目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

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ヘリオード

―カルボクラム 入口

 

 ユーリ達はトリム港に向かおうと、入口付近に行った時だった。帝国の騎士である格好の者が2人、上官らしき紫の鎧をまとった男性が入口を塞ぐように立っていた。ラピードがグルルルと唸り声をだす。紫の鎧の男が、ようやく見つけたよ愚民どもそこで止まりなと見下すようにユーリ達に言った。

ユーリ「わざわざ海まで渡って、暇な下っ端どもだな」

ウンザリした顔をしている。

騎士の男「くっ……キミに下っ端呼ばわりされる筋合いはないね」

男はユーリの態度を気に食わないと睨む。そして、さあ、姫様こ・ち・ら・へとエステルの方を見て猫なで声を出す。カロルがえ?姫様って?とキョロキョロした。

ユーリ「姫様は姫様だろ。そこの目の前のな」

ユーリはエステルを目で示す。見られたエステルは驚く顔をしていた。

エステル「え……ユ、ユーリ、どうして、それを……?」

リタ「やっぱりね。そうじゃないかと思ってた」

レナがリタの言葉に私もと続く。

エステル「え、リタとレナも……?」

カロルが驚きすぎてついていけていない。バレてしまったエステルはならばと、紫の鎧の騎士……キュモールの前に進み出る。

エステル「……彼らをどうするのですか?」と訊ねる。

キュモール「決まってます。姫様誘拐の罰で八つ裂きです」

エステル「待ってください。私は誘拐されたのではなくて……」と否定する声をキュモールは遮る。

キュモール「あ〜、うるさいお姫様だね!こっち来てくださいよっ!」

先程の丁寧な口調はどこへやら、エステル達に剣を向ける。カロルがエステルを心配する。

キュモール「そっちのハエはそこで死んじゃえ!」

剣を向けられたユーリ達は武器を構えた。

 一触即発……戦闘になると思ったその時、ユーリ・ローウェル!!という聞きなれた追っかけの騎士の声が響き渡った。やはり、ここまで来たらしい。その声に、キュモールが後ろに振り返る。

キュモール「げっ……貴様ら、シュヴァーン隊……!」

ルブラン達はキュモール達を気にもせず、武器を構えてユーリ達に近づく。それをキュモールは、僕が見つけた獲物だ!と制した。

ルブラン「獲物、ですか。任務を狩り気分でやられては困りますな」

今までよりもずっと常識的な態度で髭を触る。その言葉に何にぐっとキュモールは詰まる。

ルブラン「それに先程、死ね、と聞こえたのですが……」

キュモール「そうだよ、犯罪者に死の咎を与えて何が悪い?」

何も悪びれないその態度に、ルブランは依然とした態度で返す。

ルブラン「犯罪者は捕まえて法の下で裁くべきでは?」

キュモール「……ふん……そんな小物、お前らにくれてやるよ」言い返す言葉も浮かばなかったのであろう彼は捨て台詞を吐き、部下を引き連れてどこかに去っていってしまった。

ルブラン「ささ、どうぞ、姫様はこちらへ。あ、足元にお気をつけて……」

エステル達に向き直り、部下のひとりが手を差し出す。

ルブラン「こやつらをシュヴァーン隊長の名の下に逮捕せよ!」

その一声で、部下の2人はエステルをすり抜けてユーリ達を囲み拘束する。リタとカロルはなにするんだと抵抗するが呆気なく捕まる。

エステル「彼らに乱暴しないでください!お願いです……!」

ルブランにエステルは懇願する。その表情は不安げだ。

ユーリ「エステル、心配しなくてもいい」

エステルを安心させるようにユーリは声をかける。縄で拘束したユーリ達をさっさと歩けと部下が引っ張る。ユーリが引っ張るなよと文句を言った。

ルブラン「シュヴァーン隊長、不届き者を、ヘリオードへ進行します」

ルブランはそう言って上に敬礼をした。レナは隙を見てルブランが敬礼した方向を見ると、シュヴァーン隊長が立っているのが見えた。ルブランは全員しゅっぱ〜つ!と号令した。

 

―???

