目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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カドスの喉笛

 先導し走るラピードをユーリ達は追いかける。途中、疲れているエステル達を待ちながらも走り続け、やがて山肌にぽっかりと口を開けている薄暗い洞窟の中へ入っていった。そこは、カドスの喉笛と呼ばれている場所だった。

 

―カドスの喉笛

 

辺りを見渡したリタが、見当たらないわねと呟く。ここを進んだんでしょうかとエステルは言った。

レイブン「これを抜けて山の向こうに逃げたってこと?」

彼は首をひねる。

カロル「でも、ここはカドスの喉笛って言われている洞窟で、プロテプスって強い魔物が棲んでて危険なとこなんだって。前にナンが言ってた」

カロルの話を聞いてジュディスが口を開く。

ジュディス「それを知らなくて進んで行ったのかしら」

レナ「私にはそんな命知らずな人には見えないけど。案外近くに潜んで、その場をやり過ごそうとしてると思う」

ラピードがワン!と吠え、走り出し岩陰に隠れていた男に噛み付いて引きずり出した。

ラーギィ「あわわわ……は、はなして、く、ください」

最初はじたばたとしていたが、観念したらしい。

ユーリ「レナの予想通りだったな。隠れてオレたちをやり過ごすつもりだったらしいな」

レイブンはパチパチっと気合を入れるように手を鳴らす。

レイブン「さぁて。じっくり話を聞かせてもらわないとな」

ユーリ「オレたちを闘技場に立たせてどうするつもりだったんだ」

レイブンとユーリはラーギィに詰め寄る。

リタ「とにかく、箱を返しなさい!」

そう言われたラーギィは、仕方ないですねと囁くとちょっと手を掲げた。そのとたん、赤目が数人ユーリ達の前に現れた。エステルは、海凶(リヴァイアサン)の爪!?と驚く。彼らは声もなくユーリ達に襲いかかった。

彼らに弱いと判断されたのか、真っ先にレナに赤目が一人飛びかかる。素早い動きに避けきれないと判断した少女は、腰に帯刀していたダガーナイフを抜いて刃を受け止めた。しかし力に差があるのは当たり前。受け止めていた刃をいなすと同時に詠唱していた魔術を発動させた。

レナ「っ……フォトン!」

瞬間、光がレナと敵の間に集まり弾ける。ほんの少しの目くらましと攻撃だった。赤目は薄暗い洞窟での急な眩しさに目が眩んだようで、後ろに少しよろける。レナはその間にバックステップを踏んで、敵と距離を取った。

レナ「……蒼き命……以下省略!アクアレイザー!」

魔術により赤目の足元から上へ水流が発生する。宙に投げ出され、狭い洞窟のため天井にぶつかり赤目は為す術なく地面に向かって落ちた。起き上がる様子は無い。少女はほっとした。周りを見れば、ユーリやジュディスが他の赤目たちを制圧している。さすが戦闘マニア?だなと少女は思った。赤目たちが撤退したところでユーリは顎に手を当て、遺構の門(ルーインズゲート)海凶(リヴァイアサン)の爪はつながってたってところかと呟く。

リタ「手伝うふりして、研究所のものかすめ取って横流ししてたのね……」

リタは肩を震わせて、ゆるせない……あいつら……と激怒する。

カロル「正しいギルドで有名な遺構の門(ルーインズゲート)がそんな悪さをするなんて……」

そう呟くカロルの横を通り抜けてジュディスが先を歩き出す。あわててカロルは危ないってばと声をかける。ジュディスは振り返って、あらでも追わないと逃がしちゃうわと返した。

