一行は、ハルルから出て東へと向かった。山に覆われたような形、学術都市アスピオが見え入口へと進んだ。
―学術都市アスピオ
エステル「ここがアスピオなんですね……」
そう言って辺りを見渡している。
カロル「薄暗くてジメジメして……おまけに肌寒いところだね」
カロルの言葉を聞いたレナは黒いニットカーディガンを前を閉じるように寄せる。気づいたユーリがレナを気にかける。
ユーリ「レナ、大丈夫か?」
レナ「へーき」
ユーリを見上げるとこくんと少女は頷く。
エステルは入口に近づくと2人居た騎士の1人が通行許可証の提示をと求めてきた。エステルは、許可証……?と首を傾げる。もう1人の騎士が、帝国直属の施設のため一般人を入れる訳には行かないと言う。ユーリが中に知り合いがいると話すと、ならば知り合いから許可証を貰っているはずだと言われる。ユーリは何も聞いてない、なら呼んできてくれないかと言えば、その知り合いの名はと聞くのでモルディオと答えた。すると、騎士の2人はモルディオだと!?と驚きやはりダメだと言った。
レナ(……まぁ、あんなに研究熱心だったら普通の人はひいちゃうよね)
融通が聞かないとカロルがぼやく。
エステル「あの、フレンという名の騎士が、訪ねてきませんでしたか?」
騎士は施設に関することは些細なことでも機密事項なので話せないと返す。
エステル「フレンが来た目的も?」
もちろんですと返された。
エステル「……ということはフレンはここに来たんですね」
墓穴掘った騎士はしまったと言わんばかりに慌ててしらないと答える。
エステル「じゃあせめて伝言だけでもお願いできませんか?」
ユーリ「やめとけ、こいつらに何言っても時間の無駄だって」
エステルはその言葉聞いて渋々その場を退いた。
ユーリが冷静にいこうぜと声をかける。エステルは焦ったようにでも中にフレンが……とうったえる。カロルが諦めちゃっていいの?と、2人に問いかける。その言葉に火がついたのかエステルは諦めませんと意気込んだ。
ユーリ「オレはモルディオのやつから
レナ(……ユーリにも火がついちゃったかな)
カロルがだったら他の出入口が無いか探してみようよと提案する。ユーリは乗った、いざとなりゃ壁を越えてやりゃあいいと言って、一行は回りを散策することになった。
―数十分後
ドアをみつけたのだが、鍵かかかっているらしく開かない。そんな都合よくはないらしい。
レナ(これ無理やり開けるしかなくない?壁超えるとか子供の体力考えると私には絶対無理……)
ユーリとエステルは2人で話し込んでしまっている。その後ろでカロルがドアの方に向かい何かカチャカチャとしだした。
レナ「カロル?もしかして開けられるの?」
カロル「まぁね、ちょっとまってて」
小声でやり取りしていると、エステルがふとこちらに気づきカロル?何をしているんです?と言った。カロルは構わず作業を続け、よし、開いたよ〜とサラッと言葉にした。エステルはビックリしてそんなドロボウみたいなこと!っと慌てる。
ユーリ「……お前がいるギルドって魔物狩るのが仕事だよな?盗賊ギルドみたいなのも兼ねてんのかよ」
その問いにえ?あ、と言葉をつまらせながらも、まぁこんなことが出来るのはボクぐらいだよとどこか得意げな感じで言った。ユーリはご苦労さん、んじゃ行くかと迷わずドアを開けようとする。エステルは待ってくださいとユーリを止めた。レナは振り返ってエステルに言う。
レナ「……エステル、フレンが偶然出てくるかもっていう期待を寄せるよりかはちょっと悪い方法だけどこっちの方が現実的だよ」
ユーリ「そうそう、それにオレ、我慢強くねぇしな。だいたいこういう法とか規則に縛られんのが嫌で、騎士団辞めたんだし」
エステルはえ、でも……と尻込みしている。そんな様子にユーリはじゃ、エステルはここで見張りよろしくなと伝える。
エステル「え、えっと、でも、あの…………っ!!わ、私も行きますっ」
迷いに迷いまくって最終的に行くことにしたらしい。そして一同は、ドアを開けて中に入った。
ドアを開けると様々な書物が目に飛び込んでくる。多くの研究員が書類や本を持ち、まさに研究のための施設といった感じだ。ユーリがなんかモルディオみないなのがいっぱいいるな……と呟きうっかりレナは笑いそうになって咳払いをして誤魔化した。近くの研究員にエステルは声をかけた。研究員は、研究の邪魔をされたのが気に食わないようで、不機嫌そうになんだよと答えた。
エステル「フレン・シーフォという騎士がここを訪ねて来ませんでしたか?」
研究員「フレン?あぁ、あれか、遺跡荒らしを捕まえるとか言ってた……」
エステル「今、どこに!?」
研究員「さぁ、研究に忙しくてそれどころじゃないからね」と興味なさげな声だ。
エステル「そ、そうですか……ごめんなさい」
しゅんとしている。じゃあ、失礼するよとその場を去ろうとした研究員をレナが服を引っ張って止める。ユーリは小声でナイスと言って研究員に聞きたいことがあると話す。
ユーリ「ここにモルディオっていう天才魔導士が居るよな?」
その言葉に研究員は驚き体を仰け反る。
研究員「な! あの変人に客!?」
レナ(変人……リタ、思ったよりも厄介に思われてる?)
