目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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ミョルゾを目指して

 ユーリに呼ばれ街の出口付近に行くと、他のみんなも集まっていた。最後に来たパティにカロルが聞く。

カロル「それでパティ、結局、麗しの星(マリス・ステラ)の手がかりは何か見つかった?」

パティ「うーむ、本は多いが、アイフリードの話はどこにもないのじゃ」

リタ「当たり前でしょ。この街は魔導器(ブラスティア)関連の類しか置いてないのよ」

パティ「しょうがないのじゃ。もう少しユーリたちと旅して手がかりを探すのじゃ」

今、アイフリードって言ったか?とどこからから声をかけられる。エステルがえっ?と驚いたように近づいてきた男性を見る。男性はパティをジロジロとみながら、あんた最近噂のアイフリードの孫なのか?と言った。パティは何も言わずに俯いてしまっている。

レナ(ここでも、か)

少女は若干イラつきながら男性を見た。男性はパティの態度に、肯定も否定もしないってことはそうなんだなと話を続ける。

男性「なるほどね。あんたがギルドの面汚しの孫か……なんだ、普通のガキだな」

パティは何も言わずに耐えている。

男性「なんとか言ったらどうだ?じいさんを弁護する言葉はないのか?そうか、庇えるような事実でもないわな、あれだけのことやってればな」

レナ(聞いていればなんだこの男は……)

少女の中でぷつんと何かが切れる音がした。レナはパティを庇うように前に出る。男性はなんだ?とレナを睨んだ。

レナ「さっきから黙って聞いてれば、いきなり話しかけてきたうえに何なの?失礼じゃない?よくも家族を亡くしている彼女に対してそんな酷いことが言えるもんだわ」

捲し立てるように淡々と冷たい声で詰める少女に、男性は何をそんなに怒ってるんだ?となんでもないような顔をした。いつの間にかユーリたちも男性のことを睨んでいる。

男性「だって、事実だしな。で?あんたらが新しい海精(セイレーン)の牙のギルド員なんだな?」

レナとパティの後ろにいるユーリ達を見渡したながら彼は言う。

カロル「ボ、ボクらは凜々(ブレイブ)明星(ヴェスペリア)だっ!」

カロルは咄嗟にそう言い返す。

男性「凜々(ブレイブ)明星(ヴェスペリア)?うさんくさいな。何をするギルドなんだ?」

男性はこれまたバカにするような声で問う。そう言われて、カロルはえ、えっと……それは……と言葉に詰まってしまう。

ユーリ「言えば、何かいい仕事を紹介してくれるのか?」

カロルのフォローをするようにユーリが口を開く。

男性「お、おまえらみたいにアイフリードの関係者とつるむ怪しい連中にやる仕事はないよ。……凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)ね。またギルドの品位を下げるろくでもないギルドが増えたわけだ」

どこまでもバカにしてくる男性に、リタが言い返す。

リタ「品位をさげてるのはどっちだか」

リタをみた男性は驚いて身を仰け反らせる。

男性「お、おまえ……リタ・モルディオ!?」

リタ「また、あたしがいない間に、この街もずいぶんと下卑た連中が増えてんのね。あ〜あ、同類と思われたら、こっちはいい迷惑。さ、行きましょ」

リタは男を一瞥して街の出口へ向かう。ユーリ達もその後に続いて歩き出した。男性はちょっ、まっ……と呼び止めようとする、そんな彼にレナとジュディスは立ち止まった。

ジュディス「まだ、何か言い足りないのかしら?」

ジュディスは男性を睨み、それに男性は怯んでい、いえ……と返す。そのまま立ち去ろうとする彼を、パティが悲しそうにうむくのを見ていた少女は服の裾を思いっきり引っ張り逃げられないようにした。力で負けないようにちゃっかり身体強化魔術を使っている。