カロル「さっきも言ったでしょ、危険な魔物が棲んでるって」

レイブンもカロルの意見に賛成なのか、もうやめとこうぜと止める。

レイブン「俺様、ベリウスに手紙渡す仕事まだなのにノードポリカから離れちゃったら。またドンにしんどい仕事、回されちゃう」

おっさんはゲンナリとする。

リタ「あたしは追いかけるわよ。あんなヤツに遺跡から出た大切な魔導器(ブラスティア)を好き勝手にさせないわ!あの箱も返してもらう!」

そう意気込む彼女に、エステルも私も行きます!と頷く。

リタ「何言ってんの!あんたは待ってなさい」

リタはエステルに振り返る。エステルは待ちませんと首を横に振る。頑固な姫様にユーリは笑う。

ユーリ「こりゃ凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)としてはついて行かざるを得ないぜ」

ユーリはカロルに目配せする。

カロル「……そうだね、エステルの護衛がボクたちの仕事だもんね」

カロルは渋々、ギルドの仕事だからと頷く。

レナ「……なんとかなるよ」

ジュディス「みんなと一緒なら、ね」

レイブン以外の皆は洞窟の先へ歩き出す。

レイブン「ん〜俺様行かなくていい?」

そう聞くおっさんに、ユーリは適当にああと返事をして、ドンのお使いがんばれよとあしらう。

レイブンはユーリの返しに、不満そうな声を出してなんだよ〜引き止めてくれよ〜と悲しそうに言ってユーリ達を追いかけた。

 洞窟の先を進んでいくと、よっこいせと声が聞こえた。レイブンがなんか聞こえなかった?とみんなに声をかける。皆が立ち止まると、ここなのじゃとまた声が聞こえた。突然現れた人影にカロルはびっくりして、その姿を確認するとパティ?と首を傾げた。

パティ「おっ……また会ったの」

ユーリ「そんなところから出て来て、やっぱりアイフリードのお宝を探してるのか」

パティはうむうむと頷く。

カロル「ねぇ、そのお宝ってどんなものなの?」

パティ「聞いて驚け、それは麗しの星 (マリス・ステラ)なのじゃ!」

パティは腰に手を当てドヤ顔で言った。

レナ(……少し記憶が戻ってきてるのね)

リタは聞いたことない言葉に何それ?と博識であるエステルに聞く。エステルも聞いた事のない物だったらしく、さぁ?と言葉に詰まっていた。カロルは、エステルも知らない物なんて……と呟く。仕方ないと、パティがカロル達に説明する。

パティ「麗しの星 (マリス・ステラ)はアイフリードのお宝の中でも、なによりも貴重なものなのじゃ!」

ユーリ「で、その麗しの星 (マリス・ステラ)とやらってお宝は見つかったのか?」

パティは首を横に振る。

パティ「宝とは簡単に見つからないから宝というのじゃ」

パティの言葉に、リタはへんなの〜と言った。

カロル「……ねぇ、ノードポリカで聞いたパティがアイフリードの孫って……本当?」

眉を寄せて、恐る恐るパティに確認をとる。レイブンは知らなかったみたいで、なによそうなのお嬢ちゃん?とパティを見た。

レイブン「盟友に孫がいたと知ったらドン、どんな顔するかね」

興味津々なレイブンに、そう言えばとエステルが話し出す。

エステル「ドンとアイフリードはユニオン結成以来のお友達なんでしたよね」

カロル「でもさ……嘘でしょ?アイフリードの孫なんて」

どうやら少年は信じきれないみたいだ。

カロル「だって、そんな話、一度も聞いたことないし」

カロルの言葉に、パティは本当、なのじゃ!と自信満々に言ったかと思えば、たぶんと不安そうにつけ加えた。エステルはたぶん……?どういうことですと不思議そうにする。

レナ(記憶……喪失だものね……)

パティ「たぶんというのは推測のことなのじゃ」

たぶんという言葉の意味を答えるパティに、リタが詰め寄る。

リタ「エステルは、なんで、自分のおじいさんのことを推測で話してるのかやって聞いてるのよ」

パティは誤魔化しがきかないと分かったのか、あうと困った声を出し正直に話す。

パティ「それはうちが記憶喪失だから、なのじゃ」

カロル「記憶……」

リタ「喪失……」

カロルとリタはオウム返しして言葉を失う。

カロル「……じゃあ、ある意味レナと同じだね」

急に話を振られたレナは、え……あ、うん今は戻ってるけどねと返す。

レナ(……私の場合、一応嘘の記憶喪失だったから、心が痛い……)

パティ「なんじゃそうだったのか?とりあえず、そういうことなのじゃ」

レイブン「じゃあ、アイフリードの孫ってのは、本当かどうかわからないってこと?」

レイブンの疑問に、それだけは絶対に本当なのじゃ!……たぶん……とパティは顔を俯かせた。

リタ「ああっ、もおっ!絶対なのかたぶんなのかどっちよ!」

パティのどっちつかずの反応に、リタは少し苛立つ。

パティ「わかんないから、麗しの星 (マリス・ステラ)を探してるのじゃ」

話を聞いていたユーリはつまりと話をまとめる。

ユーリ「記憶を取り戻すために、じいさんかもしれないアイフリードに会いたい。そのアイフリードを探し出すために麗しの星 (マリス・ステラ)っていうお宝を探して回っている、ってことか?」

