目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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ノードポリカ

―闘技場 ベリウス私室前

 

 ユーリ達はベリウスの部屋の前まで来ていた。ドアの傍にいる戦士の殿堂(パレストラーレ)の一員であろう人が、立ち入りは控えろと注意する。

カロル「そのベリウスさんに会いに来たんです」

カロルの言葉になんだって?お前たちは誰だ?と、男はたずねる。

カロル「ギルド、凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)だよ」

カロルは男にそう伝えた。

男「……聞かない名前だな。主との約束はあるか?」

レナ(聞かない名前……ね。そりゃ最近できたばっかのギルドだし、仕方ないわよね)

カロルはえ?や、約束?と露骨に焦り出す。

男「残念ながら、我が主は約束のない者とは会わない」

レイヴン「ドン・ホワイトホースの使いの者でも?」

男はドン……と呟き、顔を引締めこれは失礼と一言謝った。

男「我が名はナッツ。この街の統領(ドーチェ)代理を務めている。我が主への用向きならば私か承ろう」

レイヴン「すまないねぇ、一応ベリウスさんに直接、渡せってドンから言われてんだ」

レイヴンはドンから預かった封書をヒラヒラさせる。

ナッツ「そうか……しかしながら、ベリウス様は新月の晩しか人に会われない。できれば、次の新月の晩に来てもらいたいのだが……」

リタが次の新月か……と呟く。カロルはなんで新月の晩だけ?と不思議そうにした。

リタ「そういう主義なんでしょ。わかんないわよ、他人の考え方なんて」

彼女はそっぽ向いて、カロルに言った。

ジュディス「満月はつい最近だったし、新月はまだまだ先ね」

ジュディスの言葉に、レイヴンは出直しますかとみんなに言った。カロルも居ないんなら仕方ないよねとレイヴンに同意する。ナッツは、わざわざ悪かったなと首領(ボス)の代わりに謝る。ドンの使者が来たことは、ベリウスに伝えてくれるらしい。レイヴンは頼むわとお願いした。

レナ「じゃあ、今の内に砂漠の情報を集めるってのはどうかな?」

少女の提案にカロルは頷き、フェローの情報もねと付け加えた。

リタ「あたしはエアルクレーネの情報探したいんだけど」

エステル「これだけ、人の集まる場所なら期待できそうですね」

エステルはニッコリと微笑んだ。

レイヴン「おっさんは先に宿に行ってて良い?とりあえずドンに経過報告の手紙出しとくわ」

ユーリはああと頷く。レイヴンはその場を後にした。リタがじゃああたしらも行こと皆に言って、闘技場から出た。

 

 ある程度情報収集し、レイヴンが待っているだろうとユーリ達は宿屋の前に来ていた。宿屋のおばちゃんが、お泊まりかい?とユーリにたずねてきた。ユーリが、連れが来ていると思うんだけど……と言えば、おばちゃんは首を傾げて今日はまだ誰も来てないけどねと返ってきた。

ユーリ「……ふらふらとしょうのないおっさんだな」

呆れながら彼は呟いた。

エステル「だったら、もう少しいろいろお話聞いて回りませんか?」

彼女が持ち掛ければ、ユーリはだなと頷いた。

 街で聞き込みをしていると、パティを見かけた。何してるんだろ?とカロルが様子を見る。一緒に様子を見ていたエステルが買い物みたいですねと囁いた。パティに対する街の人たちの態度がどこがぎこちない。どうやらパティがアイフリードの孫なのではないかと思っているらしい。カロルがえ?孫?と首を斜めにする。街の人はパティにもううちに買いにこないで下さいと言った。

パティ「それは……うちがアイフリードの孫だからかの?」

パティは街の人に背を向けた。街の人はうちは言いけれど、他のお客さんが気にするから……と気まずそうにする。そばにいたお客は、続けるように話した。その内容は、ギルドの義に反し、民間人を殺戮した人物の孫だからということだ。パティは何も言えない。

レナ(あれは、アイフリード達が悪いわけじゃない。巻き込まれたんだ。帝国の実験に……。帝国が隠蔽して、今街の人達が知っている話にしたんだ。けど、その家族だからとパティを除け者にするのは違うっ)