 

 連行されたユーリ、レナ、リタ、カロル、ラピードはルブランが読み上げる罪状を聞いていた。

ルブラン「続けて18番目の罪状を確認する」

ユーリがはいどうぞと返事した。

ルブラン「滞納された税の徴収にきた騎士を川に落としたのは間違いないな?」

ユーリがそんなこともあったなぁ、あれデコだっけ?と向かい側に座っているアデコールを見る。アデコールはそうだ!とユーリを恨めしそうに見て、おかげで風邪をひき3日も寝込んだのだ!と言った。

ユーリ「……で、あといくつあんの?飽きてきたんだけど」

退屈、うんざり、といった表情でユーリはルブランを見る。カロルは不安そうにボクはどうなっちゃうんだろう……と呟く。

レナ(……下町のみんなのためとはいえ、罪状が長い……眠くなってきた)

アデコールの横に座るボッコスが反省の色はなしと調書に残してやるのだとペンを走らせる。

ユーリ「そういや、おまえらんとこの何もしない隊長はどうした?シュヴァーンつったけ?」

リタが偉いからってサボりでしょとルブランの方を向き囁く。

ルブラン「我等が隊長を愚弄するか!シュヴァーン隊長は、10年前のあの大戦を戦い抜いた英傑だぞ!」

その言葉から尊敬していることが分かるほど怒っている。

リタはま、あたしらなんて小物どうでもいいってことねとそっぽを向いてポツリ。痺れを切らしたアデコールが次の罪状確認をするのであ〜ると急かした。

 ノックなしに急にドアが開き、白髪の男性と青色の髪のクリティア族の女性が入ってきた。ルブランはその二人の姿、主に白髪の男性をみて驚く。

ルブラン「ア、アレクセイ騎士団長閣下!どうしてこんなところに!?」

その言葉にアデコールとボッコスは慌てて立ち上がり敬礼する。ユーリもアレクセイが居ることに驚いていた。レナも重くなっていた瞼が一気に軽くなり目が冴える。アレクセイは驚いている3人の騎士をそのままに、ユーリ達に近づいた。

アレクセイ「エステリーゼ様、ヨーデル様、両殿下のお計らいで君の罪はすべて赦免された」

ルブランはなんですと!?と更に驚き、こいつは凶悪な犯罪者で……!と続けた。そんなルブランを無視し、アレクセイは話す。

アレクセイ「ヨーデル様の救出並びに、エステリーゼ様の護衛、騎士団として礼を言おう」

思わずユーリは立ち上がる。そんなユーリにクリティア族の女性が謝礼を持ち、こちらを……と渡そうとした。

ユーリ「そんなもん、いらねぇよ。騎士団のためにやったんじゃない」と断わる。

アレクセイはそうかと呟き、クリティア族の女性は謝礼を引き下げた。そのまま、アレクセイ達が立ち去ろうとしたのをユーリがエステルのことについて聞く。先程、帝国に戻る旨、ご承諾いただいたとアレクセイは返した。それにカロルがえっ!?と驚き、でもお姫様だからと納得する。

アレクセイ「姫様には宿でお待ち頂いている。顔を見せてあげて欲しい」

アレクセイはそれだけ言うとその場から出ていった。ユーリ達もルブラン達から解放され、外に出た。

 

―外

 

カロル「エステル、帰っちゃうんだね」

少し寂しそうに残念そうな表情だ。

リタ「あんた、これでいいの?」

リタはユーリのを見てそう聞く。

ユーリ「選ぶのはオレじゃないだろ」

とリタに返した。

リタ「そりゃ……そうだけど」

顔を俯かせる。その表情は確かにそうだが腑に落ちないと語っていた。

ユーリ「それより、ここはどこなんだ?」

どこか暗い雰囲気にユーリは話題を変える。

レナ「……私たちをここに連れてきた騎士は、ここに来る前にヘリオードって言っていたけど」

レナは思い出すように口にする。

カロル「うん、ここ、新興都市ヘリオードだよ。位置的にはトリム港と、ダングレストって街の間だね。まだ作られて間もない新しい街なんだ。この道を東に行けばさっきいたカルボクラム、西に抜けて西北方向に行くとダングレストだよ」

