目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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執政官の屋敷

―ラゴウ邸

 

 屋敷に行くと、門番がなんだ、貴様らと警戒する。

エステル「ラゴウ執政官に会わせて頂きたいんですが」

カロル「ユーリ、この人たち、傭兵だよ。どこのギルドだろう……」

レナ(この人たち、傭兵だったんだ。道理で……)

ユーリ「道理でガラが悪いわけだ」

傭兵は帰れ帰れ!執政官殿は忙しいんだよとユーリ達に向かって言った。ユーリは街の連中痛めつけるのにか?と言えば口には気をつけろよとさらに威嚇された。

カロル「だから、相手にされないって言ったじゃないか。大事になる前に退散しようよ」とユーリに訴える。

それにユーリは賛成だと返した。エステルは他に方法が……と無いと続けようとしてリタにいいから行くよと引っ張られて行った。

ユーリ「正面からの正攻法は騎士様に任せるしかないな」

リタ「それが上手くいかないから、あのフレンってのがら困ってるんじゃないの?」

ユーリ「まぁな。となると、献上品でも持って、参上するしかないか」

リタ「献上品?何よ、それ」

ユーリ「リブガロだよ。価値あんだろ?」

エステル「そういえば、役人のひとりが言ってました。そのツノで、一生分の税金を収められるって」

レナ(そんなに高価なものなんだ)

ユーリ「じゃあ、まずリブガロを探すとしますか」

 5人はノール港の入口へと向かう。その道中宿屋付近でフレンと出会った。

フレン「相変わらず、じっとしてるのは苦手みだいだな」

ユーリ「人をガキみたいに言うな」

フレンが無茶はもう……とユーリを心配してなのか行くのを止めようとする。

ユーリ「オレは生まれてこのかた、無茶なんてしたことないぜ。今も魔核(コア)ドロボウを追ってるだけだ」

そう言われてしまえばフレンは何も言えない、いや言わない。

ユーリ「おまえこそ、無理は程々にな」

そう言って街の外へと行ってしまった。

レナは出ていく振りをしてエステルが来るのを待っていた。

 フレンはウィチルに指示を出すと、まったく……と独り言言った。フレン?とエステルが気になるようにその名を呼ぶ。呼ばれたフレンはエステルに向き直った。

フレン「ユーリは守るべき物のためならとても真っ直ぐなんですよ。その為に自分が傷つくことを厭わない。それが羨ましくもありそのための無茶が不安でもあるんですけどね」と心の内を吐き出すように続けた。

レナ(……守りたい……皆を。ユーリが無茶しないように私も守る。ユーリ達は私が無茶するのをとめそうだけど、守るための力が私にはあるんだから。いざと言う時のために魔術以外の攻撃も出来るように考えないと、だね)

少女は密やかに決意した。

 入口近くでカロルも待っていたようで、ユーリに置いていかれてしまうとエステルを呼ぶ。エステルはフレンに私たちもこれで……と行こうすると、フレンがエステリーゼ様と呼び止める。エステルが返事をして足を止めると、フレンはどうですか?外を、自由に歩くというのは?と続けた。

エステル「全部を良かったというのは、難しいことですけど……わたしにも成すべきことがあるのだとわかり、それが嬉しくて、楽しいです」とニコリと笑って返した。

フレン「そうですか、それは良かった……」と穏やかに頷く。

ではと今度こそエステルはその場を去った。

 ユーリ達は街の外へ出てリブガロを探し始める。雨天のせいで視界が悪い。振り続ける雨は、じわりじわりと体力も削っていく。湿っていく服に不快感を覚えながらも進んでいく。街から遠く離れた場所まで歩いたところで、黄色い毛並みを持つ4足の魔物が現れた。カロルはすぐに気づき、これがリブガロだよ!とみんなに知らせた。みな一斉に武器を取る。レナは、詠唱準備に入った。それを見たユーリがレナは下がっとけと指示を出す。負けじとでもと視線で訴えたがダメだと言われた。渋々彼女はみなと距離をとった。

レナ(痛みなんて慣れるもんなのに。ユーリは心配症だな……)

リブガロの討伐は思ったよりも早くに終わり、それはユーリ達が初めの時よりも着実に強くなっていることを示した。

カロル「さっさと連れて帰ろうよ」

よく見ればリブガロは傷だらけで治りかけの傷も幾つかある。

エステル「傷だらけ……。少しかわいそうですね」と眉を下げる。

ユーリ「死に物狂いの街の連中に何度も襲われたんだろうな。高価なのはツノだろう?金の亡者どもにゃこれで十分だ」とツノだけを採取すると街へ足を進めた。

 