話を聞いていた少女はグッと手を握り、パティ達の前へ進む。

レナ「随分と、くっだらない話をしてるね」

街の人は何だい?と少女の方に振り向く。

レナ「私と変わらない歳の子に、なんの責任があるの?この子が直接なにか悪いことでもした?」

パティ「……レナ、そうカリカリするな。いつものことなのじゃ」

いつものこと、その言葉に少女は唇を噛む。

リタ「あんたね、この子はあんたのことを思って……」

リタはパティの方へ歩きながら言った。

パティ「心配せんでも、うちはすぐにこの街を出ていくのじゃ」

レナ(……どうして、パティはなにも、何も悪くないのにっ)

んじゃのとパティはユーリに手を振ると、どこかに走っていってしまった。

リタのあ、ちょっとあんた……と、伸ばした手が空気を掴んだ。少し間を開けて、リタが……まったくと呟く、

エステル「……パティがアイフリードの孫って……どういうことでしょう?」

レナ「そのまんまの意味なんでしょう?誰も知りえない家族がいたんじゃない、アイフリードには」

少女はパティ自身がその人であることを知っていてわざと的はずれな予測をする。

カロル「そんな話聞いたことないけど……本当なのかな?」

ユーリ「さぁ……どうだろうな。にしても、アイフリードってそこまで評判悪いのか?」

カロル「ブラックホープ号事件でギルドの信用を地に貶めたから、ギルドの関係者は悪くいう人が多いよね」

カロルの答えに、なるほどなとユーリは眉をひそめた。それから、ユーリは宿屋に戻ろうと踵を返して進みだす。

エステル「あ……ユーリ。パティ、ほっといていいんです?」

彼女は心配そうな顔をしていた。

ジュディス「あの子のことよ。強く生きるわ、きっと」

ユーリ「ああ、それより早く帰らないとおっさん待ちくたびれてまた悪さを始めかねないぜ」

エステルはそうですねと、歯切れ悪く言った。皆、宿屋に帰る中、レナは俯いていた。気づいたジュディスが、置いていくわよ?とレナに声をかける。レナはハッとした表情で、ユーリ立ちに追いつくように走った。

 

 宿屋の前に行けば、さっきおばちゃんがいる。おばちゃんはユーリを見るなり、もしかして、アンタのお連れさんって派手な服装のへらへらした人かい?とたずねる。ユーリはああ、そのヘラヘラだと同意する。おばちゃんはそうかいと確認をとると、お代はもらってるから、好きに休んでおくれなとにこやかに中へ通してくれた。休むように皆にユーリが声をかけ、それぞれ自由時間となった。

 少女は、なんとなく寝れなかった。いや、理由はわかっていた。近づいている、ベリウスとエステルの事が。やはり人が死ぬと言うのは悲しいとレナは思う。だからこそ、ベリウスを出来れば助けたいと願う。けれど、その方法が……、思いつかない。このままでは、助けることなど出来ないと、子供でも分かることだ。先回りして魔狩りの剣を止める……とか?なら、途中でユーリ達と別れないといけない。私、一人で、あの人数のそれも強者揃い達を止めることが出来る?ベリウスでさえ、苦戦したのに?……現実的じゃ、ないのかな。少女は、一旦思考を止めて寝ている人を起こさないように身動ぎする。寝る前の考え事は完全に目を冴えてさせてしまった。仕方なく外の空気を吸おうと、寝ている仲間を起こさないように細心の注意を払いながら、寝具から出た。

 少女が外に出ると、船の下に誰かいるのが見えた。記憶を振り返る限り、おそらくユーリとエステルだろう。何気に人と被ることが多いなぁなんて思いながら、レナは石像を通り過ぎてユーリ達とは違う方の桟橋へ歩く。時折吹く潮風は海の匂いを運び、少女に爽やかな気持ちを与える。ふと上を見れば、他の星よりも特に輝く星が見えた。

レナ(あれは……凜々の明星。確か、昔話があるんだっけ?その話に満月の子って名前が出るんだよね。詳しくは覚えてないけど)

