目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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毒の意味

―コゴール砂漠中央部

 

 ユーリ達はバウルから降りるとジュディスの案内でフェローの元へ歩いていく。風に侵食されてできたらしい細い石の橋を渡り、フェローがいるであろう岩場に進んだ。

レナ「ここにフェローがいるんだよね」

ジュディス「おそらくね。砂漠では会えなかったけれどここでは会えると思う」

カロル「大丈夫かなぁ……いきなり襲ってきたりしない?」

不安げなカロルに容赦なくジュディスは言う。

ジュディス「保証はできないわ。私たち次第じゃないかしら」

パティ「そうならないようにがんばろうってことなのじゃ」

ユーリ「カロル、大丈夫か?」

気にかけるユーリに、顔を俯かせていたカロルは顔を上げる。

カロル「大丈夫くないけど……いかなきゃ……」

レイヴン「それにしてもずいぶんと殺風景なとこに住んでるのねぇ。フェローは」

パンッパンッと手を鳴らしレイヴンは見渡してながら言った。

ジュディス「かつてここにも一面、緑が生い茂っていたというわ」

エステル「どうしてそれがこんな岩ばかりの砂漠になったんです?」

ジュディス「さぁそこまでは知らないわ」

リタ「エステル、ホントに行くの?殺されちゃうかもしれないのに」

エステル「はい。もう……覚悟は決めていますから」

そう言って先を行くエステルにレナは着いていく。続いてユーリとリタ以外のみんなが続いた。

 さらに先に進み、先のとがった石の柱が周りにいくつもある岩場に出た。見渡すが、フェローらしき姿は見当たらない。

カロル「フェローいないね。お、お休みなんじゃない……なんて」

ジュディスが上空を見上げて声を出した。

ジュディス「フェロー。いるんでしょう?」

ジュディスの呼び掛けに応じるように、一同の上に影がかかった。カロルは上を見てわああああ!!と叫び声を上げた。尖った岩の上に、巨大なフェローがいた。

フェロー「忌まわしき毒よ。遂に我が下に来たか!」

ユーリ「……お出ましか。現れるなり毒呼ばわりとはご挨拶だな、フェロー!」

ユーリはフェローを睨む。

フェロー「何故我に会いに来た?我にとっておまえたちを消すことなど造作もないこと、わかっておろう」

レナ(……始祖の隷長(エンテレケイア)ってどうして、誤解されるようなことしちゃうのかしら)

少女はひっそりとため息をついた。

ユーリ「ちっ、あんたもこっちで語るタイプか?やるってんならしょうがねぇな」

剣を鞘から抜ぬいたユーリに、レナは慌てて止める。

レナ「ちょ、ストップ。ユーリ、落ち着いてってば!」

エステル「そうです!みんなもまってください!」

みんなの方に振り返ったエステルは再びフェローの方を向く。

エステル「お願いです、フェロー。話をさせてください」

エステルは必死にフェローに懇願する。

レナ「私からもお願いします」

エステルの隣に立ち、少女は頭を下げる。エステルは思わずレナと呟いた。

フェロー「死を恐れるのか、小さい者よ。そなたの死なる我を?」

エステル「怖いです。でも自分が何者かも知らないまま死ぬのはもっと怖いです。べリウスはあなたに会って運命を確かめろと言いました。私は自分の運命が知りたいんです。私が始祖の隷長(エンテレケイア)にとって危険だといえのは分かりました。でもあなたは世界の毒と……わたしの力は何?満月の子とはなんなんです?本当にわたしが生きていることが許されないのなら……死んだっていい。でも!せめてどうして死ななければならないのか……教えてください!お願いです!」

