。
ユーリ「余計なことを言うと、それがほんとになっちまうぜ」
レナ「っというか、これはもう完全にフラグ立ってるわよね」
リタがなにかに気づいたように、あっ!と声を出して、前、前!と焦っている。その方向を皆で見れば、大きな黒い影が迫っていた。
ジュディス「これは……ぶつかるわね」
冷静に彼女がそう呟いた瞬間、激しい衝撃がユーリ達を襲った。傍にあるものをつかみ船から落とされないようにする。揺れが落ち着くと、巨大なボロボロの船が出現した。ぶつかったのはこれだったらしい。いかにも幽霊が出そうなほど不気味な雰囲気を纏っている。カウフマンが何……!?と驚き、すぐに冷静さを取り戻した。
カウフマン「古い船ね。見たことない型だわ……」
ジュディス「アーセルム号……って読むのかしら」
ジュディスが少し身を乗り出して、船の記された文字を読んだ。とその時、アーセルム号のタラップがひとりでに降りてきて、フィエルティア号の甲板に渡された。大きな音に、リタはひゃっ!と驚く。
カロル「人影は見あたらないのに……」
カロルもすっかり怯えきってしまっている。
エステル「ま、まるで……呼んでるみたい」
エステルは声を震わせながら言った。
リタ「バ、バカなこと言わないで!フィエルティア号出して!」
強がってはいるが、こういうのが苦手なのだろう。普段はエステルに対し優しい彼女が、強い言葉で否定する。出してと言われてパティが、操作盤を触るがダメじゃのと返す。
パティ「なぜか
リタはえ?と驚き、慌てて
リタ「いったい、どうなってるのよ」
調べたところ正常に機能するはずが、原因不明で動かないらしい。
ユーリ「原因は……こいつかもな」
彼はアーセルム号に指をさした。その言葉にカロルはええっと体を後ろに仰け反らせる。
レイヴン「うひひひ。お化けの呪いってか?」
引き笑いをして、おどけるようにおっさんは言った。エステルはそんなこと……と否定する。
レナ「まぁでも、このままって訳にはいかないし……」
レナは気まずそうにする。
ジュディス「なら、入ってみない?面白そうよ。こういうの好きだわ。私」
彼女は船に興味津々らしく、タラップに近づく。リタは信じられないという顔をして、何言ってんの!と反抗する。
ユーリ「原因わかんないしな。行くしかないだろ」
いたって冷静な彼は、ジュディスの意見に同意する。
カウフマン「ちょっと、フィエルティア号をほっていくつもり!?」
レナ「なら、五人が探索に出て、残りが見張りで担当するればいいんじゃない?」
少女の提案に、ジュディスがいいと思うわと返す。まとまった所でユーリが、自分とラピードは行くと言った。ラピードはユーリに近づき、ワフッと返事をする。後は誰が行くんだ?とユーリはみんなの顔を見る。リタは、あたしは行かないわよ!とそっぽを向いた。なかなか決まらないので、レイヴンがユーリが決めていいんでない?と言った。
ユーリ「わかった。んじゃ、レナとジュディスとカロルだな」
指名されたカロルはええーっ!?と明らかに嫌そうな声を出した。レナは、まぁ言い出しっぺみたいなものだしとすまし顔。ジュディスは楽しそうな顔をしている。
トクナガ「もう一度
タラップからアーセルム号に渡るユーリ達にそう告げた。ユーリがサンキュと返し、中へ進んだ。
―幽霊船 アーセルム号
ユーリ達が船の中に入った時、船体が大きく揺れカロルの悲鳴が上がる。天井から檻のようなものが降ってきて、来た道を塞いだ。ユーリが檻を触るが、動く気配がなく開かない。仕方ないと、ジュディスが先に進むことを提案した。だな、進んでみようぜとジュディスの意見にユーリは同意し、ここにいても時間の無駄だしとレナも賛同する。カロルはすごく脅えながらもユーリ達の後をついて行く。船の中は暗くギリギリ足元のものが視認出来るかどうか……。
ユーリ「さすがに暗すぎるな……」
ジュディス「そうね、もっと色々見たいのに……」
レナ「……なら、私が灯を作ろうか?」
そんな二人を見かねて少女は提案する。
ユーリ「できるのか?」
レナ「多分?まぁ、私の魔術、結構応用きくみたいだし、なんとかなるでしょ」
ユーリ「やってみるだけ価値はある……か」