 ユーリが街へ帰ると、聞いたことのある女性の声が聞こえた。

ケラス「待って!せっかく、ケガを治してもらったのに!」

声のする方向を見るとティグルが剣を持って街の入口に向かっていた。ユーリがティグルに近づきそんな物騒なもん持って、どこに行こうってんだ?と声をかける。

ティグル「あなた方には関係ない。好奇心で首を突っ込まれても迷惑だ」と冷たく返した。

そんなティグルの態度に、ユーリはティグルの足元にリブガロのツノを放る。ティグルはこれはっ?!と求めていた物に驚きの声をあげた。

ユーリ「あんたの活躍の場を奪って悪かったな。それは、お詫びだ」

夫婦はありがとうございますとお礼を述べユーリはその場を後にする。

レナ「ねぇ、あげても良かったの?」

カロル「そうだよ!よかったの?!」

ユーリ「あれでガキが助かるなら安いもんだろ」

レナ「そっか。子供が助かるなら確かにそうだね」

エステル「最初からこうするつもりだったんですね」

ユーリは誤魔化すように思いつき思いつきと言う。

リタ「その思いつきで、献上品が無くなっちゃったわよ。どうすんの」

ユーリ「ま、執政官邸には、別の方法で乗り込めばいいだろ」

エステル「なら、フレンがどうなったか確認に戻りませんか?」と提案する。

カロル「とっくにラゴウの屋敷に入って、解決してるかもしれないしね」

だといいけどとユーリは呟いた。

 5人は宿に戻り、フレンたちをたずねる。入ってそうそうユーリは、フレン達に相変わらず辛気臭い顔してるなと声をかけた。

フレン「色々考えることが多いんだ。君と違って」とユーリの嫌味に同じように嫌味で返した。

フレン「また無茶をして、賞金額を上げて来たんじゃないだろうね」

ユーリ「執政官とこに行かなかったのか」とフレンの言葉を無視して質問する。

フレン「行った。魔導器(ブラスティア)研究所から調査執行書をら取り寄せてね」

ユーリ「それで中に入って調べたんだな」

フレン「いや……執政官にはあっさり拒否された」

それにカロルがなんで!?と驚く。

ウィチル「魔導器(ブラスティア)が本当にあると思うなら正面から乗り込んでみたまえ、と安い挑発までくれましたよ」

ソディア「私たちにその権限がないから、馬鹿にしているんだ!」と怒りを示す。

ユーリ「でも、そりゃそいつの言う通りじゃねぇの?」

ソディアが何だと!?とユーリに突っかかって行くのをウィチルが慌てて止める。

カロル「ユーリ、どっちの味方なのさ!」とユーリに問う。

ユーリ「敵味方の問題じゃねぇ。自信あんなら乗り込めよ」

フレンはいや、これは罠だと返す。

フレン「ラゴウは騎士団の失敗を演出して、評議会の権力強化を狙っている。今、下手に飛び込んでも証拠は隠蔽され、しらを切られるだろう」

エステル「ラゴウ執政官も評議会の人間なんです?」

フレンは肯定する。

フレン「騎士団も評議会も帝国を支える重要な組織です。なのに、ラゴウはそれを忘れている」

ユーリ「とにかく、ただの執政官様ってわけじゃないってことか。で、次の手考えてあんのか?」

その問いにフレンは黙ってしまった。

ユーリ「なんだよ、打つ手なしか?」

ウィチル「……中に騒ぎでも起これば、騎士団の有事特権が優先され、突入できるんですけどね」

ユーリ「なるほど、屋敷に泥棒でも入ってボヤ騒ぎでも起こればいいんだな」とどこか含みのある声で言う。

レナ(……ん〜これはなにかやるね)