しばしの間、フェローはじっとエステルを見つめていた。そして語り出す。

フェロー「かつてはここもエアルクレーネの恵みを受けた豊かな土地であった」

リタが前に進みでる。

リタ「ここにエアルクレーネがあったのね」

エステル「でも、それが何故こんなことに?」

フェロー「エアルの暴走とその後の枯渇がもたらした結果だ。何故エアルが暴走したか……それこそが満月の子が世界の毒とたる所以よ」

え……とエステルは小首を傾げる。

フェロー「満月の子の力はどの魔導器(ブラスティア)にも増してエアルクレーネを刺激する」

ユーリはどういう事だ?と問う。

リタ「……魔導器(ブラスティア)は術式によってエアルを活動力に変えるもの。なら、その魔導器(ブラスティア)を使わずに治癒術が使えるエステルはエアルを力に変える術式をその身に持ってるって事……ジュディスが狙っているのは特殊な術式の魔導器(ブラスティア)……つまり……エステルはその身に持つ特殊な術式で大量のエアルを消費する……そしてエアルクレーネは活動を強め、エアルが大量に放出される……あたしの仮説……間違ってて欲しかった……」

悲しそうにリタはその事実を裏付けていった。

わたしは……とエステルは俯く。

フェロー「その者の言うとおりだ。満月の子は力を使うたびに魔導器(ブラスティア)などとは比べものにならぬ程エアルを消費し、世界のエアルを乱す。世界にとって毒以外の何物でもない」

ユーリ「だから消すってか?そりゃ随分と気が短いな。え?フェローよ」

少し苛立ち紛れに彼は言う。

フェロー「これは世界全体の問題なのだ。そしてその者はその原因。座視するわけには行かぬ」

ユーリ「オレたちの不始末ならオレたちがやる」

パティ「そうなのじゃ。勝手に押し付けはゴメンなのじゃ」

フェローに臆することなくパティは言った。

フェロー「おまえたちは事の重大さが理解できていないのだ」

ユーリ「じゃあ聞くが、エステルが死んだからって何もかも解決するのかよ?」

フェロー「少なくともひとつは問題を取り除くことができる」

話は平行線で、どちらも譲る気は無い。ジュディスは一歩前に出た。

ジュディス「フェロー、ヘリオードで私は手を止め、ダングレストではあなたを止めたわ。最初は魔導器(ブラスティア)のはずが人間だったから。次は私自身が分からなくなったから。この子はあなたが言うような危険な存在とは思えなかったからよ」

フェロー「そうだ、ゆえに我はそなたに免じて見極めのための時間を与えた。その結果、新月の子が止めようとはしたが我は同胞べリウスを失うこととなった。もう十分だ。その力は滅びを招く」

ふーんとレイヴンが声を出す。

レイヴン「よくわかないんだけど力を使うのがまずいなら、使わなきゃいいだけじゃないの?」

フェロー「その娘が力を使わないという保証は無い」

ジュディス「……そうね。この子は目の前のことを見過ごせない子、きっとまた誰かのために使うでしょうね。だけど、その心があるかぎり害あるものとは言い切れないはず、彼女は魔導器(ブラスティア)とは違う。あなたにもそれがわかると思うけれど?」

フェロー「……心で世界は救えぬ」

ジュディスの言葉に僅かにたじろいだように感じたフェローは、少しの間を開けて言った。ずっと話を聞いて口を挟まなかった少女が、口を開いた。

レナ「フェロー、あなたが世界のために考えていることはよく分かったよ。だけど、どうしてその世界の中にエステルは含まれていないの?」

世界の為にと言っているがそこにエステルがいないのは筋が通らないんじゃないかと少女はフェローに言う。

フェロー「より大きなものを守るためには、切り捨てることも必要なのだ。新月の子、否、異空の子よ、そなたならすべてわかっているはずだ」

少女は体を揺らして、目を見張る。すべて?とユーリがレナを見る。レナは注目を浴びるをの感じた。

レナ「べリウスも同じようなことを言っていた。あなたたち始祖の隷長(エンテレケイア)は私が、何を知っているかを、知っているの?」

フェローは何も答えない。その事ではなく別の答えを示せと言っているように。一呼吸おいて、少女は考えを口にした。

レナ「切り捨てることも大事なのはわかる。だけど、エステルは違う。切り捨てるべきじゃない。ジュディスが言ったように、彼女には心がある。もし何かあれば、私が抑える。べリウスの時は出来なかったけれど、その時は命に変えたっていい」