レナはユーリの言葉にこくりと頷いて、手のひらにエネルギーを集中させる。魔術は実際論理的な数式もいるが、レナの場合はイメージだ。パッと頭に浮かんだ蛍の光のように淡く優しい光をイメージする。すると、少女の手のひらに球体の形を象った、淡い光が出来上がった。辺りを優しく照らしている。
レナ「うん、できた」
魔術を使ったことによる代償で、ピリピリとした痛みがくるが気にするほどでは無いなと少女は思う。
ユーリ「すげぇな。体は平気か?」
レナ「大丈夫っ」
ジュディス「レナの魔術って、体力をかなり消耗するのでしょう。大丈夫なのかしら?」
レナ「平気だよ、これ結構簡単な魔術だから」
ジュディス「そう?ならいいけれど」
ユーリ「無理はするなよ」
ユーリはレナの頭を撫でた。先程まで怯えていたカロルは、灯りがあることで恐怖が半減したのか元気になっていた。
カロル「よしっ、どんどん先に進もう!」
レナは調子のいいやつ、なんて思いながらユーリ達と上を目指して歩き出す。
上に上がる階段の前で、リタ、エステル、レイヴン、パティに会った。なんだ、無事じゃないの……リタがほっとした顔をする。
レナ「あれ、リタ達も来ちゃったの?」
ユーリ「しかも、何連れてきてんだよ」
レイヴン「連れてきたわけじゃないんだけどもね……」
ユーリの責める声に、レイヴンが言い訳がましいことを言う。原因であるパティは、ユーリに会いに来たのじゃと嬉しそうにしている。
ユーリ「度胸あるお嬢さんだな。ってまぁ、今更か……」
パティ「海辺のシーラカンスより度胸あること、折り紙つきなのじゃ」
ユーリ「度胸あるのは知ってるよ。でなきゃ、あの業突くじじぃの屋敷に一人で乗り込まねぇだろ」
業突くじじぃという言葉に、ラゴウの屋敷ですねとエステルが言い直す。船の方は、大丈夫なのかよとユーリは独りごちる。
カロル「こんなところ、早く出ようよ」
カロルがそうみんなに訴えた時、ひとりでにドアが軋む音を鳴らしながら閉まる。パティが幽霊の仕業じゃなと言った。パティの言葉にリタが嘘でしょ……!?と顔色を変える。
エステル「きっとこの船の悪霊たちが、わたしたちを仲間入りさせようと船底で相談してるんです……」
体を腕で抱き、恐怖から来る震えを抑える彼女。
リタ「へ、へんな想像しないでよ……!」
エステルの言葉を聞いて、さらに顔色が青くなっている。レイヴンも珍しく、ありえねぇってと焦っている。この状況でも冷静なユーリは、別の出口を探すかと話す。ジュディスは面白そうに、そうね行きましょと歩き出す。
レナ(さすがに勝手にドアが閉まるのは、ひやっとしたわ)
少女は、歩きながら寒気を感じて羽織っているカーディガンを掴んだ。
ユーリ達は傍にあった階段を上がる。ドアに船長室と書かれたプレートがかかっており、ユーリがその扉を開けて、みんなで中に入る。中に入ると、大きな鏡があり、机と小さなテーブルが置いてあった。少し先に進んだカロルが声にならない悲鳴を上げた。カロルが見た方向にレナが灯りを持ってきて視線を向けると、机に突っ伏した状態で白骨化した死体があった。それがかなりの年月が立っていることを示している。ユーリが、小さなテーブルに置かれている本の前に立ち、読み始める。レナは灯りを本に近付けた。
ユーリ「アスール暦232年、プリエールの月13?」
エステル「アスール暦もプリエールの月も帝国ができる前の暦ですね」
リタ「千年以上も、昔か……」
考える仕草をして彼女は呟いた。カロルが千年と聞いてそんなに……と囁く。
エステル「船が漂流して40と5日、水も食糧もとうに尽きた。船員も次々と飢えに倒れる。しかし私は逝けない。ヨームゲンの街に、
エステルは本……日記に書かれていた内容を読んだ。
エステル「……でも結局、この人は街に帰れず、ここで亡くなってしまわれたんですね……」
悲しそうに呟き、日記の内容に同情している彼女に、リタは千年も前の話よと元気付ける。そばに居たレナも、エステルの手を包んで励ます。
パティ「そんな長い間、この船は広い海を彷徨っておったのじゃな。寂しいのぉ……」
カロル「ボク、ヨームゲンなんて街、聞いたことないなぁ……」
リタ「これがほんとに千年前の記録なら街だって残ってるかどうか」
ユーリ「ま、そうだよな。……