フレン「ユーリ、しつこいようだけど……」

無茶するな、だろ?とユーリが言ってわかってるという顔をした。フレンはそれを見てそれ以上は何も言わなかった。

フレン「市中の見回りに出る。手配書で見た窃盗犯が、執政官邸を狙うとの情報を得た」

と部下に言うとそのまま外へと出た。

 ユーリ達も宿屋を後にして外に出ると、執政官邸近くに行く。近くまで着くと、入口そばにいる傭兵にバレないように潜む。

カロル「何度見ても、おっきな屋敷だね。評議会のお役人ってそんなに偉いの?」

エステル「評議会は皇帝を政治面で補佐する機関であり、貴族の有力者により構成されている、です」

リタ「言わば、皇帝の代理人ってわけね」

レナ「どうやって入るの?」

エステル「裏口はどうです?」

?「残念、外壁に囲まれてて、あそこを通らにゃ入れんのよね」とユーリたちの後ろから男性の声がした。

エステルがその男性に気づき声を上げそうになって、男性がしーっと人差し指を口に当てる。

?「こんな所で叫んじゃったら見つかっちゃうよ、お嬢さん」

エステル「えっと、失礼ですが、どちら様です?」と戸惑いつつ聞く。

?「な〜に、そっちのかっこいい兄ちゃんとちょっとした仲なのよ。な?」とニッと笑ってユーリに視線を向ける。

ユーリ「いや、違うから、ほっとけ」とうんざりしながら顔を逸らした。

?「おいおい、ひどいじゃないの。お城の牢屋で仲良くしてくれたじゃない、ユーリ・ローウェル君よぉ」

ユーリ「ん?名乗った覚えはねぇぞ」と睨む。

男性は手配書を出してヒラヒラとさせた。納得したカロルがユーリは有名人だからねと言って、おじさんの名前は?と聞いた。リタは怪しいと言わんばかりに睨んでいる。

?「ん?そうだな……。とりあえずレイヴンで」

ちゃらちゃらとカロルの質問に答えた。

リタ「とりあえずって……、どんだけふざけたやつなのよ」と組んでいた腕を解いて呆れ返る。

ユーリ「んじゃ、レイヴンさん、達者で暮らせよ」

レイヴン「つれないこと言わないの。屋敷に入りたいんでしょ?ま、おっさんに任せときなって」

レイヴンは屋敷の入口に行く。

リタ「止めないとまずいんじゃない?」

ユーリ「あんなんでも城抜け出す時は、本当に助けてくれたんだよな」

エステル「そうだったんです?だったら、信用できるかも」

だといいけどなとユーリは言った。

レナ「……それはどうだろうね(ボソッ)」

誰にも聞き取れないようなほぼ音になっていない声でポツリ。状況を見ていたカロルがな、なんかこっちくるよ?と入口をさす。レイヴンはそのまま屋敷へと入って行った。エステルはそ、そんなぁ……と困り果てた声を出す。リタは下を俯き明らかに怒っている。

リタ「あいつ、バカにして!あたしは誰かに利用されるのが大っ嫌いなのよ!」と向かってくる傭兵の前に飛び出すと、詠唱し始める。

次いでそのまま、お得意の火の魔術を放ち傭兵を1発KOさせたのだった。

カロル「あ〜あ〜、やっちゃったよ。どうすんの?」

ユーリ「どうするって、そりゃ行くに決まってんだろ?見張りもいなくなったし」

 そのままリタを先頭に入口に走りそのまま入ろうとしたがユーリがちょいまったと立ち止まる。

ユーリ「正面はさすがにやめとけ、裏に回って通用口でも探すぞ」

裏に回るとそこにはレイヴンが居た。

レイヴン「よう、また会ったね。無事で何よりだ。んじゃ」と通用口へ去っていった。

待てコラ!とリタは大声を上げて隣の通用口に乗り込むが下に降りていく。カロルがあれ、下?と呟いた。機械が止まり一同は降りる、リタは通用口を操作しようといじっているが、ここからでは操作できないようにされていた。

 異臭にエステルがうっ!?と鼻を抑える。レナも顔を顰めていた。カロルがなんか臭いねと絞り出す。

ユーリ「……血と、あとはなんだ?何かの腐った臭いだな」

するとユーリ達の前に魔物が姿を現す。

ユーリ「魔物を飼う趣味でもあんのかね」

レナ「だとしたら、悪趣味だよね。まぁ、実際はそれよりも悪趣味な感じがするけど……」

遠くから、パパ……ママ……助けて……と子供のすすり泣く声が聞こえた。

レナ「……やっぱりね」苛立ちを少し滲ませながら呟く。

   (子供をこんなところに連れてきて……本当に趣味が悪い)

エステル「行きましょう!誰かいるみたいです!」

声をした方向に走っていくと、子供が怯えて蹲っていた。

エステルはだいじょうぶだよとあやすように子供に声をかける。そのまま、なにがあったか、はなせる?と子供に聞く。

子供「こわいおじさんにつれてこられて……パパとママがぜいきんをはらえないからって……」とまた今にも泣きそうな声で目に涙をためながら話してくれた。

カロル「ねぇ、もしかして、この子。さっきの人たちの……」

エステル「……なんて、ひどいこと」と悲しみと怒りを感じ抑える。

カロル「もしかして、この人たちは、ここの魔物に……?」

子供の周りに倒れている大人たちをみてカロルが呟いた。

子供「パパ……ママ……帰りたいよ……」

そうこぼすとこらえきれなくなった涙が頬を伝い流れた。

エステル「だいじょうぶ。もう、だいじょうぶだからね。お名前は?」

また泣き出した子供を安心させるように優しい声で話す。

ポリーと子供は答えた。ユーリがポリーの近くに膝つく。

ユーリ「ポリー、男だろ、めそめそすんな。すぐに父ちゃんと母ちゃんにはあわせてやるから」

下町の子供たちで慣れているのだろう、普段よりも穏やかな声で言った。うんとポリーは頷いた。ユーリはよしと言うと、んじゃ行こうとここを抜けるために進む。

 

