―花の街ハルル
着いてそうそうリタが、げと声を漏らし目を丸くする。
リタ「なにこれ、もう満開の季節だっけ?」
先程のカロルの失言からリタは興味津々にエステルに視線を向けて、またハルルの樹を見ていた。
カロル「へへ〜ん、だから言ったじゃん、僕らでよみがらせたって」
すごく得意げになっている。
そんなカロルにイラついたのかリタはチョップをくらわせていた。
突然のチョップに、カロルは頭を押えてしりもちをつく。
リタはそんなカロルを置いて、ハルルの樹へ走っていった。
ユーリとレナ、エステルは坂道を降りていくと長に声をかけられる。
皆さんお戻りですか、騎士様の仰ったとおりじゃと。
エステル「あの……フレンは?」
長は残念でしたな、入れ違いでして……と話した。
カロルはえ〜、また〜とガクッと肩を落とす。
長は結界が直っていることには大変驚かれていましたよと続けた。
エステル「あの……どこに向かったか、分かりませんか」
長は申し訳なさそうに、私にはなにも……と、ただもしもの時はと手紙を預かっていますと言った。
長から渡されたものを受けとって見ると、手紙と一緒に手配書が入っていた。
カロルは驚きすぎて声が裏返っており、エステルは口に手を当てている。
レナは、手配書なんて初めて見た…と呟き、ユーリは、ちょっと悪さが過ぎたかなと零す。
カロル「い、一体どんな悪行を重ねてきたんだよ!」
エステルがこれって……私のせい……とボソリ。
ユーリ「こりゃ、ないだろ。たった5000ガルドって」
レナ「たったなの?」
(まぁ確かにお姫様連れ去ってこの金額は低いのかもだけど……)
カロル「脱獄にしては高すぎだよ!他にもなんかしたんじゃない?」
レナ「ねぇ、手紙にはなんて書かれていたの?」
エステル『僕はノール港に行く。早く追いついて来い。』
ユーリ「『早く追いついてこい』ね。ったく、余裕だな」
レナ(そういうユーリも賞金首になっちゃってるのに余裕そうだね)と心の内で独りごちる。
エステル「それから、暗殺者には気を付けるようにと書かれてます」
ユーリ「なんだ、やっぱり狙われてんの知ってんだ。身の危険って奴には気付いてるみたいだけどこの先、どうする?」
エステルはそうですねぇと考える。
ユーリ「オレたちはノール港に行くから伝言あるなら伝えてもいい」
エステル「それは……でも……」と口篭る。
ユーリ「ま、どうするか考えときな。リタが面倒起こしてないかちょいと見てくる」
ユーリとレナはカロルたちと別れ、ハルルの樹の元にいるリタの所へ行った。
リタ「……なによ、これ。こんなのありえない……。満開の季節でもないのに花がこんなに咲いて……。結界もずっと安定してる。ほんとに、エステリーゼがやったの?」
とても信じられないとばかりに早口で独り言を言っている。
レナ「…どうして?エステルなの?」
リタ「アスピオ出る前に、カロルが口滑らしたでしょ?ユーリがはぐらかしたけど」
ユーリ「ばれてりゃ世話ないな」
その場にユーリは座った。その隣にレナも座る。
リタ「こんな真似されたら、あたしら魔導士は形無しよ」
ユーリ「商売敵はさっさと消すんだな。その為についてきてるんだろ?」
リタ「そんなわけないでしょ!?あたしには解かなきゃならない公式が……!」
ユーリの言葉に大きな声で打ち消し、つい余計なことまで言ってしまう。
ユーリ「公式がどうしたって?」
リタ「……なんでもない、忘れて」
さっきの勢いはどこへやら、そのままごまかす。
リタ「で、あんたの用件は何?そのために来たんでしょ」
ユーリ「ま、半分くらいは今ので済んだ」
リタ「ならもう半分は?」
ユーリ「前にお前言ったよな。
レナは静かに会話に耳を傾けている。
リタ「言ったわね。それが?」
ユーリ「エステルとお前はどっちも人間だ。
レナ(なるほど、リタのエステルへの視線に心配になったのかな)
リタもユーリが何を言いたいのか察したらしい。
リタ「あの子が心配なんだ。あたしが傷付けるんじゃないかって」
ユーリは立ち上がる。それにレナと続く。
ユーリ「エステルは、オレやおまえとは違って正直者みたいだからな。無茶だけはしないでくれって話だ」
ユーリはカロルたちがいる方へと歩き出す。