命に変えたっていい、その部分にユーリの顔が少し険しくなるのがレナの視界の横にうつる。

フェロー「異空の子であるおまえなら、理解できると思ったが……」

少女に対してどこか呆れたような声だった。

ユーリ「何を切り捨てるかを決められるほど、おまえは偉いのかよ?」

ユーリは一歩前に出た。怒りを感じる声だった。少女の意見に対してそういう態度をとったことに、エステルを依然として否定する態度であることにも、ユーリは怒っていた。

フェロー「我らはおまえたちの想像も及ばぬほどの長きに渡り、忍耐と心労を重ねてきたのだ。わずかな時間でしか世界を捉えることのできぬ身で何を言うか!!」

一段と怒気を孕んだ声がユーリ達を襲う。負けじとジュディスはフェローを見上げる。

ジュディス「フェロー、聞いて。要するにエアルの暴走を抑える方法があればいいのでしょう?まだそれを探すための時間くらいあるはずよ」

ジュディス……と俯いていたエステルは彼女を見る。

ジュディス「それに、もし……エステルの力の影響が本当に限界にきたら……」

ジュディスは一呼吸おく。

ジュディス「約束通り私が殺すわ。それなら文句ないでしょう?」

カロル「ちょちょっと、ジュディス、本気で言ってるの!?」

ジュディス「あら、そうならないように凜々(ブレイブ)()明星(ェスペリア)がなんとかするでしょ?」

さらりと言ってのけたジュディスの言葉を理解するのにカロルはしばらく目を白黒させていたが、やがて理解が追いつくとその顔が輝いた。

カロル「え!?あ、そうか……うん、そうだ、そうだね!」

ユーリ「一本取られたな」

ユーリは苦笑気味に言った。

ユーリ「そういう訳だ。エステルのことも、世界のヤバさもそれがオレたち人間のせいだってならオレたち自身でケジメつける。それで駄目なら、丸焼きにでもなんでも好きにしたらいい」

フェローはジュディスに向かって、先程とは随分違う落ち着いた声で言う。

フェロー「……そなた変わったな。かつてのそなたなら……」

ジュディス「さぁどうなのかしら?でもそう言われて悪い気はしないわね」

ジュディスは肩をすくめた。

フェロー「……よかろう。だが忘れるな、時は尽きつつあるということを!」

会見の終わりを宣言するがごとく、フェローは翼を広げた。力強く空を叩くと一気に舞い上がる。リタがまって!と声を上げる。

リタ「術式がエアル暴走の原因っていうのなら、昔にも同じように暴走したことがあるはずでしょ。魔導器(ブラスティア)は古代文明で生み出された技術なんだから」

フェロー「罪を受け継ぐ者たちがる。そやつらを探すがよい。彼の者どもなら過去に何が起こったのか伝えているであろう」

リタにそう伝えると、フェローは砂煙を巻き上げながら飛び去っていき、やがて姿は見えなくなった。取り残されたユーリたちは、深い息を吐いて体の力を抜く。いつ命のやり取りになってもおかしくないほどの対話だった。

カロル「行っちゃった……」

エステルはフェローが居た空からユーリの方へ振り向く。

エステル「えっと、あの……ありがとうございます、ユーリ。それに……ジュディスとレナも」

エステルは次にレナとジュディスの方を向いた。

ユーリ「それはいいんだけどな」

その声は怒っているようだった。ユーリはエステルの前に立つ。エステルは不思議そうに、え?と少し首をかしげた。

ユーリ「死んだっていい?ふざけてんのか?」

真剣な眼差しを向ける彼に、エステルはごめんなさいと俯いた。

ユーリ「二度と言うなよ」

エステルはもう一度、反省するようにごめんなさいと言った。ユーリはレナを見る。

ユーリ「おまえもだ。命に変えたっていいなんて、言うな」

少女もごめんと謝罪をする。だがあの時の言葉は嘘偽りのない少女の覚悟と本心だった。

レナ(口に出すことはもうしないけど、私はエステルが誰かを傷つけずに済むのなら、命に変えてもいい)