ユーリ「さすが有名人、知ってんだ?」
研究員「……あ、いや、何も知らない。俺はあんなのとは関係ない……」
そういって足早にその場去ろうとする彼をユーリは肩を掴んで止める。
ユーリ「まだ話は終わってないって」
研究員はイラつきながらもう、なんだよと声を少し荒らげた。ユーリはどこにいんのと聞く。研究員は奥の小屋に住んでるから勝手に行けばいいだろうと吐き捨てた。ユーリはサンキュと言うと、研究員は今度こそその場を離れたのだった。
―リタの家の前
ドアには張り紙がされており、エステルはそれを読む。
エステル「絶対、入るな。モルディオ」
ユーリはここか……と確認すると、まずドアを開ける動作をして次にノックをした。エステルが、ノックが先ですと怒る。カロルがいないみたいだねと言うとユーリはドアから少し距離をとる。察したエステルがこれ以上罪を重ねないでくださいとユーリを止める。じゃあといわんばかりにカロルはボクの出番だねと張り切る。エステルは出番ってと困惑していた。
レナ(あ、また、ピッキングするんだ)
エステルはそれもダメですと制止したがそれも虚しく、カロルはちろょろいもんだねと鍵を開けてしまった。今度は気の所為ではなく、しっかりと得意げに胸を張っている。ユーリ達はモルディオの家へと入るのだった。
中に入ると様々な本と書類が床や机至る所に散らばっておりとても人が住めるような状態では無い。ユーリは
カロル「すっごっ……。こんなんじゃ誰も住めないよ〜」
カロルが足を物にとられそうになってあわてている。エステルは周りをキョロキョロしていた。
ユーリ「その気になりゃあ、存外どんなとこだって食ったり寝たりできるもんだ」
エステル「ユーリ!先に言うことがありますよ!」とたしなめる。
ユーリ「こんにちは。お邪魔してますよ」と棒読みで言った。
エステルは鍵の謝罪もですと続ける。
ユーリ「カロルが勝手に開けました。ごめんなさい」
悪いと思ってなさそうな声で言ってのける。そんなユーリはエステルは呆れる。
エステル「もう、ユーリは……。ごめんくださ〜い。どなたかいらっしゃいませんか?」
エステルの声に反応を返す声はなく、それを確認したユーリは、いないなら好都合と証拠を探し始める。
すこし経ったあと、ハシゴの下からフードを被った人が上がってきた。カロルがびっくりして大きな声を上げて尻もちをつく。カロルの声にびっくりしたレナは、ついそばに居たユーリの服を掴んでしまった。服を掴まれたことに気づいたユーリが、大丈夫だと言わんばかりにレナの頭を撫でた。
レナ(頭……撫でられたの、いつぶりだろう)
少女は撫でられた頭に手を重ねた。
フードの人はうるさいと唸るよういうと、赤い光の粒が舞い始める。その色が意味するは、火属性の魔術。カロルはえ?あ、ちょっと!と後退りをする。ドロボウは……と呟きカロルの制止も空しくぶっ飛べという言葉と共に放たれた火の玉が、カロルに向かってぶつかった。直撃したカロルは煙にゴホゴホと咳をして、泣きそうな声で酷いと呟いた。
一方は、魔術を発動した反動でフードがとれて顔があらわになる。それを見たエステルは、女の子!?と驚いた。いつの間にか少女の背後にユーリが立っており、剣を抜いていた。
ユーリ「こんだけやれりゃあ、帝都で会った時も逃げる必要なかったのにな」
女の子「はあ? 逃げるって何よ。なんで、あたしが、逃げなきゃなんないの?」
女の子はユーリの方に振り返りざまに睨み、意味がわからないといった感じだった。
ユーリ「そりゃ、帝都の下町から
女の子「いきなり、何?私がドロボウってこと?あんた、常識って言葉知ってる?」
ユーリ「まあ、人並みには」
女の子「勝手に家に上がり込んで、人をドロボウ呼ばわりした挙句、剣突きつけるのが人並みの常識!?」
信じられないと言わんばかりに声を上げる。次いで、ラピードに視線を移した。