レナはその横に並ぶ。
ユーリ「ほら、戻ろうぜ。カロルとエステルが待ってる」
レナがふと後ろを振り返れば、リタが何か言っていた。
聞き取れはしなかったけれど。
ユーリとレナが戻ると、エステルは鎧に身を包んだ騎士であろう人達に囲まれていた。
騎士の人が、ユーリに突っかかる。
ユーリ「今回はばかしつこいな」
男性の大きい声に、レナは少しびっくりしてワンピースの裾をつかんだ。
騎士「昔からのよしみとはいえ、今日こそは容赦せんぞ!」
エステル「ユーリは悪くありません。私が連れ出すように頼んだのです!」
エステルが慌ててルブランの前に立ち口を挟むが、騎士は聞く耳を持たずユーリを悪人だと決めつける。
騎士「ええい、おのれ、ユーリ!エステリーゼ様を脅迫しているのだな!」
エステルは負けじと声を上げる。
エステル「違います!これは私の意志です!必ず戻りますから、あと少し自由にさせてください」
騎士「それはなりませんぞ!我々とお戻りください!」
エステル「戻れません。わかってください!」
騎士「ここは、致し方ない。どうせ罪人も捕えるのだから……」
そういってユーリに襲いかかるが、返り討ちにあった。
ええい情けなーい!と騎士は仲間の二名に声を荒らげる。
リタは火の魔術の詠唱をする。カロルが必死に止めるが虚しく放たれた火球は騎士3人に直撃した。
リタはエステルの意志を尊重しない彼らにキレていた。
見ていたレナは騎士の1人にビックリさせられたのも、エステルの話を聞かないことにもイライラしていたのでスカッとした。
リタ「戻らないって言ってんだから、さっさと消えなさいよ!」
エステルが後ろを見ると、怪しい人影がありこちらに走ってきている。あわててエステルはユーリに教えるとユーリはやっぱり、俺達も狙われてるんだなと確信した。
リタがそれに今度は何!?とイラつく。
カロルは狙われているという言葉にどういうこと?と質問する。
レナはアスピオに行く前に見かけた人達……とぽつり。
ユーリ「話は後だ!カロル、ノール港ってのはどっちだっけ?」
少し切羽詰った声だ。
カロル「え、あ、西だよ、西!エフミドの丘を越えた先に、カプワ・ノールはあるんだ」
戸惑いながらもユーリの問いに答えた。
それを聞いたユーリ達はその方向に走って移動する。
立ち止まったままのエステルにリタは声をかける。
でも……私とまごつくエステルに、じれったそうに決めなさいと声を上げる。
リタ「本当にしたいのはどっち?旅を続けるのか、帰るのか」
エステル「……今は、旅を続けます」
意を決した声で答える。
リタ「懸命な選択ね。あの手の大人は懇願したってわかってくれないのよ」
彼女たちはユーリたちの後を追うように走った。
―エフミドの丘
ユーリ達は走って道を抜けるとエフミドの丘の入口に着いた。
リタ「ここがエフミドの丘?」
カロル「そう……だけど……。おかしいな……。結界が無くなってる」
ユーリ「ここに、結界があったのか?」
カロル「うん、来る時にはあったよ」
ユーリ「人の住んでないところに結界とは贅沢な話だな」
リタ「あんたの思い違いでしょ。結界の設置場所は、あたしも把握してるけど、知らないわよ」
カロル「リタが知らないだけだよ。最近設置されたって、ナンが言ってたし」
エステル「ナンって誰ですか?」
カロル「え……?え、えっと……。ほ、ほら、ギルドの仲間だよ。ボ、ボク、その辺で、情報集めてくる!」
戸惑いがちにそう答えたかと思えば慌ててぎくしゃくしながら駆けていった。
リタ「あたしもちょっとみてくる」と小走りで行ってしまった。
ユーリ「ったく、自分勝手な連中だな。迷子になっても知らねぇぞ」
2人に聞こえるように大声で注意した。
エステルが私たちも行きましょうとユーリ達はリタの後をおった。
リタの所に着くと、知らない人がおりリタに向かってこらこら、部外者は立ち入り禁止だよ!と警告する。
リタ「帝国
言われた人はアスピオの研究者の方でしたか!途端に態度を変えてこれは失礼しましたと頭を下げた。
カロルがユーリ達の所に走ってきた。
随分と慌てた様子だ。
カロル「三人とも聞いて!それが一瞬だったらしいよ!槍でガツン!
