目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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カルボクラム

―海

 

 炎に包まれ沈みゆく船から海に飛び込んだ3人。カロルは大丈夫?と2人を心配する。

エステル「わたしは……でも、ユーリとレナが……」

リタもことばを発することは無いがユーリ達が気掛かりだという表情をする。

 波の音と風の音がその場を支配していた。不意に水面がゆれてチャプリと音がした。ユーリが金髪の男の子を抱えて浮上したのだ。その後に続くようにレナも顔をだす。

エステルが良かった……!と2人をみて安堵する。

ユーリ「ひー、しょっぺーな。だいぶ飲んじまった」

レナ「はぁ……何とかなったぁ」

リタ「その子、いったい誰なの?」

その視線は金髪の男の子に向けられている。エステルがヨーデル!と小さく驚く。それを見たリタはあんたの知り合い?と聞いた。カロルが遠く見て船に気づき、船に向かって大声を出す。船の方向からよく知った騎士の声が聞こえた。フレンは海に浮かぶユーリ達とユーリに抱えられた人を見て、今引き上げます!と言って部下に指示を出した。

ユーリ達は騎士団の船に乗り、そのままカプワ・トリムへと向かった。

 

―港の街カプワ・トリム

 

 港に着くとユーリ、レナ、リタ、エステル、カロル、ラピード、フレンとヨーデルと呼ばれた少年は船から降りた。フレンと共にヨーデルは降りると、ユーリ達の方に向き直る。ヨーデルはユーリに助けてくれたお礼を述べた。

リタはヨーデルを指さしながらエステルにこいつ誰?と聞いた。エステルは困ったような表情で言い淀む。ヨーデルの後ろに控えていたフレンが前に出た。

フレン「今、宿を用意している。詳しい話はそちらで。それでいいね?」とユーリに視線を投げ、ユーリはうなずく。

フレンとヨーデルは先に宿に進む。それにユーリ達は続いた。

 

―宿屋

 

 宿の中に入るとヨーデルとフレン、そしてラゴウがその場にいた。ラゴウを見てリタがこいつ……!と呟く。

ラゴウ「おや、どこかでお会いしましたかね?」

とリタを見ながらとぼける。そんなリタの前にユーリが立ち、その傍にレナが居る。エステルとカロルも前に出た。

ユーリ「船での事件がショックで、都合のいい記憶喪失か?いい治癒術師、紹介するぜ」

ラゴウ「はて?記憶喪失も何も、あなたと会うのは、これが初めてですよ?」

カロルがとぼけ続けるラゴウに何言ってるんだよ!!と返す。フレンがユーリ達を見てラゴウの前に出る。

フレン「執政官、あなたの罪は明白です。彼らがその一部始終を見ているのですから」

ラゴウ「何度も申し上げた通り、名前を騙った何者かが私を陥れようとしたのです。いやはや、迷惑な話ですよ」

リタ「ウソ言うな!魔物のエサにされた人たちを、あたしはこの目で見たのよ!」

その言葉にレナはその時の記憶が蘇り、ラゴウに対する苛立ちが募って行く。

ラゴウ「さぁ、フレン殿、貴公はこのならず者と評議会の私とどちらを信じるのです?」

レナ(こいつっ!権力を露骨にチラつかせてっ!)

ユーリは問い詰められるフレンを見る。やけに重い空気がこの場に漂っていた。フレンは何も答えられず俯くしか無かった。

ラゴウ「決まりましたな。では、失礼しますよ」と勝ち誇った様な嫌味な顔で一礼するとその場から去っていった。

リタ「なんなのよ、あいつはっ!」

リタが怒りを爆発させる。ヨーデルの元へずんずん進むと、で、こいつは何者よ!?と指さしながら言う。ユーリがそんなリタの様子に、ちったァ落ち着けと声をかけた。フレンがこの方は……と発して考え込んでしまった。エステルがそんなフレンを見て、ヨーデルとリタの前に進んだ。

エステル「この方は次期皇帝候補のヨーデル殿下です」

ユーリ達の方に振り返り紹介する。カロルはへ?と間抜けな声を出し、冗談でしょ?という顔をしている。フレンが否定しないことにカロルは冗談では無いのだと気づく。ヨーデルはあくまで候補のひとりですよと謙遜した。