先を歩き出すユーリの背を見つめながら少女は思う。ユーリの後を皆がつづき、少女も歩き出した。

 ユーリ達はバウルの元へと戻り、フィエルティア号の船室に集まった。

カロル「はぁ……どうなるかと思ったよ」

レイヴン「あーんなデカブツ相手によくまぁ話だけで済んだねぇ。おっさん心臓がどうにかなりそうだったわ」

相変わらず芝居かかった口調だった。

パティ「おっさんのくせに、度胸がないのじゃ」

レイヴン「ほんとう、パティちゃんはいつも肝が据わってるわね」

ユーリ「本当にエステルを殺すつもりなら問答無用でくればよかったはずだが……そこがどうにも解せないな」

壁に背を預けて立っているユーリが言う。

ジュディス「多分、フェローも迷ってたのよ。だから私たちがどう振舞うか見定めるために砂漠では姿を消した」

カロル「ふぅん、思ったより悪いやつじゃなかったのかな?」

ユーリ「どうだかな。いざなりゃ、なんだってやるタイプと思うがな、オレは」

リタ「それはあんたも一緒でしょ」

リタはズバッとユーリに言い切る。ユーリは思わぬ反撃に少し間をあけて、かもなと認めた。

カロル「でもどうするの、ユーリ?あんなこと言っちゃって」

ユーリ「エアルが悪さすんのをどうにかする。それだけだろ?」

レナ「簡単に言うけど、手がかりがないんじゃどうしようもないんじゃないの?」

パティがうむうむ手がかりは大事なのじゃと首を縦に振った。

リタ「エアルの消費に関しては間違いなく術式が関わってるはずなのよ。昔の魔導器(ブラスティア)についてやその時に暴走が起きたかどうか、そう辺の情報があれば手がかりになるんだけど……」

エステル「過去の出来事については罪を償うものたちに聞け……フェローはそう言ってました」

ジュディス「魔導器(ブラスティア)を発明したのはクリティア族、つまり今も伝承を受け継ぐクリティア族に聞けという意味ね」

リタ「確かに、クリティア族が、魔導器(ブラスティア)を生み出したとは言われてるけど……」

ユーリ「けどクリティアの街テムザはもう滅んじまってるぜ」

リタの言葉に続けるようにユーリは言った。

パティ「他にもあれば話が早いんじゃがの」

パティはユーリを見上げる。

ジュディス「隠された街ミョルゾ。テムザよりずっと古い、クリティアの故郷。そして魔導器(ブラスティア)発祥の地」

レイヴン「ほへ〜、そんな街があるのね。もしかしてジュディスちゃんそのミョルゾってのどこにあるか知ってる?」

レイヴンがジュディスに訊く。さぁ?とジュディスは謎のように微笑んだ。リタがあれ、と声を上げる。

リタ「その名前に覚えがある……アスピオに来てたクリティア族の人が、なんかその名前をいってたような」

こめかみに手を当て、思い出すように言うリタに、エステルがまだアスピオにいるでしょうか?と呟く。

ユーリ「ま、当たってみるしかないな」

レナ「……そうだね」

カロル「ジュディス……一緒に来てくれる?」

ジュディス「……そうね。まだギルドのケジメが残ってるものね」

ユーリ「じゃ、アスピオに行くとするか」

ジュディスがバウルに次の目的地を伝えて空を泳ぎ出す。数十分ほどで、アスピオについた。

 

―魔術閉鎖都市アスピオ

 