レナ(ほんとに詳しいな。カロルいたら道に迷わなくて済みそう)

ユーリ「ふ〜ん、少し街の中も見て回るか」

リタ「……あたしは好きにさせてもらうわ」

リタはユーリ達に背を向けて何処かに行く。

カロル「ボクは……どうしようかな」

と言いつつ、辺りをキョロキョロする。

ユーリとレナはカロルと別れ、街の中を散策し始めた。

 

―新興都市 ヘリオード

 

 ユーリとレナは散策していると、ヨーデル殿下とフレンに出会った。

ユーリ「なんだ、ご両人やっぱ居たのかよ」

フレン「ユーリ、殿下に対して少し口の利き方が失礼だ。せっかくご厚意で君の罪を全部白紙にしてくださったのに」とフレンはユーリをたしなめる。

ヨーデル「いいんですよ、フレン。私とエステリーゼで勝手にやったことですから」

フレン「エステリーゼ様のことは、もう聞いているみたいだな」

ユーリはああと返事する。

フレン「ユーリと一緒に居るほうがエステリーゼ様のためになると思ったんだが……」

ヨーデル「皇族がむやみに出歩くものではありませんからね」

フレンの言葉に続けた。ヨーデルのその言葉に、あんたが言っても説得力ねぇよとユーリは言う。

ヨーデル「はは、面目ない。けど、特に今は皇族の問題を表沙汰にする時期ではありません」

レナ「その問題っていうのは、ヨーデル殿下とエステリーゼ様、どちらが時期皇帝にっていうことですよね?」

ヨーデルは頷く。

ヨーデル「ええ、今は意見が二つに分かれ、騎士団と評議会で揉めています」

色々と内情を話すヨーデル殿下にフレンが殿下!と制する。そんなフレンにここまで分かっていて今更隠し通せるものでもないよと言った。そして続ける。

ヨーデル「騎士団は私を次の皇帝に、と推してくれています。エステリーゼは、評議会の後ろ盾を受けています」

ユーリ「ほんとにお姫様なんだな」

ヨーデル殿下の話を聞いてユーリは改めてそう思った。

ヨーデル「ええ、遠縁ではありますが、エステリーゼは間違いなく皇族です」

ユーリ「そりゃ、騎士団も大変だな。競争相手とはいえ、お姫様の身辺警護に手を抜くわけにもいかねぇし」

話の終わりを感じとったフレンはこれは、その……と情報の漏洩を危惧する。

ユーリ「オレの知り合いに、こんな情報ほしがる変人はいねぇよ」

レナ「……ユーリと同じく、例えいたとしても絶対に話さないことを誓います」

ユーリ「んじゃ、オレたち、このまま宿屋で休んでくっから」

ユーリとレナは二人と別れた。

 宿屋に向かい入ろうとした時、アデコールとボッコスに待てと声をかけられたのだった。

ユーリ「何だ、デコボコじゃねーか」

レナ(りゃ、略してる)