パティはのじゃと頷く。

パティ「いつの日か祖父ちゃんに会えるのじゃ」

カロルはでも……と会えないかもしれない可能性に眉を下げた。

ジュディス「そんなことより、紅の小箱、追いかけなくていいのかしら?」

ジュディスに指摘されて、カロルはあっそうだった!と思い出す。ユーリ達は急いで走り出す。その後ろをパティが着いてきていた。気づいたリタが、あんた何ついてきてんのよと振り返る。

パティ「うちもこっちへ行くつもりだったのじゃ」と答えた。

エステルが膝に手を付き、パティの視線に合わせて、だったら一緒に行きましょうと誘った。首を縦に振り、それがいいのじゃとパティは誘いに乗る。

ユーリ「……買い物に行くのとはわけが違うんだぞ?」

ユーリはパティのことを案じてそう言った。パティは承知の上なのじゃと言って、むしろ何かあったら力になるぞと頼りげのある顔をした。ジュディスが、まぁ頼もしいとにこりと微笑む。

 

 ラピードを先頭に、ラーギィを追いかける。ついにラーギィにラピードが追いつき、バウッとうなるように吠えた。ラピードに怯えたラーギィは、無様に転ける。瞬間、輝きが噴出し始めた。その光は、エアルに似ている。パティはなんなのじゃあれはと目の前の景色に不思議そうにした。エステルは、似たような現象にエアル……?とパティと同じように不思議そうに首を傾げる。

リタ「ケーブ・モックほど同じだわ!ここもエアルクレーネなの?」

尋常じゃないエアルの量に、レイブンはこりゃどうすんだ?と言った。ユーリが強行突破!と言うが、ジュディスは無理そうねと却下した。

エステル「です!この量のエアルに触れるのは危険です!」

ジュディスの言葉に頷きながら、行こうとしたユーリを止める。ユーリ達がいる場所とは反対側の方いるラーギィは、助かったと先に行こうとする。しかし、その先もエアルが吹き出し、洞窟内の地面全体が揺れる。揺れにカロルがうわっとバランスを崩しかける。

レナ「っ……さすがにこれは離れた方がいいと思うんだけど」

そう少女が言った時、どこから来たのか鳥型の魔物がエアルクレーネに降り立つ。

レナ(……魔物って、始祖の隷長(エンテレケイア)のことだったのね)

ユーリ「あれがカロルの言ってた魔物か!?」

カロル「ち、違う……あんな魔物、見たことない……」

首を横にブンブン振って、カロルは怯えていた。パティが走り出し、近寄れるギリギリまで魔物に近づく。威嚇のように魔物は翼をはためかせ、パティはおうっと後ろに身を引く。魔物は大きな声を上げ、噴き出しているエアルを食べているように見える。リタはエアルを食べた……?と目を見張っていた。圧倒されるほどの威嚇……エステル達は体がうごかない。ユーリがヤバいな……と額に汗を垂らした時、魔物は再び飛び立ちどこかへ行ってしまった。魔物が去ったからか、ユーリ達は体が動くようになった。ラーギィも逃げていき、ジュディスが苛立ったようにいい加減にしてと走ろうとするが、目の前にエアルクレーネを警戒して立ち止まる。それを見たリタは、調べる為に自らエアルクレーネに入っていく。

エステル「危ないです、リタ!」

リタ「大丈夫よ。この程度の濃度なら、害はないわ」

エステルの心配に、平気よと返して彼女はエアルクレーネを調べ始める。

レイブン「今のはいったい、なんだったんだぁ?」

リタ「暴走したエアルクレーネをさっきの魔物が正常化した……でも、つまりエアルを制御してるってことで……ケーブ・モックの時に、あいつが剣でやったのと……おんなじ!?」