レナ(なにか大事が起こったんだろうけど……。大興奮のカロルの今の説明、擬音語多くてよく分からん)
ユーリはいまいち分からないと言った顔でッスーと息を吸ってカロルからもう一度話を聞く。
ユーリ「……誰が何をどうしたって?」
カロル「龍に乗ったやつが!
今度は擬音語もなくとても分かりやすい説明だった。
ユーリ「人が竜に乗ってか?んなバカな」
エステル「そんな話、初めて聞きました」
レナ(それって……もしかしてあの人だよね)
ユーリとエステルは口を揃える。
カロル「ボクだってそうだけど、見た人がたくさんいるんだよ。『竜使い』が出たって」
カロルの話に気を取られていたらリタの怒号が響く。
カロル「なんか騒ぎおこしてるよ」
リタ「この
と大声で訴える。
近くにいた人が、おかしくなんてありません。あなたがおかしいんじゃ……!と心外だと言わんばかりに言い返す。
リタ「あたしを誰だと思ってるのよ!?」
とさらに甲走る。
リタ「こんな変な術式の使い方して、
と
押し問答を続けている2人に別の人がちょっと見てないでつかまえるの手伝ってくださいと声を上げた。
カロル「火事だぁっ!山火事だっ!」
とリタが捕まりそうなのを咄嗟に気を引こうと大声を出す。しかし相手にされず、騎士からはなんだあのガキと言われる始末。なんなら嘘だと即バレしてしまっている。なぜバレないと思ったのかカロルはやばもうバレたと慌てて逃げた。騎士のひとりがカロルを追いかける。もう1人の騎士がユーリにさっきのガキと一緒にいたようだがと言いかけてなにかに気づき手配書の…と言ったところで、ユーリが首に手刀を入れて気絶させた。ユーリが今だ!と皆に合図する。その合図で一斉に走った。騎士があ、おいこらまて!と声を上げるが、ラピートが飛び蹴りした。ナイスである。エステルはごめんはさいと律儀に謝って走ったりカロルを追いかけていた騎士が、サボってないで手伝えとほかの騎士に怒鳴る。ラピートに蹴られた騎士はチッと苛立ちを表した。
大きく道を逸れて獣道を走ったユーリ、レナ、リタ、エステル、ラピートは振り切ったところで息を整える。
エステル「はあ……はあ……リタって、もっと考えて行動する人だと思っていました」
と息切れを整えながら愚痴ってしまっている。
リタ「はあ……あの
大きく息を整えながらブツブツと言っていた。
ユーリもはあ……と息をつきながらおかしいって、また厄介事か?と問いかける。
レナははあ……はあ……と息切れをどうにか落ち着かせようと必死だ。
レナ(…まって思ってたよりも息するのきついんだけど、子供の肺活量?舐めてた……)
リタは厄介事なんて可愛い言葉で、片付けばいいけどと返した。
ユーリ「オレの両手はいっぱいだからその厄介事はよそにやってくれ」
とため息混じりに吐き捨てる。
リタ「……どの道、あんたらには関係ないことよ」
遠くからハルルに居た騎士の叫ぶ声が聞こえた。
リタは呼ばれてるわよ?有名人とユーリに向かってからかうように言う。ユーリはウンザリそうにまたかよと零した。もう1人の騎士がエステルを呼ぶ。リタはあんたら問題多いわね、一体何者よと2人に向かって問うのだった。エステルは言いずらそうにえっと…と視線を逸らす。ユーリはそんな話は後だと先に進む。リタはレナを見て、あんたあの二人によく着いていられるわねと私なら無理だわと呆れたような声で言った。これには苦笑いするしかないレナだった。ユーリが草木のざわめきに剣を構える。悲鳴をあげて出てきたのはカロルだ。