レナはある程度歩いたところで立ち止まり、深呼吸をした。少し冷えた空気が不安でいっぱいだった心を軽くしてくれた気がした。ふと後ろから足音がして振り返ると、ジュディスが居た。

レナ「……ジュディス、どうしたの?」

少し驚きながらも少女は、何かあったのかなと思いジュディスの方を見上げる。

ジュディス「何も。ただ、レナが外に出ていくのを見たから、気になったの」

いつもの調子で彼女はニコリと微笑う。

レナ「そっか。ありがとう。考え事してたんだけど、上手くまとまらなくて、ね。だから気分転換に外の空気を吸おうと思って」

海の方に視線を戻した少女の顔は、少女の後ろに立っているジュディスからは見えない。

ジュディス「そうなのね。よければ、話してみたら?」

予想外の提案に少女は軽く目を見開く。

レナ「えっ……でも、その、話せない事だから」

気まずそうにするレナに、ジュディスはそうとだけ返して、空を見上げた。

レナ「……ごめんね。ジュディスの事を信用していないとか信頼していないなんてことは無いの。ただ、私が悩んでいることは、誰であっても話せないことだから」

少しの沈黙を切り裂くように、レナは話す。さっきの言い方は、ジュディスを傷つけたかもしれないと少女は思った。せっかくの善意を断ってしまったから。

ジュディス「いいのよ、別に。気にしてないわ。女の子は秘密があって普通だもの」

そんな少女の気持ちを知ってか知らずか、ジュディスは確かに優しさを感じる温かな声で言った。おちゃめに、ウィンク付きだ。レナはふふっと笑って、ありがとうと言うのだった。

ジュディス「さぁ……そろそろ戻りましょ?あの人達が心配するんじゃないかしら?」

レナ「そうだね、戻ろうか」

レナとジュディスはその場を後にした。

 

―翌日

 

 宿屋から外に出てきたユーリ達に最初に聞こえたのは怒鳴り声だった。ユーリ達は足を止める。見ている限り、どうやら喧嘩らしい。喧嘩している男性二人は剣を構えて対峙していた。その傍で、喧嘩を仲裁しているラーギィがいた。しかし、外野は黙ってろと男性はいってラーギィに剣を向ける、その瞬間ユーリは駆け出しラーギィに向けられた剣を弾いた。

ユーリ「物騒なもん振り回すなよ」

と言った彼に向かって、もう一人の男性がユーリに剣を向けた。同じようにジュディスが割って入り槍で剣を弾く。ジュディスに剣を弾かれた男は驚いて後ろに退く。

ジュディス「私が悪いのなら後で謝るわ。あなた達が悪いのだとは思うけれど」

彼女はにこやかに言い切った。男性二人は場が悪いと思ったのか舌打ちをしてバツの悪そうな顔で去っていった。エステルが、だいじょうぶです?とラーギィに声をかける。ラーギィはご親切にどうもと頭を下げる。