 アスピオの街に着くと、リタが振り返って言った。

リタ「さすがに疲れたわね。とりあえず人探しは明日にしましょ」

レイヴン「賛成〜。久しぶりにまともなベッドで寝れられるわ〜」

レイヴンは後頭部に手を回す。

リタ「じゃあ、あたしの家に……」

と、リタが言いかけた時、カロルが待ってと口を挟んだ。カロルにみんなの視線が集まる。

カロル「先に話しておきたいことがあるんだ」

みんなの前に出るカロルは振り返ってジュディスを見た。察したジュディスが私の事ねと言う。エステルがカロル……と呼びかける。

レナ「これはギルドの話し合い、横槍はなしだよ」

レナはエステルを咎めた。エステルはそれ以上は何も言うことも無く成り行きを見守る姿勢をする。カロルは覚悟を決めたような顔で話し出した。

カロル「ボク、ずっと考えてた。ギルドとしてどうすべきなんだろうって。で、思ったんだ。やっぱりギルドとしてやっていくためにも決めなきゃいけないって」

ユーリ「どうするか決めたんだな?」

ユーリの言葉に、カロルは頷いた。

カロル「言ったよね。ギルドは掟を守ることが1番大事、掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも、それがギルドの誇りなんだって」

ジュディスは真剣な顔で、ええと頷いてみせる。

カロル「だから……、みんなで罰を受けよう」

え?とジュディスがキョトンとし、それはレナ以外のみんなもそうだった。レナはまるで分かっていたかのように、少し微笑んでいる。

カロル「ボク、ジュディスが一人で世界のためにがんばってるの知らなかった。知らなかったからって仲間を手伝ってあげなかったのは事実でしょ。だからボクも罰を受けなきゃ。ユーリ?」

話を振られたユーリは俺?と首を傾げる。

カロル「ユーリも自分の道だからって秘密にしてることがあった。それって仲間のためにならないでしょ」

ハッキリと言うカロルに、珍しくユーリがま、まぁな……と言葉に詰まる。

カロル「だから、罰受けないとね」

リタ「ものすごいこじつけ」

リタのツッコミが入る。

カロル「……掟は大事だよ。でも正しい事をしてるのに掟に反してるからって罰を与えるべきなのか……ホント言うとまだわからない……なら、みんなで罰を受けて全部やり直そうって思ったんだ。これじゃ、ダメ?」

さっきまで凛々しかったその顔は、自分の言葉に恥ずかしくなったのか照れくさそうな顔になる。

ユーリ「オレ、また秘密で何かするかもしれないぜ?」

カロル「信頼してもらえなくてそうなっちゃうんならしょうがないよ。それはボクが悪いんだ」

ユーリの問いにカロルははっきりと答える。

ジュディス「またギルドの必要としてる魔導器(ブラスティア)を破壊するかもしれないわよ?ギルドのために、という掟に反するわ」

カロル「でもそれは世界のためだもん。それに掟を守るためにギルドがあるワケじゃないもん。許容範囲じゃないかな」

ジュディスの問いにもカロルは即答した。

リタ「それって掟の意味あるの?」

呆れたように言いつつも、その顔は優しく笑っている。

レイヴン「はっはっは。そんなギルド聞いたことないわ。おもしろいじゃないの」

誰よりもギルド事情を知っている彼は、痛快そうに声を上げて笑った。

パティ「うむ、型にとらわれることはないのじゃ。自由がいいのじゃ」

パティは大きく頷いてニヤリと笑った。エステルもふふふと声を上げて嬉しそうに笑っている。

レナ「……そういうの、カロルらしくていいと思う」

少女は先程よりも口角を上げた。

ユーリ「カロル。おまえすごいな。オレは自分がどうするかってのは考えてたが、仲間としてどうしていくかって考えれてなかったかもしれない。オレには思いつかないけじめのつけ方だ」