フレン「本当なんだ。先代皇帝の甥御にあたられるヨーデル殿下だ」と続けた。

カロルは信じられないとオーバーなリアクションを取り、ヨーデルは頷く。

ユーリ「殿下ともあろうお方が、執政官ごときに捕まる事情をオレは聞いてみたいね」

エステルがこの1件はやはりとフレンと視線を交わす。

ユーリ「市民には聞かせられない話って訳か」

そう言ってエステル達に背を向ける。エステルは、あ……それは……とバツが悪そうにする。

ユーリ「エステルがここまで来たのも関係してんだな」

エステルは何も言えず、俯く。

ユーリ「ま、好きにすればいいさ。目の前で困ってる連中をほっとく帝国のごたごたに興味はねぇ」

吐き捨てるように、どこか失望するように言ってユーリは宿から出ていこうとする。それをフレンが呼び止めた。

フレン「そうやって帝国に背を向けて何か変わったか?」

立ち止まったユーリに近づく。

フレン「人々が安定した生活を送るには帝国の定めた正しい法が必要だ」

ユーリ「けど、その法が、今はラゴウを許してんだろ」

イラつくようにフレンの言葉に反論する。

フレン「だから、それを変えるために、僕たちは騎士になった。下から吠えているだけでは何も変えられないから。手柄を立て、信頼を勝ち取り、帝国を内部から是正する。そうだったろ、ユーリ」

冷静に諭すようにフレンはなげかけた。

ユーリ「……だから、出世のために、ガキが魔物のエサにされんのを黙って見てろってか?下町の連中が厳しい取立てにあってんのを見過ごすよかよ!それができねぇから、オレは騎士団を辞めたんだ」

ユーリはどうにもならない苛立ちをフレンにぶつける。

フレン「知ってるよ。けど、やめて何か変わったか?」

その問いにユーリは答えられない。

フレン「騎士団に入る前と何か変わったのか?」

ユーリはその言葉から逃げるようにその場を去る。レナはその後をスタスタと続いた。カロルがあ、まってボクも……と行こうとしたがユーリの雰囲気にあてられたのか足を止めた。

 

―宿屋の外

 

 ガンッとユーリは石壁に苛立ちと一緒に拳をぶつける。

ユーリ「ったく、痛いところつきやがって。何も変わってねぇのはオレにだって分かってる」

ぶつけた拳を見つめて冷静さを取り戻したところを見計らってレナは声をかけた。

レナ「……落ち着いた?」

ユーリ「っ!?レナ……居たのか」

レナ「うん、ユーリと一緒に外出たから。気づかなかった?」

ユーリ「そう……だったのか」

レナ「まぁ、勝手に着いてきたのはわたしだし。見てないことにするから」

ユーリ「そうしてくれ。……魔核(コア)の手掛かり、探すか」

レナはこくりと頷いた。

 

 2人はトリム港で情報を集めていると、ラゴウの屋敷出会った胡散臭いおっさん……レイヴンを見かけた。ユーリとレナは顔を見合わせると急いでレイヴンを追いかけた。レイヴンはユーリ達に気づき振り返る。

レイヴン「ん……よ、よぉ、久しぶりだな」

一瞬気まずそうな顔をしたかと思えば、誤魔化すように挨拶する。

ユーリ「挨拶の前に言うことあるだろ?」

レイヴン「挨拶するより先にすること?うーん……」

ユーリ「ま、騙した方よりも騙された方が忘れずにいるって言うもんな」

レイヴン「俺って誤解されやすいんだよね」と肩を落とす。

ユーリ「無意識で人に迷惑かける病気は医者行って治してもらってこい」

レイヴン「そっちもさ、その口の悪さ、なんとかした方がいいよ?」

ユーリ「口の減らない……。あんまふらふらしてっとまた、騎士団にとっ捕まるぞ」

レイヴン「騎士団も俺相手にしてるほどひまじゃないって。さっき物騒なギルドの一団が北西に移動するのも見かけたしね。騎士団はああいうのほっとけないでしょ?」

レナ「物騒ね、それって、紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)かな?」

レイヴン「お嬢ちゃん居たのね。さぁどうかな?」

レナ「影薄くて悪かったわね」

少女はおっさんを睨み、むっとする。

ユーリ「おっさん、あの屋敷へ何しにいったんだ?」

レイヴン「ま、ちょっとしたお仕事。聖核(アパティア)って奴を探してたの」

ユーリ「聖核(アパティア)?なんだそれ?」

レナ(それって……始祖の隷長(エンテレケイア)の)