エステル「……なんだ、カロル……。びっくりさせないでくだい……」
とホッとした声をしていた。
ユーリ「さ、面倒になる前に、さっさとノール港まで行くぞ」
リタ「これって獣道よね?進めるの?」
ユーリ「行けるところまで行くぞ。捕まるのはたくさんだ」
エステル「魔物にも注意が必要ですね」
ユーリ「なあに、魔物の1匹や2匹、カロル先生に任せておけば万事解決だよな」
カロル「そ、そりゃあね。結界があれば、魔物の心配もなかったのに」
リタ「まったくよ。どっかのバカが
ユーリ一行は魔物に警戒しながら獣道を進んで行った。
途中の道でオレンジ色の花を見かけた。リタが山ん中じゃ、こんな花さくんだと珍しげに見ている。そしてそのまま花に触れようとして、エステルが触っちゃダメ!と慌てた声で叫ぶ。
エステル「ビリバリハの花粉を吸い込むと目眩と激しい脱力感に襲われる、です」
リタはふーん……となにか閃いたかのような素振りをすると、カロルを花の前に押した。衝撃で花のつぼみが開きカロルは花粉がかかる。リタはわざとらしいごめーんをカロルに言った。エステルがカロルに近寄り、治癒術をかける。リタはその様子をじっと見ていた。それに気づいたユーリが治癒術に興味があるのか?と聞く。別に……とそっぽを向いてリタは誤魔化した。
エステル「……だめですね。治癒術では治りません。自然に回復するのを待つしかなさそうです」
レナ(カロル可哀想に……)
ユーリがカロルの横に膝をつき、これいつ治るんだ?と言った。エステルはカロルに頑張ってくださいと声をかけた。しばらくして回復したカロルがリタに酷いよお〜とまだ花粉が抜けきっていないのかふにゃけた声で言う。リタは、だからごめんって言ったでしょ!とまくし立てる。ユーリがへーきなら行くぞーといって、エステルがビリバリハには今後気をつけましょうねと呼びかけた。
―数時間後
ユーリ達はエフミドの丘のてっぺんに近いひかけた地点にいた。エステルが風を感じ、眺めを見下ろして感嘆の声を上げる。リタがこれって……と息を飲む。そこ広がっていたのはどこまでも続いているように見える海だった。マリンブルーが陽の光に照らされてキラキラと輝いている。エステルは、海ですよ海!とユーリにはしゃいで言った。
ユーリは、分かってるってと頷きながら、風が気持ちいいなと呟いた。
レナ「海なんて見たの、いつぶりだろう……」
その綺麗さに目を奪わて、記憶喪失であることを忘れてそう呟いてしまう。
(海なんて近くになかったからいつも写真や雑誌でしか見られなくて……心が澄み渡るのを感じる)
ユーリ「……!レナ、お前記憶が」
レナのつぶやきが聞こえていたユーリは少し驚いたように声をかける。
レナ「えっ、あ……うん。す、少しだけ思い出したみたい」と微笑む。
レナ(っあぶな、言われて記憶喪失なの思い出した……)
何故か少し戸惑った声でそう返すレナにユーリは少し疑問に思いながらも穏やかな眼差しを向ける。
ユーリ「……そうか、よかったな」とレナの頭を撫でた。
レナ(ユーリ、撫でるの好きなのかな)
エステル「本で読んだことはありますけど、わたし、本物を間近で見るのは初めてなんです!」
とても嬉しそうに楽しそうに語る。
カロル「普通、結界を越えて旅することなんてないもんね。旅が続けば、もっと面白いものが見られるよ。ジャングルとか滝の街とか……」
