ユニオン本部から出てきたユーリ達は広場で足を止めた。
リタ「……どうすんのよ、
リタはユーリの背中に向けて抗議する。
ユーリ「あんな連中に付き合ってる暇あったら他の手考えた方がマシだ」
リタはユーリの前に出る。
リタ「他にって、そんな簡単なもんじゃないでしょうに……」
パティ「なに、三日三晩寝ずに考えれば、いいこと思いつくのじゃ。がんばれ、リタ姐」
リタ「また、あたし!?」
リタは自分を指さす。と、そこにハリーがユニオン本部から出てきた。それに気づいたユーリ達はハリーを見る。
ハリー「……ほらよ」
ハリーは手に持っていた
ユーリ「こいつは……くれんのか?」
ハリー「馬鹿言え、こいつは盗まれるんだ」
カロルは、え?とキョトンとする。
ユーリ「……恩に着るぜ」
ハリー「他の連中に気取られる前に、さっさと行っちまいな」
レイヴン「どういう風の吹き回しよ?」
ハリー「さぁな。けど、子どもに説教されっぱなしってのもなんだかシャクだならな」
ハリーはそのままユニオン本部へと踵を返した。
レナ「……きっと、カロルの言葉が響いたんだね」
レイヴン「あいつも、少しは変わったかね」
レイヴンは満更でもなさそうに顎を撫でた。
ジュディス「これで
リタ「うん、ゾフェル氷刃海に行くわ。活性化していないそこのエアルクレーネを使うの」
レイヴン「氷刃海?また寒いとこに行くの?おっさん、ここで待ってていい?」
レナ「寒いのなんて世界の危機に比べたら我慢できるでしょ」
ユーリ「そうだ、世界が滅ぶよりマシだろ。行こうぜ」
ユーリ達はダングレストを出て、ゾフェル氷刃海へ向かった。
―ゾフェル氷刃海
二度目とはいえ、ゾフェル氷刃海は猛烈な寒さだった。吹雪いていないだけでもよほどましというもの。初めてここに訪れるエステルは、珍しそうに流氷を踏んでいる。ひとりで騒いでいるのはやはりレイヴンだった。
レイヴン「あああ寒い寒い寒い。それにしても寒い寒い寒い」
手を擦り合わせながら寒さを訴えるたびに、リタにウザイと文句を言われていた。
ユーリ「んで、エアルクレーネでどうしようってんだ?」
ユーリはリタに訊ねる。
リタ「エネルギー体で構築されたエアル変換機を作るの」
エステル「変換……機?」
エステルは首を傾げた。
リタ「エアルを効率よく物質化することで総量を減らすのが狙いなんだけど、そのためには変換機自体がエアルと物質の両方に近いエネルギーなのが理想なの」
パティ「そのエネルギーって、エアルとどう違うのじゃ?」
リタの説明を聞いていたパティは質問する。
リタ「属性分化しエアルは段階的に物質に移行して安定する。その途中の段階で固定してそれで変換機術式を構築しようってわけ」
カロル「エアルでも物質でもないってこと?」
不思議そうにきくカロルに、リタは頷く。
リタ「エアルより物質に近い、でも物質になってない状態。あたしらはマナって呼んでる」
エステル「マナ……」
聞きなれない言葉を、エステルはそっと呟く。
パティ「寒い海の漁火よりも荘厳な雰囲気が短い言葉の中から今にも溢れてくるのを感じるのじゃ」
パティは腕組みながら言った。
リタ「いや、まあ、本当はもっと長ったらしい名前なんだけど、ただ安定してるって言っても物質よりは不安定だから核になるものが必要なの」
レナ「それで、
リタ「それと十分なエアルとそれの術式を組み替えるエステルの力」
エステル「わたしが抑制術式なしで力を使うと、エアルが乱れ、力があふれ出してしまうけど……」
腕につけている
ユーリ「けど、何もしないであいつをほっとくなんてできない。それに……」
カロル「それに?」
カロルはユーリに先を促した。
ユーリ「こういう賭けは嫌いじゃない」
ふっ、とジュディスが微笑んだ。
ジュディス「私は立場上、止めるべきなんだけど……私も乗ってみたくなったわ。この賭けに」
パティ「うちはその賭けに10億ガルド乗るのじゃ」
レナ「もしもの時は私が支える」
新月の子である少女は満月の子の力を抑えることが出来る。
リタ「大丈夫よ。理論に間違いはないんだから。その10億、何百倍にもして返してやるわ」
リタは仲間を安心させるように言った。
パティ「おお、本当なのか?」