 奥へ進むと、檻のようものがある部屋に着いた。

檻の外側から誰かが歩いてくる。

「はて、これはどうしたことか、おいしい餌が、増えていますね」

レナ「っ……あなたがラゴウさんですか?随分と胸糞悪い趣味をお持ちなんですね」

少女は右手で左腕をグッと握って怒りを抑え平然を装う。

ラゴウ「趣味?ああ、地下室のことですか」

   「これは私のような高雅な者しか理解できない楽しみなのですよ。評議会の小心な老人どもときたら、退屈な駆け引きばかりで私を楽しませてくれませんからね」

   「その退屈を平民で紛らわすのは私のような選ばれた人間の特権というものでしょう?」

どこまでも下の人間をバカにするその態度に、その場の全員が怒りを滲ませる。レナにいたっては、先程よりも左腕を握る力がググッと強くなっており指先が白くなっている。冷静になろうと深呼吸をするが、足元には微かに魔術陣が浮かび始めている。

エステル「ラゴウ!それでもあなたは帝国に仕える人間ですか!」と我慢できなくなったエステルは糾弾する。

ラゴウはエステルをみて顔を変えた。ユーリはそれを見て、蒼波刃を放ち檻を吹っ飛ばした。その衝撃でラゴウは尻もちをついた。レナの足元に浮かび上がっていた魔術陣はスウッと消える。ラゴウはなにをするのですか!と怯えた声でユーリを指さしながら叫ぶ。そして、ユーリ達を捕らえるように誰かに指示してその場から逃げ出した。

ユーリ「早いとこ用事済まさねぇと敵がぞろぞろ出てくんぞ?」

リタが詠唱し始めるが、ユーリがちょっとまてと止める。

リタ「……何よ、騎士団が踏み込むための有事ってやつが必要じゃないの?」

ユーリ「まだ早い。まずは証拠の確認だ」

エステル「天候を操る魔導器(ブラスティア)を探すんですね」

 屋敷内を一行は探索開始した。次々と部屋を移動し、ドアを開けると大きく開けた場所に出た。目の前にはロープで縛られ吊るされている女の子がいた。い〜い眺めなのじゃ……と呑気だ。カロルは誰……と呟く。ユーリはそこで何してんだ?と少女に聞いた。少女は見ての通り、高みの見物なのじゃと返す。

ユーリ「ふ〜ん、俺はてっきり捕まってるのかと思ったよ」

エステル「あの……捕まってるんだと思うんですけど……」とつっこむ。

そんなことないぞと少女は不服そうに言うと体を揺らした。なにかに気づくと少女はお前たち知ってるのだとユーリとレナを見た。えーと名前は、ジャック!と元気に言った。

エステル「誰なんです?」とユーリを見る

ユーリ「オレはユーリだ。おまえ、名前は?」としょうがないといった顔で軽くため息つく。

少女はパティなのじゃと答えた。

ユーリ「パティか。さっき、屋敷の前で会ったよな」

どこから出したのか不明のパティに似た縫いぐるみを手に持ってぶらぶらさせる。

パティ「おおそうなのじゃ。うちの手の温もりを忘れなくて、追いかけてきたんじゃな」と体を揺らす。

レナ「ねぇ、ユーリ、そろそろ解いてあげたら?」

ユーリ「しかたねぇな」

剣でロープを切りパティを解放させた。パティは服装を整える。

カロル「ね、こんなところで何してたの?」

パティ「お宝を探してたのじゃ」

カロル「宝?こんなところに?」

エステル「と、ともかく、女の子ひとりでこんなところをウロウロするのは危ないです」

レナ「そうだよ。一緒に行かない?」

パティ「うちはまだ宝も何も見つけていないのじゃ」そう言ってドアの方に向かう。

ユーリ「ふーん……なんでもいいけど。ま、まだ宝探しするってんなら、止めないけどな」

パティはドアの前で考え込む。

パティ「たぶん、この屋敷にはもうお宝はないのじゃ」

ユーリたちの方へ振り返る。

リタが一緒に来るってさと通訳する。ユーリはそれを聞いてそれじゃ行くかと、一同はその場を後にした。再び、部屋を巡り証拠を探していると、潜入者ぁぁあ!!と傭兵?らしき人が斬りかかって来た。ユーリはすぐに対応し斬り伏せる。