エステル「旅が続けば……もっと色んなことを知ることが出来る……」と噛み締めるように反芻する。
ユーリ「そうだな……。オレの世界も狭かったんだな」
リタ「あんたにしては珍しく素直な感想ね」
カロル「リタも海初めてなんでしょ」
リタ「まあ、そうだけど」
カロル「そっかぁ……。研究ばかりの寂しい人生送ってきたんだね」と哀れむような感じで言った。
リタ「あんたに同情されると死にたくなるんだけど」
カロルに手厳しい言葉が返ってくるのだった。
エステル「この水は世界の海を回って、全てを見てきてるんですね。この海を通じて、世界中に繋がっている……」自然の美しさに心を打たせぽつり。
リタ「また大袈裟な、たかだか水溜りのひとつで」
カロル「リタも結構、感激してたくせに」
そんなカロルの様子に、ふふっと微笑む。
レナ「カロルだって初めてはそうだったんじゃないの?」
カロルはまぁね……と頬ポリポリかいて照れ隠ししていた。ユーリがこれがあいつの見てる世界かと独りごちる。エステルがユーリ?と呼びかける。
ユーリ「もっと前に、フレンはこの景色を見たんだろうな」
エステル「そうですね。任務で各地を旅してますから」
ユーリ「追いついてこいなんて、簡単に言ってくれるぜ」
そんなユーリにカロルは元気づけるように言う。
カロル「エフミドの丘を抜ければ、ノール港はもうすぐだよ、追いつけるって」
ユーリ「そういう意味じゃねぇよ」
カロルはえ?どういうこと?と声を裏がして分からないという顔をした。
ユーリ「さあて、ルブランが出てこないうちに行くぞ。海はまたいくらでも見られる。旅なんていくらでもできるさ」
エステルは自分の地位を思い返して黙ってしまう。
ユーリ「その気になりゃな。今だってその結果だろ?」
エステル「……そうですね」
レナ(……わたしはいつまでユーリ達といられるだろう。突然この世界に来たんだからその逆もあるかもしれないよね)
カロル「ほら、先に行っちゃうよ!」
ユーリ「慌ててると、崖から落ちるぞ」
と、注意した傍からカロルは落ちそうになっている。レナは素早く駆け寄りカロルの手を引いた。見ていたリタがバカっぽいと零した。エフミドの丘を抜けてノール港に向かっていると、先程の空の青さはどこへやら。暗い灰色の雲が頭上をみるみる覆っていき、雨が降り始めた。
―ノール港
ユーリ「……なんか急に天気が変わったな」
カロル「びしょびしょになる前に宿を探そうよ」
と提案する。へくしゅっとレナはくしゃみしながら頷く。エステルはボーッとしており、ユーリがどうした?と声かける。
エステル「あ、その、港街というのはもっと活気のある場所だと思っていました……」
ユーリ「確かに、想像してたのと全然違うな……」
と共感する。
リタ「でも、あんたの探してる
ユーリ「デデッキってやつが向かったのはトリム港の方だぞ」
リタ「どっちも似たようなもんでしょ」面倒そうな顔をした。
カロル「そんなことないよ。ノール港が厄介なだけだよ」と否定し、続ける。「ノール港はさ帝国の圧力が…「金の用意が出来ないときは、おまえらのガキがどうなるかよくわかっているよな?」とカロルの声を遮るように不快な内容が耳を障る。夫婦がお役人様!!どうかそれだけは!息子だけは……返してください!と懇願していた。
役人「ならば、早くリブガロって魔物を捕まえてこい」
と言い放った。
レナ(……何今の。子供を人質にしてるの?)