レイヴン「魔核(コア)のすごい版、だってさ。あそこにあるっぽいて聞いたんだけど、見込み違いだったみたい」

ユーリ「ふーん……聖核(アパティア)、ね」

3人で話し込んでると遠くからカロルがユーリを呼ぶ声が聞こえた。エステル、リタ、カロル、ラピードがユーリ達にかけよる。レイヴンが逃げた方がいいかね、これと呟く。

ユーリ「ひとり好戦的なのがいるからな」

レナ「じゃあね、烏さん」

レイヴン「……変なあだ名つけちゃって」と囁くとその場を逃げた。

 ユーリの側まで来たリタが待てコラ!とおっさんに向かって叫ぶ。そしてそのままリタはおっさんを追いかける。

カロル「なんで逃がしちゃうんだよ!」

息を切らしながらユーリを責める。

ユーリ「誤解されやすいタイプなんだとさ」

カロル「え?それ、どういう意味……?」

おっさんを追っていたリタが戻ってきた。

リタ「……逃したわ。いつか捕まえてやる……」

リタは怖い顔をしていた。

ユーリ「ほっとけ。あんなおっさん、まともに相手してたら疲れるだけだぞ」

ようやく追いついたエステルが息を切らしてきた。そんなエステルに大丈夫?とレナが声をかける。

エステ「……少し、休憩させて、ください」

息を整えるのに精一杯の状態だ。

ユーリ「ああ、じゃ少しだけな。そしたら行くぞ」

カロル「行くって、どこに行くの?」

ユーリ「紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)の後を追う。下町の魔核(コア)、返してもらわねぇと」

エステル「足取り、つかめたんです?」

レナ「北西の方に怪しいギルドの一団が向かったんだって」

ユーリ「それがやつらかもしれねぇ」

カロル「北西っていうと……。地震で滅んだ街くらいしかなかった気がするけどなぁ」腰に手を組み思い出すように言う。

エステル「そんなところに、何しに行ったんでしょう」

さぁなとユーリは返した。そんな曖昧なものでいい訳?とリタがつっこむ。

ユーリ「だから、言って確かめんだろ」とリタを見た。一同はトリム港を出て北西に向かった。

 

―亡き都市 カルボクラム

 

 天候は雨。建物の瓦礫が散乱している割には、崩れていない建物が比較的に多い。異常に成長した植物。どこか全体的に薄暗く不気味な雰囲気だ。

エステル、リタ、カロル、レナは何だか気分が悪い。

レナ(……エアルが濃いのかな)

ユーリ「こりゃ完璧に廃墟だな」

ポツリとこぼした。

リタ「こんなところに誰が来るっていうのよ」

ユーリ「またいい加減な情報、つかまされたかな……」

うんざりした表情だ。カロルがまた……?と零す。

 遠くから女の子の声がした。

「そこで止まれ!当地区は我ら『魔狩りの剣』により現在、完全封鎖中にある」

忠告を知らせる声だった。カロルはこの声……!?と聞いたことのある声に気づく。その方向に目を向ければ、大きな武器を担いだ茶髪の女の子が見上げる位置に立っていた。

女の子「これは無力な部外者に被害を及ぼさないための措置だ」

カロルがナン!と呼び、女の子に駆け寄る。カロルはよかった、やっと追いついたよと安堵するように言う。それにイラついたのかナンと呼ばれた女の子はしかめっ面だ。それに気づかないカロルは話を続ける。

カロル「首領(ボス)やディソンも一緒?ボクがいなくて大丈夫だった?」

ナン「なれなれしく話し掛けてこないで」

カロル「冷たいなぁ、少しはぐれただけなのに」

ナン「少しはぐれた?よくそんなウソが言える!逃げ出したくせに!」

カロル「逃げ出してなんていないよ!」

ナン「まだ言い訳するの?」

カロル「言い訳じゃない!ちゃんとエッグベアを倒したんだよ!」

ナンはそれもウソねと一瞥した。それにほんとだよ!と意地になるカロル。

ナン「せっかく魔狩りの剣に誘ってあげたのに……。今度は絶対に逃げないって言ったのはどこの誰よ!昔からいっっもそう!すぐ逃げ出して、どこのギルドも追い出されて……」

責めるように捲し立てるナンの声を、わああああ!わああああ!とこれ以上は勘弁してとカロルは顔の前で両手を振る。エステルとユーリ達はなんとも言えない顔でカロルを見る。