ユーリ「こんな危険な連中のいる屋敷をよくひとりでウロウロしてたな」とパティを見る。

パティ「危険を冒してでも、手に入れる価値のあるお宝なのじゃ」

カロル「それってどんな宝?」

パティ「アイフリードが隠したお宝なのじゃ」

カロルはアイフリード……っ?!と驚愕する。

エステル「アイフリードってあの、大海賊の?」と驚きに満ちた声。

ユーリは知らないようで有名人なのか?と言った。

カロル「し、知らないの?海を荒らしまわった大悪党だよ」とユーリに説明する。

エステル「アイフリード……海精の牙という名の海賊ギルドを率いた首領(ボス)。移民船を襲い、数百人という民間人を殺害した海賊として騎士団に追われている。その消息は不明だが、既に死んでいるのではと言われている、です」カロルの説明に詳細を付け加える。

カロル「ブラックホープ事件って呼ばれてるんだけど、もう酷かったんだって」

リタ「でも、あんたそんなもん手に入れて、どうすんのよ」

パティ「どうする……?決まってるのじゃ、大海賊の宝を手にして、冒険家として名を上げるのじゃ」

レナ「危ない目に遭っても?」

パティ「それが冒険家という生き方なのじゃ」

ユーリ「ふっ……面白いじゃねぇか」

パティ「面白いか?どうじゃ、うちと一緒にやらんか?」とにこやかに言った。

ユーリ「性には合いそうだけど、遠慮しとくわ。そんなに暇じゃないんでな」

パティ「ユーリは冷たいのじゃ。サメの肌より冷たいのじゃ」

サメの肌……?とカロルが小さくつっこむ。

パティ「でも、そこが素敵なのじゃ」

今度はリタが素敵か……?と小さくつっこんだ。

カロル「もしかしてパティってユーリのこと……」

パティはユーリ達に振り返ると、一目惚れなのじゃとウィンクした。リタがやめといた方がいいと思うけどと呟く。エステルはひとめぼれ……と零す。変な空気にリタは顔を手で覆う。

リタ「……なんでもいいけど、さっさと行きましょ」

一行はその言葉で変な空気を霧散させ、証拠探しに戻った。

 

―数十分後

 

 ユーリ達は大きく開けた円柱状の部屋に着く。そこには青く発光する機械が鎮座していた。一同はその大きな機械を見上げる。

カロル「この魔導器(ブラスティア)が例のブツ?」

 リタが魔導器(ブラスティア)のそばに駆け寄る。操作盤を出すと魔導器(ブラスティア)を解析していく。

リタ「ストリムにレイトス、ロクラーにフレック……複数の魔導器(ブラスティア)をツギハギにして組み合わせている……この術式なら大気に干渉して天候操れるけど……こんな無茶な使い方して……!」

  「エフミドの丘のといい、あたしよりも進んでるくせに魔導器(ブラスティア)に愛情のカケラもない!」と憤っていた。

リタの説明を聞きながらエステルは証拠を確認できましたねと言った。エステルはリタに調べるのは後にと声をかけるが、リタはもうちょっとだけ調べさせてと返す。

ユーリ「後でフレンにその魔導器(ブラスティア)まわしてもらえればいいだろ?さっさと有事を始めようぜ」

各々、その声を合図に行動を開始する。エステルはなにか壊していいものはと探していた。レナはここぞとばかりに張り切った。というか、あまりにも戦闘に参加させて貰えないのでストレスが溜まっていた。レナに物理的な力は無いに近いので、あんまり被害が出なさそうな魔術を考える。パティは、銃を取りだすとよく分からないけどうちも手伝うのじゃとくるくると回して構える。ユーリはパティに大人しくしとけと服を引っ張って止めた。パティは残念そうにあう…と地べたに座り込んだ。カロルは大きなハンマーで柱をたたき出す。レナは風ならそんなに被害も出ないしでも大事にできるのでは?と思い、風の魔術詠唱を始める。

レナ「風よ、切り刻め!……ウィンドカッター!」

風の刃は柱を傷つけた。直後、あの時と同じ全身にトゲが刺さるような痛みが襲う。

レナ(んー初級魔術使ったこの痛みにも慣れてきたなぁ)