ぶつぶつといいながら考えているリタに、ユーリが通っても大丈夫か?と聞く。

リタ「え、あ、そ、そうね。たぶん……」

急に話しかけられたリタは戸惑いながら答えた。パティがよしっ突撃なのじゃ!と意気込み、かけ出す。元気なパティに、エステルが足元気をつけてくださいと注意した。

ジュディス「気になるかしら?」

ジュディスの問いかけにリタがそりゃそうよと即答する。

リタ「あれを調べるために、旅してるんだし……」

ユーリは腰に手を当て、どうすんだリタ?といった。

リタ「わかってるわよ、わかってる、今はあいつを追う時……でも……」

レナ「……リタ、それって逃げるものなの?」

なかなか踏ん切りがつかない彼女に、レナはエアルクレーネを指して聞く。苛立ちながら、逃げるわけないでしょ!とリタは叫んで、あ……そっか……と後で調べればいいんだとリタは気づく。そのまま、いいわ行きましょうとリタは先を促した。ユーリはよし決まったなとニヤッとする。まだ肩で息をしているカロルに、大丈夫か?とユーリが聞くと、大丈夫だよと姿勢を直した。ユーリ達は先を急いだ。

 

 洞窟のさらに奥を進んでいくと、ラーギィが膝に手を付き肩で息をしていた。カロルがいた!と叫ぶ。よく見れば近くに、コウモリに似た魔物の群れが飛んでいる。ラピードがラーギィに飛びかかる勢いで近づき、ラーギィは思わず箱を落とした。すかさずラピードは箱をユーリ達の方へしっぽを器用に使って弾く。ユーリは箱を拾い上げた。

ユーリ「よくやった、ラピード。鬼ごっこは終わりだな」

ラーギィは悔しげにくっと奥歯に力を入れた。

ラーギィ「こここ、ここは……ミーのリアルなパワーを……!」

ラーギィから光が溢れる。ボンッと音がして目を開ければ、そこにはイエガーがいた。カロルはうそっと仰け反り、エステルは口に手を当て驚いている。

レナ(やっと姿を現したか……)

ユーリ「ふん。そういう仕掛けか」

エステル「どういうことです?ラーギィさんに変装して……?」

エステルは若干混乱しながらも今起きたことを理解しようと首を捻っている。

ジュディス「今はあれこれと考えてる暇はなさそうよ」

イエガー「おーコワイで〜す。ミーはラゴウみたいになりたくないですヨ」

彼は恐ろしそうに身をすくめて見せた。

レナ(……彼はあの日の事を、知っている?)

エステル「ラゴウ……?ラゴウがどうしたんですか?」

イエガー「ちょっとビフォアにラゴウの死体がダングレストの川下でファインドされたんですよ。ミーもああはなりたくネー、ってことですヨ」

それぞれえっ、と驚いた表情をしている。その中で、ユーリとレナだけが微動だにしない。

レナ(……誰がやったのか薄々気づいてるってところかな)

エステル「ラゴウが……死んだ……?どうして?」

彼女は重ねてイエガーに訪ねる。

イエガー「それはミーの口からはキャンノットスピークよ」

ユーリも何も言わない。イエガーはニヤリと笑うと、魔物の群れに近づく。エステルが、そっちは!と叫ぶ。ユーリ達の前に、赤と緑の少女が表れる。

イエガー「ゴーシュ、ドロワット、後は任せましたヨー」

少女達は、了解!と返事をすると、魔物の群れを片付け始めた。その隙に、イエガーが逃げていく。カロルが逃げられちゃう!と指をさす。ユーリが逃がすかよ!とイエガーを追いかける。

イエガー「イエー、また会いましょう、シーユーネクストタイムね!」

追いかけるも虚しく、イエガーは颯爽とその場を去っていく。ゴーシュとドロワットが攻撃を受けて地面に尻もちをつく。魔物の群れだったものは一体化していた。カロルが、こいつだ!プテロプスだよ!と声を上げる。魔物は構わず襲いかかってきた。

 群れになっているのなら散らせばいい、そう考えたユーリ達は攻撃して散らそうとしたがそう簡単にはいかない。攻撃を避けながら、地道に魔物の体力を削っていき何とか倒すことが出来た。エステルが、ゴーシュとドロワットに治癒術をかけようとする。二人は敵の施しは受けないと拒否した。でもその傷では……!とエステルは心配する。二人は構わずに、煙幕をまき、姿を消した。その煙は独特で臭いがキツい。臭いのせいで、ラピードも追えなかった。煙が消えた頃に、ユーリ達はイエガー達の後を追った。

 