リタ「ええ。さ、エアルクレーネに行こ」
遙か向こうにエアルクレーネが見える。流氷の作る道がまっすぐでないので、最短の迂回路をユーリ達は歩いていた。
レイヴン「しかしエアル変換機ねぇ。よくまあ思いつくもんだ。さすが天才魔導少女リタっちだ。うんうん」
レイヴンは感心したように言った。リタはレイヴンをキッと睨むふりをし。
リタ「……手がかりがあったからよ」
レナ「そういえば、ザウデを調べたっていったよね」
リタ「あれ、あんだけの規模なのにエアルでは動いてなかった。世界全体を守るための
カロル「
パティ「千年もの長い間ってことか?哲学するイソギンチャクのように粘り強いのじゃ」
カロル「それに千年も張り付いてる星喰みも粘り強いけどね……」
ジュディス「アレクセイはザウデを兵器だと思ってたみたいだけど、とんでもない間違いだった訳ね」
レナはそういうこと、とジュディスと頷き合う。
ユーリ「けど星喰みはエアルの暴走が原因だよな?」
ユーリは言いかけて、ふいに合点がいった様子だ。
ユーリ「なるほど、だからエアル以外の力の結界なのか」
エステル「でも、だとしたらなんの力なんです?」
エステルは首を傾げた。
ジュディス「…………満月の子、かしら?」
ジュディスがそう言うと、エステルの表情が少し強ばる。
レナ「正確には、彼らから分離した力だよ」
エステルを落ち着かせるようにレナは言った。リタはこくりと頷く。
リタ「あの巨大
エステル「満月の子らは命燃え果つ……」
エステルはミョルゾの長老の家にあった壁画にあった文を諳んじた。
ジュディス「ミョルゾの言い伝えはそういう意味だったのね」
ようやくあの壁画の絵と、添えられた文言の内容がジュディスにもしっくりときた様子だ。
ユーリ「デュークの話じゃ、自発的にやったらしいぜ。世界を救うために」
パティ「つまり、結界を作ったのは満月のこの世界に対する愛の力なのじゃな」
レイヴン「愛の力、ね……。泣けるじゃないの」
エステル「世界のために犠牲になって……ずっと守っててくれたんですね」
エステルはそう締めくくった。
ユーリ達は、エアルクレーネまでたどり着く。相変わらずおっさんは寒さに震えていた。
カロル「またあの魔物出てきたりしないよね」
レイヴン「出てきたら、カロルがまた退治してくれんでしょ?」
カロル「うう……意地悪……」
カロルはレイヴンを睨みながら言った。その間にリタが空中に
リタ「さ、準備できたわ。エステル、こっち来て」
ふたりは宙に展開させた術式をはさんで鏡合わせのように向き合った。
リタ「今から抑制術式を解除するわ。そしたら、エステルに反応してエアルが放出される。エステルはエアルの術式をよりマナに近い安定した術式に再構成してほしいの」
リタはエステルにそう説明するが、エステルはいまいち理解出来ていないようだ。
エステル「え、と……よくわかりません……」
申し訳なさそうにエステルは首を傾げる。
リタ「うーん。そうね……」
どう例えたらいいかと辺りを見回すリタ。
リタ「ここは水の属性が強いから流れる水をイメージしてエアルの流れに身を任せてればいいわ」
と海水を指した。再びエステルと向き合う。
リタ「エアル物質化の理論は魔術と同じようなものだから。エステルがエアルをマナに近い形に再構成してくれれば、あたしでも
リタは今からすることを一通り口に出し終えた。
カロル「ボクたちに何か出来ることない?」
カロルはリタに近づいて申し出るが、リタは首を振った。
リタ「ないわ、寝てて」
レイヴン「こんなところで寝たら凍死するっつーの」
レイヴンは体をぶるりと震わせた。それを無視してあ、でも……とリタはレナをみた。
レナ「私?」
リタ「レナの力はエアルの抑制、エステルとは真逆の力。なら、溢れ出るエアルを制御できる……?」
ブツブツ言い出したリタに聞き取れた部分だけ咀嚼したレナはリタに近づいた。
レナ「リタ、つまり私は、エステルのサポートをすればいいんだよね?」
リタは頷いた。
リタ「でも、負担は大きいでしょ、やっぱり……」
レナ「なしっていうのは、なし。世界のためでしょ?平気だよ」
リタの言葉を遮ってレナは言うと、ニコリと微笑んだ。