痛みが彼女を襲っているなんて誰も気づかないだろう。それくらい平然としていた。ふと上を見ると、詠唱の時に舞う赤い光の粒がリタの周りを舞っている。

リタ「あ〜っ!!もう!!」

と苛立ちながらファイヤーボールを周囲に放つ。

3つ壁にぶち当たり、1つカロルの近くに落ちる。

カロルはそれを慌ててさけて、リタに文句を言った。

リタ「こんくらいしてやんないと、騎士団が来にくいでしょっ!」とファイヤーボールを放ち続ける。

エステルがそんなリタをみてこれはちょっと……とひいている。

パティ「なに、悪人にお灸を据えるにはちょうどいいくらいなのじゃ」と満足げだ。

衝撃に屋敷が揺れている。レナはこれ屋敷崩れたりしないよね?と少し不安になった。

 遠くからラゴウの声が聞こえてくる。人の屋敷でなんたる暴挙です!と声を荒らげていた。声がした方向にユーリ達が振り返ると、ラゴウと屈強な傭兵達がいた。

ラゴウは傭兵達にユーリ達を捕らえるように指示を出す。

エステルは殺さないように追加で指示をした。

カロル「まさか、こいつらって、紅の絆傭兵団?」と傭兵たちの身なりを見て気づく。ユーリは剣を構えると傭兵立ちに突っ込んで行った。リタは離れた場所で、ファイヤーボールを唱えまくっている。

レナはユーリの援護についた。

レナ「刃に宿れ、更なる力よ……シャープネス」

   (っよし、まだまだ耐えられる!)

ユーリに攻撃力アップの魔術を付与する。それぞれ、傭兵達を退けていく。武器と武器がぶつかる金属音と、リタの魔術による轟音、それによって屋敷が揺れる音がラゴウを苦しめている。ある程度傭兵との決着が着くとユーリはリタに駆け寄り、退くぞと声をかける。リタはまだ暴れたりないと詠唱をやめない。

ユーリ「早く逃げねぇとフレンとご対面だ。そういう間抜けは勘弁だぜ」

詠唱を続けながらファイヤーボールをまた放ち、リタはそんな早く来るわけと言いかけてやめた、なぜなら放った先にフレン達がいたから。

フレン「執政官、何事かは存じませんが、事態の対処に協力致します」

エステルはフレン!?と驚きの声を出す。ユーリはほらなとリタに言った。

ラゴウ「ちっ、仕事熱心な騎士ですね……」と小言をもらす。

 突然屋敷の窓ガラスが割れて、外からドラゴンが入ってきた。その背には誰かが乗っている。その場にいた皆が、それに釘付けになっていた。カロルは竜使い!?と驚きが隠せない。フレンはソディアとウィチルに指示を出す。フレンとソディアは竜に向かって駆け、ウィチルは詠唱しファイヤーボールを竜に向かって放つ。竜が逃げた先にフレンとソディアは駆けつけ攻撃を仕掛ける。竜使いはいとも容易くそれらを避け、魔導器(ブラスティア)をの前を通る。そして魔核(コア)の近くになると槍を構え器用に、そして激しく砕いた。フレンは驚きの表情で竜使いの方に振り向く。

リタ「ちょっと!!何してくれてんのよ!魔導器(ブラスティア)を壊すなんて!」思わぬことに激しく憤る。

エステル「本当に、人が竜に乗ってる……」心の内がポツリと出た。

リタはこのまま逃すかとファイヤーボールを竜に向かって打つ。竜はヒラヒラとまるで風の様に避けた。魔核(コア)を破壊された魔導器(ブラスティア)は行き場のないエネルギーをバチバチと纏っている。竜は徹底的にやるつもりらしく部屋に炎のブレスを吐いて燃やし始める。魔導器(ブラスティア)の状態を目視するしていたリタは竜使いが逃げて行くことに気づく。炎が広がり始めフレンたちの行く手を阻む。ラゴウが船の用意を!と傭兵達に叫ぶ。ラゴウも逃げる気だと察したユーリが逃がすかっ!!と追いかける。それにリタ、パティ、カロル、レナ、ラピードの順に続く。遅れながらエステルも続いた。ユーリ達は外に出た。