女の子「ちょっと、犬!犬入れないでよ!」
「そこのガキンチョも!その子返しなさい!!」
カロルはその子という言葉にえ?と言葉を返す。
女の子「
カロルは慌てて
エステル「わたし、エステリーゼって言います。突然、こんな形でお邪魔してごめんなさい!……ほら、ユーリとカロル、レナも」
カロル/レナ「ご、ごめんなさい」
エステルの声に圧を感じた2人は素直に謝る。
レナ(やっぱりエステルってお母さんみたいだな……)
女の子「で?あんたら何?」
エステル「えっと、ですね……。このユーリという人は、帝都から
少女はそれで?と続きを促す。
ユーリ「
女の子と特徴が一致する箇所をユーリは指さしながら説明する。
女の子「ふ〜ん、確かにあたしはモルディオよ。リタ・モルディオ」
カロルは背格好も情報と一致していると納得する。
ユーリ「で?実際のところどうなんだ?」
リタはだからそんなの知らないと言いかけて、少し考え込むとその手があるかと何かを思いつたようだ。彼女はユーリ達についてきてと言った。
ユーリ「はあ?おまえ、意味わかんねぇって、まだ、話が……」
いいから来てとリタはユーリの言葉をさえぎった。
リタ「シャイコス遺跡に、盗賊団が現れたって話、せっかく思い出したんだから」
ユーリ「盗賊団?それ、ほんとかよ?」と疑い深く聞く。
リタ「協力要請に来た騎士から聞いた話よ。間違いないでしょ」と外出する支度を始めている。
エステル「その騎士ってフレンのことでしょうか?」とユーリに囁く。
ユーリ「……だな。あいつ、フラれたんだ」
カロル「そういえば、外にいた人も、遺跡荒らしがどうとか言ってたよね?」
レナ「つまり、その盗賊団が
ユーリ「さぁなぁ……」
とエステルが囁き声で話し始めたため、ひそひそと4人が話していると、装備を整え終わったリタが相談おわった?じゃ、行こうと声をかける。ユーリがとか言って、出し抜こうと逃げるなよと返した。
リタ「来るのが嫌なら、ここに警備を呼ぶ?困るのはあたしじゃないし」と脅し返した。
エステルが行ってみませんか?フレンもいるみたいですしとユーリに発案する。
リタ「捕まる、逃げる、ついてくる、ど〜すんのかさっさと決めてくれない?」
なかなか決まらない4人に呆れつつ急かすように言った。ユーリは行くしかないと思い、行くことを伝えた。
―シャイコス遺跡
5人は、アスピオを出て道中の魔物を蹴散らしながら遺跡へと辿り着いた。豊富な湧き水に囲まれている。リタはここがシャイコス遺跡だと4人に伝えて、こっち早く来てと言った。
ユーリ「モルディオさんは暗がりに連れ込んで、オレらを始末する気だな」
リタ「……始末、ね。その方があたし好みだったかも」
とユーリの試すようなからかいにのった。カロルが不気味な笑顔で同調しないでよとつっこんだ。リタに案内され身を隠しつつ移動しているが、騎士団も盗賊団も居ないなとユーリが呟く。エステルがそれに更に奥の方でしょうか?と返した。5人は、遺跡の地下へと入った。
―遺跡 地下
エステルが遺跡に入るなんて初めてだとすこしはしゃいだような声で言った。私も……とレナも呟く。エステルは周りをキョロキョロしながら歩きその後ろをレナが歩く。不意にリタから足元滑るから注意してと声がかかった。ピタっとエステルは立ち止まり、リタに感謝を込めてほほ笑みかける。リタは気恥しいようにぷいと顔を振った。エステルは後ろにいたレナが転ばないよう手を差し出し繋いで、足元に注意しながらまた歩き出した。その様子とリタをユーリはじっと見ていた。気づいたリタが何見てんのよとユーリの方に振り返る。
ユーリ「モルディオさんはやっぱりお優しいと思ってね」
リタ「はあ……やっぱり面倒を引き連れてきた気がする。別にひとりでも、問題なかったのよね……」と呟けば、エステルとレナがリタ達の元に追いつく。