レナ「ちょっと待って。まさか、謝りもせずに去る気?せめて、彼女に一言、謝ってから去りなさいよ」

男性は抵抗する。振り切られそうになるが、意地でも少女離さなかった。

男性「なんだよっ。しつこいな!」

レナ「……謝れって、言ってんのよ。聞こえなかった?」

男性の服を手繰り寄せ胸ぐらを掴むと、少女は真顔でそう告げた。ひっ、と男性から情けない声が聞こえ、次にわ、悪かったっと言うと、少女を突き飛ばし逃げていった。

カロル「でも、どうしよう……あの人、たぶん、言いふらすよ、きっと」

不安そうなカロルに、ユーリはへでもないと余裕な笑みを浮かべた。

ユーリ「構わねぇよ、そんなことで潰れるようだったら、とっくに潰れてるぜ、オレたち」

ジュディス「そうね。言いたいヤツには言わせておけばいいわ」

レナ「あんなゲスの話なんて、聞くヤツあんまりいないでしょ」

ユーリに続くように、ジュディスとレナが気にする必要は無いとカロルに言う。背を向けていたパティがユーリたちの方に振り返った。

パティ「うち……」

大方、一人で行動すると言うのだろうと察したユーリがその続きをわざと遮った。

ユーリ「ヒピオニア大陸の赤い花の咲き誇る岸辺、だっけか」

カロルを見て確認を取ったユーリに、カロルはあ、うんと返事をする。じゃあ、行ってみるかとユーリが歩き出し、みんなもそれに続いた。パティは変わらず浮かない顔をしていた。

 

―レナンスラ岩虚

 

 バウルに運んでもらい、上空からそれらしき場所を見つけたのをバウルから聞いたジュディスはみんなにそれを伝えて、降り立った。聞いていた通り、赤い花が咲き乱れている。カロルが不安そうに、ここ……だよね……?と辺りを見渡していた。ユーリもトートに聞いた話には合致してるが……と呟きながら、見渡している。

エステル「ヒピオニア大陸の赤い花の咲く岸辺、でしたよね?」

リタ「……そのトートって奴に嘘教えられたんじゃないの?」

レイヴン「それか、場所を間違えたかね」

レナ「話も本当だし、場所もあってるよ」

エステル「どうしてそう言い切れるんです?」

レナの言葉に不思議そうにするエステル、レナは内緒と唇に人差し指をあてた。ジュディスが何か見つけたようで、待ってとみんなに声をかける。仲間たちはジュディスの方を向いた。

ジュディス「ここから空気が流れこんでるわ……」

そう呟くジュディスの髪が、風に揺れた。

ユーリ「中が空洞になってるんだな」

リタがジュディスにどいて!と言うと、魔術を岩壁に打ち込んだ。岩が崩れ、砂塵が舞い、風によってそれがはれると空洞があらわになる。皆は、その空洞に近づいた。

レイヴン「まったく誰かね、こんな意地悪したのは」

ジュディス「あなたみたいな不審者が入らないようにフタしてあったのかもね」

ジュディスはレイヴンの方に振り返って言った。

レイヴン「ぐわっ、俺様狙い撃ち!?ヒドイな、ジュディスちゃん」

ショックという顔で身体をのけぞらせ、レイヴンは肩を落とす。と、パティがハッとして顔を俯かせる。その様子に、カロルがどうしたの?パティと声をかけた。

パティ「……なんでもないのじゃ……ちょっと……暗いのが怖かったのじゃ……」

動揺を隠して平然を装った声でカロルに返すパティ。

レナ(……記憶が、戻りかけてる?)

カロル「暗いのが怖いなんて、子どもだね」

カロルは気づかなかったようで、純粋にその言葉を信じたようだ。リタがあんたが言うか?とカロルにつっこむ。

ユーリ「怖かったら、ここで待っててもいいぞ」

パティを気遣ってユーリは言う。パティは平気じゃ、行くのじゃとユーリに伝えた。皆は、空洞の中へと入っていった。

 空洞の中は大きな洞窟になっており、少し肌寒い。薄暗い中、日差しが入っているところがあった。カロルが立ち止まって、不思議そうにしている。パティが導かれるように近づいた。沢山の墓の中に一際大きい墓があり、海賊帽子を被っており、文字が掘られている。周りは剣が何本も地面に突き刺してあった。