リタ「……わかったわ」
パティ「うちらもなんでもやるのじゃ!」
リタ「なんでもって……」
ジュディス「あるでしょう?ザウデで見つけた変換技術を使えばいいのよ」
ポカンとあく口をハッと閉じてリタは声を荒らげた。
リタ「あれは!命をエアルの代用にするものでしょ!そんなの使えるわけないじゃない」
ジュディス「でも、失敗したら激流となったエアルに飲み込まれて私たちは全滅。そうでしょ?」
ジュディスは引き下がらなかった。
ユーリ「命がけなのはみんな同じってことだ」
ジュディスとリタを会話をじっと聞いていたユーリはそう言った。
ユーリ「手伝わせろよ」
ユーリの言葉に、ジュディス、カロル、レイヴン、パティは力強く頷く。リタはほんの少しの間考えてから、口を開いた。
リタ「わかった……あたしが
ユーリ「よっし。じゃあみんな、いっちょ気合い入れようぜ」
ユーリの言葉に、レナ、エステル、ジュディス、レイヴン、カロル、パティ、ラピードがそれぞれ声を出して応えた。リタは頷き
リタ「いい?エステル、いくわよ。レナはここ、みんなはこっちきて」
言われた通りに、レナは少し離れてエステルの横に、ユーリ達はリタの近くに寄る。エステルのお願いしますという声を聞いてから、リタは帯を回しながら詠唱を始めた。リタの足元に術式が展開される。エステルとレナは胸の前で手を祈るように握り力を解放する。
リタ「あたしの術式に同調して。そう……いいわよ」
リタは背を向けたまま、仲間たちを励ました。
ユーリ「うっぐ」
生命力を使われているユーリが呻く。カロルとジュディスとラピードも、そしてとりわけ負荷のかかっているレイヴンが苦しそうだ。するとエアルクレーネが突然輝きだした。活性化したエアルクレーネはエアルをあふれさせ、エステルと彼女の前にある術式を介してリタのもとへ届く。リタはリタはマナに近い形のエアルを、
リタ「
リタは真っ直ぐに
エステル「ん……く……」
レナの隣でエステルが苦しげな声をあげた。
レナ「っく……」
続けてレナも苦しげな声を上げる。
レナ(……抑える力を緩めて……けどエステルの負担は最小限に)
見た目より難しいことをしているレナは周りの音など聞こえないほどの集中力を出していた。
エステル「きゃあっ」
力を引き出されたエステルはレナが軽減しているとはいえ負担に悲鳴をあげる。エステルとレナの体は光を帯びていた。
レナ「っ……」
レナの額から流氷へぽたりと汗がたれる。エステルの悲鳴にユーリとカロルが負担のかかった体の向きを変えた。
ユーリ「なんだ!」
カロル「まさか、失敗なの?」
リタは違う!と声を上げて、背後の術式に振り返る。
リタ「ちゃんと制御できてる、でもこれは……!?」
術式に目を通しながら話していたリタは言葉を詰まらせた。
リタ「
ここまで来たならレナのサポートはなくてもあとは勝手にどうにかなる。そう考えたレナは力を完全に緩めた。そして呼吸を静かに落ち着かせた。
その時
?「……わらわは……」
ジュディス「その声……ベリウス!?」
ジュディスが驚く。姿は違うが、確かに
?「ジュディスか。ベリウス、そうわらわは……いや違う。かつてベリウスであった。しかしもはや違う」
ユーリ「どういうことだ?」
ユーリはリタを見る。リタは術式を消すと、考察を立てた。
リタ「まさか、
リタはそのまま、女性をみてすごい……と呟いた。
?「すべての水がわらわに従うのが分かる。わらわは水を統べる者」
彼女は氷の、海の、それらを構成する水を全身で感じているようだった。
レイヴン「なんか分からんけど、これ成功なの?」
レイヴンが小声でリタに聞く。
リタ「せ、成功っていうかそれ以上の結果……。まさか意志を宿すなんて」
リタは声をうわずらせた。
パティ「驚け!自然の神秘は常に人の想像をはるかに超越するものなのじゃ!」
感動するようにパティは声を弾ませる。
リタ「そうね……どうやら、それは認めざるを得ないみたい」
?「人間よ、わらわは何であろう?もはや
ユーリはゆっくりと、考えながら言った。
ユーリ「物質の精髄を司る存在……精霊なんてどうだ?」
?「して我が名は」
カロルがパッと顔を輝かせた。