ラーギィ「あ、あなた方は、た、確か、カウフマンさんと一緒におられた……」

カロル「ギルド、凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)だよ!」

少年は元気よく堂々と名前を宣伝した。リタからちゃっかり宣伝してるしとツッコミが入る。ジュディスは、あらいいじゃない?とニコニコしている。

ユーリ「あんたは……遺構の門(ルーインズゲート)のラーギィだっけ?ケンカを止めたいんならまずは腕っ節つけな」

ラーギィ「あ、はい、すみません……。あ、あの、皆さんを見込んで、お願いしたいことが、ありまして……」

カロル「遺構の門(ルーインズゲート)のお願いなら放っておけないね」

ユーリ「ま、内容にもよるな。なんだ?お願いって」

ラーギィ「こ、ここで話すのはちょっと……。と、闘技場まで、来てください。そ、そこでお話します」

といって、ラーギィは闘技場に走っていった。

レイヴン「人に聞かれたくない話か……。なんなヤバそうだねぇ」

彼はどこか怪しいと腰にある武器を触る。

カロル「でも、遺構の門(ルーインズゲート)に顔が通れば、ギルドでの名も上がるし……」

ジュディス「欲張るとひとつひとつがおろそかになるわよ。今の私たちの仕事は……」

レナ「フェローの探索とエステルの護衛……だもんね」

中途半端になるとジュディスはカロルに注意し、今やるべき事をレナがしめす。

カロル「そうだね……うん、気をつける」

カロルは納得し、反省した。

エステル「でも、話聞いてから、受けるかどうか決めても遅くないのでは?」

エステルの提案に、ユーリはそうだなぁと悩む。

リタ「しょうもない話だったら、断るわよ。あたしたち、それどころじゃないんだから」

彼女はすっぱりと言い切った。ユーリは闘技場の方を向いて、とりあえず話聞くだけでもするかと皆と闘技場の中へ向かった。

 

 ユーリ達は闘技場に入り、ラーギィが待っているであろう場所に向かう。先程見た姿がそこにあった。

ユーリ「受けるかどうかはまだ決めてないぜ。話を聞いてからだ」

ラーギィ「じ、実は、戦士の殿堂(パレストラーレ)をの、乗っ取ろうとしている男を倒していただきたいんです」

少女の目がすぅと細くなる。カロルは、乗っ取り!?この街を!?と、ビックリしている。

ジュディス「いきなり、物騒な話ね、それ」

リタ「でも、なんであんたがそれを止めようとしてんの?別のギルドのことだし、ほっとけばいいじゃない」

リタは怪訝そうな顔をしている。

ラーギィ「パ、戦士の殿堂(パレストラーレ)には、と、闘技場遺跡の調査を、させてもらっていまして」

カロルそれに、そっかと呟く。

カロル「そういや、この街、すっごく古いんだよね」

少年は納得した表情をする。

ラーギィ「も、もし別の人間が上に立って、こ、この街との縁が切れたら、始祖の隷長(エンテレケイア)に申し訳ないです」

レナ(始祖の隷長(エンテレケイア)……ここでその話が出てくるんだったか)

カロルは始祖の隷長(エンテレケイア)ってなに?と初めて聞く単語に不思議そうにしている。

ラーギィ「あ、すみません……ご、ご存知ないですか。こ、この街を作った古い一族で、我がギルドとこの街の渡りをつけてくれたと聞いています」

ユーリは、ふーん、古い一族……ねと囁く。

カロル「それって……クリティア族のこと?」

カロルはジュディスを見上げて聞く。ジュディスは一瞬考える素振りをして何も言わない。

レイブン「んで、どこの誰なのよ、その物騒なヤツって」

彼は少し脱線した話を、元の話に戻す。

ラーギィ「と、闘技場のチャンピオンです」

リタは、はあ?なに、それ?と不可解だと声を出す。

ラーギィ「や、奴は大会に参加し、正面から戦士の殿堂(パレストラーレ)に挑んできたそうです。そ、そして、大会で勝ち続け、ベリウスに急接近しているのです。と、とても危険な奴です、

ベリウスの近くからは排除しなければ……」

レイブン「そりゃ、戦士の殿堂(パレストラーレ)も、追い出すに追い出せないわ」

ユーリ「で、早い話が、オレたちが大会に出て、そいつに勝てって話なんだな」

ラーギィ「え、ええ、きょ、恐縮です」

話を聞いていたリタは、まわりぐどい……と呟く。せっかちなところがある彼女のことだ、直接相手をぶっ飛ばしたいと考えているかもしれない、なんてレナは思う。

リタ「そいつの目的って本当に闘技場の乗っ取りなわけ?」

ラーギィ「もも、もちろん、おお、男の背後には、海凶(リヴァイアサン)の爪がいるんです!海凶(リヴァイアサン)の爪は、この闘技場を資金源にして、ギ、ギルド制圧を……!」