リタ「なに!!この石……!?こんな場所に、こんなたくさん気持ち悪い……」

リタには石にしかただそこにあるようにしか見えないのだろう、大声を上げていた。

レナ「……お墓だと思うけど」

レナはそう言って、パティがいる大きな石に方に近づく。その後ろでカロルがお墓!?とビクビクしていた。

レイヴン「やっぱり、場所間違えたんじゃないんかね」

レイヴンは後頭部に手を組んで、疑わしそうにしている。

エステル「だとしても……こんなにいっぱい……どうして……こんなところに……なぜ……!?」

エステルは驚き言葉につまる。

ジュディス「しかも……すごい、数……」

ジュディスも驚きつつも、不思議そうにしている。

ユーリ「まさか、クリティア族の街への道探しに来て、こんなところに来ちまうとは、な……」

パティはじっとお墓を見ている。ジュディスもお墓に何か彫られているを見つけた。レナは彫られた文字を読んで胸の前で手を握り、祈る。エステルが近寄って、文字を読み上げた。

エステル「……ブラックホープ号事件の被害者、ここに眠る……その死を悼み、その死者をここに葬るものなり」

カロル「これ全部、あのブラックホープ号の事件の犠牲者……!?」

リタ「つまり、アイフリードが殺した人の……お墓……ってことよ……ね?」

エステル「確かに……でも……こんなにとは……」

皆が絶句している中、パティは足の力が抜けたように地べたにペタンと座り込んだ。祈り終わったレナが、パティを落ち着かせるように肩に手を、もう片手をパティの手を握る。

パティ「でも……うち……まさか、こんな……」

身内がまさか、こんなにも人を殺めていたことにショックを隠せないでいる。

レナ(……殺したのは事実、だけど、海精(セイレーン)の牙はむしろ救った側なのに……)