リタ「ったく、なんなのよ!あの魔物に乗ってんの!」とまだ怒っていた。カロルがあれが竜使いだよと教える。

リタ「竜使いなんて勿体ないわ。バカドラで十分よ!あたしの魔導器(ブラスティア)を壊して!」と喚いた。

それにカロルがバカドラって……とつぶやく。リタの魔導器(ブラスティア)ではないよね……とレナがぽつり。

エステル「それにしても、どうして魔導器(ブラスティア)を壊したりするんでしょう?」と首を傾げた。

ユーリ「確かにな。話が出来る相手なら、1度聞いてみたいけどな」

リタ「あんな奴とまともな話、出来るわけないでしょ!」

その言い様にユーリはやれやれといった顔だ。そして、お前らとはここでお別れだと話す。ポリーがラゴウっていうわるい人をやっつけに行くんだねとユーリを見た。ユーリはああと頷くと急いでんだと返す。ポリーはだいじょうぶ、ひとりで帰れるよとこれ以上は心配させまいとユーリに微笑む。ユーリはいい子だとポリーの頭を撫でた。

ユーリ「お前ももう危ないところには行くなよ」

パティを見て言った。パティは素直に分かったのじゃと頷いた。そしてポリーとパティは去っていった。

リタ「……あの娘、多分わかってないわね……」

リタはそっぽ向いて独りごちる。エステルは顔を俯かせていた。気づいたカロルが声をかける。

エステル「わたし、まだ信じられないです。執政官があんな酷いことをしていたなんて……」

それはまるで信じたくないという口調だった。カロルはよくあることだよと言った。

ユーリ「帝国がってんなら、この旅の間にも何度か見てきただろ?」

レナ「……受け入れ難いかもしれないけど、これが現実なんだよ」

エステルはまた俯いてしまった。

カロル「ほら、のんびりしてるとラゴウが船で逃げちゃうよ!」話の空気を入れかえてユーリ達を急かす。

ユーリは急いでラゴウの元へと向かった。

 船の元にたどり着いた時には出航し始めておりユーリ達は走って追いかける。

リタ「あたしはこんな所でなにやってんのよ……」と走りながらボソッといった。

ユーリが行くぞ……!と合図する。カロルがちょっとまって、心の準備が〜〜!!と慌てていた。ユーリはカロルを担ぐと船へと高く飛んだ。続いてエステル、リタ、レナも飛ぶ。

 飛び移った仲間は各々、息を整えたり船を見たりしていた。

レナ(……意外と飛べるなぁ人間って。この世界に来てから身体能力上がってる気がする)

ふとリタが荷物を覗いて、これ魔導器(ブラスティア)魔核(コア)じゃない!と大きな声で言った。

カロル「なんでこんなにたくさん魔核(コア)だけ?」

リタ「知らないわよ。研究所にだってこんなに数揃わないってのに!」

エステル「まさかこれって、魔核(コア)ドロボウと関係が?」

エステルがユーリに視線を向けると、かもなと彼は言った。

カロル「けど、黒幕は隻眼の大男でしょ?ラゴウとは一致しないよ」

ユーリ「だとすると、他にも黒幕がいるってことだな」

なんて話していたら船の乗組員らしき人達が武器をと構えながら迫ってきた。

カロル「こいつら、やっぱり五大ギルドのひとつ、紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)だ」と確信する。

5人と1匹は武器を構えた。

ユーリ「レナ……。おまえ」

本当に戦う気なのかとレナを見る。

レナ「大丈夫。さっきも使ったけどもう何ともなかったし」

   (まぁ嘘だけど)

ユーリ「……わかった。危なくなったら」

レナ「分かってる」

カロル「ユーリ達喋ってないで戦ってよ!」

カロルの声に2人は頷いてそれぞれの立ち位置間合いに行く。ユーリは1人、また1人と斬り倒していく。

レナ「……穢れなき汝の清浄を彼の者に与えん」

詠唱を始めた彼女の周りに薄水色の陣と光の粒が舞う。生命力をエネルギーに変換、そして激流へと構築させていきそれをターゲットに放つ。

レナ「スプラッシュっ!!」

放たれた激流が敵のひとりを捉え動きを封じながらダメージを与えた。

レナ(っ!なるほど。使う術の難易度が上がると痛みも比例する感じね……。あんな嘘言っちゃったし、できる限りなんともないフリしないとね!)