エステル「リタはいつも、ひとりで、この遺跡の調査に来るんです?」
話を聞いていたエステルがリタに疑問を投げた。リタは当たり前と言わんばかりにそうよと返した。
エステル「罠とか魔物とか、危険なんじゃありません?」
リタ「何かを得るためにリスクがあるなんて当たり前じゃない」
何言ってるの?という口調でエステルに言う。先に進みながら話すリタをエステルは追いかける。
リタ「その結果、誰かを傷付けてもあたしはそれを受け入れる」
立ち止まったリタに追いついたエステルが、傷付くのがリタ自身でも?と問いかけた。そうよと無愛想にリタは答える。
エステル「悩むことはないんです?ためらうとか……」
リタはエステルに振り返って答える。
リタ「何も傷付けずに望みを叶えようなんて悩み、心が贅沢だからできるのよ」
リタは一気に言い切るとスタスタと先を歩く。エステルは心が贅沢……と呟く。リタは続けて言った。
リタ「それに、
その声色を少し遠くで聞いていたレナは、隠してしまった寂しさを無意識に訴えているように聞こえた。
ユーリとレナはエステルの横に来た。
エステル「なんか、リタって、すごいです。あんなにキッパリと言い切れて」
ユーリ「何が大切なのか、それがはっきりしてんだな」と先に進むリタの背中を見ながら言った。
エステル「わたしは、まだその大切がよくわかりません……」
レナ「いつか、みつかるよ」
ユーリ「そうそう適当に旅して回ってりゃあ、嫌でも見つかるって」と軽い口調だ。
エステル「そうでしょうか……ユーリはともかくレナは、本当にしっかりしてますね」
エステルは今までのレナの行動を振り返って感心したよう言った。
レナ「……そうかな?」
(まぁ、中身女子高生だし)
レナは首を傾げた。ユーリは、そうだなとエステルに言葉に頷いて笑った。
進んた先にはリタが
カロル「発掘前の
カロルは始めてみるそれに感心している。
エステル「大昔の人は、何を思って、
リタ「さぁね。その辺の事は今も研究中よ」
ユーリ「こんだけあるなら、
とリタの隣に屈んで探しはじめる。エステルはどれも
リタ「
エステルは目を瞑って読んだ本の文章を思い出しくちずさむ。
エステル「術式により魔術を発現する
ユーリ「要するに発掘品を使うしかない
リタ「そうでもないよ。エステリーゼが言った本の内容はちょっと古いの。発掘品より劣化はするけど、簡単な
エステルはそれに本当ですか!と嬉しそうに言った。リタはだからと続ける。
リタ「あたしなら、盗みなんてバカな真似はしない。そんな暇があるなら、研究に時間を費やすわ。完全に修復するためのね。それが魔導士よ」と、少し悔しげに言った。
ユーリ「立派な信念だよ。けど、それで疑いは晴れないぜ」
リタ「…………。口では何とでも言えるもんね」
そういった彼女の顔はすこし悲しそうだった。
5人はその場を後にして誰も見かけずに一層奥に進む。その突き当たりに大きな機械のような物がそこにあった。すぐにリタはその機械に駆け寄る。そんな彼女にユーリは声をかける。カロルは、機械のようなそれに驚いてこれも
ユーリが上にいる不審者を見つけ、リタに御仲間がいるぜと教える。リタはあんた誰?と不審者に問いかけた。見つかって慌てたのであろうその人は、アスピオの研究員だと名乗る。続けて、お前たちこそ何者だ!ここは立ち入り禁止だぞ!と声を荒らげた。リタはそれに呆れた。
リタ「はあ?あんた救いようがないバカね。あたしはあんたを知らないけど、あんたがアスピオの人間なら、あたしを知らないわけないでしょ」
リタがそう言うと、カロルがそれに無茶苦茶言うなと小声でツッコミを入れた。
レナ(まぁ、確かに無茶苦茶かもしれないけどあながち間違ってないよね)
アスピオの研究員だと嘘をつく男性は、邪魔の多い仕事だ、騎士といいこいつらといいと愚痴る。そのまま何かしたかと思えば、