言いたいけれど言えない、口にしようとすれば、音にならずに空気が抜けていくだけ。未来を変えることは許されない。その悔しさにレナは唇を噛む。

レイヴン「いくらなんでも、無理ないわ。この歳で、この現実を受け止めろって方が無茶だ」

ユーリはパティを心配そうに見ている。

カロル「この墓……誰が建てたんだろ?」

ユーリ「さぁ……事件の生き残りがいた、とかな……」

エステル「でも……なんて……こと」

パティは未だショックで動けない、ジュディス以外の皆も驚きと戸惑いで動けずにいる。ジュディスは墓に背を向けて空洞の先へと足を向けた。

ジュディス「……私はミョルゾの鍵を探すわ。あなたたちはここにいて」

カロルが驚いたようにえ、ひとりで?と言った。

ジュディス「こんなパティを連れ回す訳にはいかないでしょう?」

レナ「……私も行くよ。ジュディス一人なんて心配だもん」

ユーリは周囲の気配を探ってから話し出す。

ユーリ「……魔物の気配もねぇ。オレたちも行こう。ラピード、パティを見ててやってくれ」

ラピードは任せろと言わんばかりに、ワンっ!とひと鳴きした。

 ラピード、パティ以外の仲間たちはさらに奥へと進んでいき、ついに行き止まりにたどり着いた。カロルが行き止まりだねと呟く。

ユーリ「やっぱ、おっさんの言うとおり、間違えちまったのかもな」

レイヴン「でも、ここ以外に、赤い花が咲く岸辺なんてなかったよねぇ」

レイヴンは首を傾げる。

レナ「……ここにあるよ、場所も間違ってない。ただ、見えないだけ」

そうレナが小さく言った時、ジュディスがちょっといいかしら?とみんなの前に出る。そして、岩壁の前で目を瞑り唱え始めた。

ジュディス「……解けよ、まやかし。我選ばれし民、汝が待ちわびし者なり」

唱え終わると岩壁の一部分が一瞬だけ淡く光り、扉が出現した。エステルが目を見開いて、扉?と囁く。カロルは何したの……!?と呆気に取られている。

ジュディス「クリティア族には、物にこめられた情報を読みとるナギーグという古い力があるの。その力で、この扉を隠していた岩壁の幻惑を取り除く秘文を読み取ったの」

ジュディスは今自分がしたことをみんなに説明した。

ユーリ「なるほどな、トートのやつが言ってたクリティアにしか開けられない扉ってこれのことか」

ユーリは納得した顔をする。ジュディスが、さぁ中に入りましょうとみんなを誘った。

 中に入ると、広い空間になっており、その奥の台座に青い綺麗な鐘が鎮座していた。エステルとリタとカロルが台座に近づいて、鐘を見つめている。

カロル「もしかして、これがミョルゾへの扉の鍵かな」

ジュディス「そうね、鐘って言ってたから、きっとこれよね」

ジュディスはそう言って台座に近づいて、鐘を手に取った。

レイヴン「にしてもなんで鐘の隠し場所にお墓が作られてんのかねぇ」

レイヴンの言葉に台座に目をやっていたレナは振り返った。

レナ「偶然だと思うよ」

ユーリ「かもな。墓を作ったヤツはここが鐘の隠し場所だなんて知らなかったんだろ」

カロル「あんなふうに扉が見えなかったんだから仕方ないよ」

エステル「……もしかして洞窟の入口を塞いだのはあの墓を作った人かも……」

リタは何のために?と首をかげる。

ユーリ「さぁな、単なる墓荒らし対策かそれともなにか隠さなきゃならない別の理由があったのか……」

ジュディス「確かにトートは洞窟の入り口のことは何も言ってなかったし、そうかもね」

レイヴン「わざわざこんな辺鄙なとこに葬る……本当にそれだけでやるかねぇ」

顎触りながらレイヴンは言った。

ユーリ「何であれ、目的の鐘も手に入ったし、とりあえず、パティのところへ戻ろう」

パティの方へ歩き出すユーリにエステルが呼び止めた。

エステル「あのお墓の人たち……やっぱりアイフリードがやったんでしょうか……」

レナは俯いていた。ユーリはかもしれないなとだけ返す。エステルはその背中を見ながらパティのことを案じていた。

ユーリ「それがあいつの知りたがった現実だ」

ジュディス「そうね……でも、彼女にとってもあまりにも心の準備も何もなさすぎた……」

ユーリ「そうだな、早いとこ戻ってやろうぜ」

 ユーリたちはパティのところへ戻った。ラピードがユーリを見て、ワンっ!と鳴く。

ユーリ「ラピード、ご苦労さん。目的のものは手に入れてきたぜ」

ワン!とラピードは返事をする。レナはパティに近づいて声をかけた。

レナ「パティ、立てる?」

その後ろで、行くぞとユーリが声をかける。

パティ「……もう……行くんか……」

その声に覇気はない。まだ、ショックから立ち直っていないことは明確だった。レナの反対側のパティの隣にエステルが膝を付き、大丈夫です?と心配する。パティは、平気とは言っているが、とても平気そうには見えなかった。ユーリが無理すんなよと励ます。パティは立ち上がって、サイファーと呟いた。

レナ(……完全に記憶が戻った?)