ナン「……ふん!もう、あんたはクビよ!」

そこから去ろうとするナンを待ってよとカロルは慌てて声をかける。

ナン「魔狩りの剣より忠告する!速やかに当地区より立ちされ!従わぬ場合、我々はあなた方の命を保証しない」

再度ユーリ達に忠告して去っていった。ナン!と呼びカロルは俯いてしまった。エステルは心配そうにカロルを見ている。

ユーリ「それにしてもどうして魔狩りの剣とやらがここにいるんだろうな」

さぁねとリタは言うと、そのまま街の中を散策し始める。

エステル「リタ、待ってください。忠告を忘れたんですか?」

リタ「入っちゃダメとは言ってなかったでしょ?」

エステル「で、でも命の保証はしないって……」

リタ「あたしが、あんなガキに、どうにかされるとでも?冗談じゃないわ」

ユーリ「ま、とにかく紅の絆傭兵団の姿も見えないし奥を調べてみようぜ」

リタに続いてエステル、ユーリ、レナ、ラピード、カロルは奥へすすむ。

 奥に進めば行き止まりに着いてしまった。ユーリが引き返すか、あるいは……と言った。カロルが待って調べるからと調べ始める。しかし、鍵あなもないようだ。ユーリが確認するためにカロルの傍による。

カロル「ユーリ、素人には無理だよ。この手の扉は……」

カロルの言葉を無視してユーリは扉を蹴った。軋む音が響き扉が開いた。呆気なく開いたそれにカロルはあれ?と間抜けな声を上げる。

ユーリ「カロル先生の手をわずらわせる代物じゃなかったな」

そんなユーリの言葉に、カロルはそうだね、あはははと乾いた笑いしか出来なかった。リタがその様子にほんと、バカっぽいと囁いた。さぁ行こうよ!というカロルにユーリが足突っ込んだら、かばっと食いつかれたりしてなと脅かす。カロルはそれを聞いて扉から離れた。ユーリは平気みたいだなと言うと、扉の中へ入っていく。カロルはボク実験体?と呟いた。

 中に入ると何かの装置がそこに鎮座していた。カロルが何の装置?とベタベタと触るのを、リタが注意する。

レナ「なにかのスイッチかな?」

リタが装置を操作する。しかし何も起こらないようだ。

何も起こらないというエステルにリタはエアルが足りないのよと返した。

ユーリ「エアルが……ね。……シャイコス遺跡でもらったあのリング使えば、動きそうだな」

リタ「ソーサラーリングね。わかんないけど……。でも、試してみる価値くらいあるかもね」

という訳で、ソーサラーリングを試してみるとガコンと音がして動いた。

リタ「動いた……けど……」

カロルがこれは何なの?と疑問を持つ。

ユーリ「……不用意に動かしてよかったもんだったのか」

その言葉にエステルがえっと声を上げる。

エステル「それって何かの罠とか……?」

リタ「ちょっと気づいてたんなら、先に言ってよね!」

ユーリ「いや、今、ふと思っただけなんだけどさ」

リタの責める声に弁解する。

レナ「ちょっと上の様子を見たら、何か分かるんじゃない?」

レナの提案に皆は外に出て散策する。するとカロルが魔導器(ブラスティア)を見つけたらしい。

またベタベタ触って調べ出すカロルにリタが注意する。リタは魔導器(ブラスティア)に近づいて調べる。

リタ「なるほどね……。ちょっと変わってるけど転送魔導器(キネスブラスティア)の一種みたい」

エステル「転送魔導器(キネスブラスティア)って移動するための……?」

その問いにリタは答える、

リタ「たぶん、ちょっと離れた場所に自動的に飛ばしてくれるのね。起動してる……こんな廃墟で……?」

レナ「ねぇ、さっきの装置が、この魔導器(ブラスティア)の起動装置だったんじゃない?」

リタ「あたしも今同じことを思ったわ」

ユーリがなるほどなと納得する。

リタ「起動が一括で管理されてるってことは、他にも同じ魔導器(ブラスティア)が置かれてるってことかもね」

じゃあさっそく!とカロルが触ろうとするのを、リタがチョップして慌てないでと止める。

リタ「シャイコス遺跡の魔導器(ブラスティア)と同じ。魔核(コア)にエアルを充填しないと、動作はしないわ」

ユーリがソーサラーリングだなとリングを出す。そうとリタが頷き、魔核(コア)にエアルを充填した。起動した魔導器(ブラスティア)をユーリ達は使い更に奥へと進んだ。

 その道中でユーリ達は足を止めた。人影が見えたのだ。

エステルが紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)?と囁く。聞いていたユーリがじゃなさそうだなと否定する。