ユーリ「頼むから、言うことを聞けって。ここで無茶したってしょうがないだろ」
レナ「……私もみんなの役に立ちたい。そのための力があるんだもの」
ユーリ「……ダメだ。後ろに下がってろ」
レナ「っ……わかった」
ユーリから向けられる威圧感にレナは渋々後ろに下がった。
カロルはエステル達にサボってないで手伝って!と文句を言った。リタはしょうがないと言って戦闘態勢に入り魔術を詠唱していく、今のドタバタの間に男は逃げたらしくその場に既に居なかった。
リタ「速攻ぶっ倒して、あのバカを追うわよ!」
と苛立ちを隠さずにユーリ達に声をかけた。
皆、人形に攻撃を仕掛けていく。この子、加減知らないから攻撃に気をつけてとリタが忠告する。エステルは本当に倒せるのかと不安になりながらも治癒術を仲間にかけながら剣術で攻撃する。リタは、お願い大人しくしてと人形に訴えている。ユーリは聞いちゃくれないってと術技を当てる。
一方、レナは崩れた遺跡の石に身を隠しながら、悔しい表情を浮かべて手をグッと握っていた。
レナ(私……戦えるのに。確かに魔術を使えば、痛みに襲われる。けどそんなの我慢すればいいことだし、どうして……?何もせず、見ているだけなんて嫌)
レナ「……バフ系の魔術ならいいかな」
ふと思考する中で、出てきた答え。
レナ(直接攻撃するわけじゃないから敵によるヘイトはかわないで済む。それにこれならユーリ達の役に少しは立てるかもしれない)
そうと決めたら行動は早い。レナはバレないように心の中で詠唱する。
レナ(防御力をあげる方がバレにくいよね……?っよし、彼の者たちに、堅牢なる守護を…… バリアー!)
通常は1人しか防御力を上げられないが、詠唱を変えることで一気に全員に付与する。その分負担が大きいのか、クオイの森の時よりも痛みが酷い。額に汗が滲む。
レナ(ぐっ……うっ。やっぱり一気にかけた分きついな……。でもみんなが少しでも傷つかずに済むならこのくらい!)
ユーリ(っなんだ?いつもより攻撃を受けてもそんなにダメージが来ねえ)
ふとした違和感にユーリは気づく。だがその意識は直ぐに目の前の人形に引き戻された。戦いの最中、リタは
リタが
リタ「あとは動力を完全に絶てば……ゴメンね……」
申し訳なさそうに人形の術式を解除した。そんなリタにカロルは早くと急かす。リタはわかってるとイラッとしながら答えた。リタは立ち止まったままのエステルを見てあんたも早くと叫ぶ、エステルはでもフレンが……とキョロキョロしていた。レナはそんなエステルの手を引くが動こうとしない。
ユーリ「あんな怪しい奴が、ウロウロしてる所に騎士団なんていねぇって」
見かねたユーリがエステルに言えば、エステルは名残惜しそうにじゃあもうフレンは……と俯いた。ユーリは多分ここにはもう居ないと続けて、行くぞ!と声をかけた。レナはエステルと手を繋ぎなおして駆ける。
リタはユーリの後を追いながら、あの子を調べたら自立術式が解析できたのにと零した。それにカロルがそのために僕らを戦わせたの?と聞けば、リタは当たり前でしょ返し、極悪人だよ!!と少年は喚く。
リタ「ドロボウ探しのついでに手伝って貰っただけよ」
ユーリ「口じゃなく、足を使えよ!!」と話を聞いていた彼は2人を急かした。
―数十分後
カロルが先程の男を発見。気付いた男がその場を逃げようとしたがラピードが矢のように動き壁際にあっさりと追い詰められるのだった。
リタ「
声にとんでもない圧が含まれている。そんな声を聞いた男は情けないほどに怯え、やめてもうやめてと震えている。ラピードはそんな男の状態に離れた。男は、俺は頼まれただけ、
ユーリ「お前、帝都でも
男はユーリの問いに帝都?お、おれじゃないと首をブンブン振って否認した。
ユーリ「お前じゃねぇってことは、他に帝都に行った仲間がいるんだな?」