大きい声を出したからか、ラーギィはごほごほと咳き込んだ。

ユーリ「キュモールの野郎あたりが考えてそうな話だな……」

ユーリの言葉にカロルはまさか……と呟く。

レナ「ありえない話ではないでしょ?現にキュモールと海凶(リヴァイアサン)の爪は繋がってる」

腕を組んで少女は言う。

ユーリ「さぁ、薮をつついたら、何が出てくるのかね……」

ユーリは唇を噛む。エステルが胸の前で拳を握りしめて叫んだ。

エステル「どちらにせよ、海凶(リヴァイアサン)の爪が関わっているのなら止めないと!帝国とギルドの関係が悪化するばかりです」

そう話す彼女をジュディスは冷ややかな目で見る。

ジュディス「フェローはどうするの?こんなのじゃいつ会えることか」

エステルはで、でも……と口ごもる。

ジュディス「あなた、本当にやりたい事ってなんなの?」

エステルは、本当にやりたいこと……と考え込む。

ラーギィ「あ、あの、すみません。難しいでしょうか?」

申し訳なさそうに眉を下げる彼に、ジュディスは難しくは無いわと声をかける。エステルはえ?と驚いてジュディスをみる。

ジュディス「やるんでしょう?話を聞いてしまったし」

ジュディスは少し微笑みながらエステルを見た。

カロル「う、うん。ギルドとしても放っておけない話、かもしれないし……」

レイブン「んじゃ、誰が出るわけ?」

カロル「エステルやリタ、レイブンにはお願いできないよ。これは遺構の門(ルーインズゲートに)に対して凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)が受ける話だもん」

こういう時、カロルはしっかりとしている。安易に頼らない所が。リタがそれじゃあ……と考える。

ユーリ「悪ぃけど、ジュディと、どこかでぶつかるのは勘弁だな」

戦闘で何度も見ているジュディスの強さを知っているからこそだった。

ジュディス「あら?私はやってもよかったのに、残念。今回はおとなしくしてるわ」

彼女は心底残念そうな声を出す。

ユーリ「ちなみに、レナもダメだからな」

レナ「えっ」

ちょっと出てみたいと思っていた少女は少しびっくりする。

ユーリ「あたりまえだろ?あぶねぇしな」

レナ「……わかった」

ちょっと不服そうな声で、少女は頷いた。

ユーリ「首領(ボス)が出るまでもない。オレで良いだろ?」

カロルは、少し張りきってそうな彼に、あ、うんと二つ返事を出すしかなかった。

ラーギィ「あの……お、お引き受けくださるので……」

ラーギィが確認をとる。

ユーリ「ああ。チャンピオン倒しゃギルドの名もあがるしな。オレ達にとっても悪い話じゃない」

ユーリの話に、カロルはうん、そうだねと頷く。

ラーギィ「では、じゅ、準備が出来たら、う、受付で、手続きしてください」

とういう訳で、ユーリは闘技場で受付を済ませ、参加することになった。

 

 ユーリ以外のレナ達は観客席で、ユーリを見守っていた。一人一人、挑戦者が出てくる度に観客の熱狂的な声が渦巻く。なんとフレンまで出できてエステル達はびっくりしながらもしばらく観戦を続けていたが、突如飛び入り参戦が入る。ユーリの前に立っていたのは、ザギだった。ザギが手を掲げると、何かが飛び出す。カロルが、うわあれ何!?と驚いた顔をしていた。

リタ「魔導器(ブラスティア)よ!あんな使い方するなんて……!」

彼女の表情は怒りに染まっている。

レイブン「なんか気持ち悪くて、動悸がするわ」

彼は胸を撫でながら嫌そうな目をした。ジュディスがあの魔導器(ブラスティア)……と呟くと、ユーリの方へ駆け出した。

レナ(死んでないと思ったけど、実際見るとしぶといと思っちゃうわね)

下に降りたジュディスを追いかけながら少女は思った。後ろからエステル達もついてくる。

ザギ「さぁ、この腕をぶちこんでやるぜ!ユーリ!」

物騒な腕を見せびらかして彼に、しつこいと嫌われるぜ!とユーリは言った。ユーリの言葉を遮るようにザギはユーリ達に襲いかかる。素早くレナは、皆にシャープネスとバリアーをかける。数々の魔物との戦闘で痛みには耐性がついてきた。この程度なら、少女にとっては問題ない。前衛をユーリとラピードとジュディス。中衛をレイブンとカロル。後衛をレナとエステルとリタで陣営をとる。しかしザギが狙っているのはユーリの為、基本ヘイトがユーリに向いている。それを引き剥がすようにラピードどジュディスが追撃していく。レイブンが弓矢で翻弄し、リタは魔術を放って追撃の援助をしていた。エステルは傷ついた仲間の傷を癒していく。少し苦戦を強いられたが、ザギを退ける。崩れ落ちるように膝をつき、魔導器(ブラスティア)の付いた腕を握ってザギは苦しみ出した。