ボッコスがデコボコ言うなと怒る。ユーリはそんなボッコスを無視して何か用か?と返した。

アデコール「いくらヨーデル殿下直々の恩赦でも貴様が罪を犯した事実は、変わらないであ〜る!」

ボッコス「それは騎士団の正義として見逃しがたいことなのだ!」

アデコール「ユーリ・ローウェル!ここで我々と正々堂々と戦うであ〜る!」

ボッコス「我々に勝てば、貴様の無罪認めよう!」

レナ「無茶苦茶言ってるね」

レナは呆れ口調でユーリを見た。

ユーリ「だな、いつからおまえら、人の罪の有無決められるほど偉くなったんだ?」

ユーリの言葉を無視し、勝負だと二人はユーリに剣を向けた。

ユーリ「……それでおまえらの気が済むんなら、相手してやんよ」

その返事に二人の騎士は着いてこいと街の外へと歩き出した。ユーリは内心面倒だなって思っていそうな顔でその後を着いていく。レナもその後ろを歩く。

ユーリ「これはオレの戦いだからな、レナは後ろに下がってろ。手は出さなくていい」

レナ「わかった」

騎士二人、ユーリは互いに剣を構えた。

ボッコス「これでおまえの自由も今日限り!」

アデコール「我々騎士団の戦闘術、バーストアーツであ〜る」

ユーリ「また勝手に盗んで……騎士団のものじゃねぇっての」

アデコール「黙れであ〜る!」

ユーリ「バーストアーツか……話には聞いたことあるが……」

ボッコス「知らないのか?バカめ」

アデコール「我々がみせてやるであ〜る!だか、それを見る前に、おまえは地面に這いつくばるダメ虫になっているのてあ〜る!……ふぬ!」

レナ(……この人達、傍から見れば教えてやってるように見えるんだよね)

アデコールが闘気を纏い始める。

ユーリ「オーバーリミッツとなんか関係あんのか……」

ボッコス「さー行けっ、見せてやれ、アデコール!」

ボッコスがアデコールを鼓舞する。アデコールはユーリに向かって近づくと見るであ〜る!騎士団奥義!と言って剣を振るう。ユーリはバックステップを踏み、軽々と躱した。

ボッコス「当たってないではないか!何をやってるのだ

!」

ユーリ「なるほど、奥義から連携して出すのがバーストアーツか。マネすっかね……」

レナ(わぁ、普通に出来そう。てかユーリの戦闘センスなら習得するだろうな。私も見ておこうっと)

アデコール「ふん、素人がそんな簡単にできるわけがないのであ〜る!」

レナ(……できるんだよねこれが、なぜならユーリだから)

ユーリ「……ここでオーバーリミッツ!」

ユーリは闘気を纏った。

ボッコス「わわわっ、気をつけろ、ユーリ・ローウェルのやつ、来てるぞ!」

ボッコスはアデコールに声をかける。ユーリは奥義……と囁くと、烈砕衝破!と技を出した。技の衝撃がアデコールを襲う。ユーリの闘気がさらに上がりバーストアーツ……天狼滅牙を出す。無数の斬撃が体制を崩したアデコールを更に追い込む。

レナ(なーるほど?頑張れば出来そう)

ボッコス「ふんぎゃーーっ!バーストアーツ!」

アデコール「余計なことを、であ〜る!!」

そのまま戦闘は続いていき、終わる頃にはユーリはバーストアーツを完璧に使いこなしていたのだった。結果はユーリの勝利。ボッコスとアデコールは負け、その場を去った。

 ユーリとレナはヘリオードに戻る。辺りは暗くなり始めていた。

ユーリ「やれやれ……寝る前に、とんだ準備運動だぜ」

レナ「お疲れ様、ユーリ」

ユーリ「ありがとな、レナ」

二人は宿屋へと歩く。宿屋につきチェックインを済ませていると、そこにリタとカロルが来た。

リタ「あれ?あんたたちエステリーゼに会えたの?」

リタはユーリとレナを見ながら聞く。

レナ「んーん、会ってない」

ユーリ「今日は疲れてるだろうから、そっとしといてやろうぜ。話をするのは、明日でもいいだろ」

カロル「そっか、じゃあボクたちも部屋に行こっか」

4人と1匹はそれぞれの部屋で今までの旅の疲れを癒し体を休めた。

 

―翌日

 

 ユーリ、リタ、カロル、レナはチェックアウトを済ませ、宿屋の入口前に集まっていた。ふとラピードが何かを気にするような仕草をする。ユーリが気づきどうした?と声をかける。

カロル「変な音聞こえない?」

リタ「言われてみればそうね」

レナ(……魔導器(ブラスティア)が暴走する予兆……か)

 宿屋の主人が、結果魔導器(ブラスティア)の調子がわるいらしいと音に気づいたユーリ達に話す。リタは魔導器(ブラスティア)の調子が悪いと聞いて宿屋から飛び出すのをレナがちょっと待って!と静止をかけた。リタは待ってらんないわよ!と苛立ちをあらわにする。