ユーリの行けるか?という声を無視して、先に出口へとパティは歩いていく。

ユーリ「……あいつ、もしかして……」

ユーリも薄々気づいているようだった。

 バウルの元へ戻り、フィエルティア号へ乗ったユーリ達は、エゴソーの森を目指し始めていた。

ユーリ「……後は手に入れた鐘をエゴソーの森ってとこで鳴らせばいいだけだな」

ジュディスがそうねと肯定する。パティがユーリの元へ来て、話があると呼んだ。ユーリはなんだ……?と聞く。

パティ「うちは……この辺りでみんなとバイバイしたいのじゃ。そろそろ、ユーリたちと別れる潮時なのじゃ」

悲しそうな顔をしながらもそう告げるパティに、本気か?とユーリはパティを見る。レナはその様子を見ていた。

エステル「なぜ突然?わたしたちと一緒に行くのがイヤになったんです?」

パティは首を横に振り、そういうわけではないのじゃと否定する。

カロル「……もし、アイフリードのことでボクたちに気兼ねしてるんだったら」

パティ「これ以上、迷惑をかけるのはイヤなのじゃ。例え、みんなが気にしてなくても……うちがイヤなのじゃ」

カロルを遮ってパティは続けた。リタが、何を今更とそっぽを向く。リタ?とエステルが首を傾げれば、リタは続けた。

リタ「どいつもこいつも、迷惑なヤツばっかじゃない。あんた一人いたくらいで、この集団の何が変わるのよ」

パティはリタ姐と呟く。

ユーリ「本当にやるべきことを優先させるためだってなら、引き止めやしないんだけどな」

うちは……とパティはユーリを見る。

レイヴン「パティちゃんいなくなったら、ちょっち寂しいわね」

ウィンクしながらレイヴンは言う。

カロル「もうここまで一緒に来たら、遠慮なんかなしだよ」

エステル「一緒に砂漠も越えたし、たくさん一緒に戦いました」

カロルとエステルは微笑む。

ジュディス「それにその答えはなにもこんな場所で出さなくてもいいんじゃないかしら?」

レナ「そうそう、寂しい答えは置いといてね。あと、パティがいないと船が動かせなくて困っちゃうよ」

おどけるように少女はニコリと笑う。

ユーリ「少し頭冷やしてから考えてみな。それで出た答えなら、好きにしたらいい。それまでは、とりあえず一緒に来ればいいんじゃないか?」

パティはユーリ達に背を向けて、わかったのじゃと小さく頷いた。カロルが、じゃエゴソーの森だねとまとめる。

リタ「不審者を排除して、あの鐘を鳴らせばいいのよね?」

ジュディスはリタの言葉にええと頷く。一行はしばらくしてエゴソーの森に着いた。

 

―エゴソーの森

 

 エゴソーの森は、豊かな自然に恵まれていた。緑が濃く、色とりどりの花が咲き乱れている。渓流には吊り橋がかけられており、ときおりのどかな鳥の声が聞こえてきた。周りをキョロキョロと興味津々に見ている仲間たちに、ジュディスがここがエゴソーの森クリティア族の聖地よと紹介した。

リタ「へぇ、思ってたよりのどかで気持ちのいいとこじゃない」

リタは手を上に上げて伸びをしている。

カロル「わ、意外。暗くてじめじめした研究室が好きなんだとばっかり……」

そんなリタにカロルは少し驚いたように呟いた。

エステル「……何もない時に来てみたかったです」

少し俯く彼女。ユーリが森の中央に高くそびえる岩山に目をやる。そこには黒々と光る巨大な兵装魔導器(ホブローブラスティア)が設置されていた。

ユーリ「……あれだな、謎の集団が持ち込んだ魔導器(ブラスティア)ってのは」

リタは一目見てすぐに兵装魔導器(ホブローブラスティア)だと見抜いていた。

エステル「その謎の集団って何なんです?」

レナ「それは、詳しくは聞けなかったんだよね」

カロル「そう。とにかく、ミョルゾへの行き方教える代わりにそいつらを何とかしろって」

首を傾げたエステルにレナが答えると続きをカロルに促すように視線を投げてカロルが続きを話した。

レイヴン「何とかするってのはあれぶっ壊しゃいいってこと?」

ジュディス「どうなのかしら、それでいいならそうするけど」

リタ「あんたが壊す必要のないよう、あたしがちゃんと処理するわよ」

ジュディス「そう?期待してるわ」

ジュディスはリタにニコリと笑いかけた。まずは魔導器(ブラスティア)を目指して、ユーリ達は歩き出す。一人、何も喋らずにぽつんと立っているパティに気づいたユーリとレナは、船で休んでる?と気にかける。未だ整理がつかないという顔をしているが、パティは行くのじゃと歩き出した。その小さな背中をユーリとレナは心配そうな目で見ていた。