 洞窟の出口に近づいた時、眩い光と熱気がユーリ達を迎えた。リタが何この熱気……とだるそうにしている。

パティ「……洞窟で山の向こうに抜けてしまったのじゃ」

カロルがそれってつまり……とつぶやく。ジュディスがコゴール砂漠だわと言った。

レイブン「あらら……来ちゃったわねぇ」

コゴール砂漠……フェローがいる……とユーリは囁く。吹き付ける熱風に他のみんなは呆然としていた。

エステル「……わたし……やっぱりフェローに会いに行きます」

カロル「待って……!エステル一人を行かせられないよ。今のボクたちの仕事、エステルの護衛なんだから」

レイブン「……まあ、盗られた箱も戻ってきたし、もういいんでない?」

レナ「そうだね。今のところはとりあえず後回しでもいいと思う」

ユーリ「いつまでも、あいつらを追っかけてるわけにもいかねーし。しゃあねぇ……次会ったらケリつけるぜ」

リタ「ちょっと待って、本当に行くつもり?わかってんの?砂漠よ?暑いのよ?死ぬわよ?なめてない?」

彼女は、行くと言ったエステルに詰め寄りながらまくし立てる。エステルは、その勢いに負けながらもわかってるつもりですと返す。

ジュディス「……砂漠は三つの地域に分かれてるの」

急なジュディスの発言に、リタは、は?と彼女を見た。ジュディスは構わず続ける。

ジュディス「砂漠西側の狭い地域が山麓部、もっとも暑さが過酷な中央部、東部の巨山部の三つね」

リタ「ちょ、ちょっと……?」

リタは戸惑っている。

ジュディス「……山麓部と中央部の中間地点にオアシスの街があるわ」

リタは何の話よ?とジュディスに聞く。

ジュディス「前に友達と行ったことがあるの。水場のそばに栄えたいい街よ」

彼女は後ろに手を組んで、ニコリと笑った。

ユーリ「込み入った話はとりあえず、そこでしようってことだよな?」

ジュディスの意図をユーリが代わりに言ってまとめた。ジュディスはこくりと頷いた。

レイブン「それがいい、おっさん底冷えしていかんのよ」

レイブンは手をすり合わせてながら震えている。

カロル「パティはどうするの?探してる宝物……麗しの星 (マリス・ステラ)だっけ?その街に手がかりがあるとは限らないと思うんだけど」

パティ「なに、人が入れば、それはことごとく手がかりになるのじゃ」

パティはカロルの方を向き、人差し指をたててそう言った。ジュディスは、そうね、人は普通に住んでいるわと答える。ジュディスの言葉を聞いて、うちも共にいくのじゃとパティは言う。エステルは難しい顔をしているリタに声をかける。長く思案してからリタは首を縦に振る。

リタ「……わかったわよ。とりあえず、そこまで行きましょ」

イエガーを追いかけるのにエアルクレーネを調べるのを後回ししてた為、砂漠に行く前にユーリ達は一度、数人に分かれて洞窟の中へ引き返すことにした。

 

 エアルクレーネの場所まで戻ってきたユーリ、レナ、エステル、リタ、カロル、ラピードの前に、先客がいたようで度々会うデュークがいた。ちなみにそれ以外の仲間たちはお留守番だ。エステルがあの人はとデュークを見てつぶやく。

レナ(あ、デューク……)

リタ「ここのエアルクレーネなら、化け物が抑えたわよ」

リタの言葉に、デュークはそれは聞いていると返す。聞いたって誰から……?とカロルは首を傾げた。

エステル「あの時、ここにいたのってラーギィ、いえイエガーだけ……」

まさか、イエガーと……!とカロルは推察する。

デューク「エアルクレーネに……近づくな、と言ったはずだ」

ユーリ「悪いね、こちとら偶然にもそいつを見つけたもんでね」

デューク「ならば、すぐに立ち去るがいい。二度と来るな」

どこか警告するような、怒っているような、僅かにそう感じられる態度で、彼はユーリ達にそう告げるて去っていく。慌ててリタが、ちょっと待ってよ!と呼ぶが、デュークはそのままどこかへ姿を消してしまった。

レナ(エステルが関係してるんだろうけど……。今は聞ける雰囲気じゃなかったし……聞くよりも、クリティア族の里で調べた方が色々と分かりそうだな)

リタはあまりにも無愛想なデュークに、なんなのあの態度と憤る。

ユーリ「せっかく戻ってきたんだ、調べてからでもいいぜ」

ユーリの提案に、リタは冗談と答えた。

リタ「あたしたち、優先しなきゃいけないこと、たくさんあんじゃないの」

ユーリは、オレたちはなと返す。リタはユーリの言葉にどこか不服そうにする。

レナ(……まったく、あえてなんだろうけどイジワルね)