ユーリはリタに知らないか見るが、リタは知らないと答えた。魔物を退ける力ねぇとレイヴンが呟く。レイヴンの呟きを聞いたジュディスが結界みたいなものじゃないかしら?と言った。ユーリがその辺にないか?とみんなに聞く、パティが探してみるのじゃと腕まくりをした。
レナ「……ねぇ、この白骨死体が大切そうに抱えてるの、紅の小箱じゃない?」
机の方に灯りを持ってきて、少女は指を差した。ユーリ達がそばに近寄る。ジュディスがそうみたいねとレナの言葉を肯定する。カロルがこれが
ユーリ「日誌に書かれた通りなら、これがそうだろうな」
リタがレイヴンに箱とってよと促す。
レイヴン「イ、イヤだっての。何を言い出すのよ、まったくこの若人は」
両手を前に出し、イヤイヤと首を横に振っておっさんは拒否する。パティが、いい歳して、怖がりなのじゃと辛辣なコメントを吐いた。レイヴンが負けじとパティちゃんはどうなのよと文句を言う。ユーリが呆れて、いい歳して子供張り合うなよとつっこんだ。と四人でやり取りしている間に、ジュディスが容赦なく紅の小箱を持って、レイヴンの前に出す。結構しっかりめに白骨死体は持っていたようで、箱の方に腕が一本ぶら下がっている。レイヴンが情けない悲鳴をあげた。箱の方をレイヴンが持ち、腕の方はジュディスが引き剥がす。
レナ「……ジュディス、大胆だね?」
ジュディス「呪われちゃうかしら?」
ジュディスはちょっと嬉しそう?楽しそう?な感じでニコニコとしながら、腕の骨をきゅっと握る。そんな彼女を見てなんだか恐怖なんて消えちゃったレナは、かもねと笑って返した。レイヴンが箱を開けようとしているが、何やら苦戦している。どうやら、開かないみたいだ。と、カロルが何かに気づいて、物凄く吃りながら指をさす。レイヴンはカロルの指さす方向をみて、驚く。大きな鏡に、骸骨がうつっていたのだ。ジュディスが逆のようねと囁く。カロルがビビりながら何が!?と聞いた。ジュディスは魔物を引き寄せてるってこと、と答えた。鏡の中から、骸骨の魔物が出てきてユーリ達に襲いかかった。とりあえず光属性の攻撃に弱いらしく、エステルはみんなの傷を癒しながら魔術を放つ。他のみんなも、できる限りの攻撃を与えていった。やがて骸骨の魔物が動くなくなる。赤いモヤが骸骨の魔物の中心に出できて、恐ろしい姿が見えるようになる。リタがきゃっと怯えて悲鳴をあげた。そして、骸骨の魔物は鏡の中に帰って行った。パティがあとを追いかけようとするのを、ユーリが止めた。レイヴンが勘弁してよもうと脱力する。ジュディスがじゃあ、返してあげるあの人にと紅の小箱を見て言う。カロルが返した方がいいって!と訴える。そんな中、エステルが口を開く。
エステル「あの……わたし、その
リタが、何を言い出すのよ!と驚いてエステルを見る。
エステル「
エステルの申し立てを、カロルはハッキリとだめだよと却下した。
カロル「基本的にボク達みたいなちっちゃなギルドは、ひとつの仕事を完了するまで次の仕事は受けないんだ」
レイヴン「ひとつひとつしっかり仕事していくのがギルドの信用に繋がるからなぁ」
二人は引き受けない理由をエステルに説明した。
ジュディス「あら?またその娘の宛もない話でギルドが右往左往するの?」
前の時の約束をジュディスはきちんと果たす。しかし、それを知らないリタが怒った。
リタ「ちょっと!あんた、他に言い方があるんじゃないの!?」
ジュディスはエステルの言ったことを守っているだけだと分かっているので、怒るリタを待ってと止める。
エステル「ごめんなさい……ジュディス。でも、この人の思いを届けてあげたい……。待っている人に」
エステルは、止めてくれたジュディスに一言謝って、それでも届けたいとみんなに伝える。
ユーリ「待ってる人っつっても千年も前の話なんだよなぁ」
パティ「さすがに千年は待ちくたびれるのじゃ」
カロル「そういうことじゃあないと、思うんだけど」
パティの発言にカロルが呟くようにつっこむ。エステルは悲しそうに考え込んでしまっていた。そんなエステルをみて、リタがあたしが探すと言った。リタ……とエステルはリタを見る。
リタ「フェロー探しとエステルの護衛、あんたたちの仕事やりゃいいでしょ。あたしは勝手にやる」