リタ「制御しきれてない!あんな無茶な使い方するから!」

ザギは腕をおさえながら、魔導器(ブラスティア)風情が俺に逆らう気か!と文句を言って、腕をそのまま中に掲げる。それはエネルギーを放ち、魔物を封じ込めていたのであろう結界を壊した。ユーリ達のいる場所に一気に魔物が押し寄せる。ユーリはどうしてこんなところに!?と驚いている。

フレン「見世物のために捕まえてあった魔物だ!たぶん、今ので魔物を閉じ込めていた結界魔導器(ブラスティア)が壊れたんだ!」

彼はそう説明しながら走っていく。ザギは腕をおさえたまま苦しながら逃げていく。ジュディスが逃がさないわと追いかけようとした時、エステルが魔物に襲われ倒れる。仕方ないと、ユーリ達は魔物を掃除することにした。退治しても退治しても、次から次へも魔物が押し寄せてくる。みんな疲弊していた。

レイブン「こりゃ、ちょっとしんどいねぇ」

彼は構えていた弓をだらりとさげ、音を上げる。

リタ「口じゃなくて、手動かして」

そんなレイブンに厳しい口調で言いながら、リタは詠唱を始める。その瞬間、リタの詠唱を中心にいつもより強い光を広範囲に溢れ出す。カロルが異変に気づき、何!?とリタの方を見た。リタはそのまま魔術を放つと、いつもより威力が高く、ファイアーボールは大きな爆発になった。

リタ「ちょっと……どういうこと!?」

魔術を放った彼女は、想定外の威力に驚く。そしてエステルが持っていた紅い小箱を見た。エステルは持っていた箱をみてこの箱のせい……?と呟く。レナはその箱が奪われることを知っている。エステルの近くに待機していた少女は、だめ……!と声を上げて、箱を守ろうとした。しかしラーギィに邪魔ですと押し飛ばされ箱を取られた。押し飛ばされたレナは魔物が群がっている場所に転がる。リタがレナっ、あいつ!と驚いている。エステルは一瞬の出来事にポカンとしていたが、すぐに押し飛ばされたレナに駆け寄ろうとした。しかし、魔物が邪魔をしてレナのそばに行けない。

レナ「ッ!!……あ」

レナ(しまった!魔物に囲まれたっ)

少女は一瞬だけ恐怖を感じるがすぐに擦り傷だらけの体を起こし、素早く魔術の詠唱を始める。やらきゃやられる、それが魔物と戦うということ。

レナ「狂気と強欲の水流、旋嵐の如く逆巻く!……タイダルウェイブ!!……っ」

水の上級魔術。代償は侮れないが広範囲の魔術は、レナの周辺にいた魔物を一掃した。魔物が消えたのを見計らってエステルはレナに駆け寄る。

エステル「レナっ!だいじょうぶですか!?」

傷がないかあちこち見るエステルに少女は心配をかけまいとニコッと笑った。

レナ「うん!平気っ!」

大丈夫そうな少女をみて、エステルは一旦ほっとする。ユーリ達の頭上からフレンの部下を指揮する声が響く。

ユーリ「オレたちも行くぞ!」

ユーリはみんなに声をかける。

リタ「ジュディスと犬っころが先に行ったわよ」

指で方向をさしながら彼女はいった。

レナ(あの状況でよく見てたな……)

意外と周りを見ているリタに少女は感心する。

レイブン以外はその方向にかけ出す。置いていかれるレイブンはちょっとまっててばと言いながら後ろから走ってきていた。

 