カロルがあれが魔狩りの剣だよとみんなに教えた。

エステル「あ……あの人、デイドン砦で見かけた人ですよ」

ユーリ「あ、そういや、見たな。なるほど、あいつがおまえんとこのリーダーか」

その視線の先にその男よりもデカい魔物が雄叫びをあげる。それに臆せず男は武器を振り下ろし倒した。ユーリはその光景を見て、トドメの1発か?と不思議に思うとカロルがフェイタルストライクだよと言った。フェイタルストライク?とユーリがカロルに聞くと、熟練した剣の使い手なら、使えるスゴ技だよと教える。

ユーリ「ふーん……どうやるんだ?」

カロル「どうやるって……ボクはわかんないよぉ」

それを聞いたエステルが本の知識を話す。

エステル「相手にうまく攻撃を加えることで敵の体勢を崩していき、そのスキに術技を打ち込んだ後、相手にとどめの一発を打ち込む戦闘技術のこと、です」

リタ「それも前に読んだ本の知識?」

そう聞かれたエステルはえ、ええまあ……と答えた。

ユーリ「なるほどね……言うは易いが成すは難しって感じだな」

 少しの静寂のあと、リタはカロルにあんたほんとは戻りたいんでしょと言った。そ、そんなのとカロルは答える。

エステル「え……?カロル、戻ってしまうんです?」

カロル「戻んないよ……!魔物狩りには飽きたからね」と虚勢をはった。

リタ「戻らないじゃなくて、戻れないんでしょ?クビって言われてたし」

カロル「ち、違うよ。元々、出て行くつもりだったんだから」と強気をよそおった。

ユーリ「ふーん、そう。ま、いいんじゃない?」

カロルはだからと続けてみんなと行くよと言った。エステルが、じゃあ改めてよろしくお願いしますとカロルに向き合った。

ユーリ「それにしてもあいつら、あんな大所帯で何する気なんだ?」

エステル「さっきの魔物が目的ならひとりで十分ですもんね」

カロル「こんな人数が集まるの、今までに一度もなかったよ」

レナ(なにか、何か忘れてる気がする……大人数……あっ!始祖の隷長(エンテレケイア)だ!でも……どうすることもできない)

エステルがカロルの言葉にそうなんです?と返す。カロルは頷く。

カロル「みんな、群れたがらないから。首領(ボス)たちが居るなんて相当のことなんじゃ……」

リタがますますうさんくさいと囁いた。カロルが後……つけてみる?と提案するが、ユーリはいや、先を行くと答えた。

エステル「ユーリが探してるのは紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)のほうですもんね」

ユーリ「ああ、あいつらとことを構える必要はないんでな」

 その場をあとしたユーリ達は、現れた魔物を倒していく。ふとユーリがさっきの試してみるかと言った。エステルがさっきのって?と聞く。ユーリはフェイタルストライクってやつと返した。レナがそんな簡単に出来るものなの?と言えば、ユーリはやってみないとわかんねぇだろ?答えてどうやってたっけ?とエステルに聞いた。

エステル「ええと、最初は相手の体勢を崩すような攻撃をしていくんですけど……」

それを聞いたユーリはよしっ!と武器を構えて敵に突っ込んでいった。そんなユーリにエステルは戸惑う。ユーリはそんな事露知らず魔物に攻撃を放つ、瞬間見えたぜと声を出す。レナが見えたって何が??と遠くで聞けば、敵の一瞬のスキってやつと答えとどめを刺した。

ユーリ「まあ、ちょっとしたコツは必要だけど、そう難しいもんでもないぜ。オレのやつ見てるうちにみんなもできるようになるんじゃないか。さ、行くぞ」とサラリと言ってのける。

レナ(……やってみるしか……ないね。よしっ)

レナ「細やかなる大地の騒めき……ストーンブラスト!」

魔物の足元から鋭い石粒てが上に向かって放たれ、魔物が上に浮く。

レナ(あっスキ……見えた!!)