じゃあボクも付き合うよ!とカロルが言う。ユーリは暇ならオレも付き合ってもいいぜとカロルに続くように言った。二人の言葉に、私も付き合うよとレナが便乗する。
リタ「ちょ、ちょっとあんたたちは仕事やってりゃあいいのよ!」
ユーリ「どうせ、オレたちについてくんだろ。だったら、仕事外として少し手伝う分にゃ、問題ない」
エステルはありがとうございますと、ユーリとリタとレナとカロルに頭を下げた。レイヴンが、若人は元気あがあって良いねぇと後頭部で手を組む。パティがみんな仲がいいのじゃ、リタ姐いいのうと微笑ましそうにリタを見る。リタはパティの方を向いて、あたしは喜んでなんてないわよと照れ隠しをする。そうなのかのとパティは不思議そうにした。
レナ(……リタってやっぱり、ツンデレさんだよね)
窓に目をやったレイヴンが、ん?となにかに気づく。ユーリがどうした?と聞けば、外になんか煙みたいなのが……と答えた。みんなは窓の方にあつまる。その時、発煙筒が上がった。
レナ「これ、発煙筒じゃない?」
ユーリ「
戻ってみようよと、カロルがユーリ達に提案した。
リタ「そんなこと言っても、来た道、戻れなくなっちゃってるわよ」
ジュディス「何かいい方法がないか探してみましょ」
船長室から出て、書斎らしき部屋に来た。ランプが左右に着いたドアがある。ドアに近づいたカロルがあれ?っとおかしいなぁと言う顔をした。
カロル「さっき、ボクが調べた時、鍵かかってたのに……?」
どうやら、開かなかったはずのドアが、何故か開くようになっていたらしい。ユーリが、こっから戻れるなと呟いた。レイヴンが呪いが解けたなと茶化す。リタが慌ててそれを否定してバカ言ってないで行くわよ!と叫んだ。レイヴンはへいへいと気の抜けた返事をする。
外に出てみると、船の3階にあたる部分らしく、甲板に降りることが出来れば、フィエルティア号に戻ることが出来る。カロルがそれに気づくが下に降りる方法がないらしかった。どこから見つけたのか、ジュディスが縄ばしごをもって現れた。リタがそれどうしたの?と聞く。
ジュディス「たぶん、こんなこともあるかと思って、この船の中から持ってきたの」
と彼女は答えた。実に用意周到であるとレナは思う。リタは変なのと呟くのだった。カロルがよし、船に戻ろうと勢いよく立ち上がる。その反動で、下に落ちそうになって慌てていた。レナは急いでカロルの手を引く。リタがそれを見てバカっぽい……と囁いた。縄ばしごを使って無事に下に降り、ユーリ達はフィエルティア号に戻った。
戻ったユーリ達にカウフマンが、船の
カウフマン「まったく次々トラブルに巻き込まれて……ここに残ったのが私じゃなかったら、あんたたち置いていくわよ」
彼女は溜息をつきながら、ユーリ達に小言を言った。ユーリはそりゃ悪かった。今後の教訓にするよと返した。それにカウフマンはまったくもう……と呟く。
ジュディス「
カウフマン「それが、急に動きだしたのよね。訳が分からないわ」
レイヴン「やっぱり、呪いってやつ?」
エステル「きっと、アーセルム号の人が
少し現実味のない話をするエステルに、リタがあるはずがない!と否定する。続けて死んだ人間の意思が働くなんて……と怯えるように言った。
ユーリ「扉は開かなくなる、
レイヴンの言う通りかもなと、これまで起きた不可解なことを思い出したながら彼は頷く。
レナ「案外、エステルの言う通りなのかもね」
少女は、エステルの話に同意した。
パティ「世界は広い、まだまだ人の知識ではわからんことは多いのじゃあ」
リタは違うったら違うの!と叫ぶと、カロルに思いっきりチョップした。カロルが痛みに頭をおさえる。理不尽な八つ当たりにあったカロルは、なんでボク……と涙声で呟いた。
カウフマン「それしても、みんな無事でよかったわよ」
ユーリ「うちの
ユーリはたった今、リタの八つ当たりで撃沈したカロルを見た。パティが、なんだか悩ましい顔でうーむと唸る。カウフマンがどうしたの?とパティにたずねた。
パティ「故障の原因は分からんが、どっちにしても相当ガタがきとるのじゃ。こんな古いポンコツ
今の
その後船は順調に航行し、甲板にいた人たちの目にノードポリカの港が見え始めた。
ジュディス「あれがノードポリカね」
カロル「うん、別名、闘技場都市!」