エステルが、わたしたち、ですと言い換えた。エステルはリタの気持ちに気づいていたのだろう。リタはエステルと微笑んだ。ユーリは、そうだな、ほら行くぜと頷き先を行く。

 

―水と黄砂の街 マンタイク

 

 ジュディス達と合流したユーリ達は、洞窟から出て熱砂の上を歩き、街へ辿り着いた。人の通りはほぼ無いに等しく、時折吹く風に揺れる椰子の葉の音よく聞こえた。その状況に、静かな街だなとユーリが呟く。でも、暑い街よ……と気だるげにリタは言った。少し歩いて周りを見ていくと、ところどころ騎士が立っている見受けられた。

カロル「こんなところにも騎士がいる……」

ジュディス「少なくとも、前来た時はあんな物騒な人たちはいなかったわね」

パティ「それじゃあ、うちは宝の手がかりを探すから、バイバイなのじゃ」

パティはユーリ達に振り向くとそう告げる。

カロル「もう行っちゃうの?」

どこか寂しそう?に少年は首を傾げる。

パティ「なんじゃ、もう少しいて欲しいか?」

カロルをからかうように言った。

レイヴン「ま、楽しかったけど、パティちゃんにはパティちゃんの事情があるのよね〜」

レイヴンの言葉にパティはのじゃと頷くと、行くのじゃニコリと笑った。レナは気おつけてねと声をかければ、パティは駆け出して行った。

ユーリ「とりあえず、自由行動にしないか?」

リタ「賛成〜……何するにしてもちょっと休憩したい……」

暑さにやられてへとへとなリタはユーリの提案にのる。

ユーリ「じゃ、日が落ちたら宿屋の前で落ち合おうぜ」

ジュディスがわかったわと頷いた。カロルを先頭に宿屋に向かっていく。ユーリとレイヴンが何か話しているのを聞きながら、レナはどうしようか考えるのだった。

 宿屋でお水を貰い喉を潤したレナは、初めてのこの街を散歩することにした。砂漠の街らしい建築で、さらに歩いていくと椰子の木の間から水辺を見える。そこにエステルとユーリが何か話しているようだった。チラリと横目で見ながら通り過ぎ、街の中を歩いていく。やはり、どこに行っても必ずと言っていい程、騎士がいる。この数はおかしい気がした。家の中を監視しているような騎士が多い。

レナ(……やっぱり、キュモールの手がかかってるわね。街の人を監視してるなんて騎士のすること?)

少女があちこち散歩しているとジュディスとすれ違いかけた。

レナ「ジュディス、散歩?」

ジュディス「まぁね、ちょっと砂漠の方に行ってみたの」

レナ「そうなんだ。まぁ、下見って大事だもんね」

ジュディスはレナの言葉を聞いて軽く目を見開くと、ふふっと笑った。レナははてなマークを頭にうかべている。

ジュディス「ごめんなさいね。レナ、彼と同じことを言うものだから、ふふっ」

口元に手を当てて笑う彼女に、思い当たる人物を少女は見つける。

レナ「彼……って、ユーリ?」

ジュディス「ええ、彼も、下見は大事と言ったのよ。考え方はほんの少し、似ているのかもしれないわね」

ニコニコと語るジュディスに、そうかな?とレナは首を傾げた。

レナ「ほんの少しだけ似てるのかもね」

少女はニコリとジュディスに笑いかける。レナは、ジュディスに他も見て回るからと手を振ってまた後でと別れた。

 レナが歩いていると、手に何かを持って話しているエステルと、カロル。カロルの後ろにユーリとリタとレイヴンがいた。何があったんだろうとユーリ達に近づく。エステルが手に持っていたのは、少女の記憶に間違いがなければ彼女の母親の形見のブローチだった。