そのスキを逃さず、レナは風の刃を即興で構築し放つ。とどめを刺された魔物は倒れた。

カロル「えっ……!?レナも出来たの!?」

レナ「ユーリの見てたらなんとなく……できちゃった」

ユーリ「確かにオレの見てたらできるようになるかもとは言ったけどな……」

エステル「レナ凄いです!」

リタ「……前々から思ってたけどあんた、魔導器(ブラスティア)ないのにどうやって魔術使ってんのよ」

レナ「……あー、考えたこと無かった」

リタ「はあ??要するに、知らずに魔術使ってるってこと??」

レナ「そう……なるね。けどエアルは使ってないと思う」

   (初めて使った時は無我夢中で何をエネルギーに使っているかなんて分からなかった。魔術を使う度にトゲが刺さるような痛みが襲うのと同時に何かが削れられるような感覚もあった。つまりはエアルを使わない、発動前に感じる内側からのエネルギー、そして痛みと何かが削れる感覚から察するに生命力を使っている可能性が高いと考えられる)

ユーリ「エアルを使ってない??」

ユーリの声に少女は思考から浮上する。

レナ「うん、だって魔導器(ブラスティア)ないから。エアルは使えない」

レナ(もしかしたらリタには分かっちゃうかも)

リタ「つまり……」

そう呟いてリタは黙ってしまった。リタの考察が最悪な答えだったから。エアルを使わないとなればレナの魔術はレナの生命力そのものを使っていることになるかもしれない。仮にそれが休めば多少回復するものとはいえ、確実に少しずつ命を削っているのだと、彼女は気がついてしまった。

ユーリ「リタ?」

そのまま黙り込んでしまったリタをユーリは気にかける。

レナ「この話はここでおしまい!さぁ、先進も?」

エステル「えっあっ……レナ待ってください」

無理やり話を終わらせて先に進み始めるレナをエステルは慌てて追いかける。

リタ「……あんた、あんまりあの子に魔術使わせちゃダメよ。特にエアルを多く消費する魔術を使うなんて以ての外」

突然のリタからの忠告にユーリは首を傾げる。

ユーリ「どうしてだ?」

リタ「……あの子から聞いて」

ユーリ「わかったよ」

リタのどこか言いたくなさそうな雰囲気にユーリは未だ疑問符を浮かべながらも頷く。

リタ(あたしの口からは言えないわよ。あの子、おそらく理解して魔術を使ってると思う。ユーリ達にはきっと心配させたくなくてそれを黙っているのよ)

ユーリはそれ以上は何も言わずに先を歩く。リタは浮かない顔をしながらその後に続いた。

ユーリ「聞き忘れてたんだが……」

と急に足を止めてエステルを見る。視線を向けられたエステルは私、ですか?とユーリを見る。

ユーリ「どうして、トリム港で帝都に引き返さなかったんだ?」

エステル「どうしてって……」

カロル「そっか、エステルはフレンに狙われてるって伝えたかったんだもんね」

ユーリ「ああ、あの時点でおまえの旅は終わったはずだろ?」

エステル「それは、その……」

カロル「ねぇ、そういえば結局、フレンって誰に狙われてたの?」

エステル「ええと、そこまでは……」

リタ「ラゴウじゃないの?」

カロル「え?あの悪党?」

ユーリ「ヨーデルはラゴウの船にいた。ヨーデルは皇族ってやつだ」

だから?とカロルは続きを促す。

ユーリ「本当はフレンの任務はヨーデルを探すことだったんじゃねぇかなってことさ。なんで同じ帝国のお偉いさん同士がそんなことになってんのかは知らねぇけどな」

エステル「……ごめんなさい。わたしにもよく分かりません」

ユーリ「ま、いいさ。それよりエステルの話だ。戻らなくていいんだな?」

エステル「そうですね……わたし、トリム港からそのままの勢いでついてきてしまいました……。たぶん……わたし……もう少し、みんなと旅を続けたかったんだと思います……だから……それに、魔導器(ブラスティア)魔核(コア)、まだ取り戻してませんし……」

ユーリ「それはそうだけど、それはオレの目的だよな?」

エステル「……駄目、でしょうか?」

ユーリ「じゃ、ま、ついてくるといいさ」

ふっと軽く笑いエステルに微笑んだ。ありがとうございますとエステルは微笑み返した。

 更に奥に進んだユーリ達、しかしリタ、エステル、カロル、レナは気分がどんどん悪くなっていく。カロルが不調を口に出す。リタが鈍感なあんたでも感じるの?とカロルに言った。鈍感はよけい……!とカロルは言い返し、リタも?と返した。ユーリがこりゃなんかあるなと呟く。ユーリもエステルもレナも?とカロルが問うと、エステルはへ、平気ですと答える。