初級魔術を使った時よりも鋭い痛みが体を襲うが彼女は意志の強さで立ち続ける。

リタ(エステリーゼもそうだけど、レナもあいつが言ってた通り魔導器(ブラスティア)をないはずなのに魔術を使ってる。これも公式を解く鍵になるかも)

そうして傭兵達を蹴散らすと、黒幕が居るであろう一室の前まで来た。ユーリがドアの横で待機し、カロルがドアの前に立つ。リタ、エステル、レナ、ラピードは少し離れた場所で構えた。どきやがれぇっ!という怒号がドアを超えて響き、勢い良くドアが開いた。カロルはうわっ!と急に開いたドアに対処できずその勢いでエステル達の所まで吹っ飛ばされる。

大男「はんっ、ラゴウの腰抜けはこんなガキから逃げてんのか」バカにするように言った。

その背後でユーリは剣を構えている。

ユーリ「隻眼の大男……あんたか。人使って魔核(コア)盗ませてるのは」

大男「そうかもしれねぇな……」

大男は不敵に笑う。そして大剣をユーリに向かって振り上げた。ユーリは大剣を上に飛んで避けくるりと空中で受け流すとスタッと着地する。

大男「いい動きだ。その肝っ玉もいい。ワシのうで腕も疼くねぇ……。うちのギルドにも欲しいところだ」

少しの高揚感を抑えながらその目は獲物を捉えている。ユーリはそりゃ光栄だねと嫌味を返した。

大男「だが、野心の強い目はいけねぇ。ギルドの調和を崩しやがる。惜しいな……」

ラゴウ「バルボス、さっさとこいつらを始末しなさい!」

大男の後ろにいたラゴウが命じる。

バルボス「金の分は働いた。それに、すぐ騎士が来る。追いつかれては面倒だ」

     「小僧ども、次に会えば容赦はせん」

そう吐き捨てると別の船に乗り撤退していく。ラゴウは待てまだ中にと言いかけて舌打ちをするともう1人の名前を呼びバルボスと共に逃げた。そして、その奥から金と赤に近いピンクの髪の男が出てきた。

ザキ「誰を殺らせて、くれるんだ……?」

その声は狂気と楽しみに満ちていた。見た事のある顔にエステルは声を上げる。ユーリは険しい顔でどうも縁があるようだなと呟いた。途端に船底部分が爆発する。

ザキ「刃がうずくぅ……。殺らせろ……殺らせろぉっ!」

狂気に溢れた目を開きこちらに向ける。そのままユーリに襲いかかった。ユーリは剣でいなす。さらに船は爆発する。

ユーリ「うぉっと……お手柔らかに頼むぜ」

揺れる船にバランスを崩しかけながらも軽口を叩く。ザキはくるりとこちらに向き直ると攻撃を仕掛けた。素早いザキの攻撃に皆翻弄される。ユーリやラピードは剣で受け止めながら反撃をし、リタとレナは攻撃魔術を詠唱し放つ。エステルは治癒術で仲間の傷を癒し支援する。それを十数分間、ザキは息を切らしながらもユーリ達に向ける視線はギラギラと狂気と闘志に燃えている。ユーリのバトルリミッツがMAXになり秘奥義を放った。

ユーリ「お終いにしようぜ!閃け、鮮烈なる刃!無辺を切り裂き、仇なす者を微塵に砕く!」

スピードアップしたユーリの斬撃がザキを襲う。目で追うことが出来ないその攻撃にザキは身動きが取れない。

ユーリ「漸毅狼影陣(ざんこうろうえいじん)!!」

ザキは痛みに声を上げその場に膝を着く。

レナ(ユーリの秘奥義初めて見たけど、凄い……)

船は何度も爆発し周りもかなり燃え始めていた。ユーリは膝を着いたザキを見下ろし、勝負あったなと声をかける。

ザキ「……オ、オレが退いた……」

ヨロヨロと立ち上がると狂気的に笑い出す。

ザキ「貴様、強いな!強い、強い!覚えた覚えたぞユーリ、ユーリっ!!おまえを殺すぞユーリ!!切り刻んでやる、幾重にも!動くな、じっとしてろよ……!」

ザギは勢い良く捲し立てると愉しそうに面白そうに笑う。爆発がザキに命中する。その爆風にザキは吹っ飛ばされ海に落ちた。

 燃えている船体は段々と下に下にと落ちていっている。その揺れに気づいたカロルが沈むの?と呟いた。ユーリが海に逃げろ……!とカロル達に言う。何処からか、煙に咳き込む声と誰かいるんですか?という声が聞こえる。

レナ(そうだった!この船には皇子もいるんだった!!)

ユーリの近くにいたレナは急いでバルボスが出てきた部屋で飛び込む。おい、レナ!と言いながらユーリがその後に続いた。エステルがユーリ!レナ!と呼び、ユーリ達の方へ行こうとするが、リタがエステルの腕を掴みダメっ!と止める。エステルがでも……でも……!と切羽詰まった表情でユーリ達の方を見る。

リタ「ごちゃごちゃ言ってないで飛び込むの!!」

リタはエステルの手を引き海に飛び込んだ。

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