 森の中を進んでいると、止まれ!と鋭い声がユーリ達にかかる。ユーリ達は思わずピタッと止まった。鋭い声の正体は騎士団だった。

騎士団の人「ここは現在、帝国騎士団が作戦行動中である」

騎士団の姿をみて、親衛隊……とレイヴンが低い声で呟く。

レイヴン「ありゃ騎士団長直属のエリート部隊だよ」

ユーリは構わずに前に進み出た。

ユーリ「その騎士団長様の部隊がこんな森に兵装魔導器(ボブローブラスティア)持ち込んで、一体なにしようってんだ?」

騎士団の人「答える必要はない。それに法令により民間人の行動は制限されている」

ユーリ「ふーん、それはいいとしてもその刃、どうしてオレたちに向いてるんだ?」

騎士団の一人が、かかれ!と号令をかける。ユーリは素早く剣を構え、最初に斬りかかってきた騎士を躊躇なく斬り伏せた。仲間たちも一斉に武器を構えて、参戦した。

ユーリ「やれやれ、ついに騎士団とまともにやり合っちまった。腹くくったそばから幸先いいこった」

襲いかかってきた騎士たちを倒し終わると、ユーリはすこし困った表情をした。

エステル「謎の集団って騎士団のことだったんですね……」

カロル「でも、なんでボクたちを襲ってきたのかな?」

ジュディス「知られたら困るようことをここでやっているからでしょ」

レナ「あの魔導器(ブラスティア)のことね」

未だに元気なさげなパティにイライラしだしたリタが声をかける。

リタ「あんた自分でついてくるって言ったんだから、しゃんとしなさいよ」

パティはわかっているのじゃとまだ覇気のない声で言った。その時、キュインーっという甲高い音が響いた。次にエステルの危ない!!という声が仲間たちに聞こえたと同時に、魔導器(ブラスティア)から発せられた砲撃をエステルが受けていた。エアルは瞬時に光となって弾けて消えた。エステルはそのままその場にペタリと座り込む。エステル!!とリタが彼女に駆けつける。ユーリはエステルの前に立った。

レナ(……しまった、油断していた……!)

レナは焦った表情をしてエステルに近寄り、状態を見る。その後ろでカロルが、今何やったの?と驚いていた。

リタ「ヘリオードでやったのと同じ……」

レナ「エステルの力が、エアルを制御して分解した」

リタ「あんたまたそんな無理して……」

エステル「ご、ごめんなさい。みんなが危ないと思ったら、力が勝手に……!」

エステルは立ち上がって肩を上下させながら、言い訳をする。

ジュディス「力が無意識に感情と反応するようになり始めてるんだわ……」

ジュディスはエステルを見ながら、気遣わしげに呟いた。リタは岩山の方を見上げる。

リタ「さっきの攻撃、あれの仕業よね。あたしたちを狙い撃ちしてきた」

ジュディス「ということは撃たれるたびにエステルが力を使ってしまうってことね」

険しい顔をしてジュディスが言えば、エステルはそんな、わたしどうしたら……と俯いてしまった。

ユーリ「おいおい、おまえはオレたちを助けてくれたんだぜ?」

カロル「そうだよ、まともに食らったらイチコロ間違いなかったもん。悪いのは撃ってきた奴らだよ」

ユーリ「エステルのことも、世界のヤバさもオレたちでケジメをつけるって決めただろ。今やってることは全部、そのためだ、細かいことは気にすんな」

二人は落ち込むエステルを励ました。

レイヴン「でも、こんなの何度もやってたらフェロー怒るんじゃないの?魔導器(ブラスティア)だろうとフェローだろうと丸焼きにされんのは勘弁よ」

ユーリ「なに、簡単な話だろ。要するにあの魔導器(ブラスティア)をなんとかすりゃいいってこった」

ジュディスが、そういうことねと頷く。

レナ「もしまた撃ってきたとしても、私が何とかするよ」

カロル「え?何とかって……どうするの?」

目を見開きながらレナをみるカロル。レナはこうするのと、指パッチンをした。カロルが何も変わってないけど?と首を傾げる。一見何も変わってないように見えるが、何度かそれに助けられたことがあるユーリは察したような顔をする。