ユーリ「騎士団様だっているんだ。すぐ手打ってくれるだろ」

カロル「リタが出て行って勝手するとエフミドの丘ん時みたいになっちゃうもんね」

カロルはどこか遠い目をしている。

ユーリ「ま、気が向いたら、フレンに知らせてやりゃいい」

リタはその言葉に不満そうにしていた。そのままユーリ達は宿屋の外に出ると、結局リタの希望で結界魔導器(ブラスティア)の前に行った。リタが魔導器(ブラスティア)をまじまじと見て調べ始める。そこにエステルが遠くから走ってきて、リタに待ってくださいと声をかけた。カロルが駆け寄ってきたエステルにビックリする。

エステル「騎士団の方で修復の手配は整えたそうですから、ここは」とリタに身を引くようにお願いする。

ユーリ「たまには騎士団の顔、立ててやれよ」

エステルが続いてお願いしますとリタに頭を下げる。リタはそこまでいうならと渋々頷いた。

ユーリ「ふらふら出歩いて平気なのか?」

ユーリはエステルにそう声をかけた。

エステル「はい。帝都に戻るまで、一緒にいてもいいです?」

ユーリ「そりゃ、オレは構わないけど」

という訳で、帝都に戻るまでの短い間だけエステルと行動することになった。ユーリ達は魔導器(ブラスティア)の事をフレンに伝えるために、フレンの所へ向かった。

 

 フレンを訪ねて見れると、彼は駐屯室で忙しなく動いていた。

ユーリ「なんか、結界魔導器(ブラスティア)が、変な音出してるけど、平気か?」

フレン「それが気になって、わざわざ顔を出したのか。相変わらず、目の前の事件をユーリは放っておけないんだな」と呆れている。

ユーリ「オレがっていうか、こっちの……」

部屋の奥にいたリタがフレンに近づく。

リタ「様子がおかしいのは明白よ。あたしに調べさせて!」

フレン「今、こちらでも修繕の手配はしてあるんだ。悪いが魔導器(ブラスティア)を調べさせる訳にはいかない」

リタはなんでよ!!と憤った時、地面が大きく揺れ始めた。

レナ(まずい……魔導器(ブラスティア)が!)

しばらくすると揺れは落ち着いた。レナは落ち着いた瞬間に、魔導器(ブラスティア)の方へと駆け出していた。

ユーリ「なんだ、今の振動?」

フレンはまさか、魔導器(ブラスティア)か?と呟いた。

リタはレナのあと追いかけるように駆け出していった。

エステル「魔導器(ブラスティア)に何かあったのかもしれません」

ユーリはみんなに行くぞ!と声掛けて、魔導器(ブラスティア)の方へと走り出した。フレンはエステルにここにと待っているよう声掛けて出ていく。

 レナが魔導器(ブラスティア)に着いた頃、魔導器(ブラスティア)は黄色の強いひかりを放ち、周りにはエアルが溢れ出ていた。

レナ(っエアルが濃い……でも止めなきゃ!)

魔導器(ブラスティア)に近づき、何とか落ち着かせられないかと探る。リタが魔導器(ブラスティア)の近くまで来ていたようで、近づこうとしてユーリに止められているのがレナの視界の端にうつった。レナに気づいたユーリが彼女の名を呼ぶ。

レナ「ユーリっ!リタっ!近づいちゃダメ!エアルが溢れ出てる!この濃度じゃ人の命に関わるから!」

周りにいた人達がぐったりと倒れている。

リタ「あんたも、危ないわよ!早くそこから逃げなさい!」

ユーリ「そうだ!無茶するな!!」

ユーリが怒鳴る。

レナ「ごめん無理、この暴走を抑えなきゃ」

額に汗を滲ませレナは微笑んだ。瞬間、魔導器(ブラスティア)からエアルが暴走する。その衝撃にリタとユーリは少し吹き飛ばされた。近くにいたレナもその衝撃を全身に受け、魔導器(ブラスティア)から引き剥がされるがすぐに傍により意地で抑えている。