カロル「ボ、ボクはただみんなと旅を続けたいだけなんだ。みんなの道と凜々(ブレイブ)()明星(ェスペリア)の道を同じにしたいだけなんだよ」

カロルは素直にユーリに褒められたのが嬉しく、照れくさそうに頭をかきながら言った。

ユーリ「そっか。そうだな。ジュディ、そういうことらしいぜ」

まるで困ったかのように眉を下げてジュディスに微笑むユーリ。

ジュディス「おかしな人たちね。あなたたちホントに……。でも……そういうの、嫌いじゃないわ」

レナの目にジュディスが心の底から笑ったように見えた。

カロル「じゃあ改めて凜々(ブレイブ)()明星(ェスペリア)、出発だね!」

リタ「なーんかご都合。ギルドってそんなもん?」

レイヴン「ま、ドンのギルドとはひと味違うねぇ」

エステル「でもなんか素敵です」

パティ「凜々(ブレイブ)()明星(ェスペリア)いいの」

そう言ったパティに、カロルはパティも入る?と誘う。しかし、パティは今はまだダメなのじゃと断った。カロルは潔く引き下がった。

カロル「そっか、パティは記憶を取り戻さなきゃなんないんだよね」

レイヴン「で、罰はどうなるのよ?」

レイヴンがカロルに聞く。カロルはあ!そっかと思い出したかのように声を上げて、考え始めた。

リタ「休まずに人探しってとこかな。あたしたちはウチで待ってる」

リタが口を挟んでサラッと決めていく。カロルがちょっと!勝手に決めないで……と抗議するが、何よというリタの怒った声にカロルは叩かれる!と頭を抱えた。文句ある?と、とてもいい笑顔で言うリタに、ユーリが笑って、ねぇよとカロルのかわりに返した。ジュディスも同意を示し、カロルは諦めたように了承した。

 その後、リタとエステルはリタの家で休み、レイヴンは別行動、ユーリとレナ、カロル、ジュディス、そしてラピードは例のクリティア族を探すことになった。街の人に聞き込みをし居場所が分かると、同じクリティア族であるジュディスの方が話しやすいのではとなり、ジュディスが一歩前に出て話しかけた。

ジュディス「こんにちは」

男性のクリティア族は、にこやかに笑ってジュディスを受け入れた。ジュディスは、自分の名前を名乗る。彼も、トートと名乗った。

ジュディス「あなた、ミョルゾについて、知っていることはない?私たち、ミョルゾへ行きたいの。ミョルゾがどこにあるのか……そしてどうすれば、そこへ辿り着けるのか、ね」

トート「辿り着いても、何もありゃしない。それなのに何をしに行くつもりなのさ」

不思議そうな感じで問う。

ジュディス「あら、クリティア族が自分の同胞の街に興味を持ったってのは行く理由にならない?」

トート「理由は分からなくもない。でも私は知らないんだな、これが」

どこかはぐらかすような言い方だった。

ジュディス「あなたの名前を聞いたことがあるわ、トート。人間の世界に残るクリティア族をミョルゾへいざなう導き手」

ユーリとカロルが驚いたように目を見開く。レナの表情は特に何も変わらない。

ジュディス「人間……彼らと一緒だから、教えてくれないの?」

トート「我が同胞以外にミョルゾへの道は教えるな、それが代々の掟だからな」

ジュディス「人間とかクリティア族とかよりも信用できるかでにないか、じゃないかしら。少なくとも彼らは信用に足る人たちだわ」

トート「……もう一度聞くが、なんのためにミョルゾを求める?」

険しい顔をして彼は訊ねた。

ユーリ「世界が色々とマズイ方向に向かってる。魔導器(ブラスティア)のせいでな。過去に何があったか、どうすれば止められるか、それを知るために行く。クリティアを含む、すべての人のため……ってところでどうだ?」