エステル「仕事の報酬です。きっと高値で売れると思います。ここまでありがとうございます」

彼女はそう言ってカロルに頭を下げた。カロルは突然のことに驚いている。

カロル「え、何言ってるの。まだエステルの依頼は終わってないのに……」

エステル「……みんなとはここでお別れです」

少し俯きながらそう言ったエステルに、カロルはどうしよう?とユーリ達を見る。

リタ「お別れって……あんたはどうすんのよ」

不安そうにカロルはエステルを見上げる。

ユーリ「一人で行く気か……?」

ユーリに問いにエステルは頷く。

エステル「フェローに会うのはわたしの個人的な願いですから」

カロルはすかさず、何言っての危険だって!と叫ぶ。エステルはだから、ですと答える。

エステル「これ以上みんなをわたしのわがままに巻き込めません」

レナ「……義をもってことを成せ、不義には罰を」

少女の急な発言に、エステルは顔を上げカロルはえ……?……あ、ボクたちの掟だねとレナを見る。

その後ろでいつの間にかいたジュディスがこくりと頷き背中を向けた。

ジュディス「どう考えても、エステル一人で砂漠の真ん真ん中に行かせるのは不義ね」

レナの思ったことを、ジュディスは言葉にした。リタは空を見上げている。

ユーリ「オレ、掟を破るほど度胸ねぇぞ、な、カロル」

名を呼ばれたカロルは、うん!と元気よく返事した。ジュディスはそういうことのようだけどとエステルに言う。

エステル「……わたし、とても嬉しいです。でも、やっぱりダメ……」

胸の前で手を祈るように握り、顔を横に背けてエステルは苦しそうな表情で拒否する。

リタ「待ちなさい、エステル!あんたらも何考えてんの?自然なめてない?」

ありえないっとリタはまくしたてる。

ユーリ「やばいからこそみんなで行かないとな」

レナ「そうそう、みんなで行けば怖くないってやつ?」

カロル「ボク、怖いけどエステルを放っとけないよ」

三人の砂漠へ行くことに関して肯定的な事に、リタはイライラしながらレイヴンに指をさす。

リタ「あんた!何とか言いなさいよ」

レイヴン「ここでごねたら俺一人であの街戻んないとダメでしょ?それもめんどくさいのよね」

やれやれと言わんばかりにおっさんはだるそうしている。

リタ「まったく、あんたたちと来たら……」

腰に手を当てリタはユーリ達に呆れる。リタはエステルにどうしてもいくの?と聞く。エステルは、はいと答える。

エステル「わたし、考えたんです。みんな自分たちのやるべき事を探して、やりたいことのために頑張ってる。でもわたしはそんな事考えてなかったかもって……わたしも自分の本当にやりたい事、やるべき事を見つけなきゃって思ったんです。そのためにも、自分で決めて、自分から始めたこの旅の目的を達したい。これは、けじめでもあるんです」

空を見上げながら目を閉じ、そしてユーリ達を見て、彼女は一気に話した。リタは観念したようだ。

リタ「……わかったわよ、入ってやろうじゃないの、砂漠の中央部に」

エステルはえ……?とリタを見る。

リタ「こんなガンコな連中、もうあたしには止めきれないわよ」

エステルは、リタと嬉しそうに頬をあからめる。

ユーリ「リタこそ、ついてくる必要ないだろ。エアルクレーネ調べるんじゃないのか?」

リタ「あんたたちみたいなバカほっとけるワケないでしょ。エアルクレーネは逃げないんだからあとでまた行くわよ」

彼女は仕方ないと微笑む。そして、ただし!と大きな声で念を押すように言った。

リタ「この街でちゃんと準備して、万全でいくわよ」

エステル「迷惑かけて、ゴメンなさい……」

レナ「この旅の最初からこうなる予定だったんだし……ね?」

と少女はカロルに目配りする。カロルはうんと頷いた。エステルはありがとうございますとユーリ達に頭を下げるのだった。ふと、カロルがジュディスがいないことに気づく、がすぐにジュディスは見つかった。話はまとまった?と彼女は歩きながら聞く。リタがとっくにと答える。

ジュディス「どうするの?」

エステル「行きます。砂漠の中央部に」

ジュディス「だと思って準備をお願いしておいたわ。宿屋で貸してくれるそうよ」

レナ(……なるほど、宿屋に行っていたのね。さすが気が利く)

レイヴン「この街から出る前に十分に休みを取った方がいいわね」

彼は後頭部で手を組みながら言う。リタが、おっさん休んでばっかりと呆れていた。レイヴンはそうねと返し、一緒に添い寝してくれる?と揶揄う。リタはレイヴンの足を思いっきり、ギリギリと踏みつけた。見ていてとても痛そうだ。他のみんなは宿屋に入っていく、レイヴンはいたたと顔をゆがめながらその後を着いて行った。

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