カロル「ざふざふ水色クイー……」
途中まで言いかけたが、仲間たちの表情を見てやめた。エステルが一歩前に進み出た。
エステル「古代の言葉で水を統べる者……ウンディーネ、なんてどうです?」
ウンディーネ「ウンディーネ……わらわは今より精霊ウンディーネ」
噛み締めるように繰り返した彼女はその名を気に入った様子で、ユーリ達を見下ろして微笑んだ。
ウンディーネ「おお……力がみなぎる……そたならがわらわのために多くのエアルを集めてくれたからじゃ……」
カロル「……がんばったもんね……」
ユーリは一歩前に出る。
ユーリ「ウンディーネ!オレたちは世界のエアルを抑えたい。力を貸してほしい」
ユーリは真剣な表情で声を張った。
ウンディーネ「承知しよう、だかわらわはだけでは足りぬ」
カロルが、え?と首を傾げる。
ウンディーネ「わらわが司るは水のみじゃ。他の属性を統べる者もそろわねば十分とはいえぬ」
レナ「物質の基本元素は、地水火風……だね」
リタは頷いた。
リタ「そう、最低でもあと三体ね……」
レイヴン「それってやっぱり
パティ「素直に精霊になってくれるといいんじゃがの」
ジュディス「もう存在している
思い当たるもの達を指折りで数えるジュディス。
カロル「あと、バウルだね」
口を出したカロルに、ジュディスは首を振った。
ジュディス「バウルはだめ。まだ
ユーリ「ウンディーネ、心当たりはないのか?」
ユーリはウンディーネを見上げる。
ウンディーネ「輝ける森エレアルーミン、世界の根たるレレウィーゼ、場所はそなたの友バウルが知っておろう」
ウンディーネはそう言うと、レナに近づいた。ハッとしてレナは口を開く。
レナ「あの時、助け……」
られなくてごめんと謝ろうとした少女の口を、ウンディーネは人差し指で止めた。
ウンディーネ「よい、それはわらわの意思じゃ。そなたは悪くない。これはその時の礼じゃ、受け取るがよい」
ウンディーネはレナの右手を手に取ると、手の甲に口付けをした。レナは目を見開く。冷たさを感じると共に、別の力の存在を感じた。
ウンディーネ「これで、水に属する力で命を削らなくても大丈夫じゃ」
ウンディーネはニコリと微笑んだかと思えば、氷の上の冷たい空気に溶け込むように消えた。レナは右手の甲に目をやると、青に近い水色で雫のようなマークが刻まれていた。
カロル「消えちゃった!」
驚くカロルに、エステルが言う。
エステル「いえ、……います。感じます」
エステルはその存在を確かめるように目を閉じる
ジュディス「エアルクレーネも落ち着いたよう……エステルの力を抑制していないのに」
リタがレナを見る。レナは首を横に振った。
レナ「私は何もしてないよ」
つまり、新月の子の力も関係ないということ。驚いたリタは、え!と声を上げ、エステルの方に振り向くと術式を展開させて確認した。
リタ「これって……ウンディーネがエステルの力を制御してくれてる……?」
カロル「じゃあ、エステルは本当に自由になったの?」
カロルは期待に瞳を輝かせながらリタに聞いた。
リタ「ええ……ええ!」
術式を消して、リタは嬉しそうに何度も頷いた。
ユーリ「エステル。よかったな」
エステルは嬉しそうに笑った。
レイヴン「なんだか不思議な成り行きになってきたねぇ」
ユーリ「確かに想像もしてなかったことばかりだ。けど光が見えてきたじゃねぇか」
パティが頷く。
パティ「わずかな光じゃ。でも、深海から見える太陽くらいに嬉しい光なのじゃ」
カロル「そういえばレナ、ウンディーネに何してもらってたの?」
レナ「えっと、力を授かったみたいなんだけど……」
レナはカロルに右手の甲を見せた。リタがパッとレナの手を取る。手を取られた少女は、ポカンとしていた。
リタ「なに、これ……?」
エステル「そのマーク……ウンディーネの力を感じます」
リタは術式を展開させて確認する。
リタ「……すごい。周りのエアルをマナに変換、尚且つそれを吸収してる……?」
パティ「そういえば、ウンディーネは命を削らなくても大丈夫ってレナに言ってなかったかの?」
カロル「つまり……?」
リタ「今まで、生命力で魔術を発動させていたけど、今後は水属性の魔術を発動させる時は生命力じゃなくてマナを代わりに使うことできるってこと」