男は肯定した。デデッキという人らしい。
ユーリ「そいつはどこに行った?」
今頃、依頼人に金をもらいに行っているはずだと男は答える。
ユーリ「依頼人だと……どこのどいつだ?」
トリム港に居るってだけで、詳しいことは分からないと男は一段と低くなったユーリの声に怯えながら言った。続けてその人物の特徴を述べる。
ユーリ「そいつが
男は、騎士も魔物もやり過ごして奥に行ったのに、ついてないと地団駄を踏む。
レナ(……ああ、やっぱりこの世界に来たからって苦手なものはそのままだよね。怒鳴り声……嫌だな)
レナはグッと手を握って、あくまでも平気な振りをした。
男の騎士という言葉にエステルは反応し、やっぱりフレンは来ていたんですねと囁く。それを着た男は、ああ、そんな名前のやつだ!!とますます怒りを表して顔は大変なことになっている。リタはチラリとレナの様子を見て、男の態度にイラつきうるさい!と帯を解き男をはたいた。1発打ち込まれた男はそのまま気絶してしまい、カロルがちょ、気絶しちゃったよ……どうすんの?とリタに言った。
リタ「後で街の警備に頼んで、拾わせるわよ」
そう言って一足先に歩き出す。それに続いてユーリはアスピオに戻るかとその場を後にし、遺跡をぬけて、初めに門前払いされたアスピオの入口に向かった。
―アスピオ
エステル「……肝心のフレンはいませんでしたね」
いまだに残念そうに引きずっている。リタは何度も聞くその名前に、その騎士何者なの?とエステルに尋ねた。エステルはユーリの友達ですと答えた。リタはユーリを見て、あんたの友達ね、それは苦労するわと言った。ユーリはなんだよ?とどう意味だよと思いながら返した。リタは別に?と言って、なぜその騎士がこの街にいるの?と質問した。
エステル「ハルルの
リタ「ああ……あの青臭いのね……あたしのとこにも来たわ」
エステル「フレン、元気そうでした?」
リタ「元気だったんじゃない?」
興味なさげに返答た。カロルがうっわ、適当……と呆れていた。
リタ「騎士の要請なら他の魔導士が動くだろうし、もうハルルに戻ったんじゃない?」
そう言われてエステルはそんなと肩を落とした。そんなエステルを無視してリタは疑いは晴れた?とユーリに問う。
エステル「リタは、ドロボウをするような人じゃないと思います」とリタを庇う。
レナ「私もそう思うかな……」
(さっき私の方を一瞬見てあの男の人に攻撃してたから、きっと私が苦手に思っていたのを気づいてくれたんだよねリタ)
ユーリ「思うだけじゃやってない証明にはならねぇな」
身の潔白が見える証拠がないと認めないらしい。ユーリの言葉はそれを意味していた。エステルはでも……!と声を上げる。レナはこれ以上は何を言っても駄目だと思い口を噤んだ。
リタ「いいよ、庇ってくれなくて。けど、ほんとにやってないから」
ユーリ「まあ、お前はドロボウよりも研究の方がお似合いだもんな」
エステル「ユーリは素直じゃないんです」
リタ「……変な奴。警備に連絡してくるから、先にあたしの研究所戻ってて。いい?あたしの許可なく街出たらひどい目にあわすわよ」
有無言わさないそれにリタと別れて、4人と1匹はリタの研究所に戻った。
―リタの研究所
まってろとリタに言われたため、仕方なくユーリ達はリタの研究所でリタが帰ってくるのを待っていた。
ユーリ「フレンが気になるなら、黙って出ていくか?」
ソワソワとするエステルに投げかけた。
エステル「あ、いえ、リタにもちゃんと挨拶をしないと……」
ユーリ「なら、落ち着けって」
カロル「ユーリとレナはこのあと、どうするの?」
ユーリ「
レナ「うん、構わないよ。記憶探しの為にユーリについて行くだけだから」
カロル「だったら、ノール港まで一直線だね!」
ユーリ「トリム港って言ってなかったか?」
記憶を思い出すように言えば、カロルはユーリ、知らないんだと子供らしくふふんと笑った。