ユーリ「カロル、今のがノール港の厄介の種か?」
カロルは肯定する。
カロル「このカプワ・ノールは帝国の威光がものすごく強いんだ。特に最近来た執政官は帝国でも結構な地位らしくてやりたい放題だって聞いたよ」
リタ「その部下の役人が横暴な真似をしても、誰も文句が言えないってことね」
ユーリは胸糞悪いと言った顔をする。エステルはそんなと声を上げた。
レナ(いつの時代も、上に立つ人間が腐ってれば下も腐っているわね)
女性「もうやめて、ティグル!その怪我では……。今度こそ貴方が死んじゃう!」悲痛な声で夫を止めている。
ティグル「だからって、俺が行かないとうちの子はどうなるんだ。ケラス!」
そう言って男性は走って街の外に出ようとしたがユーリの足に引っかかってコケてしまった。
ティグル「痛ッ……あんた、何すんだ!」
と体の痛みに顔をゆがめながら声を荒らげている。ユーリはわざとらしい顔であぁわりぃ、引っかかっちまったと言ってのける。ケラスがティグルの元へ駆け寄る。
エステル「もう!ユーリ!……ごめんなさい今、治しますから」とユーリを叱りながら治癒術をティグルにかける。
レナ(……ユーリ、狙ってやったよね)
ケラスはあの私たち払える治療費がと言いかけてユーリがその前に言うことあるだろ?と言えばえ?と疑問をあげる。
ユーリ「まったく、金と一緒に常識までしぼり取られてんのか」
ケラスは言われてハッとしてすぐに立ち上がる。
ケラス「……ご、ごめんなさい。ありがとうございます」とエステルにお礼を言った。
カロルがあれ?ユーリとレナは?とキョロキョロした。
―ユーリの方では
雨が降る中、路地裏にユーリは立っていた。相手を誘い出すために。もちろんレナは危ないのでバレないように置いてきたつもりだった。レナはユーリの動きにすぐ感づいてバレないように後をつけた。しばらくして、暗殺者であろう3人組が姿を現しユーリに襲いかかる。剣で攻撃を受け止めた。うち2人が何故か後ろに飛ばされていた。
?「大丈夫か?ユーリ」
と騎士団の服と鎧を身にまとい金髪の青年が立っていた。
ユーリはその姿を見て驚き名を呼ぶ。
ユーリ「フレン!おまっ……それオレのセリフだろ」
フレン「まったく、探したぞ」
ユーリ「それもオレのセリフだ」と、蒼破を敵に撃ちながら返す。
再び敵が襲い来るのを息ぴったりに2人は受け止め弾き、術技をいれる。またもや飛ばされる敵たち。今のままでは無理と判断したのか暗殺者達はその場を退いた。
ユーリは戦闘をおえてふぅと息をつく。
ユーリ「マジで焦ったぜ」
フレンはさてと言うとユーリに向かって剣を振り上げた。ユーリは持ち前の反射神経で剣で受け流す。ユーリは焦った声でなにしやがる!とフレンに言った。
レナ(あとをついて来たはいいけど、出るタイミング完全に見失った……2人とも剣交え始めるし、どうしよう)
フレン「ユーリが結界の外へ旅立ってくれたことは嬉しく思っている」
ユーリ「なら、もっと喜べよ。剣なんか振り回さないで」と攻撃をいなす。
フレンは攻撃をやめ、剣で壁を指し示す。
フレン「これを見て、素直に喜ぶ気が失せた」
ユーリ「あ、10000ガルドに上がった、やり」と呑気だ。
フレン「騎士団を辞めたのは犯罪者になるためではないだろう」
ユーリ「色々事情があったんだよ」
片手をブラブラさせながら言う。
フレン「事情があったとしても罪は罪だ」
ユーリ「ったく、相変わらず、頭の硬いやつだな……あっ」
エステルがこちらに走ってきていた。
エステル「ユーリ、さっきそこで何か事件があったようですけど……」
ユーリはちょうどいいとこにとほっとする。エステルは嬉しそうにフレン!と声をかけて、ユーリを擦り抜けてフレンに抱きついた。フレンは驚いて固まっている。
エステル「良かった、フレン。無事だったんですね?怪我とかしてませんか?」