エステル「じゃあ、レナも命を削ることはなくなったってことです?」
リタ「ええ。けど、水属性のみよ」
嬉しそうにエステルが笑いレナを見た。
カロル「ねぇウンディーネ、ホントに居るの?」
カロルはエステルに不思議そうに聞く。エステルは頷いた。
エステル「はい、うまく言えませんけど、一緒にいます。感じます」
パティ「エステルの体の中に入っとるのかもしれんの」
パティがにこにこしながら言った。
リタ「エステルを通じて誕生したことでなにかつながりが生じたのかも。興味深い……」
ずいっとエステルを覗くように体を前に出したリタに、エステルは驚いて体を後ろに引く。その様子をみていたユーリが、研究はあとにしてくれよとリタに言った。リタはエステルから体を逸らした。
リタ「分かってるわよ。そんな……」
リタが言いかけた時、地鳴りが辺りを襲った。
カロル「な、なに、今の!?」
驚いたカロルはキョロキョロ辺りを見渡した。轟音と地面の揺れた方角にあったものをレイヴンは考える。
レイヴン「あの方角は確か……」
ジュディス「ザウデの方角ね」
ジュディスが先に答えた。光の柱が天へ伸びるのがここからでも見える。世界を包む結界に当たると大きな爆発を巻き起こした。結界は壊れ、雷雲が空を覆い星喰みは空全体から降りてきた。どうやらさっきの地鳴りは制御を失ったザウデの巨大な
リタ「星喰みが……まさかザウデが停止した……?」
レイヴンがやれやれと言った感じで首を振る。
レイヴン「あちゃー、どっか下手なとこいじりでもしたのかね」
エステル「あれが本当の災厄……」
星喰みとその眷属をみてエステルは呟く。
ユーリ「なるほど世界を喰いかねねぇな」
ユーリは空を睨んだ。
レナ「まさに世界の危機って感じ」
この世界の終わりが目の前まで来ている事実にレナは口を引きつらせる。
カロル「あんなの、どうしたらいいんだろう」
強大な危機にカロルは弱気になってしまう。ユーリは何か考えているみたいだ。
パティ「……ちょいと包丁で三枚におろすには大きすぎるようじゃの」
自身の
ユーリ「なぁリタ、あの星喰みってのはエアルから生まれたってデュークが言ってたんだが」
急に話を振られたリタはそれを聞いてえ?とユーリを見る。
ユーリ「精霊はエアルを物質に変えるってんなら、もし十分な精霊がいたら、星喰みもどうにかできないか?」
リタ「わからない、そんなのわからない。でも……やってみる価値はあると思う」
エステル「やりましょう、ユーリ!」
ならばやるしかないとエステルはユーリに呼びかける。
ユーリ「決まりだな」
ユーリはいつものように、にっと笑った。その時、ジュディスがバウル!?と叫ぶ。
ジュディス「……そう、分かったわ。ありがとう」
バウルから交信を受け取ったジュディスは礼を言うと、仲間たちに伝える。
ジュディス「星喰みの眷属が街を襲っているらしいわ。場所はノードポリカ」
エステルが息を飲む。
ユーリ「やれやれ聞いちまったら、放っとく訳にはいかねぇな。急ぐぞ!」
一行は、ノードポリカへ急いだ。
―ノードポリカ
カロル「見て!街に取り付いてる!」
ノードポリカについてそうそう、気づいたカロルが指で示す。
ユーリ「あの黒いの……前にコゴール砂漠で見たやつか!」
ジュディス「前のはフェローの幻だったけど今度のは本物よ。気をつけて」
街に取り付いているソレは結界を喰い破ろうとしているような感じだ。
エステル「結界のエアルを食べようとしてるみたいです!」
リタ「星喰みはエアルに引き寄せられる……?」
コゴール砂漠でのと聞いたレイヴンは真剣な顔になる。
レイヴン「こいつはなかなかやばそうねぇ」
パティ「やばくてもやるしかない。一本釣りにしてくれるのじゃ」
パティは銃を構える。
レナ「そうそう、何としても倒すよっ」
ユーリ「よし、行くぞ!」
街の中へと走り、ユーリ達は星喰みを倒していく。空中にいるやつはリタとレナの魔術と、レイヴンの弓とパティの銃で撃ち落としていく。そこをユーリ、ジュディス、カロル、ラピードが切り倒していった。エステルは仲間の傷を癒すことに専念する。港の付近まで来た時、退くな!ここで食い止めるんだ!という叫び声が聞こえた。見るとそこには