レナ(耐性がないのかな……息するのもきつくなってきた)

ユーリ「無理することもねぇだろ。休憩して様子見すっぞ」と呼びかけた。

リタ「一体なんなのかしら、ここに来てから急に……」

カロル「こんなときに魔物に襲われたら大変だね」

ユーリ「そんなこと言ってると、本当にやってくるぜ」

エステルがふらつきその場に座り込む。ユーリはエステルに駆け寄った。

レナ(わたしまでエステルみたいになったら迷惑かけちゃう。耐えなきゃ)

無意識にレナは手をグッと握りこんでいた。

ユーリ「行き倒れになんなら、人の多い街ん中にしといてくれ。オレ、面倒見切れないからな」

エステルはゆっくりと立ち上がる。

エステル「は、はい、ありがとう。まだ、だいじょうぶです」

地面から微かに光の粒が浮あがる。リタがエアルだと呟く。カロルがエアルって目に見えるの?っと驚く。リタは濃度が上がるとねと返す。

ユーリ「そういや、前にエステルが言ってたな。濃いエアルは体に悪いって」

エステル「はい……濃度の高いエアルは時として人体に悪影響を及ぼす、です」

ユーリ「クオイの森でもぶっ倒れたからな」

リタ「……へぇ、そんなことが」

ユーリ「こりゃ、引き返すかな」

エステル「でも、傭兵団がいるかまだ確かめていませんよ」

ユーリ「いや、まあそうなんだけど……」

エステルは楽な姿勢からぴしっと立って行きましょうとユーリに呼びかける。

リタ「この魔導器(ブラスティア)がドアと連動してるみたいね」

レナ「どうやってあけるの?」

レナ(しっかりしなきゃっ)

リタ「ご丁寧にパスワードを入力しなきゃダメみたい」

ユーリ「壊しちまった方が早くねぇか?」

リタ「無理に解体するのは危険よ。開かなくなるかもしれないし」

ユーリ「お……なんか出てるぞ」となにかに気づく。

リタ「……ここに何か文字を入れればいいのかしら?」

カロル「文字って言われても……」

ユーリ「こりゃ何か手掛かりがないと開かなそうだな」

 その場をあとにして地上に出て、廃墟の中を散策し文字を探す。地上に出ると幾分か気分がマシに感じた。文字を集め終わったユーリ達は、先程の場所にもどり気分が悪くなるのを感じながらパスワードを入力しドアを開いた。中に入ると、上に広い空間に出た。水が、上に浮いており神秘的な雰囲気を醸し出している。

カロルが水が浮いている……と呟くと、ユーリがあの魔導器(ブラスティア)の仕業みたいだなと囁く。

エステルが多分、この異常も……と続けた。

リタ「……あれ、エフミドやカプワ・ノールの子に似てる」

カロル「壊れてるのかな……?」

リタ「魔導器(ブラスティア)が壊れたらエアル供給の機能は止まるの。こんな風には絶対ならない」

エステル「……じゃあ……一体……」

リタ「わからない……あの子……何をしてるの」

不意に魔物のような声が空間に響いた。

エステル「な……なに……?これ、魔物の声、ですか?」

すると大きな魔物が空間に入ってきた。

カロルがま、魔物ぉ……!と声を上げる。

レナ(!あれはっ……始祖の隷長(エンテレケイア)!ダメ……ここに来ちゃっ)