ユーリの答えを聞いて、トートは少し考えてから頷く。

トート「……いいだろう。そこであんたたちが答えを見つけられるかどうか保証はできないが、教えよう」

トートはミョルゾに行くための手順をユーリ立ちに伝える。

トート「まず、ミョルゾに行くためには、その道標となる鐘が必要だ」

ジュディスは、鐘?と首をかしげる。トートは頷くと続ける。

トート「そう。ヒピオニア大陸の南の洞窟に隠されている」

カロル「ヒピオニア大陸って言っても……広いよね?」

トート「洞窟は赤い花の咲く岸辺にある。それを目印にすればたどり着けるよ。それから、その洞窟の奥にある扉は我らクリティアにしか開くことができないから」

どういうこと?と、カロルが不思議そうにする。

ジュディス「大丈夫よ、そこはわたしがなんとかするわ」

そんなカロルにジュディスが答えた。

レナ「それで、その鐘をどうしたらいいの?」

ただ聞いてるだけでは役に立てないなと思い少女は聞く。

トート「まぁ、焦らないでくれ。人間はせっかちでいけないな。鐘を手に入れたら、エゴソーの森へ行くんだ」

カロル「エゴソーの森?それも……ヒピオニア大陸、だっけ?聞いたことある……」

ジュディス「そう、そこはクリティア族にとって神聖なる場所よ。やっぱりあそこがミョルゾに続く扉となる場所……」

ジュディスは思い当たるところがあるらしく呟いた。

トート「そこで鐘を使えばその扉が開く。ただ一つ、問題がある」

ユーリが問題?と聞き返す。トートはそうと頷く。

トート「今、エゴソーの森は謎の集団によって踏み荒らされている。連中は大勢で乗り込んだ上に妙な魔導器(ブラスティア)まで持ち込んでいる。目的がなんなのか分からないけどとても気がかりだよ」

トートは腕を組んだ。

ユーリ「ミョルゾへ行きたいなら、その連中をどうにかしろってことか」

トート「そういうこと。私たちの聖地をそっとしておいてもらいたいんだ」

ユーリ「なるほど。つまり、鐘を手に入れて、その整地ってところで謎の集団をぶっ飛ばして、鐘を鳴らせば扉は開くってことなんだな」

ユーリは話をまとめて、ニヤリと笑った。トートはそういうことだねと大きく頷く。

ジュディス「わかったわ……ありがとう」

トート「あなたの前途に幸多からんことを」

あなたにも……とジュディスは返すと、ユーリたちの方を向いて、みんなのところに戻りましょうと声をかけた。ユーリたちはその場を後にしてリタの家に向かった。

 リタの家に行くと、リタとエステルが迎えてくれる。座っていたエステルは立ち上がった。

エステル「何かわかりました?」

レナ「うん。エゴソーの森って所に、手がかりがあるみたい」

カロル「ここから南の大陸ヒピオニア大陸の西の方だったと思うよ」

レイヴン「その森にミョルゾってのがあるの?」

ジュディスが扉あるのよと答えた。はあ?扉?何それ?とリタはジュディスの顔を見つめる。

ユーリ「ミョルゾに通じる扉だとさ」

レナ「その扉を開けるための鐘が、ヒピオニア大陸の赤い花が咲く岸辺の洞窟に隠されているんだって」

ユーリ「とりあえず、行って見た方が早い」

出発を急かすようにユーリは言うが、カロルがその場に座り込み、その前に……休ませて……と疲れたと言わんばかりの顔をした。

ジュディス「一休みしてから出発かしら?」

カロルを気づかうようにジュディスは言う。ユーリがだってさとリタとエステルを見た。しょうがないなぁとリタは承諾した。座っていたパティがすくっと立った。

パティ「それじゃあ、その間にうちはお宝の手がかりがないか街を散策するのじゃあ」

レイヴン「おいおい、休んどいた方が……って行っちまったよ……」

駆け出していくパティをレイヴンが止めるが、パティが出ていく方が早かった。

ユーリ「とにかく、一休みしたら、そのヒピオニア大陸の洞窟ってやつ、探してみようぜ」

 リタの家の中で壁に背を預けて座っていたレナに影が降りかかってきて、レナが見上げるとジュディスが前に立っていた。

レナ「……ジュディス?どうしたの?」

少女の問いに答えるように、ジュディスは何かを手に持ってそれをレナに差し出した。それは、ベリウスの暴走の時、闘技場に落としてしまった白いリボンの髪留めだった。

ジュディス「これ、あなたのでしょう?落ちていたから拾っておいたの」

レナは少し驚きながらも頷くとジュディスからそれを受け取って、嬉しそうに微笑んだ。

レナ「うん。ありがとう」

ジュディス「どういたしまして」

ジュディスは手を後ろで組んで笑った。その後、ユーリのそろそろ行くぞ〜という声でジュディスとレナはリタの家から出た。

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