そう言ってあちこち触って確かめるエステル。硬直から立ち直ったフレンは、戸惑いながらしてませんからと返した。次いでエステリーゼ様…と気まずそうにする。エステルはハッとして謝る。ユーリはフレンとエステルに背を向けていた。フレンはこちらにと言うと、離したばかりのエステルの手を半ば強引に掴んでどこかに向かう。わけが分からないとエステルは戸惑いながらフレンに雨の中を引きずられるように歩いていった。
ユーリ「……レナとカロルとリタを先に拾うか」
レナ(あ、今しかない)
レナ「ユーリ」
ユーリ「っレナ?!お前いつからそんなところにいたんだ?風邪ひくだろ」
路地裏からひょっこりと出てきたレナにユーリは驚く。
レナ「えっと、ユーリがみんなに黙ってどっかに行った時に気になって後をつけたの」気まずそうに答えた。
ユーリ「そんな前からかよ。怪我はないか?危ねぇから二度とそんなことするなよ」
呆れながらもしっかりとレナを叱る。
レナ「うっごめんなさい。ユーリなら1人でも大丈夫だと思ったけど心配になっちゃって……その、もしもの事を考えちゃって」湿ったカーディガンの袖を握り込む。
ユーリ「……心配かけて悪かった」
それは少し申し訳なさが伝わる声だった。レナはその謝罪にこくりと頷いた。
ユーリとレナはカロルたちの元へ戻った。カロル達は軒下で雨宿りをしている。
カロル「なんかエステルが引きずられていったけど……」
ユーリ「二人は宿屋の中か?」
ユーリはドアを開けようと手を伸ばす。
リタ「今、行っても。色々立て込んでると思うわよ」
カロル「長くなりそうだったし、先に街を見て回ったら?」と提案する。
ユーリ「……そうだなぁ」
と振り返って歩き出すユーリにレナはついて行った。
ユーリとレナは執政官がいるという屋敷の前に来ていた。薄い金髪の2つ二三つ編みした海賊帽子の女の子が、門番らしき人と揉めてほおり出されるのをユーリがキャッチする。抱きとめられた女の子は抱きとめられたことにむむっと声を上げた。
ユーリ「子供一人に随分と乱暴敵な扱いだな」
女の子は再チャレンジなのじゃと構える。しかしむなしくも門番に剣先を向けられてしまった。
ユーリ「おいおい。丸腰の子供相手に武器向けんのか」
門番のひとりは、ガキにこれが大人のルールだってことを教えてやるだけだと言った。
レナ(子供になんてことを……。いくらなんでもやりすぎっ)苛立ちを手を握ってやり過ごす。
ユーリはやめとけってっと言って止める。女の子はポッケからなにか取り出したかと思えば、それを地面になげつけた。瞬間大量の煙が門番、ユーリたちを襲う。俗に言う煙幕だった。レナは煙を吸ってしまいゴホゴホと咳をする。門番は煙を払おうと必死だ。女の子は屋敷に入口とは逆方向に走る。ユーリは咄嗟に女の子手を掴む。
ユーリ「おいおい。ここまでやっといて逃げる気か?」
女の子「美少女の手を掴むのには、それなりの覚悟が必要なのじゃ」
ユーリ「どんな覚悟が教えてもらおうじゃねぇか」
女の子「残念なのじゃ。今はまだそのときでない」
2人のやり取りを聞き取りながらも、ゴホゴホと咳をするレナ。
ユーリ「なんだって……?」
女の子はさらばじゃと告げると煙の勢いは増していき、その勢いでどこかに走っていってしまった。煙は段々と落ち着き視界が開ける。ユーリはまてと声をかけるが、あっという間に姿が見えなくなり見失った。レナはコンコンと未だに咳をしていた。
レナ(……そういえば煙系は吸い込むと体質なのかしばらく噎せちゃうんだった)
ユーリはレナに大丈夫か?と屈む。深呼吸をして落ち着たレナはこくんと頷いた。
門番「ちっ、なんだったんだ、あのガキ。おい、お前もさっさと消えるんだな」
レナ「?あれ、ユーリ何持ってるの?」
ユーリ「ったく……やってくれるぜ」
どうやら先程の彼女に似た人形のようだ。
レナ「あっねぇ、そろそろエステル達の話も終わった頃なじゃない?」
ユーリ「ああ、そうだな。宿屋に行くか」