カロル「ノールとトリムはふたつの大陸にまたがったひとつの街なんだよ。このイリキア大陸にあるのが港の街カプワ・ノール。通称ノール港。お隣のトルビキア大陸には港の街カプワ・トリム。通称トリム港ってね。だから、まずはノール港なの。途中、エフミドの丘があるけど、西に向かえばすぐだから」と丁寧に説明してくれた。
エステル「わたしはハルルに戻ります。フレンを追わないと」
ユーリ「……んじゃ、オレ達も一旦ハルルの街へ戻るかな」
レナ(……エステルを1人で行かせるのが気がかりなのかな?それともお姫様だからかな)
カロル「え?なんで?そんな悠長なこと言ってたら、ドロボウが逃げちゃうよ!」
ユーリ「慌てる必要ねぇって。あの男の口ぶりからして、港は黒幕の拠点っぽいし。それに、西行くなら、ハルルの街は通り道だ。」
カロルはえぇ、でもぉ……と少し不満げだ。
ユーリ「急ぐ用事でもあんのか?好きな子が不治の病で、早く戻らないと危ないとか?」
と、少しからかい混じりに聞く。カロルは、そんな儚い子なら、どんなに……と呟いた。
そこでドアを開ける音がしてリタが戻ってきた。ユーリは寝転がりその右隣にレナがお姉さん座り、左にカロルが体育座りをして、唯一エステルだけたっている様子にリタは呆れる。
リタ「待ってろとは言ったけど……どんだけくつろいんでんのよ」
その視線は主にユーリに注がれていた。
エステル「あ、おかえりなさい。ドロボウの方はどうなりました?」
リタ「さあ?今頃、牢屋の中でひ〜ひ〜泣いてんじゃない?」
ユーリは立ち上がるとリタの方を向いて、疑って悪かったと謝った。
リタ「軽い謝罪ね。ま、いいけどね。こっちも収穫あったから」
黒板のそばの柱にリタは何かやっている。リタ?とエステルは不思議そうにした。ユーリは、んじゃ世話かけたなと一言出ていく支度をすれば、リタは何?もう行くの?と声をかける。
ユーリ「長居してもなんだし、急ぎの用もあるんだよ」
レナはリタの傍によるとリタにだけ聞こえる声量で話す。
レナ「あの時、ありがとう」
リタは、なんのことかしら?とそっぽを向いてしまった。
エステル「リタ、会えてよかったです。急ぎますのでこれで失礼します。お礼はまた後日」
リタ「……わかったわ」
なにか言いたそうにしていた。
リタとユーリ達は街の入口まで行く。
ユーリ「見送りはここまででいいぜ」
リタ「そうじゃないわ、あたしも一緒に行く」
ユーリ「まさか、勝手に帰るなってこういうことか?」
リタはうんと即答する。カロルがうんってそんな簡単に!と言った。ユーリはふっと笑う。
ユーリ「いいのかよ?おまえ、ここの魔道士なんだろ?」
リタはうーんと考えると理由を語る。
リタ「ハルルの
さも、仕事ですといった感じだ。カロルがすかさず、それならボクたちで直したよと胸を張る。
リタ「はあ?直したってあんたらが?素人がどうやって?」
その顔はありえないとかいてある。
カロル「蘇らせたんだよ。パ〜ンっとエステ……「素人も、侮れないもんだぜ」
ユーリがカロルの発言にかぶせた。
リタ「ふ〜ん、ますます心配。本当に直ってるか、確かめに行かないと」
信じてない様子だ。そのままエステルの方を見ている。
ユーリ「じゃ、勝手にしてくれ」
エステルはリタの視線に気づくとリタに近づき、しっかりとリタの両手を掴む。
エステル「私、同年代の友達、初めてなんです!」
その声は凄く嬉しいという心情が溢れ出ている。
リタ「あ、あんた、友達って……」
突然のことにギョッとしながら手を振りほどこうとしたが、エステルに強く掴まれ阻止された上にブンブンと上下に振られている。エステルはお構い無しによろしくお願いします!と押し、それに負けたリタはええとつられながら返事するしかなった。
一行は、アスピオを出てハルルへと向かった。