 リタは少しおさまったのを見計らって、レナのそばに来た。その後ろでユーリが来ようとして、高濃度のエアルにあてられる。レナは引き続きエアルを限界まで抑えていた。リタは魔導器(ブラスティア)に触ると操作盤を開き作業にとりかかる。

リタ「大丈夫、エアルの量を調整すればすぐに落ち着くから。元通りになるからね!……レナ、あんたも無茶するわね」

レナ「……ふふっリタこそ」

レナはエアルを抑えることにさらに集中する。

レナ(溢れ出てくるこのエネルギーを抑える。蓋をするイメージで……大丈夫、ゲームでエステルがやったことを私がするだけっ)

少女の体がよく見ないと分からない程度に淡く赤色の光を纏う。

リタ「……レナ、あんた、体が……」

レナ「?……リタ?」

フレン「危ない!今すぐ離れるんだ!!」

追いついたのであろうフレンの怒鳴り声が聞こえた。

リタ「……そんな!この子の容量を超えたエアルが流れ込んでる。レナが抑えてくれているとはいえこのままじゃ、エアルが街を飲み込むか、下手すりゃ爆発……」

レナ「……ぐっうぅ」

レナ(やっぱり少しづつじゃないと抑えられない……このままじゃ私の体力が先に尽きる)

耐えきれなくなってきたレナが膝をついた。

リタ「!レナっ!」

レナ「っ……へーきっ」

レナ(弱音吐いてる場合じゃないっ!やるんだ、私がっ)

瞬間魔導器(ブラスティア)を中心に巨大な魔法陣が構築される。それによってエアルの暴発が半分に抑えられた。しかしまだ力が足りないらしい。レナの体の周りをより一層淡く赤い光が強くなった。

レナ(ぐっ……今までと比べ物にならない、全身が引き裂かれるように痛い!!それでも半分なんて…やっぱりエステルが媒体になって抑えないとダメなの??巻き込みたくなかったのに……!)

エステルがリタっ、レナっ!!と叫びこちらに駆け寄る。その体はエアルを抑えるのと同調するように発光していた。

レナ「っエステル!?」

エステル「リタ、レナ、だいじょうぶ!?」

リタ「……エステリーゼ……」

輝くエステルに呆然とするリタ。エステルが来たことで、エアルの暴走がほぼおさまっていく。ハッとしたリタはすぐに魔導器(ブラスティア)の操作にうつる。リタがよしっ、できた……そう呟いた瞬間だった。魔導器(ブラスティア)が強い光を放ち3人を飲み込む。こうなると薄々わかっていたレナは無詠唱でリタとエステルに手を伸ばしバリアーを掛けた。3人は石畳に叩きつけられる。

 光がおさまって最初にエステルが起き上がった。彼女の目には倒れているレナとリタが見えた。二人ともぐったりとしている。エステルはリタの方を確認するとよく見ないと分からないほど浅いが呼吸をしている。そしてレナの方を確認するが、呼吸をしていなかった。レナが2人に手を伸ばし防御の魔術を咄嗟にかけて守ってくれたことをエステルは思い返す。ハッとした彼女は二人に必死に声をかけた。

エステル「っレナ!!リタ!!しっかりしてえぇ!!」

     (死なないで、二人とも!私の持てる全ての力を……!!)

レナ(……っエステルが……呼んでいる?身体中が痛い……大丈夫だよって言わなきゃいけないのに……)

エステルによって発動された強い治癒術は二人を包み癒していく。リタの傷はほとんど塞がり、レナは浅くけれどしっかりと呼吸を始めたの見てエステルはほっと息をついた。降り始めた雨が、3人を濡らす。ユーリが三人に駆け寄る。

エステル「……はあ……はあ……。リタと、レナを……休ませる部屋を……準備してください……」

ほぼ限界に近いエステルはやっとのことでユーリに頼む。

ユーリ「なに言ってやがる。おまえもぼろぼろじゃねぇか」

駆け寄ったフレンがすぐに準備を……!と部下に合図した。

フレン「彼女たちは私と部下で連れていきましょう」

フレンはリタを部下の1人がレナを抱え、用意した部屋に連れていった。ユーリはカロルに近づき声をかけ、オレたちも行くぞとフレン達の後を着いていった。

 リタとレナはベットの上に運ばれ眠っている。リタとレナは部屋の都合上別室に分けられていた。エステルはレナにある程度治癒術をかけると、リタの部屋に行く。今度はリタに治癒術をかけ続けていた。ふとコンコンとノックの音が聞こえ、エステルはどうぞと招く。入ってきたのはユーリだった。そのままエステル達に近づく。