レナ「見えない壁を張ったの。バルボスの時とか、ダングレストで爆発の衝撃から守った時のアレ」

ユーリはやっぱりなと納得した顔、エステルとカロルは驚いたようにレナを見た。

ジュディス「体に負担がかかるんじゃないの?」

レナ「エステル程じゃないし、これならフェローには怒られないでしょ?」

レイヴンは、なるほどねぇと頷く。ユーリはレナに無理はするなよと気にかけるように言った。わかってるよと少女は微笑む。

リタ「あの魔導器(ブラスティア)使ってる奴ら、ボコってやる」

リタは冷たく光る兵装魔導器(ボブローブラスティア)を睨みつけた。ユーリは、なるべく目立たないように進もうと皆に伝え、歩き出した。その後をみんなも歩いていく。歩き出さないパティを見兼ねてユーリが声をかけ、一歩遅れてパティはユーリの後を歩き出した。

 岩山を目指して登り始めると、騎士団が邪魔をしてくる。魔導器(ブラスティア)から放たれる光弾を、レナの魔術障壁が皆にあたるのを防ぐ。

レナ(……意外とキツイなぁ、あと何発だっけ)

少女は、魔術障壁を維持しながらの戦闘に、額に汗を滲ませる。やっと、魔導器(ブラスティア)の近くまで来たところでまた、騎士団の邪魔が入りユーリがウザったそうに邪魔なんだよ!!と叫んだ。すべて、容赦なく倒していくと、リタが魔導器(ブラスティア)の元へ走り、調べ始めた。

ユーリ「さてと、これで撃たれる心配はなったな」

騎士団が来ないか見張りに立つユーリが言う。レナは荒くなる呼吸を抑えるように深呼吸して、一度魔術障壁を解く。

レナ(……確か、この後二発、くるっ)

レナ「!……ケホッケホッ……っ」

急にせり上がってきた何かに少女は思わず口に手を当て咳をする。咳が落ち着いて、口に当てた手を見て少女は目を見開いてすぐに隠すように握り、服の袖で口についているであろう液体を拭う。口の中は鉄の味だ。

レナ(……どうして、血が……)

その間にジュディスが帝国の技師を木から振り落とし、リタが脅して魔導器(ブラスティア)の暗号の解読をさせていた。ラピードがなにかに気づき、ユーリが舌打ちをする。別の箇所からの攻撃が来たのだ。ユーリが走り出したのと同時に少女も駆けだす。エステルが何です?と振り返り、きゃっ!!と悲鳴をあげたと同時に少女は素早く、両手を光弾の方向に出し魔術障壁を構築する。パリンっ!と軽いガラスが割れたような音と共に光弾に当たった魔術障壁が崩れた。レナはゴホッと小さく咳をして膝をつく。自分が庇う気でいたユーリが血相を変えて地面に倒れそうになる彼女を支えた。上でカロルがレナっ!と叫んでいる。

ユーリ「!?おいっ、レナ、大丈夫か……!?」

レナ「……っ、なんて顔してるの?へーき、だよ」

今度は吐血こそしなかったものの少女の顔色は悪い。心配をかけまいと笑う彼女に、ユーリは悔しそうな顔をした。

ユーリ「平気なわけがあるかっ!んな、顔色悪くさせといて……」

ユーリは有無言わさずレナを抱えるとみんなの元に戻る。エステルが急いでレナに駆け寄った。

エステル「レナ……やっぱり負担が……!?」

レイヴン「……無茶する子だねぇ」

ジュディス「力の使いすぎで、体が弱ってきてるんだわ……」

ユーリ「……少し休め」

三人は気にかけるように言って、ユーリに至ってはまるで自分に痛みがあるかのように眉をひそめた。ユーリに降ろしてと伝えて支えられながら立ったレナは仲間の顔を見て苦笑いする。