ユーリとレナはその場を後にして宿屋へと向った。
宿屋の中へ入ると、リタとカロルもおりそれぞれ椅子にかけていた。
ユーリ「それで、話は終わったのか?」
フレン「ここまでの事情は聞いた。賞金首になった理由もね。まずは礼を言っておく。彼女を守ってくれてありがとう」
エステル「あ、わたしからも、ありがとうございました」ソファにかけたまま頭を下げる。
ユーリ「なに、
フレン「問題はそっちの方だな」
ユーリはそれにん?とひっかかりを覚える。
フレン「どんな事情があれ、公務の妨害、脱獄、不法侵入を帝国の法は認めていない」
エステル「ご、ごめんなさい。全部話してしまいました」
申し訳なさそうに肩をすくめている。
ユーリ「仕方ねぇなやったことは本当だし」
フレン「では、それ相応の処罰を受けてもらうが、いいね?」
それは聞いてないとフレン!?とエステルは身を前に乗りだす。
レナ(……もしユーリが捕まったらわたしどうすればいいんだろう)
ユーリ「別に構わねぇけど、ちょっと待ってくんない?」
フレン「下町の
フレンの部下らしき人が入ってきて、背の小さな男の子がご報告がと述べ、リタがいることに驚いた。
男の子「あなた、帝国の協力要請を断ったそうじゃないですか?帝国直属の魔導士が、義務付けられている仕事を放棄していいんですか?」とリタに詰め寄る。
ユーリはリタに誰?と聞くが、リタはだれだっけ?と返した。
フレン「紹介する。僕……私の部下のソディアだ。こっちはアスピオの研究所で同行を頼んだウィチル。彼は私の……「こいつ……!賞金首のっ!!」」
ソディアが口を挟みユーリに剣を向けた。そばに居たレナは反射的にユーリを庇うように前に出てしまう。フレンが待て!と声掛け私の友人だと話す。ソディアは信じられないといった声で、賞金首ですよ!!と声を荒らげる。
フレン「事情は今、確認した。確かに軽い罪は犯したが、手配書を出されたのは濡れ衣だ。後日、帝都に連れ帰り私が申し開きをする。その上で、受けるべき罰は受けてもらう」と説明し、ソディアに抜いた剣を収めるように制する。
ソディアは納得し、非礼を詫びるとウィチルに報告を促す。ウィチルは頷くと、フレンへと1歩前にでる。
ウィチル「この連続した雨や暴風の原因は、やはり
ソディア「ラゴウ執政官の屋敷内に、それらしき
とウィチルに続いた。
リタが、天候を制御できる
リタ「そんなもの発掘もされてないし……いえ、下町の
ぶつぶつ言いながら考えている。
ユーリ「執政官様が
ええ、あくまで可能性ですが…とソディアが肯定する。
ソディア「その悪天候を理由に港を封鎖し出航する船があれば、法令違反で攻撃を受けたとか」と続けた。
ユーリ「それじゃ、トリム港に渡れねぇな……」
フレン「執政官の悪い噂はそれだけではない。リブガロという魔物を野に放って税金が払えない住民たちと戦わせて遊んでいるんだ。リブガロを捕まえてくれば、税金を免除すると言ってね」
レナ(……っなんて非道な)
リタ「入り口で会った夫婦の怪我って、そういうからくりなんだ。やりたい放題ね」と納得する。
カロルは酷い話に顔を歪ませて、そういえば子供が…と口にした。フレンはこどもがどうかしたのかい?と聞くがユーリになんでもないと返された。そのまま、色々あって疲れたからここままオレらは休ませてもらうとフレンに伝えるとユーリ、レナ、リタ、カロルはその場を後にした。
エステルもユーリ達とその場を後にする。
ユーリ達は宿の外に出る。まだ雨は降り続いていた。
エステル「わたし、ラゴウ執政官に会いに行ってきます」
カロル「え?ボクらなんか行っても、門前払いだよ。いくらエステルが貴族の人でも無駄だって」
とエステルを止める。
リタ「うだうだ考えてないで、行けばいいじゃない」
ユーリ「話のわかる相手じゃねぇなら、別の方法考えればいいんだしな」とリタの意見に賛成した。
ユーリ達はラゴウ執政官が居る屋敷に向かった。