ユーリ「治癒術だって無限に使えるわけじゃない。もうリタもレナも落ち着いている。その辺にしておけ」

エステルははい……と返すと、術を解いた。

ユーリ「ったく、無茶ばっかりしやがって」

エステル「本当ですね。リタって決めたことにはどこまでも真っ直ぐで……レナは私たちを守ろうと必死になって……」まるで他人事のように話すエステルに、ユーリはエステルも同罪だと言った。

エステルはごめんなさい……と首をすくめた。

ユーリ「ここ、オレが残るからエステルはもう休め。治癒術使って疲れたろ?」

エステルが座っている場所を代わるように近づいて、気にかける。エステルは疲れていないと首を振って拒否する、

エステル「わたし、リタがうらやましいです。大切なものを持っているから……」

ユーリ「ないなら、探せばいい。そのために今日は休んどけ」

エステル「だいじょうぶです。ユーリこそ、休んでください」

ユーリ「お前が倒れたら、オレがフレンに怒られんの」

エステル「なら怒られてください」

1歩も引かないエステルにユーリは仕方ないとため息を着く振りをした。

ユーリ「倒れてから代わってくれって言われてもオレは知らないからな」

エステル「倒れてからじゃ、代わってくれって言えませんから」

ユーリは頑固なこってと呆れると部屋から出ていった。

 ユーリはリタの部屋から出ると今度はレナが眠っている部屋に行く。ノックをするが返事は無い。ドアを開けて中に入れば、ベットに横たわるレナだけがいた。

ユーリ「ハルルで約束したこと、ずっと破り続けてるよな……いくら大人びてるとはいえ子供なんだぜおまえ。これ以上、無茶するんじゃねぇぞ」

ユーリはレナが魔導器(ブラスティア)を抑えている時、背中に冷や汗が止まらなかった。レナの頭を撫でた時、ゆっくりと瞼が開いた。ハルルの時と同じようにボルドー色の瞳が見えた。

レナ「……ユーリ?」

ユーリ「レナ、お目覚めか?」

レナ「ここは……?っエステルとリタは!?」

ハッとしたレナは思いっきり体を起こす。が、いきなり起きたせいで視界が歪み気持ち悪くなって頭を抑える。ベットに倒れ込みそうになる少女をユーリは支え、ゆっくりと寝かせる。

ユーリ「落ち着けって、無事だよ二人とも。リタには今エステルがついてる」

レナ「そっ……か。よかった」ほっと安堵する。

ユーリ「よかねぇよ。クオイの森の時といい、今回の事といい本当におまえはいざって時、無茶するよな」

レナ「……うっ、ごめんなさい。みんなを守らないとって思ったら体が動いちゃうんだもん」

ユーリ「ったく、仕方ねぇ奴だな」

レナはあはは……と苦笑いした。

ユーリ「今日はもう遅いし、ゆっくり休んどけよ」

レナはうんと返事をしたのを確認してユーリは部屋からでた。

 ユーリが廊下に出るとカロルが壁に背を預けて座り込んでいた。そんなカロルに近づく。

カロル「どうしようもないやつだって、ユーリは思ってるよね。最初に会った時も、カルボクラムでのことも……今日のことだって……」

ユーリ「今日のはさすがにびびったよな。さすがの騎士団長様もあれはお手上げだったぜ。大の大人にだって、できないことがたくさんあんだ」

俯いているカロルに語りかけるようにユーリは話す。カロルはユーリにも?と聞いた。ユーリはああと頷く。

カロル「そうだね。世の中、簡単じゃないよ」

そういう事だとユーリは同意した。

カロル「……あのさ、ユーリ」

呼ばれたユーリは、ん?と優しく返す。

カロル「ボクと……ギルド作んない?」

おそるおそるカロルは提案した。

ユーリ「ギルドか……。そういや、その選択もあったな。考えとくよ」

まさかの返事にカロルはえ!?と驚く。ユーリはそんなカロルを不思議そうになに、驚いてんだよと返す。

カロル「厄介事はごめんだ、とか言うと思ってたから」

ユーリ「大人にも色々あるんだよ。ほら、今日はもう休んで、明日、また様子を見にくんぞ」

 