 ノードポリカの出口に向かうとジュディスが居た。

ジュディス「街の外に逃げられたわ」

ユーリ「……逃げ足の早い野郎だ」

ユーリは舌打ちをする。ジュディスはまだラピードが追ってると指さし、つけくわえる。

ユーリ「ラピードが追いついてくれてるといいんだが」

カロル「それにしても、どうなってるの?なんで、ラーギィさんが?」

カロルは首を傾げる。

レイブン「どうやら、はめられたっぽい?」

ユーリ「らしいな。フレンの任務を妨害するためにオレ達をけしかけたんだろ」

エステルが任務……?と反応する。

ユーリ「お姫様を連れ返しにって事じゃなさそうだぜ。それなら闘技場の大会に出たりしないからな」

エステルはじゃあ一体何なんでしょうとユーリに聞く。

ユーリ「さぁな。ラーギィの思惑を邪魔するものだったてのは間違いなさそうだ」

カロル「でも、あの温厚そうなラーギィさんが……」

騙されたんだと落ち込むカロル。

リタ「箱を奪ってった時のあいつは温厚のなんてもんじゃなかったわよ」

先程のことを思い出してか苛立ちながら彼女は吐き捨てた。

レイブン「遺構の門(ルーインズゲート)は表向きの顔ってヤツかもねぇ……」

顎を撫でながらレイブンは言う。

レナ「……完全に騙されてたね」

(でも、あれはラーギィさん本人ではない。いつから入れ替わってたのかは知らないけど)

ジュディス「それにしてもあの箱を持っていくなんて」

彼女は不思議といった顔をしていた。

エステル「澄明の刻晶(クリアシエル)って一体、何だったんでしょう?」

エステルは疑問を口にする。

リタ「わかっているのはあたしの魔術があの箱のせいで暴走したってことくらいかしら。あんなふうに武醒魔導器(ボーディブラスティア)が制御できなかったのなんて初めて……」

リタは考えながら呟く。

レイブン「ねぇ、喋ってる暇あったら、ワンコ追いかけた方がいいんじゃないの?」

レイブンの提案に、ジュディスがそうね行きましょとのる。ユーリ達は今はラピードを追いかけることにした。

 

 街の外に出る時、ラピードが戻ってきた。エステルが、ラピードと嬉しそうにする。戻ってきたラピードは何かを咥えていた。ラピードを撫でるエステルを横目に、ジュディスがラピードから受け取り、皆に見せる。おそらくラーギィがみにつけていた布の切れ端だ。ユーリはそれがあれば匂いで追えるなとラピードを見る。ラピードは返事をするようにワンっとひと鳴きした。

リタ「あの箱を取り返さなきゃ!」

彼女は息巻く。そんな彼女に、それもあるんだけど……少女は続ける。

レイブン「ギルドは裏切りを許さない」

レイブンの言葉に、うん……とカロルが頷く。

ジュディス「西の山脈は旅支度がないまま通り抜けるのは無理だと思うから追い詰められそうよ」

ジュディスの情報を聞いて、ユーリはああとっ捕まえるぜと気合を入れる。エステルはラピードから離れると闘技場の方を向いて、大丈夫でしょうか?と気にかける。ジュディスは気になる?と聞く。

カロル「じゃ、エステル達はここで待ってる?」

闘技場を気にするエステルにカロルはそう提案する。エステルはえ?とカロルを見る。

レイブン「これはギルドの問題だしな。お嬢ちゃん達が着いてくる理由は、ま、ないわな」

リタ「ゴメン、エステル。あたしは行くわ。あの箱が気になるし。それにあの箱盗んだバカに落とし前つけたいから」

リタの話を聞いて、エステルはわたしは……と悩む。ユーリは自分で決めなと言う。エステルは決心が着いたようで、行きますと答えた。

エステル「騎士団を妨害しようとしたのなら何か帝国にも関係あるかもしれないから」

ユーリはエステルの答えにそっかと返す。

ユーリ「ま、闘技場の方は大丈夫だろ。フレンが上手くやるさ」

リタ「じゃあ、準備が整ったら早速追いかけよ」

ユーリ達は西の方へ向かった。

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