エステル「かつては罪人同士を戦わせ、貴族たちの熱狂と狂乱を呼んだ。現在はギルド、
エステルが本で読んで身につけた知識を披露する。
カロル「
カロルが
レナ(花火……久しぶりに見たなぁ)
ジュディスが、あら綺麗とうっとりとしている。
レイヴン「毎日がお祭り騒ぎってとこか、こりゃいいわ」
パティ「花火にお祭りにおでん、とってもマッチなのじゃ」
パティはもぐもぐとおでんをお頬張っていた。レイヴンがどれ俺様にも一本と、パティのおでんを取ろうと手を伸ばす、それの手をパティははたいた。レイヴンはケチねぇという顔をした。傍から見ていたユーリが、あんたは遊びで来てんじゃねぇだろとつっこむ。レイヴンは、そうだった下っ端はつらいの〜と呟いた。
カロル「ドンの使者なんだからベリウスに失礼の無いようにね!」
レイヴンの方を振り向いて、カロルは念を押す。
レイヴン「なんだよ少年。俺様いつも礼を弁えてるぜ。うひゃひゃひゃ」
レナ(うーん、不安だな)
パティ「大勢で旅をするのはにぎやかそうでいいの」
少し羨ましそうな顔をするパティに、リタがうるさいだけだってのと返した。
カウフマン「おかけで依頼は無事完了よ。約束どおり、積荷を降ろしたらフィエルティア号はあなたたちにあげるわ」
カロル「やったね!ありがとう。大事にするよ」
カロルは嬉しそうに笑った。
ユーリ「それでコゴール砂漠ってのはここから、まだ遠いのか?」
場所を知っているジュディスが、ノードポリカのずっと西ねと答える。
カロル「え、でも途中に大きな山があるんじゃなかったっけ?」
レナ「それって歩きじゃ大変じゃない?近くまで船で行けたりしない?」
少女の問いに、ジュディスはきっと無理ねと返す。
ジュディス「砂漠に行くこと自体珍しいのに船がつけるところあるとは思えない」
少女は、そっかと返した。
リタ「ね、本当に行くつもり?前も言ったけど、本当に危険なところなのよ。そんなところにあんた行かせるわけには……じゃなくて……!」
エステルが心配でたまらない彼女は、顔を手で覆いながら言葉を紡ぐが、素直になれなくて言葉が上手く出てこない。パティが入港するのじゃと皆に知らせて、船はノードポリカの港に着船した。
―闘技場都市 ノードポリカ
カウフマンは積荷を降ろし終わると、桟橋を歩くユーリ達にご苦労様どうもねと声をかけた。カロルがこちらこそ大助かりだよと返す。ユーリがお互い様ってやつだと付け加える。カウフマンの後ろに痩せた男性が駆け寄ってきた。いつもお世話になっておりますとカウフマンに言って平身低頭した。
カウフマン「またどこかの遺跡発掘?
男「い、遺跡発掘は、わ、私の生き甲斐、ですから」
カウフマンと男が話しているのをみて、リタがあれ誰?とレイヴンに聞く。レイヴンは
リタ「ねぇ、前に
ユーリが
リタ「そこに
と、話を聞いていたのだろうカウフマンが、強い口調で遺構の門は完全に白よと言い切った。ユーリがなんでそう言い切れるんだ?と問う。レイヴンが温厚で、まじめに、こつこつと。それが売りのギルドだならなぁと
カウフマン「じゃ、もう行くわね。フィエルティア号、大事に使ってあげて。
ユーリがああと返事する。最後に
パティ「うちにはうちのやることがあるのじゃ」
レナが宝探し?と言えば、パティはじゃのと頷く。
パティ「色々と世話になったな」
カロル「うん。こちらこそ、船の操縦ありがとう」
パティ「それじゃあ達者でな。道中気をつけろ」
ユーリがお前がなと返し、パティはどこかへ駆け出して行った。
レイヴン「んじゃこっちはこっちの仕事してきますかね」
ジュディス「手紙、届けるのよね?ベリウスに」
レイヴンはそそと返す。カロルがボク達も行ってみようよと提案する。
ユーリ「そうだな。フェローの事、なんか知ってそうだしな。挨拶がてら、おっさんをダシにして会ってみようぜ」
カロル提案に、ユーリは頷く。
レイヴン「だだ漏れで聞こえてるんだが……それにしても……挨拶ねぇ」
おっさんは呆れつつ、渋い顔をした。
カロル「何?なんかあるの?」
レイヴンの様子が気になったカロルが聞くが、レイヴンはいや?なーんも?とはぐらかした。
エステル「べリウスさんはどこにいるのです?」
カロル「
ユーリ達、まず闘技場に向かった。