ユーリ「病人は休んどけ。ここに医者はいねーぞ」

カロルがそれに、え?で、でもと不安そうな顔をした。途端に地面がゆれる。どうやら結界が限界のようだ。

リタ「大丈夫、あれは逆結界だから」

カロル「逆……結界……?」

リタ「魔物を閉じ込めるための強力な結界よ。簡単には出てこられないわ。でも、なに、このエアルの量。異常だわ」

結界が揺らぐ。

ユーリ「こりゃ、やばいかな……」

結界がさらに揺らぎ、バチバチと音を立て始めた。

カロル「な、なんか消えそう……!」

走り出すリタに、エステルが驚くように名を呼ぶ。

リタ「……待っててね……今すぐ直してあげるから……」

ラピードが吠えて、リタが足を止める。魔狩りの剣の奴らが来たようだ。

ディソン「俺様たちの優しい忠告を無視したのはどこのどいつだ?」

ユーリ「悪ぃな、こっちにゃ、大人しく忠告を聞くような優しい人間はいねぇんだ」

ディソン「ふん、なるほど……。って、なんだ、クビになったカロル君もいるじゃないか。エアルに酔ってるのか。そっちはかなり濃いようだね」

カロルを笑うように言う。

クリント「ちょうどいい。そのまま大人しくしていろ。こちらの用事は、このケダモノだけだ」

ユーリ「大口叩いからにはペットは最後まで面倒見ろよ。途中でも捨てられると迷惑だ」

今度は甲高い声が聞こえた。エステルが何!?と上を見る。竜使いが水面から空間に向かって飛び、魔導器(ブラスティア)魔核(コア)を壊す。リタがまたあいつ!と怒る。結界にヒビが入り、浮いていた水がユーリ達の空間へなだれ込んでくる。と同時に濃いエアルによって不調だった体が、楽になっていく。けっ、結界が壊れたよ!とカロルが慌てる。

リタ「逆結界の魔導器(ブラスティア)が壊れたから当然でしょ!?んっとにあのバカドラ!」

大きな魔物は与えられる攻撃に暴れる。それにクリントはもっと暴れろ、ケダモノらしくと攻撃の手をとめない。

しかし大きな魔物の前を竜使いが塞ぎ、クリント立ちに向かって炎を吐いた。魔狩りの剣と竜使いが戦い始める。竜使いは魔狩りの剣の攻撃を全て避ける。不意に大きな魔物が空間の壁にぶつかる。地面が揺れ、割れた。ユーリ達は大きな衝撃にバランスを崩す。

ユーリ「やべ……足震えてら」

そう呟く声もめずらしく震えている。

エステル「……こんな魔物は、初めてです……」

カロルが怯える。ユーリは武器を構える。

ユーリ「結局ペットの面倒見んのは、保護者に回ってくるのな」

レナ(……落ち着いてもらうにはやっぱり戦うしかないのね)

 どれくらいの時間が経っただろうか。段々と大きな魔物が落ち着いてくる。落ち着いた魔物はエステルをじっと見ている。気づいたエステルが身を後ろに引く。そして、魔物は身を翻しその場を去っていった。エステルは安堵からか足の力が抜け、その場に座り込んだ。リタがカロルが居ないことに気づく。機能しなくなった魔導器(ブラスティア)が落ちる。そろそろ天井が持ちこたえられなさそうだ。魔狩りの剣もユーリ達もその場を急いで退く。エステルがカロルを心配していたが、ユーリがこの場にいないなら外だろと返し探しながらいくぞと走った。外に急いで出て、カロルを探すために歩いていると魔狩りの剣の女の子の声が聞こえた。

ナン「なにかあれば、すぐにそう!いつも、いつもひとりで逃げ出して!」

それにカロルがちがうよ!と否定する。

ナン「何が違うの!?」

カロル「だからハルルの時は……」

ナン「今はハルルのことはいってない!やましいことがないのなら、さっさと仲間のところに戻ればいいじゃない」とそっぽを向いた。

カロル「だから、それは……」

ナン「あたしに説明しなくていい。する相手は別にいるでしょ」

ナンはカロルの後ろを見た。カロルはえ?と声を上げて後ろを向くとそこにはユーリ達が。

エステル「カロル、無事でよかったです」

嬉しそうに笑った。

リタ「まったくよ。どこに行ってたんだか。こっちは大変だったのに」

カロル「ご、ごめんなさい……」と素直に頭を下げる。

ユーリ「ま、ケガもないみたいで何よりだ」

ユーリはカロルの頭を撫でる。ナンはもういくからと言えば、カロルはまってと声をかける。

ナン「自分が何をしたのか、ちゃんと考えるのね。じゃないともう知らないから」

カロルを睨み、走り去って言った。そんなカロルにユーリは、行こうぜカロルもう疲れたと声をかけた。

リタ「しかしとんだ大ハズレね。紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)なんていないし」

ユーリ「ほんとに、やっぱあのおっさんの情報は次から注意しないとな」

リタ「おっさん……って、まさか、あの……?」

そうとユーリは返す。

リタ「あ、あ、あのおっさん、次は顔見た瞬間に焼いてやるっ!」肩をわなわなと震わせ怒りを爆発させた。

エステル「穏便に、ね、穏便に行きましょう」

あまりのリタの気迫に押されながらもエステルはリタを宥める。そうしてユーリ達はカルボクラムを後にした。

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