 翌日、ユーリとレナはリタが居る部屋をたずねた。部屋に入るとリタは起き上がっていた。

レナ「リタ、目を覚ましたんだね。よかったぁ」

レナはほっとするように微笑んだ。

リタ「あんたもね」

エステルはリタが眠っていたベットに突っ伏して眠っている。

ユーリ「あれほど倒れる前に言えって言ったのに」

少し呆れたような口調だ。

リタ「わかってたんでしょ?言っても聞かないことくらい」

エステルはむにゃむにゃとなにか寝言を言っている。そんなエステルをリタは幸せそうな顔しちゃってと微笑んだ。

リタ「あのさ、エステリーゼってあたしのことどう思ってると思う?」

どこか遠くを見つめてリタは呟いた。それに対し何も返答がないの変に思ったリタはユーリの顔を見ると、ユーリは驚いた顔をしていた。

ユーリ「自分がどう見られてるかなんて気にしてないと思ってた」

リタ「も、もういい。あっち行って」

何だか急に恥ずかしくなったリタはそっぽを向く。

ユーリ「術式なんかより、こいつはむずかしくないぜ」

 エステルが目を覚ました。起きているリタを見て飛び起きる。

エステル「あれ?リタ!目が覚めたんですね!あ、でも油断したらダメですよ!治ったと思った頃が危ないんです」

そう言ってエステルは治癒術をリタにかける。

リタ「もう、大丈夫よ」とエステルに微笑み、「あと、魔導器(ブラスティア)使うフリ、もうやめていいよ」と付け加えた。

エステルはな、なんのことです?と動揺している。

ユーリ「魔導器(ブラスティア)なくても、治癒術使えるなんてすげぇよな」

 すこしの静寂、降り続ける雨の音だけが聞こえていた。

エステル「ど、どうしてそれを……」と口ごもってしまう

 ふと窓に影が差した。気づいリタが窓見て、あ、バカドラ!と叫んだ。

レナ(!ジュディスっ)

ユーリはなんだ?と警戒する。エステルは咄嗟にリタの上に覆いかぶさり守る。ユーリは剣を構えて前に出た。レナはユーリの前とエステル、リタの前に魔術で作った見えない障壁を構築させた。竜が火球を吐く、ユーリは咄嗟に剣で受け止める仕草をする、その前にレナが作った障壁がユーリを守った。竜使いは何故か戸惑うような素振りを見せたあと、振り上げていた槍をおろす。

ユーリ(今の、レナの魔術か……)

レナ「大丈夫?ユーリ」

ユーリ「あぁ、おまえのおかげでな」

エステル「リタ、だいじょうぶですか?」

リタ「……あんたって子は……」

慌てたカロルがドアを開けて入ってくる。

カロル「すごい音がしたけどどうしたの……って、うわぁ!?」

部屋に入ってきたカロルは飛び回る竜使いに驚く。

カロル「なに?なんなの?な、なんだったの、あれ?」と混乱している。

リタ「大事な話の途中だったのに」不貞腐れるように言った。

ユーリ「エステルの治癒術に関しては、とりあえず、ここまでな」

リタ「別にいいわよ。あたしはだいたい理解したし」

どこか疑わしげにユーリを見つめるリタ。

ユーリ「なに、悪いようにはしないって。オレ、そんなに悪いやつに見える?」

リタは見えるわと返した。エステルはそんな二人をうふふと笑った。

カロル「……ちょっと。ボクだけ仲間はずれなの?何のことだよ、教えてよ!!」

何も知らないカロルは何が何だか、ちょっぴり寂しいと感じるのだった。

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