レナ「心配しすぎだよ……へーきだってば」

エステル「ごめんなさい……わたしのせいで……」

エステルは申し訳なさそうに俯く。そんな彼女にレナは謝らないでとエステルの手を取り撫でる。エステルはでも……と浮かない顔をしたままだ。

ジュディス「エステル、ここはありがとう、じゃないかしら?」

エステルは、ハッとしたように、ありがとうございますとレナに頭を下げる。

ユーリ「あっちの魔導器(ブラスティア)の方もなんとかしねぇとな」

みんなが頷き、リタが技師に声をかけた瞬間、パティが押し飛ばされ技師が逃げる。ふきゃん!と声を上げてパティは尻もちを着いた。技師はそのまま三メートル下の岩道に飛び降り、下へと走り出した。

レイヴン「逃げ足のはえぇ……早く捕まえましょ」

追いかける気満々のレイヴン達をエステルが待ってください、パティがと声をかける。

パティ「リタ姐……すまないのじゃ……逃がしてしまったのじゃ……」

声を震わせ今にも泣きそうな彼女に、リタは安心させるように言った。

リタ「……いいわ、ここはあたしがなんとかするから」

カロル「え……でも簡単じゃないって……」

リタ「騎士団さえいなくなりゃ、そんなに慌てる必要もないでしょ。それに、あたしを誰だと思ってんの?天才魔導士リタ・モルディオ様よ?魔導器(ブラスティア)相手なら死ぬ気でやるわよ」

宣言するとリタは魔導器の方に近づき、操作し始める。エステルが何してるんです?と質問すると、使えないように細工をしてるのとリタは答えた。ごめんねと魔導器(ブラスティア)に声をかけるとリタは操作を終えた。

レイヴン「命を賭けるものがある若人(わこうど)は輝いてるね〜」

相変わらず軽口を叩く彼に、ユーリは言う。

ユーリ「一度死にかけた身としては、死ぬ気でってのはシャレにならねぇか」

レイヴン「ん?死にかけたって?」

ユーリ「人魔戦争の時、死にかけたって言ってたろ?」

レイヴンは思い出したかのように、ああその話したっけかと顎を触った。

レイヴン「……まぁ……死ぬ気でがんばるのは、生きてるやつの特権だわな。死人にゃ信念も覚悟も……」

最後の一文には苛立ちが含まれたような声で呟いたレイヴンにユーリはおっさん?と不思議そうにした。レイヴンはあーいやいやと誤魔化すように声を出す。

レイヴン「おっさん、ちょっと昔を思い出しておセンチになっちゃった。ささ、いこいこ」

茶化すようにレイヴンは続けると歩き出す。ユーリはパティを見て、行けそうか?と声をかける。高い位置に居たパティは立ち上がってユーリを見下ろすと、こくりと頷いた。

 先を進むユーリ達の前にまたもや魔導器(ブラスティア)から放たれる光弾が立ちはだかる。気づいたエステルが伏せてください!と皆に声をかけた。少女は変わらず顔色が悪いが、気にせず皆の前に立ち両手を前に突き出し、グッと力を込め魔術障壁を作る。幸いにも、ちょうど岩陰がありそこに身を隠せた為、魔術障壁にもユーリ達にも当たることは無かった。少女は、はぁはぁと肩で息をする。ユーリがみなの無事を確認した。辛そうにしているレイヴンとレナ以外はピンピンしている。

ユーリ「レナ、ここで休んでるか?おっさんも、ここでリタイアするか?後はオレたちで行くから」

レナ「っはぁ、はぁ。……大丈夫、行ける」

呼吸を落ち着かせた少女は、力強くそう言った。

レイヴン「ここで置いていかれたら、俺様行くとこ、なくなっちまう」

レイヴンは立ち上がって答えた。

カロル「ユーリだって本気で置いていくわけないじゃん。それに行くとこないって、天を射る矢(アルトスク)があるじゃない」

レイヴン「んー?まぁあれはねぇ、なんというか、ちょっとそういうのと違うのよ」

レナ(……あくまで潜入先、だから、かな)

カロルはそうなの?と首を傾げ、ユーリはふーんと呟く。

リタ「レナとおっさんが大丈夫なら次、装填して攻撃しかけてくる前にあの魔導器(ブラスティア)の前までいっちゃお」

レイヴン「あいあい〜。了解〜」

レナ「わかった」

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