ナッツ「あ、あんたたちは……!」
ナッツはユーリ達がいることに驚いていた。
騒ぎが落ち着いた頃、ユーリ達は闘技場に居た。
ナッツ「またあんたたちに助けられたな」
ナッツはユーリたちに感謝を伝える。
カロル「この街だけ襲われるなんてほんと運が悪いよね」
そういったカロルの言葉を、運じゃないわとリタが否定した。そういえば、先程から姿が見えなかったなとレナは思う。帰ってきたリタに、エステルがどこに行っていたのかを聞いた。
リタ「ここの
レナ(なるほどね……この騒動はそれが原因だったわけね)
リタはナッツとユーリ達に説明した。
ナッツ「万が一に備えたんだが……裏目になってしまったんだな。自分は住民の様子を見に行く。あんたたちは好きなだけゆっくりしてってくれ」
ユーリ「ありがたいがオレたちも急いでてね。もう行くわ」
ナッツ「そうか。あんたたちならいつでも歓迎する。また寄ってくれ」
ユーリがサンキュと礼を言うと、仲間達は闘技場を後にした。
カロル「ナッツさん、がんばってたね」
ユーリを見上げてカロルは言う。
ユーリ「ああ、ベリウス亡き後、うまくまとめてるみたいだな」
エステル「ウンディーネと会わせてあげたいです。きっと喜びます」
ユーリがその申し出を今はやめとけと止める。
ユーリ「けど、全部ケリがついた時には驚かせてやろうぜ」
ユーリはいたずらっぽい笑みを浮かべた。エステルは、はいと微笑む。
レイヴン「にしても、あの化け物……
レイヴンは顎を触りながら言った。
カロル「ボクらは倒せたのにね」
なんでだろうとカロルは首を傾げる。
ユーリ「何か違いがあるとしたら……」
レナ「精霊がいるってことかな?」
ユーリのかわりにレナが続けた。
リタ「星喰みはエアルに近いってんなら精霊の力が影響した可能性はあるわね」
リタは考察を立てる。
ユーリ「それじゃああと三体そろえればもっと対抗できるってことか?」
ユーリの問いにリタはどうだろう……と呟く。
リタ「エアルを抑えるだけなら、属性そろえれば十分だろうけど相手はあの星喰みだから」
何とも言えないわとリタはユーリを見た。
レイヴン「うーむ、
エステル「
ふと、ユーリが顔を上げる。
ユーリ「……なぁ、世界に存在する
そうですねとエステルが肯定する。
エステル「
ユーリ「
レナは頷く。
レナ「うん、ミョルゾで長老さんがそう話していたよ」
だったらとユーリは口を開く。
ユーリ「もし精霊四体で足りないんなら、世界中の
ううむ、とパティが首を縦に振る。
パティ「そうなったら海辺の砂粒みたく精霊だらけになるかもしれんの」
リタ「無茶なこと言うわね。だいたいどうやってやるのよ」
ジュディス「仮に方法がわかっても、
リタとジュディスは不可能に近いと否定する。
ユーリ「どうにかしてくれるよな?専門家さん」
ユーリはニヤリと笑って、リタを見つめる。あっけにとられるリタ。
リタ「……簡単に言わないでよね」
と、リタはユーリを軽く睨む。
カロル「……もしユーリの言った方法が実現したとして……そしたら
レイヴン「
エステル「どんな世の中になってしまうんでしょう?」
エステルは不安そうに瞳を揺らした。
レナ「んー、結界によって約束されていた安全はなくなる。
カロル「
それだけ密に関わってきた
パティ「なに、
ジュディス「その気概、素敵だわ、パティ」
どんと胸を張るパティにジュディスは強い子ねと感心する。
リタ「あんたたちがそれでよくても……」
レナ「嫌がる人は大勢いるだろうね。それでもやらないと……」
ユーリ「世界は星喰みのもんだ。オレはやるべきだと思う。たとえ仲間以外の誰にも理解されなかったとしても」
覚悟を決めた真剣な瞳でユーリは空を見つめる。
レイヴン「ま、とにかくまずは四属性の精霊を生み出そうぜ」
レイヴンはいつものお気楽な軽い口調で言う。
パティ「じゃの、先のことはそれからでも考えられるのじゃ」
レイヴンの調子にパティが乗る。
カロル「バウルが
思い出すようにカロルはユーリに聞く。ユーリは頷いた。
ユーリ「ああ、船に戻って聞いてみよう」
ユーリ達はノードポリカをでて、船へと戻った。